丹沢 中川川 箱根屋沢

2018年9月8日
赤井、谷水(記)

谷川に行こうとしていたが雨予報のため、唯一晴れ予報の出ていた丹沢に転身。聞けばアブミルートをもつ滝もあるという。シャワークライミングとはまた違った刺激を求めて出発した。

箱根橋(8:05)―F7(10:10)―右岸側の尾根(12:30)―大滝キャンプ場入口(13:00)―箱根橋(13:15)

朝の車で天気予報を見ると、南関東以外は雨予報。空は曇り空だが雲の切れ間から青空も見えるし、転身してきてよかったと思いつつ入渓点である橋に到着。準備を整え入渓する。堤防2つは右手に梯子があり問題なくこえていく。すぐに3段20m滝がある。ロープを出して赤井さんがリードする。ハーケンが打ってあり、ランナーを取りながら右手から登りはじめ、一度左手にいってから右上していく。この日は水量が多いのか思いっきりシャワークライミングになった。ただフリクションはよく気持ちよく登れた。その上はコンクリートで固めたような岩壁が現れる。左手からこえていく。F3は5m滝、とあるがもうちょっと大きいのでは(?)と思える迫力があった。明らかに水量が多い。右手が階段状だがシャワークライミングとなる、滝を一段登って左手にトラバースすればシャワーでなくクライミングできそうな壁がある。少し考え、赤井さんはシャワークライミングを選んでリード。次のF4は12m滝。右手の階段状クラックにハーケンがメタ打ちされていた。谷水リード。
F5は2段逆くの字の滝。それぞれが8m。楽に登れる(山行中はそんなに大きい滝と思っていなかった)。F6も歩いてたら過ぎていた。F7は2段20m滝。左手にシュリンゲがかかっているがそこまで行くのがどうも悪そうで、休憩後右手から巻くことになった。後から他のパーティの記録を見ると、シュリンゲの右下にもハーケンがあったらしいが気づけなかった。

F7の滝(下段10m) 右手はハングしている

F7下段をまき、F7上段の下におりる。登れるか見るがどうにも無理そう。雨が無視できない位強くなってもいる。上段の滝もまくことになった。これが以外に悪かった。つい高まきすぎて尾根に出てしまいそうになる。少し下りて軌道修正しトラバースしてたらトラロープ発見。拍子抜けしながらそれを利用し、F8に降りる。対岸にもトラロープがあった。どちらからでもF7上段の滝は巻けたらしい。F8がアブミルートと言われる滝だったのだが、ここで痛恨のミス。登れる滝じゃない、と判断し巻いてしまった。

F8と思わず高まいてしまった。残置が1つ高いところにある。

F8と思わず高まいてしまった。残置が1つ高いところにある。
ミス判断をしてしまった原因としては、水量が多く、アブミルートの滝に見えなかったこと。アブミルートにしては残置がないと思ったこと、雨が強くてテンションが下がっていたことがある。
記録を書いていても悔しいが、どうしようもない。その後はスラブ滝があったような気がするが、さしたる山場はなかった。計画では沢をつめて960mまで行く予定だったが750m位で左上して800mの尾根上に出た。下山に使用予定の尾根だったのでそのままそれを下っていく。屏風岩山の作業道に合流し、それを大滝林道まで下り、大滝キャンプ場入口に出た。そこから15分ほどで入渓点の箱根橋まで戻ってこれた。

雨を避けた山行のハズが、がっつり雨に降られてしまった。こんなに天気予報に裏切られたのは久しぶりだったが、寒くはなかったのでこれはこれできっと何かの練習になったハズ。メインの滝を巻いてしまう失敗が痛かった。もっとよく右手を見ておけば間違えなかったかもしれない・・・。今後は気を付けよう。

釜無川支流黒川

2018年9月1日~2日
中和(記)、柏舘

柏舘さんから釣りに誘っていただいたので、釜無川支流・黒川を提案したところ、あっさりオッケーが出た。前線通過に伴う断続的な降雨の予報であったが、流域面積が狭くゴルジュの沢でもないので、猛烈な増水は無いと判断し、まずは行ってみる事にした。

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コースタイム:
9/1(土) 釜無川ゲート (7:39) – 黒川出合(08:32) – 門状堰堤(12:36) – 幕営地(15:59)
9/2(日) 幕営地(06:20) – 鬼の窓(07:42) – 鬼の窓沢出合(9:29) – 釜無川林道(11:07) – 釜無川ゲート(12:25)
※黒川下流部は釣りをしながら遡行

行動記録:
9/1(土) 断続的に弱い雨
金曜夜行で釜無川のゲート付近に移動したものの、夜半から本降りの雨。明るくなってきても雨が止まないので「止むまでまとう」「帰ろうか」など2人とも消極的な発言でグダグダの様相。幸い7時前に雨は止み、川の色も笹濁り程度だったので出発。

小一時間歩いて黒川出合に到着するも、大きな堰堤が聳えており冴えない出合。この堰堤を巻いても、さらに堰堤が続くのでスカ沢の気配が漂い始めるが、3つ目の堰堤を過ぎると渓相は好転。ゴルジュ状の沢中に、5つほど滝が連続する(3つ目の滝以外はすべて容易に登れる)。だが、5つ目の滝を越えると、またしても堰堤。悪態をつきながら通り過ぎると、沢が工事現場になっていて唖然。どうやら堰堤を建設するようで道路やら仮設トイレまである始末。見なかった事にしてさっさと通過。工事現場を通り過ぎると、再びゴルジュ状となり、チョックストーンが挟まった直瀑に阻まれる。釜に入って偵察したが、手がかりが乏しく登れる気がしないので素直に巻いた。この先も、ナメや大岩の滝が連続するが、全て直登可能で楽しく遡行できる。前松尾沢を見送ると、渓は明るくなってきて、40m近い2段のナメ滝。1段目は難しく2段目は絶望的なので、ここも素直に2段とも巻く。これを巻けば核心部は過ぎたと思ったが、再度ゴルジュ状となり大滝。水流沿いの遡行は不可能なので、右岸のルンゼを使って巻きにかかるが、岩がボロいので意外と悪い。ルンゼ途中から木の根を使って尾根に移行して高巻いた。大滝を巻き終えれば、あとは完全に癒やしの渓相。これでもかと言わんばかりにナメが続き非常に快適。ナメが切れたあたりで、右岸に快適な砂地を見つけたので、ここでタープ泊。9/2(日) 弱い雨
出発早々、柏館さんが倒木で竿を折ってしまいテンションが低い状態でのスタート。鬼の窓への詰めは基本的に何もないが、アザミやイバラが生い茂っており痛い。左岸に岸壁が出てくると大岩が散乱するが、これを抜ければ真砂のザレとなりコル(鬼の窓)に出る。

下降する鬼の窓沢は序盤は単なる樹林帯だが、100mほど標高を落とすと左側から水流のある沢と合流。ここからは傾斜のゆるいナメが延々と続くが、素晴らしくヌメるのでラバーソールだと立つことすら困難。ナメの途中で2つほど15m強の滝がある他は、こんなナメがひたすら続くナメ沢である。入り口はゴルジュのようになり、1本だけある滝を下るのに念の為ロープを出した。山行中でロープを使ったのはここだけ。

ゴルジュを抜けると中ノ川本流に出るが、待っていたのは巨大堰堤とガードレール付きの林道。どれだけ堰堤を作るのが好きなのだろう。あとは、林道を13kmほど歩くだけだが、最後の方は林道歩きに飽きてお互い無言のままゲートに帰り着いた。

南アルプス聖沢

2018年8月26日~30日(沢中2泊)
谷水(単独、記)

今年は会の先輩方に沢泊を教えてもらい、夏休みは北アの沢を遡行する予定でいたが、山行予定期間中の天気がよろしくない。急遽南アの沢に変更。一番に頭に浮かんだのは赤石沢だったが、即却下。日本登山大系を開くと「聖沢」の文字に目がとまった。そういえば聖岳は学生のころ縦走で行ったっきり。しかも奥聖に行かずにいたので、今回行ってみよう!

1日目:畑薙ダム→椹島ロッヂ(12:35)
2日目:椹島ロッヂ(6:15)→聖沢登山口(6:30)→聖沢吊橋(7:30)→入渓直後の5m滝(8:00)→聖沢吊橋(8:30)→二俣付近幕営地(11:30)
3日目:幕営地(6:00)→前聖ノ滝沢出会い(8:40)→下の大滝(11:40)→前聖岳(13:40)
→幕営地(15:30)
4日目:幕営地(6:00)→二俣→前聖岳(11:30)→二俣(13:00)→聖沢登山口(15:25)
→椹島(16:20)
5日目:椹島(6:15)→畑薙ダム

1日目(晴れ)
バスに1時間ゆられ椹島ロッヂに到着。下界と違って爽やかな気候。することもないので烏森山にハイキング。小屋のおじさんから今は水量多いから下部は気を付けてね、という言葉に緊張がはしる。

2日目(晴れ)
東海フォレストのバスに登山口まで乗せてもらい、吊橋から入渓。15分ほど歩くと5mの滝がある小さいゴルジュ。釜を歩いて・・へつって・・・泳いで・・・格闘すること約30分、滝にたどり着けない。悔しいが1人なので無理せず登山道を使って聖平小屋近くの二俣まで行くことにする。入渓時間わずかで脱渓することとなった。
二俣から10分位聖沢を下ったところに適地を見つけて、本日の行動終了。2日分の薪など集めたり、聖沢本谷ではない方(右俣)をつめて聖平小屋まで行ったり。赤石岳近辺だけあって赤い石が多い。しかもよく滑る。明日からの足場に緊張しつつ就寝。
3日目(曇り時々雨)
テン場から100m沢を下りたところで聖沢出会い。早く出会いに行くには登山道を登山口方面に少し行って沢を下ったほうがいいが、昨日さっぱり沢に入ってなかったので沢を下って出会いに行くことにした。小滝の釜にダイブして泳いだり、高まきして10m懸垂したり楽しい道中となった。
最初の5段30mの滝は2段登って残りはフリーで登るのは怖く、高まいた。ちょうど鹿(?)の通り道だったらしく比較的快適な高まきだった。降りたがすぐに30m滝がありまた巻く。その後も登ったり巻いたり、特に難しい部分もなく進んでいくと、左岸が草原のように開けてくる。晴れてたらさぞ綺麗な景色だろうと思うが、天気はあいにく曇り。しかも段々雲が昇ってきて霧っぽくなってきた。空も先の沢模様も分からない。それでも進んでいくと下の大滝40mについた。大迫力。滝しぶきなのか霧なのか分からないがいろいろ浴びてから右岸から高まき、落ち口で一本。ここでとうとう雨が降ってくる。縦走中なら不快に思っていたが、沢山行中なので濡れても気にならない。沢も終盤だから増水もすぐにはしないかな・・・と思いつつ急ぎ気味に歩くと5分しないうちに上の大滝に到着。左右から60mの滝が出会っていて、ここも大迫力。釜の沢の両門の滝を大きくした感じ。標高は2460m。ここからは特に滝もなく3000mの稜線までひたすら歩く。2800mで水は突然枯れた。空が見えないので稜線が見えない。いつのまにか雨は止んで風が出てきた。これは寒い。濡れた体にこたえる。前聖には着いたが、奥聖に行く気になれずとっととテン場まで下った。
焚火をめいっぱい焚いて、体を乾かせたので夜は快眠でした。
4日目(曇りのち晴)
本谷は二俣の左俣をつめる。うまくいけば前聖岳に直接つきあげることができる。最初は穏やかな渓相。しかし突然ゴルジュ!!に突入。本谷には2つゴルジュがある。1つ目のゴルジュはなんとか水線を行けた。しかし7~10m級がいくつもある、岩が滑るで神経がすりへる。もう滝はお腹いっぱい状態。2つ目のゴルジュに突入するもCS滝を超えられる気がせず高まきに入る。小さく高まくと奥にまた滝が見える。もうお腹いっぱいだったのでまとめてまく。ゴルジュを小さくまくことはできずかなり大きくまくことになった。沢筋におりた時には水は枯れる寸前になっていた。つめていると青空がみえてきた。先に見えるのは稜線か?ザレ場とハイ松をこえて風は強いが晴れている前聖岳に到着。ただ周囲は雲に隠れていて何も見ることはできなかった。今日も奥聖岳に行く気になれず下山する。その勢いのまま椹島まで下山した。お風呂に入ってリフレッシュ!!

本谷の遡行は中途半端になってしまったので、また次回挑戦したい。静かで飽きない道中となる沢であり特に前聖ノ滝沢はとてもいい沢だった。釣りができたら魚も楽しめたのかな、とも感じた。前聖ノ滝沢、本谷の二俣から先は薪がないか少ないので、テン場とするには寒いように思います。

※写真の日付は設定ミスで本当の撮影日とは異なります。

瑞牆山クライミング

2018年8月18日~19日
河合、玉置(記)

2018年8月18日 (2日目) カサメリ沢
この日は前日の蒼天攀路で疲れたからということでカサメリ沢へ。自分にとっては初めてのゲレンデ。コセロックのあたりは満員だったが、他は比較的スペースに余裕のある感じ。ゆるく登るつもりが、本気のオンサイトトライを連続でやったのでだいぶ疲れてしまった。河合君はギャラクシアン(5.12a)のフラッシュを惜しくも逃してしまい悔しそうだったが、宿題を2つ解決していた。流石。2018年8月19日 (3日目) 大面岩左稜線
この日は早めに帰らなければいけないこともあり、前日に出ていたいくつかの候補の中からアプローチもグレードも程よい大面岩左稜線に行くこととした。アプローチは植樹祭駐車場の手前の駐車場からで、一応大面岩の直下までパノラマコースというハイキングルートになっているらしい。途中登りすぎてカンマンボロンの取り付きに出てしまったり、大面岩への分岐を超えた後で道を間違えたりしたが、どうにか1時間少々でルート脇の取りつきに到着できた。今回は苔が多くわかりづらいというオリジナルの1ピッチ目を割愛して8時ごろに2ピッチ目からスタートした。
2ピッチ目 (5.8, 30m) 玉置リード
取りつきのビレイ点から数mトラバースして、リングボルトが二つある場所からスタート。前半はスラブで後半は太い立木の生えたルンゼ登り。特に難しいところはなく、ルンゼ内の適当な立木でピッチを切った。
3ピッチ目 (III級, 20mくらい?) 河合リード
ルンゼを適当に登り切ってトラバースした後、木立の中のテラスへ。
4ピッチ目 (5.10a, 15m) 玉置リード
出だしはちょっとしたスラブ。スラブの上部に立ち上がるところは少しバランスが悪い上に錆びたRCCボルトしかなく緊張した。その後は数mの小さな凹角をカムをセットしながら登り終了点までトラバース。ムーブは難しくないが、下は切れ落ちており結構怖い。プロテクションは最初のRCCボルト以外は立木またはカム。終了点はピカピカのペツルボルト2つでバッチリ。5ピッチ目 (5.10c, 10m) 河合リード
グレード的にはこの日最難のピッチ。出だしが核心。カンテを掴んでのハイステップは空中に身を投げ出すような高度感たっぷりのムーブ。ただ5.10cにしては易しいように感じた。5.10bくらいかな。プロテクションに関しては2-3mおきにペツルボルトがありルート中で最も充実しているので安心できる。6ピッチ目 (5.10b, 25m) 河合リード
個人的には前のピッチよりこのピッチの方が総合的には難しいように感じられた。前半部のプロテクションはほとんどリングボルトなので、リードは落ちられない。今回は河合君に任せてしまった。
出だしは前のピッチの終了点からボルダーを少し回り込んでからスタート。ボルダー上まで力技で登ってからフェイスへ移る。カンテを使いつつ細かいスタンスに立ち込んで登った。7ピッチ目 (5.10b, 30m) 河合リード
ビレイ点からやや下り気味に数m左へトラバースした後はスラブ登り。最初は大きなホールドがあるが、後半は繊細な足遣いのクライミング。樹林に入る手前でピッチを切った。8ピッチ目 (III級, 25m) 玉置リード
ビレイ点から岩を乗っ越し、右側のルンゼをチムニー下まで歩いて登る。左側にもルンゼがあって紛らわしいかもしれない。途中の立木でピッチを切った。この時点で登攀開始から3時間少々。ここまでは快調だったが。。。
9ピッチ目 (5.10a, 25m) 河合リード
これまでのフェイスあるいはスラブ登りから打って変わってワイドクラック。ワイドクラック慣れしていない我々には今回最大最後の核心となったピッチ。ザックを背負ったままフォローすることはできないので、河合君がリードした後ザックを予備ロープで引き上げ、引っかかったところを自分が登りながら救出するという作戦で進むことにした。
最初はルンゼ内をしばらく歩く。その後チムニー登りからスタートして、中間部以降オフウィズスとなり終了点まで抜ける。リードの河合君は相当手こずりながらもなんとかオンサイト。この時点で1時間弱かかった。今度は自分の番。ザックがすぐに引っかかってしまうのでこまめに救出してやらないといけなかった。最初のチムニー登りは湿っていて滑りやすく大変ではあったがなんとかフォールせずにクリアできた。しかし後半のオフウィズスは散々悪戦苦闘した挙句、ギアラックのルベルソとカラビナを落とす痛恨のミス。登る前にギアを体の前にラッキングし直すべきだった。反省。
やる気がなくなってしまったのでヌンチャクでA0して上まで登った。10ピッチ目 (III級, 40m) 玉置リード
頂上直下まで適当にルンゼをたどったが、どこが正しいルートだったのかよくわからなかった。どこでも登れそうな感じ。適当にピッチを切り、残りはビレイを解除して頂上まで一登りした。13:40分頂上着。下山
頂上からフィックスロープで懸垂下降してパノラマコースまで降りる。特に迷うような場所はなく順調に降りられた。デポした荷物を回収し、途中のボルダーで寄り道しつつ下山した。久しぶりのマルチでしたが色々と反省点もありつつ充実した1日でした。

谷川岳ヒツゴー沢

2018年8月5日(日)
薄田(単独、記)

行程: 谷川温泉6:00 ~ ヒツゴー出合7:30 ~ チョックストーン滝8:30 ~ 稜線 10:45 ~ 谷川温泉15:00

「熊だー!」
世の中暑すぎるので沢に逃げようと計画したが山も暑かった。甘かった。
20年前に1回入っていたが連続する滝はほぼ直登でき、単独でも行ける事はわかっていたので計画。
8/4の夜埼玉を出発。谷川温泉には23:00に到着、涼しい。(国道の温度計は24℃だった。)
前回駐車できたスペースはチェーンでガードされて入れない。モ・・・何とか言う団体の私有地だった。仕方なく空いている僅かなスペースを探し駐車。
レガシーの窓を僅かに開けてすぐ寝る。
4:30にアラームセット。夜中20年前にはいなかったかに起こされたが我が家とは比べものにならない涼しさだったのでよく寝られた。
6時前に出発。途中の沢が崩れていたがセンターの管理人言われた程の荒れ形では無かった。但し、20年前に歩いた場所が崩れて沢身を行かなければならない所が大分増えたように思った。
二股手前で右手のヤブ中から「がさがさ」と音がすると思ったその瞬間、恐怖におののいた熊さんと目が合ってしまった。こっちもびっくりしたが熊さんも人間が怖いのか猛スピードで斜面を駆け上がっていった。
体長は1.2m位の若いヤツで母親がいたらとどきどきしたが単独だったので助かった。
逃げてくれてありがとう。長いこと山に入っているが生熊を見るのは初めてで良い経験(あまりしたくないが)だった。
出合に7:00前に到着。準備して入渓。程なくして逆くの字滝、朝一で体が動かないので前回と同じく1段目を上がって左から巻く。後は連続する滝を全て直登。流石、銘渓ヒツゴー沢であります。
1箇所残置ハーケンにΦ7シュリンゲがお助け紐状態で2m位垂れていて有り難くA0をさせて貰った。之は助かりました。大きい滝が終わる頃から谷も開けお日様がガッツリ夏の日差しで攻撃してきます。此処からは熱中症との戦いです。クエン酸入り塩タブレットを舐めながらふらふらしながら登っていくと足下がいい加減になり1回スリップダウン。おしりをしこたま岩にぶつけて痛かった。
稜線直下は熱中症寸前で頭が半制御不能状態。10:45に稜線着。新潟側からの涼しい風に助けられ命拾い。肩の小屋まで登り天神尾根を下るが登って来る人来る人が暑さで死にそうな顔(多分自分も)なのが印象的でした。

大菩薩連嶺・小金沢本谷

2018年8月4日~5日
中和(単独、記)

■はじめに
小金沢本谷で滝からフォールして負傷する事故を起こした。
幸い、自力下山できたので騒ぎにはならなかったが、事故を起こしたのは事実なので、簡単に経過を報告する。

■概要
・ルート:大菩薩連嶺・小金沢本谷 (沢登り)
・日程:2018/08/04~2018/08/05
・天候:両日ともに晴れ。水位も平水と思われる。
・事故場所:小金沢本谷F4
・事故内容:F4(6m)からの墜落。
・事故後の対応:自力下山

■主要装備
・沢靴(フェルト)
・ヘルメット
・軍手
・ハーネス
・8.5mm * 60m (未使用)
・フローティングロープ10m (未使用)
・ハーケン8枚 (未使用)
・アブミ (未使用)

■時系列
08/04(土)
13:00 小金沢本谷入渓
16:30 F4で墜落
17:00 F4上の河原でビバーク
08/05(日)
06:00 F4河原を出発
07:00 沢に並走する林道に復帰
09:30 小金沢公園着 (通報等は行わなかった)

■事故状況
静岡の某沢の遡行を予定していたが、沢靴を忘れたため敗退。家に戻った頃には9時過ぎだったため、近場の大菩薩の小金沢本谷に転進することにした。計画書作成などもあり、入渓は午後になったが、小金沢本谷は右岸を林道が並走しているため、いつでも撤退できるゲレンデ沢という安心感があった。

F1/F2はどちらも容易で特に問題にならない。F3(御茶ノ水の滝)は取り付いたものの、大水量に加えて上部がカブり気味で、かなり厳しい。おまけに落ちると釜に引きずり込まれそうで、突っ込む気にはなれず、戻って左岸を巻く。

事故を起こしたF4は、F3のすぐ上にある6m強の滝で、大きな倒木が引っかかっている。上部が悪そうであるがホールドが拾えれば直登可能と判断して取り付いた。まず、倒木に馬乗りになってズリ上がりで倒木の頂点に移動。そこに立ちあがってホールドを探った。水流によってツルツルに磨かれており、ハーケンを打てるリスが無い。2m程上にガバと思われるものが見えるが、そこまでが細かいので、悪いと感じる。水流の近くに細かいホールド・スタンスが拾えそうなので、スタンスが決まるか探っていたところ、水流が強まり右手・右足を剥がされフォール。登ってきた倒木と、釜の中の倒木に足を引っ掛けたり、ぶつけたりしながら釜に落ちる。釜は深く若干水流に揉まれたが、ザックの浮力も手伝って簡単に抜け出すことができた。
釜で全身を洗濯されたせいで軽い目眩がしたが、すぐ収まり、水から上がって大きな外傷は無いことを確認。左足が痛いが、辛うじて歩けたため、F4を左岸から巻いて、滝上の小さな河原で休む。まだ明るかったが、この足で日没までに車に戻れるか微妙だったので、水も薪もある、この河原で一晩過ごすことを決める。湿った薪で着火に苦労したが、どうにか安定した火になり濡れた体も乾かす事ができた。

翌朝になっても、歩くと痛みがひどく、渡渉は四つん這いにならないと不可能なくらいである。遡行を継続できる状況ではないので、撤退を決める。痛みの主原因である左足首にテーピングを厳重に施し、痛み止めを服用。ノコを使って杖を作り、F4河原を後にする。杖を使ったり、這いつくばったりして、斜面を上がると一時間弱で林道に復帰。あとは、2時間以上歩いて車を停めた場所に戻った。

■事故の結果
事故翌日に通院。骨折は無く、左足首・左膝の捻挫。
夏休みの山行はすべて流れ、約束してパートナーに迷惑をかけてしまった。

■事故の原因
ロープを出せない状況で、滑落の可能性がある滝に取り付いたこと。
F4は支点が取れない滝だったが「それ程高さが無く、下が釜なので落ちても大丈夫」と思い、安易に取り付いてしまった。
以下のようなケースでは墜落そのものが非常に危険なので、安易に取り付かず高巻くべきだった。
(a) サラシ場になっており、水中から浮上できない
(b) 大水量の沢で下流まで流される
(c) 倒木や岩などの障害物がある (今回のケース)

■所感
事故を起こしたのが、林道が平行している特殊な沢だったので、容易に下山できた。
山奥の沢だと無理は避けるが、丹沢、大菩薩、秩父といった近郊の沢は、可能な限り直登を試みる傾向があるので、登れるかどうかの判断には慎重さが必要だと思う。

F4登攀時にロープは出せなかったが、今回のような落ち方をした場合、墜落を止めると却って危険な状況に陥る場合もある。
水流に引き込まれて墜落した場合、ソロシステムではロックを解除できないと溺死する可能性があるためである。二人以上であれば、ビレイヤーに流してもらうことも出来るが、ソロシステムの場合、落ちた後に水流を浴びながらのロック解除または登り返し、はたまたロープを切断しての脱出という状況に陥る。支点の位置や滝の形状によっては、墜落を止める事が安全を担保することにはならない事は意識しておく必要があるだろう。

当たり前だが、単独遡行は、墜落しないのが大前提の遊びである。沢登りは水に近いラインの遡行が一番綺麗だと思うが、墜落しない安全マージンをかなり残した上で、高巻きの判断を行う必要があった。

 

錫杖岳 前衛フェース 黄道光、1ルンゼ

2018年7月14日、15日
野澤、河合(記)

海の日3連休は毎年天気よくないけど、今年は珍しく晴れるという予報。でも暑くなるらしいので、多少は標高の高い錫杖岳に野澤さんと行くことに。狙うは、2年前の宿題、黄道光5p 5.11c。前回は注文の多い料理店登って余った時間に1p目だけトライしてとても苦労したけど、今回はどうなることやら。

7/14
前夜入りして3時間睡眠。5時10分出発。同日程で錫杖入りする薄田さん川上さんパーティはまだ爆睡中。テン場は2番乗り、まったり支度して、8時35分、左方カンテ1p目登攀開始。一番乗り!

1p目(左方カンテ):Ⅲ級 35m(リード:河合)
前来た時より、豪雨の影響か明らかに荒れてる。正規終了点の手間5mの立木でピッチを切る。

2p目(黄道光1p目):5.11a 30m(リード:野澤)
側壁に微妙に遠い間隔でぺツルボルトが並んでる。野澤さんは出だしにカムを決めて壁に取り付いたところ、フットホールドがモゲた!少し下から取り付いてしまった模様。その後核心のコーナーレイバックを行きつ戻りつ、意を決して吠えながら突撃!残念ながらテンション。その後わかり辛いスラブをこなして終了点へ。1時間半位の粘りのクライミング。コーナークラックは湿気ていたとのことで、カムは出だしだけ。
セカンドの私はユマール。最初から空中ユマールでしんどく、普通にフォローした方が楽だったかも。

3p目(黄道光2p目):Ⅱ級 20m(リード:河合)
テラスへ向けて草付トラバース。

4p目(黄道光3p目):5.11c 55m(リード:河合)
本ルートの核心ピッチ。ガチャ大集結!♯0.3~3のカム2セット+♯0.2、1、2、ナッツを揃えて万全と思ったら、♯0.4を自宅に忘れて1個しかないことに気づく。
それにしても暑い!2p目のユマールで汗だく、20分位レストしてからスタート。

出だしはアツアツに温まったハングを越えるけどホールドわかり辛い。カムをセットする間に腕が吸われ、気合のデッドポイントからの癒しのクラック!と思ったら、「びちゃびちゃじゃね~かよ!」思わず叫んでしまう位には濡れ濡れクラック。思わずテンション!と叫びそうになったけど、2p目の野澤さんの魂のクライミングを思い出し、寸前のところで口を噤む。
その後、びちょ濡れのクラックをだましだまし登って、サンシャインクラック入口のハング下でレスト。この間、何回悪態ついたかわからない。憧れのルートがアツアツビチャビチャだなんて、愚痴りたくもなるもの。(当日、左方カンテを登っていた皆様におかれましては、汚い言葉の数々、すみませんでした。)
レスト後、第2核心となるハングに突っ込む。プロテクションの選択を誤り腕がパンプ、最後はサンシャインクラックに届いた左手フィストがすっぽ抜け、涙のフォール、やっちまった…しばし呆然。
その後、魂が抜けてしまい、ノロノロとアツアツのオフセットしたサンシャインクラックを適当にレイバックでこなし、またボルトに戻るとムーブ悪く余裕のテンション。ここが最大核心か~こりゃ条件良くてもオンサイト無理だ~。しかもガバホールドがヌルっとしたと思ったらツチガエルが飛び出したり。
40m地点付近には両手放せるテラス。でも正規の終了点はまだ10mちょっと登らないといけない模様。ろくにカムないんですけど・・・レッジトゥレッジという点でも、ここでピッチ切っていいんじゃね?という誘惑にかられるも、頑張ってちゃんとした終了点のある扇岩テラスへ。2時間近くかかってしまった。後続のパーティの方(1p目で撤退した模様)、すみませんでした。
野澤さんは最初フリーを試みるも、荷物の重さに耐えかね、ユマールに切り替え。55mの斜上クラッククリーニング、お疲れ様でした。

5p目(黄道光4p目):5.11c 40m(リード:野澤)
鉄人の体力を誇る野澤さんの調子が悪そうだ。軽い熱中症かな。扇岩テラスでじっくり休んで水飲んだ後でトライ。セカンドがユマールの場合は、ユマールからのリードはしんどいので、リード固定の方が良かったかも。
最初は8つのボルトが程々の間隔で並んでいて、その後クラックに入る所が悪そう。野澤さんはアメリカンエイドに切り替えてトップアウトに専念していた。後半のハング手前のコーナーも悪そう。ハング部はボルトが噂通りたくさん打ってあって、下の方とコンセプトが異なるように感じた。このピッチも2時間近くかかってしまった。

河合はユマール。1p目よりは傾斜ないから大分楽と思ったけど最後はやはり空中ユマール。終了点に着いたら17時と時間かかり過ぎ、丸一日使ってしまった。
まだ修行が足りないということですね。精進します。
下降は60mロープで懸垂3回。新品ロープがスパゲッティになったり、スタックしかかったりで大分時間かかってしまい、アプローチも迷いかけ、結局ヘッデン出して久々の残業になってしまった。テン場帰着は20時過ぎ。

7/15
当初は、2日目も個別ピッチのRPをかけて黄道光、または北沢フェース右ジェードル~上部錫思杖戯と思ったけど、黄道光の核心5.11cの2ピッチは条件的にRPは厳しいこと、上部錫思杖戯は昨日、遠目に濡れ具合が酷いことを確認していたので、昨日薄田さんと川上さんが登ったというLittle Wing 5.10cに行くことにした。
そもそも起床が6時とやる気なく、取り付きの1ルンゼでは当然の順番待ち、しかも先行パーティのリードが派手に10m位ぶっ飛んだりして(尻打っただけでどうやらほぼ無傷だった模様。よかった。)スタートしたら既に9時40分。

1p目(1ルンゼ)Ⅳ級、Ⅴ+ 50m(リード:河合)
終了点の位置を覚えていたので、トポの1p目と2p目をリンク。途中、手前でピッチ切った先行パーティが進むのを待っていたら、綺麗なランを見つけて癒された。

2p目(1ルンゼ)Ⅳ級 40m位(リード:河合)
野澤さんはⅤ字状岩壁のすぐ手前でピッチを切っていた。後でわかったことだけど、正規?のぺツル終了点は側壁側にあったらしいけど、Little Wing入るつもりだったので問題ない。

3p目(1ルンゼ)Ⅳ級、Ⅳ級(ライン違って多分Ⅴ級)45m位 (リード:河合)
またリンクして、Ⅴ字左のルンゼ~大テラス~ボロボロのフェース。ボロボロのフェースはプロテクション取り辛くて、岩も脆くてちょっと緊張。掴んだアンダーがもげかけた。ハーケンとスリングの残置のある小レッジでハンギングビレイ。

4p目(Little Wing 1p目) 5.10b (リード:野澤)のはずがトラバース15m
さて、Little Wing入口に着いたぞ~と見上げると、そこにはびちょ濡れの壁、滴る水・・・こいつはやべぇ、ということで早々に挫折、1ルンゼのラインに復帰を試みてトラバース。
(後で詳しく聞いたら、薄田さん、川上さんパーティも別のラインでエスケープしたとのこと)フォローの河合は濡れ手で滑って初めてカムを落とすも、幸い大テラスでストップ、先行パーティに下降時拾っていただきました。ありがとうございました。

4p目の続き(1ルンゼ復帰中、10m)(リード:野澤)
先行パーティが懸垂下降していたので待ってから、正規1ルンゼ5p目終了点のぺツルの終了点に復帰。

5p目(1ルンゼ)Ⅳ級30m位(リード:河合)
前回1ルンゼ登った時はLittle Wing 5.10bのラインを登ったので、正規ラインは今回が初めて。出だしのプロテクション取れない所にはぺツルが2つ打ってあった。後はルンゼと見せかけてカンテ登りを楽しんで、適当に終了点へ。ロープの流れが悪い。Ⅳ級よりは悪く感じた。

この時点で14時。順番待ちやら、ルート復帰やら、暑さでだるいやら、大分時間食ってしまった。アタックすればLittle Wing は登れるだろうけれど、本日帰京の野澤さんの明日の仕事がヤバイことになってしまう。ということで、モチベーションも上がらないこともあり(疲れてたんだと思う)、無理せずここで敗退することに。下降は懸垂4ピッチで、15時に取付、テン場で薄田さん、川上さんパーティと合流し、恒例の早足をこなし(ガチャ担いでテン場から登山口まで30分は、とばし過ぎてると思う)、汗だくへとへと下山。
帰京する野澤さん川上さんを見送り、薄田さん、河合は居残り。

7/16
薄田さんが西穂高岳にハイキングに行くというので、私も付き合ってまったりハイキング。標高高くても日差しがあるとやはり暑かった。

今回は念願の黄道光の完登をかけて頑張ってみましたが、結果的には中途半端になってしまいました。オンサイトを逃して悔しかったけれど、憧れのサンシャインクラックをフリーで(テンション交じりだったけど)こなせたのは嬉しかった。実力が足りなかったということで、また機会あれば練習してトライしようと思います。でも、もう真夏には行かないもんね・・・

南ア 光岳南面の沢

2018年7月13 ~ 16日 (3泊4日)
中和(単独、記)

大井川水系の最大支流・寸又川。
南アルプス深南部と呼ばれる山域を構成する一大渓谷であり、その支流には無数のゴルジュや大滝を秘めている。この流域の愛好家としては、源流にあたるリンチョウは、いつか遡行したい沢の一つであった。

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(1) 概要

・期間:7/13 ~ 7/16 (3泊4日)
・対象:信濃俣河内・中俣 (遡行)、寸又川・椹沢(下降)、寸又川・リンチョウ(遡行)

(2) コースタイム

D1: 畑薙ダム(05:18) → 西河内出合(08:03) → 三俣(10:22) → 百俣沢出合(14:15) → 幕営地(17:10)
D2: 幕営地(04:42) → 木積の滝(06:05) → 稜線(09:24) → 椹沢出合(16:16) → 幕営地(16:30)
D3: 幕営地(04:45) → リンチョウ出合(05:04) → ダルマ沢出合(08:33) → オニクビリ沢出合(13:29) → 稜線(15:48) → 幕営地(16:30)
D4: 幕営地(05:00) → 光岳(05:15) → 三俣(09:50) → 西河内出合(11:01) → 畑薙ダム(13:31)

(3) 山行記録

7/13(金) 晴れ

信濃俣林道入口に駐車し、自転車で林道終点まで移動。
吊橋横のガレをフィックスロープを利用して畑薙湖に降り立つ。
いきなりバックウォーターの泳ぎだが、足が付かないのは10m程度で、後は湖水の横を歩くことができた。

信濃俣河内は、三俣までは基本的に何もない沢で、河原歩きと渡渉に終止する。今回は竿を持ってきたので、西河内出合から釣り上がりながらの遡行。オカズの調達の成功したので、三俣で竿は仕舞う。

中俣は出合からゴルジュとなり、少し進むと1mにも満たない小滝。
なるべく水流沿いに遡行したいので、水流左横を狙うが、釜が洗濯機になっており、渦に体を引き込まれて、水から這い上がれない。
何度かやっても突破できず、左岸を巻いた所、この上にも大水量の5m滝と渦巻いた釜が見え、まとめて巻いた。両岸立った地形はさらに続くが、特に問題になる場所はない。

右岸から比較的水量の大きな沢を2本見送ると百俣沢出合。中俣と百俣沢が1つの釜に落ち込んでサラシ場を形成しており、水流沿いの遡行は不可能。左岸の枝沢から巻いて懸垂で滝上に降り立つ。
この滝上から始まるゴルジュが第二の核心で、5m以下の滝2本をヘツリ気味に抜けると、ハング気味の5mの滝。右岸の壁を空身で上って高巻き、荷揚げしたのち懸垂で落ち口に戻れば核心は終了。
この先も10m内外の滝が連続するが、難しいものはない。シャワーを交えて楽しく越えられる。標高1600mあたりで、左岸に台地を見つけたので、ここで幕とした。

7/14(土) 晴れ

幕営地を出てからも延々と5m前後の滝が続き、そのフィナーレが木積の滝。
どんな由来か不思議な名前だったが、一目見て納得。流木が積み木のように重なっており、実に即物的な名前である。

この滝を右から巻くと、イザルヶ岳からの沢と当量で分かれる。
左側に入ると、両岸が崩落地のようになり、やがて完全な崩落壁の様相を呈する。
滝は容易に登れるものが多いが、崩落地の中である故に岩が脆く、快適とは言い難い。最後の二俣直下の小滝を巻こうとしたところ、急なザレで下降が困難。
大高巻きに追い込まれたが、二俣左の沢に復帰し、水涸れまで詰めると稜線は至近。藪こぎも無く柴沢への分岐点の真横に出た。

ここからは椹沢を下降路にとるため、柴沢登山道を標高2150mあたりまで降りてから入渓。
この沢の上流部は、小滝が数本ある程度で、全く平凡な渓相である。
二俣を過ぎると断続的に小ゴルジュがあり、数回懸垂したが、遡行であれば、ほぼ全ての滝が水流横を登れるだろう。
ゴルジュ群を抜けると、開けた河原が暫く続いたのち、寸又川本流に合流する。

本流からは、竿を出しながらペタペタ歩いて行くと、大量の流木が打ち上げられた河原を発見。
細いものから太いモノまで何でもある上、全てカラカラに乾いている。こんな国宝級の薪が、数百本転がっているのだ。最高の宿泊地なので、釣り竿はほっぽりだして、キャンプファイアに励んだ。

7/15(日) 晴れ

宿泊した河原のすぐ後ろが林道なので、リンチョウ出合まで林道を移動。
すると突然、上からの激しい落石音と共に、若いメス鹿が10mくらい先に落ちてきた。鹿氏は、痙攣するのみで全く動けないようだが、私に出来ることは何もない。

リンチョウ下部は、広葉樹の中に穏やかな渓が続けた後、リンチョウ滝に出合う。正面から見ると難しそうだが、近づいてみると水流右が容易。空身で登って荷揚げした。
リンチョウ滝の上からは巨岩帯となるが、その上は明るく開けた河原となり二俣(ダルマ沢出合)。ダルマ沢を下降してきたと思しき2人パーティが見えたが、先に行ってしまった。

二俣を少し行くと、核心と思われる第一ゴルジュ。先行パーティが右岸を巻いているようで、落石や倒木がゴルジュ内に降り注いでいる・・・・
巻く方が早そうだが、主目的である沢の核心を安易に巻くのは考えられず、ゴルジュ突破を試みる。1本目の3m滝は容易で水流右を直登。2本目の5m滝は厄介で、右からの突破を試みたが、泳ぎもヘツリも何度やっても通用しない。やむを得ずロープを出して左側を攻める。左壁をアブミで2m程上がり、バンドをトラバースして何とか突破。3本目の6m滝は右側からフリーで超えた。

その先の第二ゴルジュは、5m滝をかけているだけの小規模なものだが、明らかに直登困難なので右岸の枝沢から巻く。
これで、この沢の核心は終わり。水量が多いオニクビリ沢を見送ると、滝も全く無くなり、2100m付近からルンゼ状となり左右に分かれる。
傾斜の緩い左側に入ると、2200mくらいで水流が無くなり、急なルンゼとなって白い岩峰に詰めあげている。これを直登するのは骨が折れそうなので、左側の藪尾根を少し登ったところ、加加森からの登山道に合流できた。
テカリ手前の適当な場所まで登ってビバーク。

7/16(月) 晴れ

出発して15分程でテカリの山頂。光小屋もテン場も賑わっており、それまでの静寂な世界が嘘のようだ。
人が多い登山道で畑薙まで行くのは嫌だったので、イザル尾根を下って三俣を目指す。軽量化のため水を殆ど捨てたので、暑さで気が遠くなったが、ヘロヘロになって三俣に辿り着く。地元の3人パーティが休んでおり暫し歓談。
後は来た道で畑薙に戻るだけ。

 

愛鷹連峰・高橋川

2018年7月8日
中和(単独、記)

寸又川支流の遡行を計画していたが、大井川上流部の週間雨量は軒並み400mmを超えており、お話にならない。転進先として、愛鷹連峰・高橋川に行くことにした。
地図を見て、水流によって侵食された地形にゴルジュを秘めているのではないか、と期待してのことである。

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コースタイム:
休場遺跡(06:10) – 二俣(07:40) – 左俣水涸れ(11:08) – 右俣10m滝(12:10) – 二俣(13:10) – 休場遺跡(14:15)

行動記録:
休場遺跡の辺り作業道を下って入渓。
流程が短い川なので水量は少ないと思っていたが、中々どうして水量豊富。足が付かない淵もあるが(※)、二俣手前まで基本的に平凡。忙しい人は右岸の作業道を使えば二俣までワープできる。

両岸の壁が立ってくると、名刺代わりの3条4m滝。これを越えると二俣に出合う。
右俣は樹木に覆われて陰鬱な雰囲気で、左俣はゴルジュの様相。計画通り左俣に入ると、川幅が1m程にまで圧縮されたゴルジュとなる。極度に狭まった水路内の2つの小滝を容易に超えると、川幅が少し広がり10m近い直瀑。右壁は登れる可能性があるが右岸を小さく巻く。本格的なゴルジュはここで終わり。

ゴルジュを抜けると、ほぼ等量で支流を分けるため、早くも水量が減少を始める。
6mの直瀑を左側バンドから直登すると、滝上からはゴーロとなり、伏流を繰り返すようになる。時々思い出したように水流が復活し、ナメやら小さな淵が出てくるが、基本的には歩くだけ。

標高900mくらいまで上がると、それまでの薄汚い茶色の凝灰岩から、火成岩の柱状節理となる。水量も本格的に復活し、玄武岩の綺麗なナメを構成するが、惜しい事にすぐに水流が無くなる。愛鷹山と馬場平のコルに至る沢は水流があるので、こちらを詰めて愛鷹山に登るのがスマートかと思う。

今回は右俣の渓相も見ておきたかったので、適当な所から尾根を乗り越して右俣に移行する。だが、期待に反して右俣は何もない。オーバーハング気味の観賞用の10m滝が1本ある他は、ナメとゴーロが続くだけの穏やかな渓相である。二俣まで下降した後、右岸の作業道に這い上がり休場遺跡に戻った。

※暑かったので泳いだ。両岸ともに歩けるので、理由が無ければ水に浸かる必要はない。

 

トップガン記録

記:河合

風邪引いて週末のトレーニングが潰れてしまった。そこでふと思い立って、最近登った1本のルートについて、記憶が風化する前に記録しておくことにした。山行記録でもなし、特に意味のあるものでもないけど、このルートをいつか登ろうと思っている人や、既に登った人の目に留まって、思いを共有できたなら嬉しい。

クライマーなら誰でも、自身にとって特別な1本があると思う。それは原点となったルートかもしれないし、苦労しても登れなかったルート、或いは登れた最高グレードのルートかもしれない。
私にも、そんな特別な1本がある。そのルートは、瑞牆山カサメリ沢の奥にひっそりと聳えている。名前は「トップガン」。グレードは5.13a。

このルートをどこで知ったか、実はよく覚えていない。どこかで「激しいランジのルートがある」と聞いたのかもしれない。ある日、ひょんなことから写真を目にし、心を奪われた。当時、手の届くルートではなかったので登る対象として見られなかったけれど、「いつかは登りたい」ルートとして意識するようになった。
トップガンを登るためには、当時、フリークライミングの力を大幅に向上させる必要があった。目標は遥か彼方だったけれども、時々本チャンに行きつつ、近場のゲレンデで登る日々が続いた。
その後年が経ち(と言ってもそんなに長くは経ってない?)、5.12も少し登り、遠いながらも視野にトップガンがちらついてきた2017年5月のこと。昼夜関係ないブラックな仕事で体が壊れてしまい、2ヶ月以上に渡り療養を余儀なくされた。
その後8月に仕事に復帰、遅れてクライミングも再開した。再開1本目はパートナー達に混ぜてもらいクレイジージャム5.10d。弱り切った体でワイドなんて登れるわけもなくテンションの山、己の無力さに溜息。でも、体力的に「フリーのゲレンデなら何とか登れる」ことがわかっただけでも収穫だった。
思い返せば、倒れてしまったこともあり、「俺はまだ登れる!」という、自分の中で確固たる証拠が欲しかったのかもしれない。クレイジージャムにコテンパンにされた翌週、無謀を承知で、トップガンにトライするためカサメリ沢に向かった。

以下はトライのメモ。ムーブの記載などあるので、オンサイト狙う人は見ないことをお勧め。

1日目(8/26):2便 アプローチは1撃。その後右薄カチはテンション後取れたが、以降ムーブできず、絶望感漂う。
2日目(9/3):3便 右薄カチ→足を棚に上げ→右ポッケ→足をガバに移動→左ポッケ取りはテンション後繋がる。下ランジもテンション後初めて止まるも、上ランジ止まらず。
3日目(9/10):4便 下ランジ発射まで繋がる×1。上ランジ初めて止まり2テン。
4日目(9/24):4便 下ランジ発射まで×2。上ランジの足位置上げたら成功率上昇。
5日目(9/26):3便 下ランジ発射まで×1。
6日目(9/27):3便 下ランジ発射まで×3。
7日目(9/30):3便 上ランジ発射まで繋がり1テン×1。
8日目(10/1):5便 上ランジ発射まで×3。
9日目(10/8):3便 雨後でヌメリ酷く何もできず。
10日目(10/9):3便 上ランジ発射まで×2。上ランジ止まりかけた。角度修正。
11日目(10/11):5便 上ランジ発射まで×3。前々日のヨレが残っていた。
12日目(11/3):2便 下ランジ発射まで×1。気温8℃で寒くて無理。シーズン終了。
13日目(4/21):2便 ガバは水溜りで雑巾絞り後RP。最後のランジはダブルダイノ。

ほとんどムーブの起こせなかった初日にめげず、可能性の光が見えた9月下旬から10月上旬にかけて、何かに憑かれたように打ち込んだけれども詰め切れず(無理言って付き合ってもらったパートナーにはほんと感謝)、その後は長雨でシーズンが終わってしまった。
その後5ヶ月半に渡り撮影した動画で反復するなど悶々とした日々を過ごした後、4月の季節外れの夏日に、ゲート閉まっているのに居てもたってもいられず出撃。8ヶ月(正味2ヶ月ちょっと)、13日42便(下ランジ54回、上ランジ68回)をかけて完登した。
正直、このトライの日々が楽しかったかと問われると、辛い記憶の方が多い。とにかく必死でトップガン以外ほとんど何も登らなかったし、初めは全くムーブが起こせず、テンションかければ簡単に止まるようになったランジが、繋げると全然止まらない。指皮も毎週のようにベロンチョしてロープは血染め。最後のランジに辿り着いてからも9回フォール。無理かもと、弱気になったこともあった。でも、取り付きから見上げたトップガンのかっこよさは筆舌に尽くしがたく、トライは止められなかった。


第1ランジ。ガバ右端を狙うと飛距離よりもカチを瞬間的に抑える力が問われる。

世の中には私なんかよりずっと、ずっと通い詰めて1つのルートを落とす猛者達がいて、この程度で音を上げるなんて全然甘いと思われるかもしれないが、冬で5ヶ月半空白が挟まったこともあり、私には結構堪えた。暫くこんなクライミングは勘弁願いたいけれども、また燃えるようなルートに出会えたら通う日が来るかもしれない。苦労した分、登れた嬉しさはひとしおだったし、何より、あんなかっこいいラインをフリーで登れる、こんな爽快なことはない。ルートを生み出した瑞牆の自然と、ラインを見出し開拓した内藤氏に感謝。そして、何度となくビレイしてもらい、一緒にトライもしてくれたKさん、(かなり無理やり)付き合ってもらった小渕さん、野澤さん、川上さん、川端さん、現地などでアドバイスや応援頂いた皆様、ありがとうございました。

[ルートの構成]
出だしはNDDと共通で、2ボルト目から右に分かれる。前半はガバの前傾壁を右上トラバースしながら5ボルト分進み、ガバのレストポイントに入る。ここまで5.10c程度のアプローチで易しいけれど傾斜があるので腕は張る。トップガンにトライする場合はアプローチでアップするのがお勧め。(私は近くのトレビの泉5.10aがいつもアップで混んでいるので、いつもトップガンでヌンチャクがけ兼アップしていた。)その後、体幹を酷使する3手(リーチあれば2手)をこなした後、棚ガバの頂点か右端に右手ランジ。頂点はかかり良いけど遠く、右端は近いけどかかり悪くてレストまで一手増える(私は後者)。この4手でボルダー2級程度。その後、棚ガバでレストした後、飛距離165cm、傾斜130°位のドランジで終了点の棚ガバを止める。このランジは左手が残れば3級程度(多分)、左手が残らないと振られて宙に投げ出されるので2/3級程度(私はリーチ足りず後者。なおムーブは後者の方がかっこいい)。その後棚ガバにマントルを返して終了。ランジ部分はボルトが連打されているので、ムーブできなくてもトップアウト可能。ボルトに全部クリップする必要はないかもしれない。(クリップ間引くと破断したらグラウンドフォールするかもしれないので自己責任で。)


第2ランジ。左手がガバに残らないと右手1本またはダブルダイノで振られに耐える。

私のリーチ(170cm)では5.10c+2級+2/3級、最終ランジに辿り着くまでで易し目の5.12b、トータル5.12dと体感。私が瞬発系なことを勘案すれば、他に5.13a登ってないので比べようがないけれども、5.13aで妥当なのかもしれないと感じた。(非常に癖のあるムーブ系のルートなので、人によって感じ方にかなり差があると思う。リーチも瞬発力もある人なら5.12c位に感じるかもしれないし、使えるホールドが限定されているので身長160cm未満の人には5.13aでは収まらないと思う。)
スカイラインに向かって走る1本のライン、最後に待ち受ける激しいランジ2連発、こんな見た目もムーブもかっこいいルート、中々ないのではと思います。コロッセオの前傾壁が倒壊する日はまだ来なそうなので、カサメリの緑の中、空を舞いたい人は是非トライしてみて下さい!