明星山 P6南壁左岩稜

2002年4月29日
宮川、中嶋(記)


5ピッチ(9:00-13:00)

今回に関しては一番の核心は取り付くことでした。

まずは正面壁の前からいつものようにテンショントラヴァースで渡渉して対岸にわたり、そのあと左岩稜取り付きのあるルンゼまでへつって行こうと試みるがやはり流れが強くて敗退。

仕方がないので正面壁側から高巻きのように左上して登り始め、そのまま左岩稜に合流することにした。

途中の潅木でビレーポイントを作り、宮川さんに先行してもらい、ようやく正規の1ピッチ目の途中に出た。

1ピッチ目(5.8) 中嶋

過去に2回登っているせいもあり、トポをまったく見ていなかったため攻撃的なラインで登ってしまった。

2ピッチ目(5.9位)宮川

前傾壁をフリーのラインで登るために、ビレーポイントを少し先まで延ばしてもらったが、ランペに乗りあがるところが少し難しかった。そこを除けば4級程度。

3ピッチ目(5.12a)中嶋

ここを登るためにわざわざ宮川さんに付き合ってもらったようなもので、12aのオンサイトは厳しいと思いつつあわよくばという思いもあった。

実際にはすばらしい高度感と、埃っぽいホールドやガバにたまった砂利のおかげでテンションかけまくりで抜けるのがやっとだった。宮川さんありがとう。

セカンドザックの一番底にしまってあったアブミは出さずにすみました。

実際に難しいムーブは10手に満たないのでRPで落としやすいだろうとは思ったけど、こんなところでそういうチンケな行為をする気にはまったくならなかったのでもっと上手になってからまた来ることにする。

4ピッチ目(5.9)宮川

個人的には明星全体でも一番好きなピッチのひとつ。

丈夫そうなフレークがずっと続いて楽しめる。

5ピッチ目(3級)中嶋

たいして内容の無いピッチだが、一応の目標となっている松ノ木テラスめざしてぐいぐい登る。

この日は最終日のためここまでで終了として下降にはいる。

松ノ木テラスからは2回の懸垂下降で取り付きまで。

3ピッチ目の終了点から取り付きまでの下降はすばらしい空中懸垂になるのだけど、50mロープだとほんのちょっと足りなかった。

帰りの渡渉は上流側の岩越えの新ラインに挑戦して、見事にきわどい股下程度でわたることができた。このラインだと8級程度のボルダリングも楽しめる。

テントに戻る途中で対岸の林道から登ってきたラインを振り返ると、すごい傾斜で堅そうな岩稜が張り出していて、手足だけで登ったのだと思うと結構な満足感にひたることができました。

あんな高いところで厳しいムーブに没頭できるなんて思い出しても興奮もの。

次に来るときはこのルートだけでもいいです。

 

明星山 P6南壁・フリースピリッツ

2002年4月27日
倉田、宮川(記)


フリー・スピリッツ---------自由精神? かっこいいな~と初めてこのルートとを知ったとき思ったと思う。

このルートを知ったのは、アルパインクライミングを志すようになって間もない頃だったように思う。

そして、フリークライミングっておもしろいな~といつも思っているので、これは登らなきゃ嘘だともいつも思っていた。

で今回登れてうれしいです。

と書き始めて、記録といったほどのことも記憶してないので感想です。

岳人5月号に詳しい解説が載ってるのでルートの内容については、そちらの方をどうぞ。

そして岳人にも載っちゃったし、明星は混んでるのかなあと心配していた。

また、知り合いからも落石がひどいとか、落石で骨折した人がいるとか、残置はボロボロだとか、嫌なことばかり聞かされていたので、どうなるのかと不安もあったが、まあ、そうは言っても石灰岩。腐っても石灰岩、と勝手に岩手のフリーエリアである岩泉ひょうたんケイブを想像して、やっぱり基本はポジティブシンキングだな~と思ったりしていた。

実際は、当日朝対岸の林道からオブザベーション。

秀峰の4人の他にクライマーらしき人は見あたらない。

だいたい概要をつかみ、さらに細かく双眼鏡で見ていくと、ビレイポイントがわかる。

コンペのように1手1手のムーブまではもちろんわからない。

当たり前だけど。

林道から小滝川へ降りていく。

第1の核心小滝川の渡渉。

中嶋さんが2回ほど場所を変えてトライするが、渡れずに戻ってくる。

次に瀧島さんのチャレンジ。

川の上流から確保し、下流でながされた場合のロープを引いて、深みへと進んでいく。

と水量が腰あたりまできたとき、体が持ち上がり流される。

が、半泳ぎ状態でじりじり対岸へ近づいていき10数メーター流されて渡渉成功。

これが漢(漢と書いて男と読む)だ、と心の中で感動する。

残りのメンバーは、瀧島さんが対岸にカムでフィックスしてくれたロープにテンションしながら渡渉。

水量は腰。

フリースピリッツのルート自体は、状態もよく快適に楽しめた。

残置は、しょぼいピトンなどだが、エイリアンが結構使える。

5Pめを倉田さんがリードするが、梅干し岩から右下にトラバースするところが、一番印象に残っている。

スラブをフリクションで足を開いて下がり気味にトラバースするところで、緊張した。

自分的には核心だった。

ルート全体の印象としては、困難なクライミングではなく、純粋にクライミング自体を楽しめるいいルートだと思った。

やっぱり他のクライマーがいなくて貸し切り状態で、天気も良かったら。

左岩稜でクイーンズ・ウェイチームと合流してトラバース道を下降。

目印の松の木まで出ると赤テープがしっかりついている。

キャンプ場に戻り、翌日のルートをオブザベーションして、街へ食事と買い出しに。

五洋水産の隣の食堂で赤ムツ唐揚げ定食を食べ、マックスバリューで買い物してテントに戻る。

アルパインクライミングしつつこんな生活ができるのも明星のよいところでしょう。

タイム
キャンプ場08:30–09:30取付10:00–15:30終了–17:00キャンプ場

 

明星山 P6南壁直上ルート(敗退)

2002年4月29日
瀧島、倉田(記)


先日までで結構疲れてしまった私は(本来行く予定だった)5月ルートまでの渡渉やナチュプロオンリーで行く自信が無く、瀧島さんと相談して直上に変更することになった。

渡渉を瀧島さんが毎朝先頭に立って渡り切ってくれる。

テンショントラバースで対岸に渡って、準備をし始めるとなんとフラットソールを車に忘れてきてしまった。

どうも駄目な気分になってくる。

仕方ないので再度渡渉をして車に取りに行こうとしたものの、数回試して2回ほど流され、対岸に行けない。

川の流れが少し蛇行しているようで逆からのアプローチは厳しかった(単に渡渉が下手なんですが)。

とても優しい瀧島さんは(あきれられて?)おれのフラットソールを使っていいよと言ってくださった。

気を取りなおして、最初のピッチを登ることになった。

2ピッチ目のビレイ点が右と左に2つ見えるどっちだろうかと悩んだ挙句、左だろうと決める。

それに向かって登って行くが、途中からナチュプロしかランニングが取れないのでなんか違うなあと思いつつ怖い思いをしてビレイ点に着く。

瀧島さんにフォローで来てもらったけど、違うようだと。

確認のため、瀧島さんに次のピッチを少し登って頂いて確認してもらう。

結局、違うと断定。

こんな時はさっさと敗退しようと河原まで降りた。

河原から、よくルートを観察してみると右のビレー点が正解だった。

今回、(いろんな意味で)駄目な私のせいで瀧島さんに迷惑を掛けてしまって本当に申し訳有りませんでした。

しばらく、ひなたぼっこして、渡渉の練習をして帰りました。

反省。

 

奥穂高岳 南稜

2002年4月29日
櫻井、森広、池﨑(記)


今回はお盆休みの初心者3人シャモニ組のためのスキルアップも兼ねて岳沢でベースを張ることとなった。

昨日の明神岳は雪こそ無かったのものの天気も展望も良くとても楽しかった。

そんな明神岳南西尾根を登りながら櫻井さんに「南稜行きたいっす」なんて話をしていたら、早起きできて天気も良くて明神岳南西尾根が一日で片付いたので2日目にして南稜に行けることとなった。

6時過ぎにテントから出る。

昨日の明神岳は予定通りに起きられたが、今日は寝坊だ。

岳沢小屋のテラスで身支度をして登り始める。

滝沢大滝を目指してデブリを避けながら締まった雪の斜面を登っていき、滝沢大滝手前のブッシュ帯に取り付く。

櫻井さん、池崎、森広さんの順で取り付くが、途中池崎が体重をかけすぎてホールドがぐらぐらになり、ワンポイントだけ森広さんがロープをつけて登る。

ごめんなさい。

後で気付くが、実際の取り付きは大滝手前のルンゼで、今回取り付いたブッシュ帯は実際のルートよりちょっと手前のようであった。

それでも途中に残置シュリンゲが1本あった。

その後も交互に現れるブッシュと雪の斜面をひたすら登ると、トポ(※1)でいう「3Pの雪壁」に出る。

ここは手前を右から回り込んでリッジに這い上がるが、リッジに這い上がるほんの2~3mくらいの雪壁が体感では垂直に近いものがあり緊張する。

ピッケルとバイルを根元までしっかり雪面に刺して登る。

本ルート中では個人的にはここが一番集中した。

当初はこのリッジを乗り越したところの「3Pの雪壁」をトリコニーの取り付きと考え、ロープを出したが後から見ると違ったみたいだ。

天気は快晴。

雪は付いていないのでアイゼンは外す。

全ピッチ櫻井さんトップ。

1、2P:ホールドもスタンスも豊富。2ピッチ目辺りからアルパインちっくな雰囲気になってきてわくわくする。

3P:岩が敷き詰められ安定したテラスから始まる。ここがトリコニーの取り付き。3ピッチ目はこのテラスの左端から取り付く。

4P、5P:小ピナクル群をまいて雪がついていたならナイフリッジであろうはい松のリッジを通り、トリコニーの真中の岩峰の右横でピッチを切る。

6P:右から回り込むように岩峰を越えて尾根上に出て終了。

この後は正面に見える雪壁及びその手前のナイフリッジがちょっといやらしそうだったので、ロープをつけて進むが、ナイフリッジを越えて雪壁の下まで行くと実際はそれほどの斜度でもなかったため、ここでロープを外す。

あとはひたすら広い雪の斜面を登り南稜ノ頭に着く。

反対側の涸沢も見える。

涸沢には沢山のテントが張られている。

岳沢の十数張りのテントの倍以上はありそうだ。

天気はとても良く稜線上でもほとんど風はない。

のんびり休憩したのち前穂に向けて歩き出す。

稜線上は岩稜と雪のトラバースが7:3くらいの感じか。

前穂のピークは割愛して、マッチ棒が林立しているような岩のちょっと上から適当な所を前穂高沢へ向けてトラバースする。

雪は腐ってて歩きにくくもあるが、あの斜面でガチガチだとかえって気を使いそう。

トラバースの途中のガレで、体重をかけた石が浮いてて「ガラガラッ」と落石を起こすと同時に体がスコンと沈んだ。

すると丁度一抱えくらいの岩が自分の胸元で止まっている。

先を歩いていた櫻井さんが戻ってきて手を差し出してくれたが、動くと抱えている岩が崩れそうで急には動けない。だましだまし動いて櫻井さんに引っ張ってもらって抜け出す事が出来た。

あーびっくり。ちょっと注意散漫だったか。

やがて前穂からの下りのトレースと合流して前穂高沢を下降する。

昨日、明神から見えていた急な斜面も実際に立ってみると思ったほどではないが、雪は腐っているが部分的に固い事もあり始めのうちは真下に向かってズコズコとは降りられず、しばし横を向いて降りる。

それにしてもこの沢はスキー(スノボ?)の跡がついている。

幅が結構狭い所もあるので、こんなとこよくすべれるよなぁって感心。

奥明神沢と合流する手前からは高度感もなくなり勢いづいてズコズコと真下を向いて下降する。

昨日下降した奥明神沢と合流した頃には登りの疲れもあってか腿が張っている。

でもサブザックにはアイゼンを付けるところが無いので結局アイゼンを付けたまま下降を続ける。

途中で一息ついている間につぼ足スケーティングでビュンビュンの櫻井さんに抜かれ&引き離されつつ岳沢のテン場へ。

テン場に着くと管野さんと堀田さんが居た(当然か。)。

天気も良くてのどかな一日を過ごしたようだ。

おまけに発泡酒まで担ぎ上げてくれていた。んんん~たまらんっ、と喉に染み渡るのだった。

このご恩、いつかお返ししなければ。

ちなみに岳沢小屋の名物はラーメン(¥1000)らしい。ダシから小屋でとっているとのこと。

おかみさんが「わざわざラーメン目当てに来る人もいるんですよ~。」なんておっしゃっておりました。

要所で十分に休憩も取り、天気も良くて至極快適な春山的な山行を堪能できた。

桜井さん、森広さんありがとうございました。

※1:山と渓谷社 ROCK&SNOW BOOKS アルパインクライミング

<タイム>
6:30 岳沢-9:30 雪壁取り付き-10:30 トリコニー取付き-11:50 トリコニー終了点-13:25 南稜ノ頭 14:00-16:30 前穂高沢-17:30 岳沢

 

明星山 P6南壁クイーンズウエイとクワトロ

2002年4月27日から2日間
中嶋、宮川、瀧島(記)


春の明星山 P6南壁クイーンズウエイとクワトロ

今年は2月以降がかなりの暖冬だったために、桜も記録的な早い時期での開花してしまい全国的に春は足早でやってきた。

雪の少ない春の雪山より新たな刺激を乾いた岩に求めることにした。

メンバーが4人の集まり、1日づつ相手を変えて、3日間でひとり3本登る計画を立てた。

春の明星山では毎朝の小滝川の沐浴から始まる。

秋ならば飛び石伝いに簡単に渡れる小滝川も雪解けで増水すると渡れないこともあるそうだ。

ルートの事ばかり考えていたので渡渉の事はあまり考えていなかった。

初めに中島が渡渉にトライしたがビビッて戻ってきた。

川を渡れなければ南壁は見るだけだ。

気合が入って、ロープを引張って激流を流されながらのクロールで対岸にたどり着くことができた。

後続は上流の木を支点にしたテンショントラバースで無事に渡れた。

P6南壁の場合、林道から登るルートを観察することができる。何回か南壁を訪れていても多くのルートが入り乱れているし、トラバースが多いルートが多いので下見は重要だ。いきなり取り付いてルート図首っ引きで登るよりも下見で目的物を確認しておいてから取り付かないと「俺は今どこにいるの?」こんな状況に陥りかねない。

今回も事前に壁の観察を入念にしておいた。

 

4月27日

快晴 クイーンズウエイ 中島、瀧島

スタート10時15分終了15時30分頃

このルートは87年の10月にも登っている。

その時は石灰岩の岩場の面白さと難しさを思い知った。

今回は15年ぶりだ。

前回はルート図首っ引きで大きな南壁の中を右往左往し、3ポイントA0した。

さて今回はと言えば2ピッチ目の核心部Ⅵ-でノックアウト。

情けない。

対岸の林道からの入念な下見のおかげでその後は順調にロープを延ばす。

中央バンドで大休止。

フリースピリッツを登っている倉田、宮川パーティーもほぼ同時に中央バンドへ着いた。

春の連休だと言うのにこの壁は貸し切りだ。

林道の観光客には見上げてくれる気分は悪くない。

ところで今日のパートナーの中島とは久しぶりにロープを結び合うがしばらくの間ボルダーで鍛えて以前に増してパワーアップしているので心配はない。

彼は当然オールフリーで登りきった。

さてクイーンズウエイは下部よりも上部がおもしろいように思う。

中央バンドからの3ピッチは目標物が少ないフェースにロープを延ばすが、弱点を見出すクライミングセンスが必要だ。

上部のⅥ-はなんとかフリーでこなせた。

全11ピッチ、結果はともあれ楽しめた。

久しぶりの明星、久しぶりのロングルート、乾いた岩、小さな幸せを感じた。

今度はオールフリーで登りたい。

フリースピリッツのパーティーと一緒に下る。

大岩の上の松ノ木からの下降路は以前に比べて安定したように思えた。

 

4月28日

快晴 クワトロ 宮川、瀧島

スタート9時15分終了16時30分

トップは空身、セカンドが二人分の水、食料、靴など最小限の荷物を背負う。今回はすべてこのスタイルで登った。

初日にクイーンズウエイを登って後、クワトロを観察しておいた。前日にはオールフリーに失敗しているので今日こそはと、気合を入れて取り付いた。

1P目宮川、フリースピリッツの1P目と同じで左上する草付バンドを35m見た目より難しい。Ⅲ+40m。

2P目瀧島、テラス右のフレーク状からフェース。エイリアン、キャメロットが気持ちよく効く。Ⅴ-25m。

3P目宮川、スラブの中のバンド状を左へ。ぎりぎりのバランスでさらに左のクラックを掴む。直上後ハング下を右にトラバース。絶妙のラインだ。Ⅴ+30m

4P目瀧島、頭上のハングを左から回り込みバンドをつなげて下り気味のトラバースでクイーンズウエイのビレー点へ。Ⅴ35m。

2ピッチ目から4ピッチ目まではスラブ帯の中にフレーク、クラック、バンドと見事に継ぎはぎした抜群のセンス。

5P目宮川、枯れ木テラス目指して快適に。20mⅣ+すぐ隣ではマニュフェスを登る薫嬢が悪戦苦闘していた。

6P目瀧島、左が被った凹角を登る。Ⅴ-20m。

7P目宮川、スラブを直上。Ⅲ20m。

8P目瀧島、ハング右のスラブⅣ+からガラガラの中央バンドを左上。8、9ピッチを一緒に登る。50m。

ここで大休止。水飲んで、パン食って気持ちを落ち着かせる。

5Pから8Pまではクイーンズウエイと同じラインだ。

9P目宮川、右のピナクル目指してバンドをトラバース後、凹角を登る。ⅡからⅢ50m

10P目瀧島、右下のルンゼ状へⅡ10m。

11P目宮川、ガラガラのルンゼを進みハングを左から、バンド状を右に移りクラック。Ⅴ30m。このあたりから岩がトゲトゲしてきて手が痛い。

12P目瀧島、バンドを右に回り込んでハング上のテラスへ。Ⅲ20m。

13P目宮川、ハングの間の凹角を目指してフェースを登り、その凹角を豪快に越す。さらにフェースを右上気味に登り、リッジを右に回り込んでスタンスへ。50mⅤ。コールは全く聞こえない。

14P目瀧島、いよいよ核心部。目の前のハングを右上に超えていく。ハング下でランナーを厳重に取ってから、ホールドをまさぐると意外とでかい。これなら大丈夫、気持ちを落ち着かせて確実にムーブをこなす。ハング上の安心な太さの木でビレー。すばらしい高度感の5.10b20m。

15P目宮川、傾斜は落ちるが弱点を突いてロープを延ばす。Ⅲ+45m。

16P目瀧島、易しいリッジⅢ50m

前日のクライミングで自分の体は自然の岩にも高度感にも慣れてきたようだ。前日はⅥ-を登れなかったが、今日はⅥ+をきれいに登れて大満足。ロングフリーを満喫できた。

下部のスラブ帯でのライン取りは絶品だ。すでに数本のルートが絡み合うこの壁でこんな素敵なライン残されていたなんて。ルートの内容だけならばフリーでの初登ルートのフリースピリッツ以上に感じてしまった。それほどすばらしルートだ。

残置支点は比較的少ないのでカム、ナッツ類を有効に使えて、岩は思った以上に堅い。今回は事前に林道から下見をしてから取り付いたけれど、やっぱりルート図と首っ引きだった。それでもこれだけの満足感。ちなみにルート図は岩と雪のビックウオールコメンタリーのものが使えた。みんな持っている日本の岩場のルート図はイマイチかも。

ところでアルパインルートの場合、これでもかと思うほどのモロガバのホールドは剥がれそうな気がして安心して掴むことはできません。石灰岩の明星はこの手のモロガバのホールドの宝庫です。みんなに聞いてみると、怪しそうなモロガバのホールドは避けているようです。細々とクライミングを続けてきて、自分のモロガバホールドに対する認識がきわめて正常であった事がわかりました。

 

明神岳 南西稜

2002年4月28日
森広、池﨑、櫻井(記)


岳沢を取り囲む尾根には北西側に西穂-奥穂の稜線、北東側に奥穂-前穂の吊尾根、そして南東側に明神岳南西尾根がある。

残りの一辺はもちろん上高地に開けている。

岳沢にいるときや、徳沢のあたりを歩いている時に気になっていたのがこの明神岳の尾根だったが、今回この尾根をたどることができた。

岳沢のベースキャンプを5時過ぎに出る。

昨日重荷でフーフー言っていた道をスタスタと駆け下って、標識の7番に着く。

ここからが始まりだ。

樹林帯の急登がしばらく続く。

踏み跡は明瞭、時々残雪を踏むがほとんど土の上を行く。

樹林帯が灌木帯に変わってしばらくするとフィックスの残る狭い岩稜が出てくる。

この岩場は100mほど続くが重荷や雪の状態が悪いときはロープが欲しいだろう。

今回は乾いた岩だったので難なく通過できた。

またしばらくの間ひたすら登ると森林限界になり5峰の肩の台地(約2600m)に出る。

上高地や霞沢岳の展望が素晴らしい。

整地された幕場もいくつかある。

夏に来て泊まっても気持ち良さそうだが水が荷物になりそうだ。

ここからは展望もあり風が気持ちよい。

5峰のピークを巻き4峰のピークに出る。

この尾根を歩きたいと思ったもうひとつの理由が岳人の1999年1月号に載った記録のここからの写真が素晴らしかったことなのだった。

それは豊富な残雪の斜面からグンと飛び出した量感あふれる岩のピーク。

岩溝には新雪が詰まって岩の輪郭をくっきりと浮かび上がらせモンブラン-デュ-タキュールあたりを思わせる...だったのだが、行ってみれば残念ながら残雪は少なく岩溝には枯れ草と這松が「ここは日本ですよ」と教えてくれていた。

それでも同じアングルで一応写真撮影。

3峰の登りは岳沢側に寄り気味に行く。

おおまかな岩塊の積み重なりを、手を使って登るがすぐにピークに出る。

このあたりからの西穂の稜線は素晴らしい。

また右手はるか下に新村橋もよく見える。

これまで何度も見上げた明神の稜線に立っているのが嬉しい。

2峰もガラガラを巻き気味に登ると難なくピークに出る。

垂直のアプザイレンで、ロープ、ハーネス最初で最後の出番だ。

やや古い残置スリングを選んで、ヌンチャクのバックアップをとって櫻井から下る。

出だしは気持ちの良いスラブで空中に出ている感覚が素晴らしい。

途中傾斜の無い所を歩きまた降りると40m程度で雪のコルに立てる。

続いて池崎君。

最後の森広さんはちゃんとバックアックを回収してくれていた。

傾斜の無いところを無理に一回でコルまで降りてきてしまったので回収は登り返しも覚悟していたのだが、すんなりとロープは手元まで落ちてきてくれた。

「これは祝福されているなあ」と独り言が出てしまった。

1峰もガラガラ登りでピークに立つ。

展望は素晴らしい。

南に乗鞍、焼岳、西穂、奥穂、吊尾根から前穂、徳沢など、このピークならではの賑やかさだ。

1峰から奥明神沢のコルまでは慎重さを要するクライムダウン。

浮石も多くてホールドを選びながら、になる。

奥明神沢は岳沢のベースキャンプまで一直線の高速路だ。傾斜が一様で上部からのグリセード、シリセードはちょっと怖い。

半分程度下りてからは、シリセードやスケーティングをそれぞれ楽しみながらベースキャンプに戻った。

その前にヒュッテのビールで乾杯も忘れてなかった。

久しぶりに喉がしびれた!15時岳沢ヒュッテ着。

コル状のところや尾根の東側には残雪があったが、稜線ではほとんど雪を踏んでない。

正直なところ夏山のようで拍子抜けだった。

楽しみにしていた展望は期待通り。

穂高南部の展望台としては最高のルートだった。

 

明星山 P6南壁マニフェスト

2002年4月28日
倉田、中嶋(記)


マニュフェスト 12ピッチ(9:15-17:00) 中嶋 倉田

今回の目標のひとつ、長いこと憧れていたルートでもある。

前日に双眼鏡を使って対岸からラインとビレーポイントを予習しておいたので、全体的なライン取りについては問題なかった。

ただ、偵察のときは懸垂下降用の支点が目立つので、残置スリングの無いビレーポイントについては見過ごしてしまい早めに切ってしまうことがあった(3ピッチ目の終了点)。

快適なフリーのルートという先入観があったが、ペツルなんかは全く見かけず、支点が不安な中そこそこのムーブをこなしていくのはなかなか刺激的であった。

ナチプロは有効だけど、石灰岩は表面がイレギュラーなのですわりが悪いことが多く、これもまた少し怖い。

以下ピッチ毎の概要(グレードは体感のもの)。

1ピッチ目(3級)中嶋
取り付きは新しいリングボルトが2本打ってあるところよりも、一段右上のテラスからスタートしたほうがいい。ほとんどピンが無く、またシーズン始めということもあり砂利がたまっているので慎重に行く。

2ピッチ目(5.8位)倉田
クイーンズウェイから分かれて右にトラバースする一手(一足)がちょっと難しい。

3ピッチ目(5.10b)中嶋
傾斜は強いけどホールドは堅く非常に楽しめる。トポによっては2つのピッチに分けているがラインもまっすぐなので1ピッチ分でまったく問題ない。ただ、終了点を最後のハングのすぐ上の懸垂下降用の支点で切ってしまわず、さらに8m程伸ばしたところで切らないと次のピッチがしんどくなってしまう。次ピッチで倉田さんにはつらい思いをさせてしまった。

4ピッチ目(5.10+?)倉田
途中からライン取りが分かりづらくなり、フォローした感じではこのピッチが最難に感じた。本当は左に出る部分ボルトラダーをはずれてもうさらにトラバースするのではないかと思いつつフォローしたが、正直いって判りづらかった。倉田さんの苦労がしのばれる攻撃的なラインではあり楽しめたが。

5ピッチ目(5.8位)中嶋
下部城塞を越える部分が少しもろく感じたが問題は無い。スラブの部分もロープを伸ばす。

6ピッチ目(5.7位)倉田
クイーンズウェイやクワトロとも重なる正面壁の交差点のようなピッチ。壁はわれわれ2パーティの貸し切りだったのにここでわざわざ渋滞してしまった。いいピッチだと思う。

7ピッチ目(5.10a)中嶋
上部城塞、傾斜が強い割には岩がもろくて、グレードにかかわらず最も厳しく感じたピッチだった。この辺だけ岩の質が違うようで、割れ方がチャートのようでピンもほとんど当てにならない。

8ピッチ目(4級)倉田
ピナクルを目差して右上してからまた左上していく。

9ピッチ目(4級)中嶋
トポにあるフリースピリッツと共有するビレーポイントが見つからないので、三日月ハング下の安定したビレーポイントで切る。鷹ノ巣ハングの真下になり、次のピッチのビレーにもそれほど問題ない。

10ピッチ目(5.10d)中嶋
はたしてラインがあっていたのかどうかちょっと自信がないのだけど、フリーで行けたのでいいのでしょう。洞穴に直下の垂壁にボルトラダーが右端と左端に2本あり、どちらをたどればいいのかわからず迷った挙句、ランペ右上後左にトラバースして左のボルトラダーから越える。迷った分時間をかけてしまったが、ここまできて全オンサイトを逃すのも悔しいので頑張ってしまった。倉田さんありがとう。洞穴は屋根がでかい。軒下から下を覗くと小滝川が小さく見える。

11ピッチ目(5.9位)倉田
トポでは5級たすになっているけど、迫力やプロテクション等考えてももう少し難しい気がする。迫力の天井軒下トラバースも怖いが、実はその先がもっと怖い。そろそろ気力的に疲れてくる中よくリードしてくれたなあという感じ。

12ピッチ目(4級位)中嶋
トポでは前のピッチまでしか記述が無くて、すっかり気を抜いてしまっていた分悪く感じた。なにしろ特長が無くてライン取りがまったくわからない。50mいっぱい伸ばして木のあるところまで行って終了。

このあと下降路の松ノ木まで行くのにもシーズンはじめのせいか踏み後もはっきりせず楽ではなかった(先行パーティがはまっていた)。

目標どおり全ピッチノーテンションで抜けることができたので、もう一回登る可能性は低いだろうなあ。もろい部分がおっかないし。

でも、この手のロングフリーが好きな人にはおすすめの逸品です。

 

鹿島槍ヶ岳 天狗尾根

2002年4月13日から2日間
倉田、三好、朱宮、宮川、柴田(記)


昨年もこのルートを目指したのだがその時は井上さんの調子が悪く第1クーロアール辺りでリタイヤだった。

で、しつこくそのリターンマッチ。

今年はメンバーも5人に増えた。

倉田さんは納車したてのエスティマで夜の中央道をカッ飛ばし(ところどころで150キロオーバー)八王子から3時間ほどで大谷原に着く。

途中疲れたら運転交代するよ、と言っていたのだが結局最後まで彼女一人で運転。

あとから聞いたら「交代されると大谷原に着くのが遅くなると思った」との事。

お嫁に来た日からコキ使われているようなエスティマにちょっぴり同情。

これからも倉田さんにブン回される事でしょう。

朝5時に起きて6時に出発。

林道をまっすぐ進んでいたら右への分岐をみっちょんに指摘される。

さっぱり覚えていなかったが発電所の取入口でようやく昨年の記憶が蘇る。

昨年は荒沢出合まで雪の上を歩けたのだが今年は発電所のすぐ先で雪が切れ渡渉となる。

先行の2人組はパンツ姿で渡っていた。

我々も覚悟を決めて宮川さんを先頭に渡渉開始。

明星山の小滝川で流されかけた実績を持つ倉田さんと小柄なみっちょんは本気顔で渡っていた。

(下山後に聞くとここが今回の山行の核心だったとのことでした。)

何とか全員無事渡渉を終えヤレヤレである。

冷たさでしびれた足をプラブーツに戻ししばらく歩くと荒沢出合だが、昨年快適に登った出合の尾根筋はすっかり雪が落ちて藪になっているのでしばらく荒沢を進み登りやすそうな斜面を選んで尾根に上がる。

最悪ヤブコギ数時間かと覚悟したが、数十分であっさりと藪は終り尾根上のトレースに出た。

尾根上は固めの雪が残っており割と楽チンに高度を稼ぐ。

対岸の東尾根が次第に開けて来て南俣尾根や荒沢尾根が良く見えるようになる。

風もなく暑いので柴田はシャツ1枚になって登っていたら途中から日が翳り雪が降ってきた。

第1クーロアール手前でアイゼンをつけるがザクザクした雪にキックステップが効く事が多かったのでロープは特に出さずアックスもシングルのままで第1・第2クーロアールとも通過。

第2クーロアールを越えると天狗の鼻の一角で荒沢の頭から北壁がかっこいい姿を現し暫し見とれる。

まだ12時で時間的には早いが大分雪も本格的になってきたので天狗のコルまで降りたところで雪面を整地して倉田・宮川組と三好・朱宮・柴田組に分かれて幕とする。

幕を張ってもやる事が無いので1本だけ持ってきたビールを回し飲みしたあとは「山岳しりとり」をして過ごした。

「け」と「る」で終わる事がやたら多かった気がする。

てな事をしているうちに天候はすっかり悪化し時折強く吹雪いている。

まあ翌日は良くなると聞いていたのでそれほど心配しなかったが就寝前のトイレもタイミングを見てゆかないと雪まみれになる程だった。

尚、夕食は宮川さん担当の「半熟卵入りレトルトカレー」

だったがなかなか美味でございました。

翌日は3時過ぎに起きて5時に出発。

左手のリッジ沿いに進むがⅢ程度の岩で一度だけロープを出した。

倉田さんがリードしみっちょん・朱宮さんはアッセンダーで登り最後に宮川さんと柴田がフォローする。

ここを過ぎると荒沢の頭まで展望が開け、気持ちの良いリッジを越えて荒沢の頭に着く。

東尾根にも数パーティいたが我々の方が先に着いたので北峰までの新雪のリッジは我々がトレースを刻む事が出来た。

みっちょんラッセルお疲れさま。

北峰着7時45分。

剣岳があちら側に浮かんでいるのが見える。

のんびりしたい所だが飛ばされそうなくらい風が強いのでほとんど休む事なく南峰を目指す。

南峰でも相変わらず風が強いので写真を撮り終えるとすぐに下降にかかり布引山を過ぎ冷小屋の手前の樹林帯脇でようやく休みレーションなどを食す。

途中鎌尾根を下るパーティがいた。

ここから先赤岩尾根分岐までは足が潜る上に、アイゼンがすぐ団子になり結構消耗。

赤岩尾根の分岐で斜面をトラバースするところもアイゼンがすぐ団子になるので往生した。

少しだけ赤岩尾根を下ったところで右手の西沢の斜面をのぞきこむと何とか降りられそうだったのでアイゼンを外して西沢へ下る事とした。

休憩中携帯が通じるかな、と在京の瀧島さんに電話したらちゃんと通じた。

西沢への下降は最初は後ろ向きで下り斜度が落ちたあたりからはシリセードで「イヤッホー!」と一気に斜面を下る。

上を見上げるとみんな喜色満面で滑り落ちてくる。

歩きとシリセードを交え1時間足らずで北俣本谷と西沢の出合まで下った。

疲れているときには拷問のように思える赤岩尾根を下らずにすんで良かった良かったである。

北俣出合から大谷原までは林道を1時間ほど。

所々荒れていたが雪解け水の流れる音は軽やかで春の息吹が感じられ何となく気持ちいい道のりだった。

帰路薬師の湯でさっぱりして中央道を東京に向かって戻る。

嫁入りしたてのエスティマを気遣い私は130キロ程しか出しませんでした。

【タイム】
4月13日 大谷原 6:00→ 第1クーロアール10:00→ 天狗の鼻12:00 → 天狗のコル 12:15

4月14日 天狗のコル 5:05 → 北峰 7:45 → 南峰 8:20 → 赤岩尾根より西沢に下る 11:00 →
北俣谷出合 12:00 → 大谷原 13:15

 

八ヶ岳 旭東稜、権現岳東稜

2002年3月30日から2日間
三好、柴田、池﨑(記)


今回は柴田さんに誘って頂き、三好さんと3人で八ヶ岳の旭岳と権現岳の東稜に行く事となった。

柴田さんと三好さんは先週赤岳東稜を登っており、今回は「八ヶ岳東稜シリーズ」

の完結編という事らしい。

 

3月30日

八ヶ岳・旭岳東稜-ツルネ東稜

前日、雨の国立駅を車で出発して清里駅で仮眠。

清里までずっと雨が降っていて「明日はどうなることやら・・・」と思いながら寝たが朝には雨はなんとか止んでいた。

駅を車で出発して5時過ぎに林道の二股から歩き始める。

しばらく行くと沢沿いにでる。

途中何回か徒渉があり、雪の上を水が流れている所もあり絶対落ちたくない感じだ。

出合小屋到着後、不要な荷物をデポしてヤッケや登攀具等を身に付け7時過ぎに旭岳東稜へ向け出発する。

最初はワカンを使っていたが、途中の樹林の中のやせた尾根の岩稜の下りが自分にはちょっとやばそうだったのでアイゼンに替える。

柴田さんはワカンのまま、三好さんはワカンとアイゼン併用で歩いている。

樹林帯のやせた尾根をしばらく登り、ちょっとした木登り気分の急な尾根を登り5段の宮の取り付きにつく。

ここまで来て気が付けば樹林帯を抜けて天気は快晴。

柴田さんはここで装備を身に付ける。

10:45に5段の宮に取り付く。

5段の宮を全て柴田さんトップ、最終ピッチを三好さんトップで登る。

1ピッチ目の出だしの一手を登り右上の草付きに立ち上がった所で、次の一手が取れずいきなり消耗してしまいそうになる。その後も自分には結構渋い所が多かった。

どうにもならずダブルでアックスで強引に上がったりで、ごまかしながらうやむやのうちに登ってしまった感じ。

最後、5段の宮の抜口では既に柴田さんが崩してくれているとはいえ、こんもりと積もった雪のリッジを乗り越すのは崩れそうな気がしてちょっと緊張する。

5段の宮を抜けるとしばらくは先と同様の雪がこんもり積もったリッジが続く。

リッジをそのまま進んで最後の壁(雪が付いている時期は雪壁?)は三好さんトップ。

草付き混じりで濡れている壁。

オーバーグローブもロープも泥と水を吸っている。

ここを1ピッチ登って終了。

全般的に草付きありありで、アックスさまさまの印象だった。

それにしても、5段とは如何に。

3段くらいしか判らなかった・・・まだまだ余裕がない未熟者。

稜線まで登ると旭岳山頂。風はほとんど無く快晴。

アルプスの山々から富士山まで全て見渡せる。

しばし休憩の後、ツルネに向かって歩き出す。

ツルネ東稜はトレースはなかったが沢山ある赤布や黄色テープに導かれて出合小屋へ。

小屋に戻ると他に1パーティ(お医者さんグループ?)が来ていて小屋内にテントを張っていた。

<タイム>
林道(5:15)→出合小屋(6:40/7:10)→旭岳東稜 肩(10:20/10:45)→旭岳頂上(14:40/14:55)→
出合小屋(17:00)

 

3月31日

八ヶ岳・権現岳東稜-ツルネ東稜

30分程寝坊して4時少し前に起きだす。

シュラフカバーで頑張っていた三好さんは寒かったみたい。

昨日より雲が多い。

天気は崩れてくる予報のようだ。

丁度明るくなり始めてヘッドランプが要らなくなった5時過ぎに出合小屋を出発。

権現沢右又に入りしばらく登ると大きなツララがいくつも掛かった顕著なゴルジュ帯を通り過ぎてすぐに右手の東稜に取り付く。

取り付きの斜面はそれなりに急で雪も締まっていたので斜面の途中の平らなところで自分はアイゼンを付けた。

アイゼンを付けている間に柴田さんはアイゼンなしでキックステップでスカスカ登っていった。

三好さんは小屋からアイゼン着用していたのでガシガシ登っていった。

はあはあいいながら追いかけると尾根に上がってちょっと行った所で待っていてくれた。

昨日の旭岳東稜と同じく、傾斜がきつい所では腿上、時折胸近くのラッセル。

今日はワカンは小屋に置いてきたが、せっかくだから持って来ても良かったかな。

樹林帯を登って行くとバットレス取り付きに出た。

取り付きの直下は草付きにかるく雪が乗った急な斜面。

ビレイ点の潅木までの残り2~3m程がロープ無しでは自分にはちょっとオーバースペックだったので柴田さん、三好さんが登った後にロープを垂らしてもらって登る。

昨日と違って眼下は雲に覆われているが、東稜は時々薄いガスが流れていく程度で天気は上々。

1ピッチ目、柴田さんトップで登り始める。

しばらくしてビレイ解除のコールがきて池崎、三好さんの順番で登る。

とっても暖かかったので素手で登った。岩がほのかにあったかい。

最初の2手ほどが岩ですぐに草付になる。

個人的にはここの草付がいやらしかった。

草付きにピッケルとバイルを突き刺して這い上がる。

ここから草付き混じりの壁を左へ回り込むように斜上していくと広いフェースに出る。

ここまで来てフェースの上部の小さなテラスでビレーしている柴田さんの姿が見える。

フェース自体はどこを登ったら良いのか判りにくいが、ホールドは結構豊富でぐいぐい登っていくとテラスに着く。

テラスにはちょっと間隔が離れているが残置ハーケンが2個。

テラスに若干の雪が残っている程度でフェースにはまったく雪は無かった。

2ピッチ目、柴田さんトップ。

池崎、三好さんの順に登る。

あまり特徴の無い岩の壁を登って傾斜がゆるくなった所で終了。

ロープを解く。

あとは、雪があまり付いていない岩稜帯を登るとやがて稜線の手前で雪のリッジになる。

足元はずっと下まで斜面が続いている。

アイゼンのダンゴをマメに落しながら慎重に歩いて稜線に出る。

稜線でしばし休憩の後、昨日よりちょっと遠くに見えるツルネに向けて歩き出す。

ツルネ東稜はトレースがついたので昨日よりはかなり歩きやすいが、ちょっとでもトレースをはずすとスコンと膝上(あるいは腿まで)まで埋まる。

出合小屋でデポした荷物をザックに詰め込んで帰路に着く。

来るときにいやらしかった徒渉は川底が見えていて昨日とは様子が変っていた。

日に日に暖かくなっているのかな。

最後は雪混じりの落ち葉の積もった林道をあるいて車を駐車している空き地へ。

車で林道を抜け、美しの森の駐車場を通りすぎたあたりからポツポツと雨が降ってきた。

<タイム>
出合小屋(5:10)→バットレス取付(8:45)→バットレスの頭(11:00)→権現岳頂上(11:35/11:40)→
出合小屋(13:55/14:20)→林道車止め(15:30)

※コースタイムby柴田さん(←ありがとうございます m(_ _)m)

 

八ヶ岳 赤岳東稜

2002年3月23日
三好、柴田(記)


今年は春の訪れが早く既に桜は満開。

谷川もこの週で打ち止めになってしまったがせっかくのシーズンなのでもう少し雪稜を登りたいと思い三好さんと赤岳東稜に行く事になった。

登山体系やwebで記録を読むと結構時間がかかるようだ。

私の家庭の事情で日曜日の朝6時までに自宅に戻っている必要があり日帰りは至上命令なので資料を総合的に判断し大体13-14時間かかると踏み、午前3時から4時の出発を予定した。

美しの森の隣のKitz Medowsスキー場駐車場に2時前に着き、1時間ほどだけ仮眠することにする。三好さんは大きな目覚し時計を持参しておりこれではアラームが聞こえなかった等と言う言い訳は通用しそうもない。

ところが1時間後に鳴り響くアラームを消してあと5分だけと思って寝てしまい、気がついたら4時30分を廻っていた。

あたふたと準備をし5時15分に駐車場を出発。二人とも寝坊した事に焦っていたみたいで最初は林道でなくスキー場の方に向かってヤミクモに歩いていた。

林道はまだ結構雪が残っていてところどころでスネ位まで潜る。スネだから大した事ないのだけど潜らないと思って置いた足が意表をつかれて潜ると結構疲れる。

林道と別れて大門沢に入り最初の二俣は右、その後は左を取る。

県界尾根から降りている支尾根と県界尾根に挟まれた沢を暫く登り、雪質のいい所で尾根に出ると尾根は広く台地状に広がり二俣が近い事が分かる。

天気は曇りで赤岳方面は灰色の雲に覆われていて見えない。

まあでも天気がいいと雪が腐って登高に難儀するのでむしろ曇りでよかったと思った。

急な雪面を慎重に降りゴルジュ状に降り立つ。

地形からして二俣の上部である事を確信。

ここで暫く休むが時間は7時30分と予定より若干早いペース。

暫くゴルジュ状の右俣を登り傾斜の緩い所から東稜に上がる。

雪は締まっていて快適に登れる。

樹林帯をやり過ごすとすぐに第1岩峰が現れる。

トポ通り左にトラバースし雪壁を登り抜ける。

雪壁の上は短いながらもナイフリッジになっていて美しい。

登攀中の三好さんの姿をカメラに収める。

だんだん天気は良くなりつつあるようだ。

見下ろすと清里あたりの大地を日ざしが照らしている。

第2岩峰の取付きでハーネスを装着し、ロープも必要に応じて出せるようにして左の雪壁へ回り込む。

いつのまにか雪が降り出し積雪期登攀のムードが盛り上がってきた。

傾斜は60度~70度くらいで結構立っているがアイゼンとアックスが良く決まるので不安はない。

また雪は若干柔らか目で蹴り込むと足裏で立つ事も出来るのでフロントポイントのクライミングで疲れたふくらはぎを休ませる事も出来る。

途中あえて望めば岩に移れない事もなかったが雪壁の登攀が安全快適だったのでそのまま雪壁を詰める事とした。

左右のアックスを草付きに引っかけながら登ると上部で傾斜は緩み緩い雪稜の向こうの最後の第3岩峰を残すだけとなった。

右手にはA/B/Cルンゼやセンターリッジが見える。そのうち登りに来たいものだ、と思いセンターリッジのルートを目で追う。

第3岩峰はハイマツ混じりの真教寺尾根の岩尾根と一体化しており岩峰と呼ぶほどの事もなく、普通に歩いて越えるとすぐに主稜線の竜頭峰に出た。

西風がすごい勢いで吹きさらしていた。

結局ロープは出さずに終わってしまった。

時計を見ると午前10時30分。

ラッセルがなかった事と雪面の条件が良くロープを出さずに済んだ事で2時間40分と予定より早く赤岳東稜を終える事が出来た。

下山は県界尾根と真教寺尾根とどちらにするか迷ったが三好さんと相談の結果、赤岳の頂上経由で県界尾根を下る事とした。

頂上でアリバイ写真を撮りトレースの無い県界尾根を下る。

新雪が少々積もっているが雪崩れるほどの量はなさそうだ。

それでもトラバースする時は上部を確認し慎重に進む。

小天狗手前の台地で小休止としアイゼンや登攀具を仕舞いレーションなどを食す。

天候は回復し我々が登った東稜とその右に東壁、ずっと左に天狗尾根などが見える。

気温は思ったよりも低いようでペットボトルの水が氷になりかかっていた。

小憩後樹林帯を斜めに下るが何故かここだけこれまでにないほど雪面が堅くなっている。

アイゼンは先程はずした所であり再度装着するのもかったるい。

結局最後までヤセ我慢してアイゼンはつけなかったが堅く締まった雪面に所々キックステップも効かず木に頼りながらの下降だった。

今回はここが一番緊張した。

大門沢枝沢まで降りるとあとは時折意表を突かれて足が潜るのを我慢しながら駐車場までスタコラ歩くだけだ。

午後1時50分に駐車場着。

三好さんお疲れさまでした。

八ヶ岳東稜シリーズはまだまだ色々あるのでまた行きましょう。

【タイム】
スキー場駐車場(5:15) → 二俣(7:30/7:50) → 竜頭峰(10:30) → 赤岳(10:50/11:00) →
駐車場(13:50)