鹿島槍ヶ岳 ダイレクト尾根

2017年4月23日
薄田、川上(記)

薄田さんは1泊2日で会社がらみの出張(旅行?)。土曜夜に帰ってきてそのまま鹿島槍に向かうという強行軍(その姿勢、見習いたい)。午後9時半に埼玉を出発したものの、高速道路の工事渋滞で時間ロスし、大町に着いたのは、午前3時前だった。1時間半だけ寝て、大谷原へ出発。午前6時頃に歩き始めた。

薄田さんは2年前にダイレクト尾根に取り付こうとして、間違えて鎌尾根を登ってしまったことがあるそうで、「今度は間違えられない」と気合が入っていた。鹿島槍南峰をはるか上に望む北俣本谷の下の方は、すごいデブリの量だった。2人して地図と見比べて念入りにルートを確認。

念入りにルート確認

目の前の急なルンゼがダイレクト尾根の取り付きだと確信する。登っていくと、だんだん傾斜を増してくる。日が高くなり、雪が腐ってくると、足が沈み込んで歩きにくくなった。

北俣本谷の急なルンゼを登る

傾斜は、谷川岳の一ノ沢を詰める感じに近い。滝のかかった岩壁が目の前に見えてくると、左に巻いて岩混じりのルンゼ状を登ろうか、と話し合ったが、そのルンゼ状から、崩落したこぶし大の岩がごろごろと落ちてきたのが見えたので、右へトラバースし、尾根状になっている潅木混じりの雪壁を登ることにした。と、降りてくるスキーヤーが見える。よくこんな急斜面を下るもんだ、と感心した。

急斜面を下るスキーヤー

ここでアンザイレン。スノーバー2本突っ込んでセルフビレイ。
1P目、薄田さんリード
潅木などにランナーをとりながら、慎重に進んでいく。雪壁の高さは10メートルくらいか、雪稜に抜けて、60メートルロープいっぱいのところまでいく。

1p目核心に向かう薄田さん

私の番。さほど難しくないが、腐った雪壁の処理に手こずる。と、慎重に雪を踏み固めてフットホールドを作ったつもりが、下が空洞になっていて抜けた。微妙にテンションかかってしまったが1メートルくらい下に地面があり、立てたので、ロープなくても大丈夫だった、・・・と私は思うのだが、(薄田さんは「テンションかけたんだから、ロープのおかげ」と言っていた)ちょっと悔しい。

1p目雪稜に出る川上

実質、ここでロープいりそうな登りは終了したが、一応そのままスタカットで2ピッチ伸ばした。ロープをしまい、頂上直下の登りで午後3時。
山頂を踏むと遅くなりそうだったので、そのまま左に巻いて、赤岩尾根への下山路を目指す。稜線上の一般道に乗ったところで、握手を交わした。最高の景色。「これだから春山はやめられねえんだよな」と薄田さん。
さすがの強行軍で疲れがあるのか、薄田さんのペースが落ちる。冷乗越で休憩し、ダイレクト尾根を見やると、ものすごく急な斜面に見える。80度~85度位はありそうだ(多分そんなにないけど、そう見える)。

冷乗越で休憩
山頂に突き上げる中央の尾根と左のルンゼを登った

私「なかなかかっこいいですね」。
薄田さん「確かにね。でも見た目のカッコよさに比べて、ちょっと物足りなかったな。もう少し内容あると思っていたんだけどな」。確かに。その先、赤岩尾根序盤の滑ったらやばいトラバースは、薄田さんは、安定して素早く通り越していた。私もそのトレースに続くが、少し緊張。尾根は忠実に辿らず、途中で西沢に降りて、大谷原に午後7時半到着。疲れたが、やっぱり今回も楽しかった。

私としては、もっと雪が腐った春山の経験をたくさん積む必要があると実感した。また、よろしくお願いします。

鹿島槍ヶ岳 大冷沢 ダイレクト尾根

2005年4月5日から2日間
大滝(記)、森広


4月5日

朝、東京を車で出発し15:00に大谷原に着く。大町の町中には除雪の雪溜まりがまだ残っていた。大谷原は橋まで除雪してあった。

それ以外は1m位も積雪がある。見晴るかす山は真白だ。スキーを着け15:30歩き出す。

20℃。

快晴。

西俣出合16:45テント設営。

何と冷尾根側に氷が見える。下部は氷が無いので登れはしないが、5mくらいのが二つ繋がっている。

4月なのにこんな所に氷が有る事に驚く。西俣に少しだけ雪面が開いて居る所があったので水が汲めた。翌朝は早いのでスーパーの弁当を食べてすぐに寝た。

夜中にスキーを着けた単独の人がテントの傍を過ぎて行った。目指すのは鎌尾根かダイレクト尾根か。

4月6日

3:00起床。

寝ていて寒くなかった。外に出て見ると雪が柔らかく潜る。

冷えて雪面が締まって欲しいのに雪崩が心配だ。天気はいいので行くしかない。

4:15出発。

6℃。

夜中の先行者はスキーを履いたまま進んで居る。鎌尾根を下りられなかった場合赤岩尾根からスキーを取りに戻るのが大変なので、我々は置いて行った。しかし、一歩一歩潜る。時間と体力を使う。ゴルジュ手前から明るくなる。

ダイレクト尾根取付きにスキーがデポしてあった。先行者はダイレクト尾根を登り、鎌尾根を下降する予定らしい。

鎌尾根右側面奥に何と氷があった。

染み出しが凍ったような様子だ。幅15m、高さ50m位あるように見える。垂直で表面が凸凹に見える。難しそうだが、登攀意欲が湧いて来る。登り終わったら左にトラバースして鎌尾根に行けそうだ。今後考えよう。

ゴルジュが終わると傾斜が増して来る。雪面も漸く堅くなってきたのでアイゼンを着ける。ダイレクト尾根は明瞭だ。下部は段差が激しいので取付きは左のルンゼから入る。

気温が高くなりチリ雪崩が落ち始めた。暫く登ると右にすっきりとした斜面が現れたのでルンゼと分かれ登る。これで雪崩は関係無い。尾根上に出ると北俣本谷、右俣、左俣、北峰が良く見える。あまりの暑さにヘルメットの中に雪を入れて登る。第一岩峰に着く。

先行していた森広さんはピッケル1本だけだったので急な雪面を処理出来ないで居た。

私はダブルアックスだったので交替して7m位胸の前の雪を落としてアックスを深く刺して登って行った。傾斜が緩んだ所でロープを出して居たら、トレースされて登り易くなった斜面を森広さんは「大丈夫です。」と言って登って来た。

第二岩峰に着く。

岩峰の形状はしていない。ブッシュがあり、右に廻り込むと良さそうだ。急だがロープを出さずに行く。ブッシュを掴みながらトラバースして行って見えないルンゼに着くと傾斜がそれ程きつくない斜面に出た。快適に15m位登高すると南峰直下の広い斜面に出た。12:00終了。

剣岳の勇姿が眼前に繰り広げられる。疲れが吹っ飛ぶ。

強風の為ヤッケを着て先行者のアイゼンの跡を追うが何処で鎌尾根に下りたか分からない。

雪庇ごと落ちたくないので赤岩尾根経由で降りる事にした。冷小屋では除雪を始めていた。

14:00赤岩尾根下降点。

トレースのない斜面を慎重に下降して行く。

いつものように西俣上部より西俣を下降した。

シリセードを楽しみたかったが、雪が腐っていて少ししか出来なかった。テント場15:40。

大谷原17:10。