谷川岳 一ノ倉沢 二ノ沢右壁

2015年3月7日
向畑(記)、坂口(東京YCC)

2時40分、センター発。天気は曇り。2週間前に来た時はラッセルで一ノ倉沢出合まで2時間半かかったが、今日は1時間で到着した。
4時15分出合発。二ノ沢のクレバスは左から越える。6時15分頃右俣から右壁に入る。
ところどころ腰近くまでもぐるが、大体膝下までのラッセル。それほど状態がいいとも言えないかもしれないが、曇っているので大丈夫だろうと思い取り付く。

第一の氷瀑は傾斜がないのでノーザイルで超えるが、氷が薄くピックが岩をたたく。氷瀑上の雪壁の上の氷はさらに薄くて登れない。ここでアンザイレンして向畑リード。以降交代につるべで登る。

左のルンゼの氷を登り、ベルグラを右にトラバースして正規ライン上の雪壁に戻る。55m。氷を探してスクリュー2本でビレー。
雪壁を登り帯状ハング取り付きまで30m。ハング下の氷柱にタイオフでビレー。

ところが、帯状ハングに氷がない。所々、薄いベルグラが乗っている程度で出だしは岩が出ている。特に、通常登られているとされている傾斜が緩い右側には全くない。仕方がないので急傾斜の左の草付きラインを登る。ブッシュとピトン、イボイボを打ってランナーを取るが、結構ランナウトする。ハングを越えてからさらに、草付きとベルグラを右にトラバースして正規ラインの雪壁に戻る。35m。残置ボルト1本を見つけ、ピトン(効いてない)とスクリュー(全く効いていない)を打ち足しビレー。

過去の経験から、谷川は雪の多い年は、氷の発達はあまりよくないことが多い。この分では、上部雪壁の状態も悪いのではないかと思われたが、そうでもなかった。

帯状ハング上の雪壁を直上。30m。ブッシュでビレー。
ここから滝沢リッジにエスケープすることもできるが、尚も直上する。突き当たりの岩を左に回りこんで雪壁のできるだけ右よりを登る。35m。右側の岩にピトン2本打ってビレー。
さらに雪壁を登る。45m。右側の岩にピトン2本でビレー。
草付きをトラバースして滝沢リッジに。15m。急斜面上のブッシュでビレー。時間は13時30分。
ここまででも結構かかってしまったが、大した距離でもないのに、雪がたっぷり乗った滝沢リッジを抜けるのに、さらに3時間かかってしまう。このころから雪がちらつき始める。

滝沢リッジの雪稜を登る。45m。ブッシュでビレー。
さらにリッジを登りドームの基部に。途中からコンテで75m。ドーム着16時30分。小降りながら、本格的に雪が降り始める。
ドームの基部を右にトラバースし、Aルンゼへの懸垂支点に。20m。

Aルンゼには三スラを登ったクライミングファイト・伊藤さんと、さがみ山友会・河崎さんのものと思われるトレースがあって助かった。
Aルンゼからドームのコルに上がり、国境稜線に。17時15分着。
ガスで視界がないなか、トレースを頼りに西黒尾根を下る。センター着20時15分。下界では雨になっていた。

ちなみに、冬の二ノ沢右壁の核心は、帯状ハング上の不安定な雪壁であると言われている。特に、初登の鎌田さん、市橋さんパーティ、第2登で単独初登の細貝さんも、この雪壁を登らないと右壁を登ったことにならないとして、こだわって登っている。
しかし、最近は早い時期に上部雪壁の雪が落ちてしまい、全面スラブが出ていることがよくある。そのため、仕方のないことであるが、最近は上部雪壁を登らずに、滝沢リッジにエスケープしているパーティが少なくない。
今回は、雪が多いことに加え、曇っていて気温が上がらなかったこともあってか、比較的安定した雪壁が続いていた。ただ、全体的に氷の発達は良くなく、状態が良かったのか悪かったのかはよくわからない。

ついでに、女性の年齢を公表するのはマナー違反なので個々の年齢については触れませんが、合わせて102歳のパーティのため、登っている時にはそれほど感じなかったが、西黒尾根の下降がきつかった。年齢とともに、西黒の下りが年々長くなっているような気がしてます。

 

谷川岳 一ノ倉沢 二ノ沢右壁

2014年10月19日(日)~10月20日(月)
薄田(記)、野澤

 

30年ぶりに二ノ沢右壁に行ってきました。
当時は25歳のバリバリの現役だった(?)。ヘボクライマーは相変わらずだが何といっても若かった。又、手前みそながらいい体だった(少なくても腹筋は割れていた)。
今回、数年前の幽ノ沢(右フェース)での失敗もあるので、乾いた日を狙ったつもりだったが・・・。

10月19日

パートナーは当クラブの最若手(?)の野澤君であります。
車はロープウェーの平場駐車場にとめ5:00には出発、出合が7:00くらい。
30年前は8月のお盆の時期だったので雪渓通しに行けたが、今回は右岸ヒョングリの滝下降点からのアプローチとなる。
そこからが藪が酷く道が解らない始末。
(近年は殆ど登られていないことが後日判明。)
2回行きつ戻りつ迷って3回目に方向の目鼻をつけて藪こぎ開始。
下降目標地点となる松木手前の木で腐った残置シュリンゲを発見。
シュリンゲはやばいので、その木に直まきして懸垂下降。
二ノ沢着地が8:40くらい。
雪渓が消えたばかりなのか岩は砂混じりで悪い。
薄田リード(全ピッチ)でスタート。
1~2ピッチでロープを外せるかと思いきやずっと悪い。
三つ又下大滝では、ハーケンを微妙なバランスで打ち込んで越えました(かなり怖い)。
その後右壁に入るがツルベで無いのでペースが上がらない。
30年前は全体を通して残置が少ないのでハーケン1本でセルフビレーを取っていたと思う。
今回は慎重を期して各ピッチに1本打ち足して、勿論回収するので時間がかかった。
帯状ハングは新旧のボルトが多めに有るので、楽なA1であります。
帯状ハング上3ピッチくらい登ったところで暗くなってきたので、ビバーク地を探すが傾斜もきつくなってきてるので良いところが無い。
それでも2人がおしりを下ろせる場所までロープを延ばしてハーケンを2本打ちました。
しかし、暗くなり気も焦っていたのか、効きの確認を結果的に怠り(効いたと思いこみ?)ビレー体制に入ろうとして体重がかかった瞬間にそれが起きた。
山側を正面にビレー点に体重をかけたが、体の上下を軸に180度回転して超急な滑り台を降りるがごとく背中を斜面に擦りながら滑落し出した。
20mは落ちたでしょう。
次の瞬間、ハーネスにテンションが掛かった。何で止まったのか?気が動転していて解らない。
生きている事だけは間違いない。
意識ははっきりしている。
30mはランナウトしているのでハーケンではない。止まって良かった。本当に良かった。
ヘッドランプを出して上を見てみると10m位上の岩角に今にも切れんばかりの状態でロープが1本引っかかっていた。神様に感謝である。
ショックと左足の痛みでしばらく動けなかった。
野沢君が心配して声をかけてきたので取り敢えず大丈夫だと返す。
よく体を点検すると右の人差し指から血が出ている。痛みは興奮しているせいか感じない。
残置ハーケンを探して、そこまで怖いけど振り子で移動。
更に、ハーケンを打ち足してセルフを取る。
今度は2本ともハンマーで叩いて確認したのは言うまでも無い。
野沢君に近くでビバークポイントを探してセルフを取るように指示し、それぞれの場所でビバークに入る。
ツエルトは無いので、各自着られる物を全て着て少し腹に入れ寝に入るが、まともに座れる場所が無いので完全にハンギング状態で外傾した岩角に体を預ける程度の態勢なので殆ど眠れない。
夜半からは風が吹き出し10月とはいえ寒い。
薄田はザックから銀マットを取り出し体に巻き付けたが、風もあり体がずり落ちるので何度まき直したことか。

10月20日

殆ど眠れないまま朝日が上州武尊方向から昇ってきたので、行動を開始する。
腹に行動食を入れスタート。
左足が痛むが登れないほどでは無く我慢である。
左手の右手人差し指の痛みは幾らか和らいだが、握力が100%出ない。これも気合いである。
2p程で滝沢リッジの終了点となる。
リッジに出た後も草付が濡れいて悪い。
ここで7:00くらい。
悪いことに雨も降り出す始末。
ドームまでの草付きが雨で更に滑って悪い。
途中やられたロープを外してザックにしまう。
Aルンゼの下降点は立派なアンカーに変貌していてびっくりした。雪崩で遭難した遺族が取り付けてくれたようだ。
ロープが1本なので、8の字でセットして各自懸垂下降に入る。
この頃から更に雨が強まる。
合羽は上着のみなので寒い。
ルンゼ全体が濡れているので、痛んだロープをカットしてロープを結ぶ。
薄田リードで3から4ピッチでドームから上がってくる岩場(残置ボルト多数有り)に到着。
それから100mくらい登り、やっと登山道に出た。17:00くらい。
助かった!良かった!実感である。
後は西黒を下るだけ・・・