城ヶ崎 スプラッシュの記録

河合(記)

久々に心と体を削って登った1本の記録を残しておく。
スプラッシュ。
有名なルートだと思う。
故杉野保氏の作品で、城ケ崎シーサイドエリア黎明期からかなりの間を空け、1998年に初登された。
現在、城ケ崎シーサイドの最難ルートだ(登れなくなったクランチャーを除けば)。
グレードは5.13cか5.13d、トポによって異なる。
シーサイドの最奥にあり、潮が引いた時でないと全貌が見えない。
杉野氏初登の城ケ崎ルートの多くに共通するのは、「ある程度ムーブを起こす力がないと、何もさせてもらえない」ことだと思う。
てるてる坊主5.12d、サーカスライト5.12d、コロッサス5.13aか5.13b、秘奥義5.13b辺りをトライした人ならわかってもらえるだろうか。
「ある程度」の力があればムーブをこなせるけど、その「ある程度」の水準が随分と高い。
そのため、杉野ルートの多くは、登れる人はあっさり登り、登れない人は封印するか、私のように歯を食いしばる努力をすることになる。
スプラッシュも、ご多分に漏れず、その類のルートだ。
核心のムーブは激しく、厳しい。
そして、さらにこのルートを厳しくしているのは、そのボルト位置だ。
下部核心のランジを止め損ねると、岩角に叩きつけられるリスクが高い。
下部を余裕でこなせない人には「やっても意味ないよ」というメッセージか。
中間部の核心垂壁は、ハングドッグでは探れず、一連のムーブを終えてさらに登ってからでないとクリップできず、大抵はボルト足下でバンジージャンプすることになる。
最後のサーカスライト共通部分の核心も同様で、ムーブを起こし終えない限り最後のガバを触ることすらできない。
ボルトに守られたルートだからこそ、少しでも未知の部分を緊張感の中で探る、本来のクライミングらしい部分を感じて欲しい、という初登者のメッセージのように思う。
本ルートの構成は以下のとおり。
(以降、ムーブの記載オンパレードなので、オンサイト狙う人は読まないで下さい。)

【出だし】
・スタートはサーカス5.12cと共通の地ジャンまたはデッド、初っ端から激しい。
・その後、ルーフ下のガバを繋ぎ、ランジ体勢に入ってランジを止める所が最初の核心、意外とテクニカルで、ここで落ちると危ない。
・なお、このセクションは、サーカスのフットホールドを使ってハンドトラバースすると簡単にこなせるけど、スプラッシュ感が感じられないので、私は不採用。岩の強点を攻めてこそスプラッシュ!
・その後遠いガバをデッドで繋ぐとハング下のレストガバに到達する。クリップが遠い。
・ここまでで、5.12bはあるだろうか。

【核心】
・ルーフからの抜け出し方には2通りある。初登者ムーブは見えないガバへの強烈なデッドで、リーチがないと不可能。私は辛うじてガバに届いたもののマージンがなく、その後動けなかった。
・小柄な人はリップのゴミカチを握りしめ、ルーフ下にヒールする通称「スプライトムーブ」一択だ。このムーブはリーチの不足分を足位置でカバー可能。ルーフ下ヒールは非常に膝に悪い。人によっては簡単というこのムーブ、私にとっては最大核心で、このムーブをやり過ぎて左膝側副靭帯を痛めた。
・ルーフ抜け出しの最後は、遠いガバへのデッドから、垂壁へ乗りあがって左カンテへの横移動で、このセクションが最大核心という人が多い。ガバマッチからのクロスと、左足乗り込みの2通りムーブがある。左足への乗り込みは股関節の柔軟性が鍵で、大柄の人には狭くて辛いらしい。クロスムーブは試していないのでわからない。
・一連の核心ムーブは私の場合10手で、V8位の強度はあると思う。
・ここまでで既に5.13b以上ある気がする。

垂壁の核心ムーブ

【サーカスライト核心】
・カンテのレストポイントはサーカスと共通のドガバでかなり休める。
・その後サーカスライトの核心だが、このムーブもかなり悪く、右手でゴミカチを押さえながらヒールで体を引き上げていく。カチ力と体幹の残量が鍵で、パンプが取れていてもなぜか落ちる。このセクションだけでもV6はありそう。リーチがないと最後ヒールを残したまま穴ガバが取れないので、足を切ってから余計な強度のあるワンムーブが増え、辛い。
・最後は5.10b位のスラブで、ホールドは初見ではわかりづらいけれど、ここまで到達した人が落ちることはないだろう。
前置きが長くなった。
シーサイドの最終課題といった雰囲気の、このルートの敷居は高かった。
初トライは2020年3月に遡る。
このシーズンは首尾よく虎の穴5.13aが登れ、その勢いで試しに1日トライした。
2便目でハング下まで繋がるも、核心は全く歯が立たず、あっさり諦めた。
翌2021年3月、シンデレラマン5.13bをシーズンぎりぎりで間に合わせた後、パートナーのシンデレラボーイのビレイついでに1日トライするも、同様に核心は歯が立たなかった。カンテまで10cm以上左手が足りない。
本腰を入れてトライを開始したのは2021年12月。
シーズンを捧げる覚悟で、12月上旬からトライを開始した。
考えられる足位置を全て検討した結果、計7日目にカンテに到達した。
RPしたのではないかって位嬉しかった。
この日はヌメヌメのサーカスライトセクションが抜けられず、計8日目にトップアウト。
トップアウトがこんなに嬉しいルートは中々ない気がする。
しかし下部のランジを取り損ねて頭を壁に強打し流血、髪の毛が少し減った。情けない。
さらに、4日目頃にできたルーフ下ヒールムーブが全く再現しない。
意地になってトライし続けた結果、年の明けた1月、靭帯を痛めて左膝裏に激痛が走るようになり、計11日目で登攀不能となった。
このシーズン、左膝は回復せず、スカラップ5.12d/13aで関節技極めたり、秘奥義5.13bに通い詰めて絶望したり、シーズン末期にヌメヌメのブリザード5.12dにトライしたり迷走。

極めて膝に悪いヒール

2022年12月、今度はムーブを変えて初登者ムーブで再挑戦。
ルーフ下のヒールが不要で、膝への負担が少ないからだ。
しかし、ルーフ上へのデッドは辛うじて止まるも、その後全く動けず。
これはどうしようもなく、2日間トライした結果諦め、ムーブを元に戻した。
当然、また膝裏が痛くなった。
しかもワークアウトでトライしたドラゴンフライ5.11cでどか落ちし、左踵をしこたまぶつけてしまい、早々に2週間ほど戦線離脱。その間に何とか膝を回復させた。
ワントライ3回、1日9回まで、週1のトライに制限して、こつこつトライを続けたが、滅多にムーブができない。
繋げると、まずできず、膝も痛い。
できる時とできない時の違いがわからない。
同じ場所で何十回も落ちて、心が折れかけた。
後はもう、道具を変える位しか、できることがない。
完登者に使った靴を教えてもらい、新たに2足買って試した。
鍵となったのはヒールの形状だった(行き詰まったら研究してみて下さい)。
1足目は結構感触が良く、暫く履き続けるも結局ヒールは下からでは繋がらず。
2足目はぴったりフィットしたが、ムーブを起こす際の激痛に耐えられず、一度は投げ出した。
その後、1足目ではどうしてもムーブが繋がらないので、2足目を再導入。
不思議なことに、今度はムーブが不思議な位スムーズに起こせた。
どうやら膝周りに謎の筋肉が付いて靭帯への負担が減ったらしい。
こうして迷走すること計23日目、遂にルーフを抜け出してカンテに出て、ワンテンとなった。
時既に2月中旬。
後は時間と持久力との闘いだ。
しかし、サーカスライト核心もとても悪い。
本当に5.12dのルートの核心なのか。
カンテに出る確率も5割を下回り、バンジージャンプを繰り返した。
最後、散々練習したムーブを変更したところ、計27日目となる2023年3月4日、初めて触ってから足かけ3年、73便をかけて完登した。

終わった。

とにかく、長かった。
正直、ルーフ下ヒールを安定してこなせるようになった計22日目まで、このルートを登れるか全くわからなかった。
いつ膝が爆発するかわからない恐怖。
リップにデッドし過ぎて右肩も痛くなり、週末に体をベストコンディションに持ってくるため、ジムに行けなくなった。
ひたすらスプラッシュだけトライし、落ちる日々。
体を壊してまで、そこまでして登る価値はあるのか?
「膝痛むのに続けるなんて、バカじゃないの?」友人クライマーに言われた。
バカだと思う。
でも、何と言われようが、かっこよすぎるんだよ、このルート。
最後にグレードについて。

5.12b+V8+V6+5.10b、計48手。
それぞれの間に大レストを挟んで、どのグレードとなるか。
身長166cmの私でも随所にパツパツ、最後にダメ押しのきついムーブが入って辛く、途中狭い部分があるにせよ、トータルでは大柄な人に有利なルートのように思えた。
持久系ではないので、ボルダー力が一定以上の水準に達している人は易しく感じるかもしれない。
私は5.13c以上はこのルート以外登ったことがないのでよくわからない。
今まで登った5.13bより明らかに難しかったので、5.13c以上の何かだと思う。
5.13dあったら嬉しい。
蛇足だが、サーカスライトは5.13aある気がする。スプラッシュ登った翌日についでにRPできたけれど、虎の穴5.13aより難しいと思う。
シーサイドの5.13-が大体片付いたら、是非トライしてみてください。
昨シーズン、結構な頻度でマーキング消すの忘れて、また最初から最後までヌンチャク残置してすみませんでした。
また、様々なアドバイス下さった皆様、現地で一緒にトライやビレイして下さった皆様、特にワンシーズン丸々付き合ってくれたK林君、ありがとうございました。

オワタ\(^o^)/

冬トラッドの記録

河合(記)

今冬は緊急事態宣言やらに大分翻弄されてしまった。それは現在も…

記録の更新が久しく途絶えていたので、山ではないですが今冬のトラッド記録を残しておきます。

【1本目:センチュリーフォーカラーズ5.12b @甲府のとある岩場】

(1日目)

非常に美しい真っ向勝負のフィンガークラックがあると噂に聞き、このルートの存在は以前から気になっていた。調べてみると、甲府のとある岩場の人目に付かないところにあるとのこと、故吉田和正氏のブログを頼りに、川上さんに付き合ってもらって捜索に出かけた。入口らしき沢を発見、詰めていくうちに沢の分岐にぶつかり、左に川上さん、右に河合で探索続行。川上さんが何とか岩を発見。駐車場から1時間半位かかった。迷わなければ駐車場から25分位。

ほんと綺麗な「くの字」。その昔は「昇仙峡イクイノクス」と言われていたらしい。曲がりがオリジナルと逆だけども。

く!

横から見ても、く!

いそいそトライ開始。今まで難し目のフィンガークラックは、春うらら2p目もアレアレアも、トップロープでリハーサルしていたので、今回は少しスタイルに拘り、トップロープを封印して臨んだ。さぁ、吹っ飛ぶぞ。

出だしはプロテクションがいまいちの中ボルダームーブ、ノーズで拾ったオフセットカムが久々に活躍。その後のフィンガーはナッツやカムが良く効いて、くの字の中間部に到達、の前に既にテンションでオンサイト失敗。ここまではイレブン前半位で前哨戦。

くの字の後半がこのルートの本番。傾斜80°位、明確な足がない中をスメアで耐えつつ、フィンガージャムを、クロスムーブを交えながら連打していく。何箇所かカムをセットできる程度のレストポイントはあるけど、腕の完全回復は望めない。綺麗なクラックだけど手前側が飛び出る形でオフセットしていて、フットジャムが効かせ辛い。救いは、極端に悪いムーブはないことと、大体どこでもカムが効くことで、突っ込んでは吹っ飛びを繰り返して、1便目でムーブを解決しトップアウト。ストレニ系のルートのようだ。カムは♯0.5まで。

 2便目は、とりあえず突っ込んでみることに。くの字屈曲部まではうまく行くも、後半の最初の方で敢無く吹っ飛ぶ。繋げるとめちゃくちゃパンプするぞ。

クロスを繰り出す(Yさん撮影)

 3便目は既に腕が残っておらず、くの字後半の出だしで、いい加減にセットした♯0.4が吹っ飛び、大フォール。クラックが斜めなので、セットは要注意。地面まで戻ってきてしまった人もいるらしい。

(2日目)

 翌日、1便目で終了点のガバ取りまで達するもムーブを詰め切っておらずまた盛大に吹っ飛び、その次の5便目で完登。ビレイしてくれた川上さんと小さいカムには、吹っ飛びまくって大分負担をかけてしまった。

川上さんの3日目のトライ(小池さん撮影)

 コンディション良かったこともあり、グレードは体感易し目の5.12b位。極端に悪いムーブがなく、アクセスも良いので、敷居は春うらら2p目より低いかも。貴重な地面からトライできる5.12-の純クラック、お勧め。

【2本目:アメジスト・ライト5.13a-b? @甲府のとある岩場】

(1日目)

 このルートは、そもそもどこにあるのかすらよくわかっていなかった。センチュリーを探して彷徨っていた時、沢の右岸に壁が見えたので、「これ、センチュリーじゃない?」と見に行ったら見つかったのがこのルート。

綺麗なクラック発見!右がアメジスト・ライト

最初は名前もわからず、「何かネットで見たことあるよね、このクラック」と川上さんと話していたら、ふと、思い出した山野井氏の記録。照らし合わせてみると、やはりアメジスト・ライト。吉田氏が5.13a-b位とブログに書いていて、傾斜も110°位あり、明らかに難しそう。場所だけ覚えてセンチュリー探しに復帰。

 当初トライの予定はなかったけれど、川上さんのセンチュリー完登が近づいていたのでビレイついでに、触ってみることに。

 この日は、なぜかワイドで悶えたいと願う秀峰の誇る変〇、山崎さん、小池さん、右田さんも同行して5人の大所帯。センチュリー隣のヘイトクライム5.10aというワイドクラックで、とても楽しそうに悶絶していた。うん、間違いない、変〇だ。完登していたのは、ワイド教祖の川上さんだけだったような。

ワイドに挟まり始める山崎さん

 私は川上さんにメンドクサイ往復してもらって、アメジスト・ライトに1人寂しく向き合った。

 出だしのコーナークラックはプロテクションちょっと怖い簡単なレイバックで、5.10b位。テラスで一休みしてからが本番。

 傾斜は強いけどスタンスとクラック周辺のカチが豊富、フィンガージャムとカチフェースムーブを交えて高度を上げていく。大き目のカムが結構決まる。下部の核心はムーブに悩んだけど、シンハンドの悪い部分をスキップして、レイバックからの逆手ハンドジャムで切り抜けた。この部分、ちょっとランナウト。ここまでで5.11cはあるかな。ハンドジャムで大レスト、カムを固め取り。

 さて、ここからがこのルートの本番。クラックが途切れて次のクラックへ移る。岩がブロック状に飛び出ていて傾斜をもろに食らう中、甘い左手シンハンドジャムからのグルーで固められたサイドカチへのデッド。悪い!左手のジャム位置が少しでもずれると引きつけられない。さらにそこから左手でハンドジャムをきめてプロテクションを決めるまでも一苦労。緑エイリアンが何とか効いた。

 ここから、さらに左のアメジスト・レフトクラックに移るのがもう1つの核心、右の脆いフィンガークラックにジャムをきめ、左手を伸ばす。当初リップのガバへのランジで解決したけど、スタティックに行けることに気付いたので、以降はそちらのムーブを採用。最後はパンプしていると辛いマントル。カムは足下の緑エイリアン1つだけでランナウトしているので、メンタルにくる。

 こちらも1便でムーブは、ぼやっと作れた。タイプは違うムーブ系だけど、明らかにセンチュリーより難しい。この日はさらに2便出し、ワンテンまで。

 この日は川上さんがセンチュリーを無事RP。

傾斜110°?

(2日目)

 色々あって2週間後、寒さが一段ときつくなる中、川上さんにお願いして、再びアメジストへ。アメジストで初めて他のパーティに遭遇。

 寒さで手がかじかみ、核心最中の左手ハンドジャムを良い位置に決められず2回落ちたけど、3便目で何とか詰め切って完登。他のパーティも1名完登していた。

他のパーティの人のトライ

 この日一緒にトライしてくれた川上さんも、私も、体感グレードは5.12c位。その日完登した別パーティの人も5.12のどこかと話していて、5.13の厳しさは感じず。ムーブが違うのかもしれない。上部は岩が少々脆く、核心最中の右手フィンガーがざらざらしていて不安定、マントルの最後のガバホールドもトライ中に剥がれてしまった(少し難しくなってしまいました、すみません)ので、その辺りが影響しているのかも。

 グレードはさておき、岩が美しくて、ムーブも面白いクラックで、こちらもお勧め。

 この日、あまりに寒かったので、ビレイに付き合ってくれた川上さんに「何かやりたいルートある?」と聞いたら「スコーピオン5.12b」という答えが返ってきたので、翌日に向け、南下。そして触ることになったのが次のルート。

【3本目:タランピオン5.13a @城ケ崎浮山橋】

(1日目(実際は2日目))

 このルートは2シーズン前にスコーピオンを完登した直後に触り、あまりのムーブの悪さに封印していた。浮山橋で他にトライしたいルートがなかったので、再トライ。

正面からでは傾斜が伝わらない

 このルート、名前の通り、タランチュラの下部を経由してスコーピオンの核心をこなす。核心は下部のタランチュラ部分で、一言で表すなら「天井レイバック」。パワーと身体張力命、シワにスメアした足が抜けないことを祈りながら、ムーブを起こしていく。そして、核心の一連のパワームーブに入る手前も、右手フィンガージャムからの左手アンダーを取るムーブが悪い。

【写真10】天井レイバックするレジェンドAさん

 プロテクションセットも、非常に重要。核心は息つく暇もなくフルパワームーブが続き、スコーピオンのさかさまレストポイントに入るまで、全くプロテクションセットの隙はない。クラックはずっと細いので、小さなプロテクションで、かなりのランナウトに耐えないといけない。私は最初のレストポイントから緑と青エイリアンをセット、一度地面までクライムダウンしてから、再度トライする方法を採用。城ケ崎のカムセットあるあるで、傾斜の強い細いパラレルクラックは、ちゃんとセットしたと思っていても吹っ飛ぶことがあり、今回も1度片方吹っ飛んで、固め取りに救われた。(吉田氏ブログが参考になるので関心ある人は熟読を勧めます。)

 初日は、以前できなったムーブが起こせたので、珍しく乾いていることもあり、継続することに。ついでにスコーピオンを再トライ、前半の核心でテンションかけてしまったけど、やっぱり素晴らしいルートで、何度登っても楽しい!


足が切れたら負け。RPトライ時は最後2つのプロテクションはない(Aさん撮影)

(2日目)

 この日は、スコーピオンに王手のかかった川上さんに加え、レジェンドAさんも参戦。Aさんの年齢を感じさせないパワーに脱帽。私は核心最後の右手リップ取りの後を、手数の少ないタランチュラくるりんぱムーブに変更。腕のパワーは抑えられるものの、カム足下で体を反時計回りに回転させて足を先行させる恐怖のムーブで、落ちると頭で壁に人間除夜の鐘、絶対落ちられない。川上さんは最後のクリップで粘りに粘って、スコーピオンを完登、おめでとう。Aさん曰く、初登者が、5.12aあるか不安になって、ガバの右側でムーブ起こさないとクリップできない位置に終了点を設定したんだそうな。今の感覚だと、ガバまでで、十分5.12a以上あるように思う。

この日、ワンテンまで持ち込むも、核心の一連のムーブは、通しでは一度も成功せず。

コウモリレストを堪能する川上さん

(3日目)

 トライが形になってくるも、核心の左手アンダー寄せが止まらず、吹っ飛び続けて終了。ビレイの川上さんはマリオネット5.12aに手を出して、いい感じのようだ。アストロドームと浮山橋は片道10分位なので、互いにビレイできるのでよかった。

(4日目)

 初便でついに、核心の左手アンダーが止まった!と思ったらその後足が切れて落ちてしまった。気を抜いているつもりはないのだけど、ちょっとでも力加減が弱まると容赦なく足が抜けてしまう。2便目は左手アンダーの前にセーブしすぎて足が切れた。やっぱり出し惜しみはなしだ。恐怖に打ち勝つため、絶叫を解禁、人生で初めて気合注入のためだけに寒いのに上裸になる。次の3,4便目は、核心最後のリップ取りまで行くも、力尽きて大フォール。日没直前の5便目、ついにリップを捉えた!余力は少しある。意を決して、くるりんぱムーブに入る。怖くて絶叫。足がレストポイントに入った!ここからは勝手知ったるスコーピオンロード。慎重に腕を回復させつつ、完登。痺れた!

 体感、今まで登ったトラッドで一番難しく、労力的に5.13aに感じた。ムーブ系なので、グレードの感じ方には幅がありそう。

この日は川上さんもマリオネット完登で絶好調、おめでとう。

【4本目:タランチュラ5.13a @城ケ崎浮山橋】

(1日目)

 実は、今シーズンのタランピオン初日に、タランチュラオリジナルの部分を触るも、よくわからずプロテクションも悪めだったので封印していた。せっかくタランピオン登ったので、覚えているうちにタランチュラもやっちまおうということで、早々にタランピオンを完登していたAさんとトライ。1便目で上部を探ると、絶妙なアンダークリングで抜けられることが判明、しかし落ちるとハングの際にぶつかりそうで怖い。2便目で体にしみついた下部核心を越え、余裕をもってチュラオリジナル部分に入るも、最後、潮でツルツルの部分に雑スメアしてしまい、スリップで落ちてしまった。その次の便では、既によれていて下部をぎりぎり突破、後半は落ち着いてRP。Aさんは間隔空いて核心ムーブを忘れてしまっていて、怒濤の7トライするも下部を詰め切れず、翌日完登したそうな。

理不尽な傾斜

 労力的にはタランピオンと差を感じず。タランチュラの方がパワーは要らないけど、繊細さとメンタルが問われる感じ。ライン的は、タランチュラがオリジナルルート。トポでは5.12dと書いてあるけど、そんなに甘くなく、これより簡単な5.13aはたくさんあると思う。私は故杉野氏のHP同様、5.13aに感じた。

 なお、終了点はなく、近くの灌木も枯れているので、両手離せる部分で終了とし、エイドダウンで回収した。

 そんなこんなで今冬は、本数は少ないけど、濃厚なトラッドを堪能できた。来シーズンは、何やろうかな・・・

難しいトラッドを登る上で重要なものは何か。基礎となるジャム筋やフェース力のフィジカル、的確なプロテクションセットや安全評価の技術、プロテクションやコンディションの悪さにめげないメンタルなど色々な要素があると思うけど、個人的には、ルートに付き合ってくれる仲間の存在がとても重要なんじゃないかと思う今この頃。付き合ってくれた主に川上さん、Aさん他皆様、ありがとうございました。

2019城ヶ崎

2019年3月28日
河合(記)

今冬の城ヶ崎トラッド

今冬は、一切雪を踏むことなく城ヶ崎に通いました。仕事忙しくて冬山の体力作る暇なかったとか言い訳はありますが、結局は城ヶ崎のトラッドが魅力的ってことに尽きるかなと思います。今年のテーマは「ルーフと3D」。でも、ついたのは腹筋と体幹でなくて腹回りの贅肉な感じがしてヤバイ。
前置きはこれくらいにして、今年完登できたルートを、南のエリアから順に紹介します。全くの個人的な感想兼備忘録で、ムーブ書いてたりするので(実際トライしないと意味不明と思われますが)、オンサイトに拘る人はこの下をスクロールしないことをお勧めします。

[浮山橋]
・バナナラマ5.10b(体感5.11a)3日5便
昨シーズンの宿題。このエリアで「グレード上」一番簡単なルート。大事なことなのでもう一度書きます。「グレード上」。登ったという話を全然聞かないこのルート、昨シーズンはフォローでノーテンだったので、今年はすんなり登れると思ったのだけど・・・スコーピオンのトライ後、ワークアウトで触るも落とされ続け、気がついたら10台のルートで人生最多日数便数に。ムーブが悪くて10台前半ではなく、わかりにくさも合わせればイレブンありそう。自信のついてきたトラッドクライマーの鼻をへし折るのに最適で、知人の5.12クライマーはトップアウトできませんでした。岩は申し分なく固くて、プロテクションも見落とさなければ問題ないです。終了点はないので、エイドダウンがオススメ。トップアウト後に左にトラバースして少しダウンクライムすると潅木がありますが、無理やり終了点作ってフォロー回収すると、ロープが激しく重くてしんどいです。・スコーピオン5.12b(体感5.12b)5日12便
マリオネットとセットで、1日1便2日間冷やかしで触りましたが、ムーブが作れませんでした。マリオネットが終わった後で、1日4便、5便と集中的にトライしたところムーブが作れて、その後登れました。ムーブはかなりトリッキーで、最適ムーブを見出すのに苦労しました。さらに、出だしのフィンガートラバースが悪く、私はここで苦戦しました。でも、ムーブさえわかればトライしているうちに楽になる系で、2箇所ある核心のムーブ強度は高いものの、回復するレストポイントも要所にあり、マリオネットよりストレニュアス性は低いと思います。ハンドジャムの連打、痛いフィンガージャム、ヒールフック、クロスハンドジャム、足先行、コウモリノーハンドレスト、ルーフ腹筋、フィンガーボトミング、クロスハンドジャム、カチ、クロス・・・とにかく多彩でジャミングと3D要素満載、登っていてとっても楽しいです。プロテクションも番手が決まれば不安なく、思い切りトライできます。今まで登ったトラッドルートの中で、最高に面白かった!マリオネットより半分?1グレード位難しく感じたので、マリオネットが5.12aなら、5.12bで妥当なんじゃないでしょうか。トラバースルートなので、要フォロー回収。結構人気ルートなので、他パーティいた際は上手くやって下さい。
[アストロドーム]
・マリオネット5.12a(体感5.12a/b)5日10便
昨シーズンの宿題で、2日通ってムーブはバラしたけれども、その後はコンディションもパートナーも掴めず、登れませんでした。今年は極寒の1月にアストロインしてトライ。とにかく全身を使うルートです。正面から見るとわかりませんが、傾斜はほぼルーフ、チムニー登りで傾斜を殺しながら、最後のパンピングハンドジャムへと繋げます。当然、要フォロー回収。私のムーブだとガバとハンドジャム以外存在しませんでした。2箇所目のレストポイントにダメージ少なめで入れないと、最後に待ち受ける核心で落とされること請け合いで、ストレニュアス。ほんとよくできたルートだと思います。初めてトライした人は大体ヨレヨレのマリオネット状態になって降りてくるのが、名前の由来か。プロテクションは良いですが、チムニー内の不意落ちで頭打たないよう注意。ヘルメットは、頭も(物理的にも本来の用途でも)使うのでオススメできません。アストロ同盟結成するか、道連れを捕まえてレッツゴー![シーサイド:サンライズエリア]
・アーリータイムズ5.10c(体感5.10c/d)1日2便
アップのつもりで登ったらうっかり落ちてしまいました。核心は見た目通りの場所で、クラックに固執すると10cでは済まない印象。要所で休めてワンポイント悪い系で、ストレニ性はないけれど、初見はわかりにくいと思います。蛇足ですが、隣の腰痛5.12bもどうやらワンポイント極悪系の模様。驚くほど足がない![シーサイド:サンセットエリア]
・サイクロン5.11c(体感5.11c)2日2便。
人気ルートのシンデレラボーイの横にある迫力あるルーフクラックを、フッキングで抜けるルート。あんな所にあんなホールド系。プロテクションも良いですが、傾斜強すぎてフォロー回収しないといけないのがちょっと面倒なのと、抜け口のカムスタックに注意。ジャミング要素は出だし位しかなく、核心は全くもってフェースムーブ。・赤道ルーフ1p目5.10c(体感5.10d)1日2便。
雨で他のルートがほぼ全滅していた時にトライしましたが、ヌメりでかなりおっかなく、たまらずテンションしてしまいました。これも全くジャミング要素はありません。そこらへんのアップで使うボルトルートより、ずっとパンプできます。カムがクラック内で開きやすいので、ご注意を。これも要フォロー回収。

(右は人生楽ありゃ苦もあるさ)

・赤道ルーフ2p目5.11b(体感5.11b)2日4便
1p目から繋げる元気はなかったので、チェシャ猫5.10dから継続。核心を抜けてパンピングアイアンⅠに合流する寸前、ヌメリに負けてテンション。トップアウトせずにその後トライを重ねたら、RP時にパンピングアイアンⅠとの共通部分がわかり辛くて泣きそうになりました(パンⅠ登ってない)。内容はサイクロンに似ていてジャミング要素なしのフッキング系、ムーブはサイクロンより易しいです。その分高度感はあって、プロテクション決めたら突っ込む系なこともあり、結構緊張しました。パンⅠ共通部分を一発でこなせる自信があるなら、トップアウトせずにエイドダウンがトライするのに効率的と思います。・人生楽ありゃ苦もあるさ5.9(体感5.10a)フラッシュ
これも雨で他のルートがほぼ全滅していた時にトライしましたが、ヌメりで最後のランナウトが怖かったです。アップに使うのは隣のチェシャ猫5.10dの方がいいなぁ。

[なみだち]
・アルタミラフェイス迷いルート5.10d(体感5.11a)フラッシュ
タコで腕が攣りかけた時にワークアウトでトライ。1つあるボルトまでは5.10a位で易しいけどプロテクションが悪くて、エイリアン黒が足元に。ボルトから先が分かりづらい核心で、名前の通り迷わないよう突っ込むしかないです。ボルトは多分まだ生きているけどドカ落ちはやっぱ怖い。核心は完全なフェースムーブの辛口ルートでした。・タコ5.12b(体感5.12a)3日6便
前傾135°の綺麗に割れた迫力あるクラック。日本で初めて登られた5.12のクラックとのこと。名前がかっこ悪い。内容は、核心で10手ちょっと、息つく暇もなくジャミング時々ジャムっぽいフェースムーブの、真っ向勝負のクラックルートでした。厳しいシンハンドという人が多いけど、私には悪いタイトハンドとバチ効きフィンガーでした。ジャミングの決まりの良い場所は限られ、遠い点と点をデッドポイントジャムで繋ぐ核心ムーブが厳しいです。核心は左手出しの人が多いようですが、私は右手出しでした。核心は低くてあまりパンプしてない状態でムーブが起こせるので、ムーブさえ決まれば登りやすい印象。プロテクションも良いですが、1個抜けるとグラウンドフォールの危険が常につきまとうので、確実に決める必要あり。年末に1便触って、2月末に真面目に始めましたが、めちゃくちゃ混んでいて、7人待ちまで!いつの間にか人気ルートに!?[日蓮崎]
・イブ5.10d(体感5.10d)1日2便
短い幅広フィンガールート。オブザベしていた時は「全部レイバックすりゃいいんじゃね」と適当なことを考えたけど、無理でした。オンサイトトライは、カムの番手を間違えて撃沈。カムを決めてから一度クライムダウンすると、その後登りながらカムを決めずに登れる位には短いですが、しっかりシビアなジャムがあって面白かったです。

右はスーパーシリアスジャム

・スーパーシリアスジャム5.11a(体感5.11a)2日4便
昨シーズンの宿題。覚えてなくて、今シーズンも2便出してしまいました。内容的にはフェース要素が強く、クラック限定で登れば良い練習になるかも。フェースを使うと、大してシリアスなジャムにならないのが残念でしたが、マイクロカムで遊べました。

[門脇崎]
・ホシナクラック5.11d(体感5.12a)5日16便
昨シーズンの宿題で、4日間通ったけど、3月の日を追うごとのヌメヌメ地獄に屈して詰めきれず。今シーズン1便目で、足切れまくったけど辛うじてRP。最初は悪目のフィンガージャムですが、カムをセットしてからはフェース力の問われる難解な4手の核心が待っています。ムーブ作りは初見では難しく、カムが1個でも抜けたらグランドフォール可能性大でセットもヨレる、良いコンディションを待つことが必要、付き合ってくれる心優しいパートナーも必須と、色々厳しいです。個人的には5.12aあると思っています。とにかく日当たりが良すぎて、日中は2グレード位上がって登れる気がしないですし、波が高いと取り付けません。そして何より、ホシナ以外あまりルートないのでビレイヤー核心。なお、下降箇所は観光地ど真ん中なので、朝1でさっさと降りてしまった方が良くて、奇声も上げない方が良いかと。下降支点作るときは、特大の6番キャメロットがあると安心感があるのでオススメ。同じフィンガークラック+フェースムーブのルートでは、イムジン河5.11c/dよりずっと難しく感じた、辛口クラシック。[もずがね]
・リサイクル5.11b(体感5.11a/b)オンサイト
似たようなルートのJuly・ザ・ダディよりわかりやすくてムーブもマイルドでしたが、しっかり悪いハンドジャムが要求されました。ほとんど登られていないようで、実質は下部のルーフ脱出まで。上部は5.9位ですが土が乗っていたりもげそうな岩があったりワイルドなので要注意。終了点は立木で作れ、遊歩道から回り込んで回収できます。出だしは壁の一番奥から始めた方が充実します。【ついで1:ボルトルート】
[アストロドーム]
・ジーマ5.12a(体感5.12a/b)2日7便
アストロドームの、マリオネットの対面の一番海側にあるボルトルート。波が高い日は取り付けないです。ボルトがまだ生きてそうだったのでドカ落ちしない程度にトライ。ボルト5本の短しい系。大体ポジティブなホールドですが、ホールドが遠くて初っ端からボルダームーブが連続、意外と腕が吸われて便数かかりました。【ついで2:ボルダー】
[富戸ジャクソンボルダー]
このボルダー、江戸城の築城のために切り出された石のようです。そのためルートは大体、過去に割られた面のホールドから構成されています。太刀岡山のカリスマ下部みたいな感じでしょうか。なお、名前の由来の?ジャクソンの青文字はもう消えて無くなっています。アプローチ1分、ルートも初段前後にまとまっていることもあり、いつも人の絶えない、人気エリア。昼間は日当たりが良すぎてヌメるので、朝夕がオススメ。

・馬の魂3級(体感2/3級)2日
昨シーズン、サーマレストスタイルで突っ込めなかったので、マット借りて登りました。ちょっと分かりづらい感じ。・馬の魂var.1級?(体感2級)フラッシュ
下部アンダーガバ(多分赤丸部分)を使わない限定とのこと。ムーブが変わって面白かったけれど、グレードがそんなに変わるとは思えなかったです。

・富戸の冬1/2級(体感2級)1日
スタートの左手薄カチが、ヌメるとロックできなくてきつかったです。岩が冷えたら登れました。右手出しでも、左手出しでもいけそう(私は右出し)。登った日は頂点にある鳥の糞を避けるのが核心だったかもしれない。・富戸の春初段?(体感1級)2日
トライ開始した時すでに2手目のカチが欠けていて、2日目には完全になくなってサイドガバが出現していました(写真左の赤丸)。元々シカーで固めていたので、しょうがない。カチれる範囲が狭くなったので、オリジナルムーブでは難しくなった気がします。私はオリジナルムーブではできず。しかし、欠けたためサイドガバが出現、左手で引いてレイバック気味に右手リップを一気に取れることが判明。このムーブだと初段あるか怪しいですが、バランス悪くて遠いので、結構難しい。・富戸の春var.2級?(勝手に仮称:オオサンショウウオの春)(体感2級)フラッシュ
上記の通りサイドガバが出現したため、右手を山椒魚側に簡単に出せるようになりました。このルートは、富戸の春と同じスタートで、山椒魚のガバカチ(上の写真の右側の赤丸)を右手で経由して、富戸の春のリップを取ります。手順変わって楽しいです。

・山椒魚初段(体感初段)2日
強烈なルーフを越えるこの岩の看板ルート。足位置に悩まされますが、ベスト位置に決まると安定してホールドが取れます。ヒールフックとトウフックどっちでも行けるようで、私はトウフックでした。後は気合でキャンパすれば核心終了で安心のカチ地帯です。面白い!

2017-2018シーズン 城ヶ崎トラッドルート

2017~2018シーズン
河合(記)

備忘録も兼ねて、今シーズン冬山サボって登った城ヶ崎のトラッドルートの紹介でもしようかと思います。

【浮山橋】
アプローチは駐車場から3分位と楽。しかしアプローチ道になぜか人のう〇こが時々あるので、足元要注意。

(1)トラベルチャンス5.10c PD(体感5.10b):フラッシュ
PD(Protection Difficult)となっていますが、スモールカム2セット、ナッツ1セットで取りついたところPDに感じませんでした。途中のボルトは無視できます。ムーブはフェース的で、ジャムはあまりしませんでした。友人が「全国に散らばるトラベルチャンス完登を集めるといいことあるらしい」と、ドラ〇ンボールみたいなことを話していましたので、誰か試してみてください。

(2)ストップ・ザ・トマホーク5.11a(体感5.11a):2便RP
上部は巨大チョックストーンとなっていて危ないので、ゲルニカに合流します。核心は出だしの5m。ハンド~フィストジャムのテクニックが試されます。ゲルニカと見た目は似ていますが、内容は異なる印象で、こちらの方がハードでした。せっかくなのでゲルニカとセットでどうぞ。

(3)ゲルニカ5.10d(体感5.10d):2便RP
ピカソのゲルニカには見えない気が。核心は出だしの5mで、トリッキーなジャムがポイントです。腕に覚えのある方は、是非オンサイトで!中間部は中だるみ気味で残念ですが、上部は豪快なガバハングが爽快です。終了点直下の岩は落ちそうなので、触れない方が良いと思います。

【シーサイド:サンセットエリア】
有名なボルトルートがたくさんある、冬のフリークライマーの定番ですが、ボルトルートの間にトラッドルートも結構あります。ただ、ボルトルートを登る人があまりに多いので、トラッドクライマーはちょっと肩身が狭い感じ。こんなこと書いている私も、シーサイド行けば大抵ボルトルート登っていますが。

(4)気分は最高5.10c(体感5.10c):オンサイト
スケールも結構あって見栄えのいいルートです。出だしのプロテクションはあまりよくなくて、グランドフォール者が結構出たらしく、ナッツのスロット下にボルト打ってあります。楽勝でオンサイトできる実力のない人は使った方が良いかと思います。その後も向きの悪いスモールカムなど、下部のプロテクションはいまいちで落ちたくないです。途中テラスがあって無限にたそがれることができますし、後半は傾斜も緩み、要所でしっかり休めるので、オンサイトし易いと思います。

【ファミリークラック】
5.10台の名クラックがたくさんあり、下地も良いですが人も多いです(シーサイドに比べれば少ないですが)。吊り橋から観光客に物落とされないか怖い。

(5)ファザークラック5.10c(5.10c):2便RP
城ヶ崎を代表するクラックとのことで、確かに綺麗です。上部クラックには飲み込まれたカムがいくつかありました。下部フィンガーは問題なく、核心は最上部のフェースムーブ。私は無念のオンサイト失敗。

(6)マザークラック5.10c(5.10c):フラッシュ
見た目結構いかついです。でも、胎内でノーハンドレストでき、核心手前もがっつり休めるので、上部のジャムと最後のホールドを見落とさなければ登り易い印象。

【かさごね】
何本かルートがあり、いずれも懸垂下降でテラスに降りてから登ります。ユマールなどあった方が便利。

(7)神風5.11b(体感5.11b):2便RP
山野井氏の作品。よくこんな所にルート見つけたなぁという場所にあります。上部は130°はあろうかという強傾斜にクラックが走っています。核心は短くムーブ強度大。ムーブはフェース的ですが、最後はやはりジャミング。また、登っている最中に物を落とすと海ボチャですので要注意(パートナーの眼鏡が海の藻屑と消えました)。取り付き辛い場所にある割には、先行パーティがいたり、上から覗き込んで来るパーティーいたりで、意外と人気ルート?降りたテラスには他にルートがなく、パートナー核心。

【あかねの浜】
よく日の当たる大きなエリアです。いつも混んでいます。抜け口付近に浮石が多いのでクライマーもビレイヤーも要注意です。また、大体のルートには途中にテラスがあり、上部でドカ落ちするとテラスに叩きつけられますので、これまた要注意。

(8)ゴミステーション5.11c(体感5.11c):4便RP
このルートだけ、あかねの浜のメインエリアから離れた、日の当たらない岩壁にぽつんとあります。名前はあんまりですが、シビアなフィンガージャムが数手あり、フィンガージャム技術の試される好ルートです。核心は左回りと右回りがあるようです。(私は右回り)。抜け口付近に浮きそうな大岩があるので要注意。

(9)カームフライデー5.10c(体感5.10c):オンサイト
出だしのチョックストーンはそのうち抜けないか心配。下部核心で途中無限レストでき、上部は快適。人気ルートでいつも誰か取りついています。

(10)ツワブキ5.10b(体感5.10b):オンサイト
下部はアプローチで、上部のフィンガーからのフィストが核心ですが、周囲にホールドあるので、ほとんどジャムしなくても登れます。上部のルンゼは落石を起こさないよう、細心の注意を払ってください。

(11)ホタテクラック5.10b/c(体感5.10c):2便RP
下部のクラックは結構悪く、私はここで頑張りすぎて肩痛めました。上部はちゃんとオブザベーションすれば難しくないですが、クラック限定で登れば面白そう。

(12) キョロちゃん5.10a(体感5.10c):フラッシュ
上部のクラックは幅が広くチョックストーンが詰まっていてワイルドな感じでした。ムーブもわかり辛く、かなり奮闘的になってしまったので、ホールド見落としていそうです。

(13)コモドドラゴン5.10d(体感5.10d):3便RP
途中に色の怪しいボルトが2つありますが、なくても登れそう。下部のコーナークラックは問題なく、抜け口のジャミング乗越が核心。しっかりプロテクション決めて突っ込みましょう。(テラスに叩きつけられて足捻挫した人を見ました)。

【おとじろう】
木々に囲まれた入江にある、落ち着いた静かなエリアです。下地は珍しく砂で快適ですが、あまり陽が当たらないので寒いです。

(14)おとじろうハング5.11a(体感5.11b):6便RP
おとじろうエリアを代表するルートで、上部3mは130°位の傾斜にフィンガークラックが走っています。下部は易しく、実質この3mにグレードがついていると思われます。核心は色々な登り方があるようですが、逃げずにクラック真っ向勝負をお勧めします。核心手前のレストホールドは尖っていて指が痛くなります。

【オーシャン】
多くのルートは懸垂下降しないと取り付けないですが、一部浜から取り付けます。

(15)ボクサー5.10b(体感5.10b):オンサイト
名前の通り、核心はフィストジャム連打で面白いですが、結構しょっぱかったです。

【日蓮崎】
3本、短いですが濃いクラックが走っています。杉野さんのHPにも書いてありましたが、これが3本繋がっていたら、素晴らしいルートになると思います。☆付きが並んでいるためか、冴えない見た目の割にいつも人がいます。

(16)インディアンドール5.10d(体感5.10d):3便RP
3本の中で一番長い(と言っても6m位?)前傾ハンド~シンハンドクラックです。トリッキーなジャムもあり、最初からエンジン全開で行かないといけないので結構大変。最後までブレずにジャミングを要求されます。

【門脇南の磯】
シーサイドに次いでボルトルートの多いエリアとのことですが、ボルトは錆びているものが多く、使う気になりません。クラックもそこそこ発達していますが、ガバホールドに乏しく、全般にあかねの浜より厳しい印象。

(17)July the ダディ5.11b(体感5.11b):3便RP
短いルーフチムニーで、ルーフから脱出した所で終了のようです。プロテクションは良いので思い切り突っ込めます。ムーブの解明にも思い切りが必要でした。短くてボルダー的でムーブは面白いです。私は傾斜が強いのでフォロー回収、終了点撤収後、上まで抜けるのが面倒だったので、隣のルートをクライムダウンしました。

(18)海が見える5.10a(体感5.10b/c):フラッシュ
波が高いとビレイヤーが波被るので取り付けません。中間部はバランシーでムーブわかり辛く、プロテクションのセットもしにくくてストレニュアス。最後はマスターカム1番を足下5mに微妙なボロ壁スラブムーブと、精神的要素も強くて、このグレードにしては難しく感じました。

【漁り火エリア】
(19)イサリビクラック・ライト5.10c(体感5.10c):オンサイト
短いですが見栄えの良いクラックで、内容も素直でお勧めです。フェース要素も結構あります。登った時は上部クラックの染み出しが酷くてとても保持れる状態ではなく、雑巾がけ、チョーク塗り込みムーブを駆使しました。