奥秩父 大洞川・荒沢北雲沢

2021年7月10~11日
赤井・小池・谷水(記)

赤井さん・小池さんが沢に行くと聞いたので、混ぜてもらうことに。梅雨の終わりで半日ごとに天気予報が変わり、なかなか場所が決まらない。もうバリエーション尾根に…ともなったが土壇場で予報が回復し、無事沢山行に行くことができた。

コースタイム
7月10日 サメ沢橋ゲート(9:25)-荒沢谷橋(10:30-10:48)-アシ沢出合(11:48-12:01)-狼谷出合(15:00)-ビバーク地点1260m(15:55)
7月11日  ビバーク地点(6:29)-北雲沢出合(7:14)-登山道(9:50-10:00)-雲取山(10:25-10:30)-お清平(13:25-13:35)-猿鼻尾根-サメ沢橋ゲート(15:15)

7月10日(晴)
釣り師の多い沢なので朝出発。天気予報では曇のち雨だったが、それに反して晴天で気分は上がる。林道歩きの1時間は暑く、早く水に入りたくてたまらなくなる。橋で準備し増水気味の沢に入渓。わざと水流の強いところを選びしぶきを浴びたり、深みにハマって流されてみたり、気温の高さも相まって水の冷たさが気持ちいい。アシ沢を過ぎ、ベンガラの滝に着くが水が前に飛び出していて真っ白。巻いていてもしぶきがすごい。増水をはっきりと感じられた。

ベンガラの滝

その後絶好のテンバである菅の平につくが、時間はまだお昼。明日朝一で井戸淵に入りたくないので先を目指して進む。井戸淵は短く明るい。突破できないかと入ってみるが、2つ目の滝ではじかれる。滝の水量もあるが、淵も白く泡立っていて底がしれない・・・。巻道もあるし無理はしなかった。

井戸淵のはじかれた滝

巻きは右手から。遡行図によると狼谷に降りるみたいだったが出合いへ向けての懸垂下降で本流に戻れた。30mロープで事足りた。そこからはひたすら小滝をこえ歩き、沢が左側へ曲がってきたな、というところで左手に大地をみつけそこで幕営。本流から離れているし、高いしさらなる増水でも耐えられそう。

しかし連日の雨で薪はしけっていた。科学の結晶である着火剤を多用し火はついたが、大きくはならず、いつまでも手のかかる焚火であった。寝る前に光に寄ってきたのかミヤマクワガタ(河合さんに確認済)が現れ、野生のクワガタを初めて見たと言ったら赤井さんに驚かれてしまった。

ライトに映えるミヤマクワガタ

7月11日(晴)
出発してから1時間くらいのところで本流が土砂崩れで埋まっており伏流も水が少なかったので、水をくんだ。しかし土砂崩れを過ぎるとすぐに本流の水は復活、脱渓するまで枯れることはなかった・・・。

大雲沢はつめが悪いらしいので北雲沢に入る。この二股の手前から倒木がひどく鬱陶しくなる。早めに尾根に上がってしまいたかったが、同行者が沢を詰めたそうだったので沢どうしで登山道を目指した。1780m付近の雲取山と三条ダルミの間に出た。そこからはひたすら北へ。お清平目指して一直線。15時から雨予報もでていたので、それに合わないように急ぎ気味。お清平からトラバースで猿鼻ノ尾根にのり標高差700m下の雲取林道目指して下る。空はまだ青く雨が降る様子はない。1136地点を南西にとるとすぐに雲取林道に続く林道に出た。

クネクネと林道を辿ること30分ほどで曇り林道に合流。そこからサメ沢橋までの10分間がとても長かった。西の空が暗くなってきていたので、降り出す前に戻ってこれて一安心。荷物を車にのせ、出発して暫くして土砂降りに。いいタイミングで降りてこられた。

山行中は本当に晴天で気持ちが良かった。サメ沢橋を出発してから3組の釣り師とすれ違ったので、この流域はゆっくり出発がちょうど良かった。増水していたことで巻いてしまった滝も平水なら取り付けたように感じたのが、やや残念ではあった。飛び入り参加を快く受け入れてくださりありがとうございました。

大洞川 和名倉沢~市の沢下降

2000年7月1日~2日
中嶋、椛島(記)

7月1日 出合8:45 幕営地(2段10m滝の上)14:00 快晴→豪雨→晴れ
7月2日 出発7:30 和名倉山頂上9:00 大洞ダム13:00 快晴→豪雨→晴れ

6月のはじめに大洞川の本流である井戸沢に行った。奥秩父有数の名渓と謳われるだけのことはあった。身を刺すような冷たい水と、踏み跡に幾層にも重なる鹿の糞に秩父の山深さを知った。新緑が目にまぶしい山行であった。その時林道から目にして気になる沢があった。それが今回行った和名倉沢と市の沢である。特に市の沢の深山幽谷たるたたずまいは岳人の心を打つに値するものだと思う。

社会人山岳会に属していると、普段の山行の足に車を使うことが多い。時間に余裕の無い社会人クライマーにとって、電車の山行はそれだけでひとつの試練だといえる。今回我々は果敢にもその試練に立ち向かった。車の利便性よりも電車とバスによる「味わい」を求めた。意固地になって時刻表とにらめっこし、大慌てでパッキングを済ませ、まだ明るいうちに家を出て電車に飛び乗った。車内で地元のおじちゃんたちに山の話を聞き、飛び交う虫たちと戯れる。いやが上に気分が高まる。

土曜の朝、三峰口から始発のバスに乗り込む。乗客は我々と学生二人組。外は快晴。終点秩父湖でバスを降りる。小1時間林道を歩いたのち入渓。さすがに梅雨の最中、水量は多い。豪快な滝ときれいな瀞が続く。40m大滝はかなり立派だった。全体的に巻き路もしっかりついていて、ザイルを出すところも無い。

昼過ぎになると、空模様が怪しくなってきた。上に抜けるかどうか判断しかねていたところに、素敵なテンバを発見。すかさず幕営するも焚火がなかなかつかない。梅雨で枯れ木が湿っている。そうこうしているうちに霧雨が舞い出す。しかしそこはガッツと根性と気合でがんばる。持参した日刊スポーツのエロ記事を惜しみながらも種火につかうと不思議と火は燃え盛った。しばし焚火を楽しんでいると、今度はすさまじい雷雨が襲って来た。テントを打つ雨音が重い。閃光と雷鳴が交錯する。和名倉の神様はエロ記事が嫌いなのか?それとも東スポのほうがよかったのか?などと考えているうちに雨はやみ、空を見上げればまばゆいばかりの青空と紅の陽。

翌朝も快晴。新緑の燃え盛る源頭をつめる。トポでは猛烈な藪こぎを強いられるとあったのだが、まだ時期が早いのかたいしたことない。しかし稜線に出てからは、頂上まで浅い踏み跡があるのみ。点在する赤布を見ないようにして、オリエンテーリングの練習を敢行。地図とコンパスを手にルートファインディングするにしても、雪稜と藪の稜線じゃ勝手が違う。なかなかいい勉強になった。

頂上は視界ゼロ。完全に藪の中。三角点の周囲半径2mぐらい刈り込みがあるのみ。虫の天国だった。落ち着いてレーションも食えない。将監峠から来たというおっさんが我々の後から頂上にきて「むしはむし」と一人でぶつぶつつぶやいていた。さすがの中嶋さんでも対処できなかったようだ。頂上からは明瞭な踏み跡をたどり市の沢へ下る。潅木が実に美しい。なめ滝も美しい。いい沢だ。

市の沢を半分ほど下ったあたりで、前日と同じく激しい雷雨に見舞われる。あっという間に沢が黄濁し、激流と化す。壮絶極まりない。なんでもないところの渡渉が、けっこう命がけ。びびった。山の恐ろしさとは、こういうところにあるんだな、と実感する。ほんと、一級の沢もなめたもんじゃないね。

市の沢を出合まで下り、雨も小ぶりになる。そこから2時間の林道歩き。かったるい。しかしそこは日頃の善行のおかげか、捨てる神もあれば拾う神もあるものだ。和名倉の神は我々を拾ってくれた。パンク修理で困っていた金持ち釣師に出会い、彼を手伝った我々は、なんと秩父の駅まで送っていただいたのだ。バス代と電車代儲かった。ただひたすら感謝である。

そんなこんなで、なかなか味わい深い山旅であった。