八ヶ岳 横岳西壁石尊稜(これからバリバリ登りたい若いクライマー達へ~八ヶ岳解説と懸賞付)

これからバリバリ登りたい若いクライマー達へ
八ヶ岳解説と懸賞付

1999年 2月2日
板橋(記)、嶋崎

6時30美濃戸 – 8:15赤岳鉱泉 – 9:45取付き – 12:15 終了点

強烈な冬型で、上空5000mでマイナス40度以上の寒波がやってきます。

美濃戸からいつもは見える阿弥陀岳が見えません。

美濃戸の小屋の前のおじさんも少しさびしそうにポーズを決めてます。

幸いまだ雪は降っていませんが、時間の問題でしょう。

八ヶ岳は太平洋側の気候とはいえ、冬型が強いと天気は悪い。

その辺は十分理解しておきましょう。

赤岳鉱泉への柳川北沢沿いの道を歩き、しばらくすると左側にショートカットコースの入口があります。

多分5分くらい短縮できます。

でも御用心。

沢沿いなので、雪の下はナメ氷です。

こんな所でこけてはダサいので、慎重に。

カットの後はまた、林道です。

鉱泉の車が頻繁に入っているので、運動靴でも行けちゃいます。

左に大きくカーブする所でもカットができます。

ここの堰堤はアイスができるくらい凍ることもありますが今年はだめそうです。

しばらく歩くと林道終点。

ここで一本とってしまうようではアカンですな。

橋を渡り登山道に入りますが、ここも運動靴でも大丈夫でしょう。

一回目の橋を渡る所で後ろを振り返るとそこには登れそうな氷が見える。

これは「大岩ルンゼ」と呼ばれるアイスのゲレンデです。

しばらく沢の左側の歩きますが、右に渡り返し、もう一度左に渡ったあたりでパラレルツインの氷柱が見えます。

これが「赤岩の氷柱」です。

この辺は「峰の松目沢」

の出合いらしく、赤岩の氷柱を登りにトレースを追っかけたら峰の松目を登ってしまった事もある。

ダサー。

正面に、大同心や小同心が見えます。

その間のルンゼが大同心ルンゼ。

大滝も良く見えます。

大滝の左や正面は歯が立つが、右のラインは難しかったです。

赤岳鉱泉に着きました。

ここでアイゼン以外のガチャを着けてしまいましょう。

忘れ物はないか最終チェック。

食料や燃料などはここでも購入できます。

でも高そうです。

さあ出発しましょう。

行者小屋への道をじゃらじゃら音を立てて歩いていきます。

10分も歩くと左にトレースが分かれます。

このトレースは柳川北沢沿いにつけられています。

少し、雪が深そうなので、もう少し一般道を進みましょう。

指導標が立っているところにも左へ行くトレースがあります。

このトレースに入り、古いロープをくぐると柳川北沢に降りれます。

トレースが無いとラッセルになってしまいますが、三叉峰ルンゼや石尊稜など人気ルートが奥にあるのでトレースが消えることはないでしょう。

左へカーブして倒木に覆われたルンゼが、「小同心ルンゼ」の出合です。

「無名峰北尾根」へはここをつめていきます。

更に進み、左にカーブして出合うのが「三叉峰ルンゼ」です。

新雪期には、氷が出ているのですが、今は雪の下になっています。

大滝の手前でアイゼンをつけ、右の雪壁を登りましょう。

簡単に「石尊稜」に上がれます。

右から回り込み少し登ると下部岩壁です。

我々は1ピッチ50mで抜けきりましたが、ぎりぎりなので、途中で切ったほうが無難でしょう。

ビレイ点は潅木で取り放題です。

中間雪稜は所々露岩が出ていますが、ロープ無しでも進めます。

ロープをつけていると6~7ピッチになるでしょう。

眺めのいい雪稜のつきあたりが上部岩壁です。

右を回り込めるらしいですが正面のカンテ状を登るのが自然です。

1ピッチ目は伸ばせるだけ伸ばして、岩角をうまく使ってビレイ点を作りましょう。

岩角支点と草付アイスフックは八ヶ岳では必須の技術です。

2ピッチ目で岩稜帯を抜けてしまい、縦走路に出て終了です。

風が強いので、岩陰に隠れて、ガチャをしまいましょう。

下山は地蔵尾根経由がよろしいでしょう。

このあたりの縦走路は、雪山歩きとしては手強いらしいですが、吹雪かれようがヘッデンをつけようが下山できるようになれれば、精神的にも余裕が出てきます。

ほとんど左側を巻くのですが、1ヵ所だけ右を大回りで巻くところがあります。

ここは、ヘッデンでは判りづらいので、周囲の地形を頭に叩き込んでおきましょう。

45分ほどで地蔵尾根の分岐です。

地蔵尾根も吹雪かれると西風をもろに受けたり、雪崩れたりするので注意が必要です。

途中で2ヵ所ほど、尾根が分かれて迷いやすいところがありますが、右に行けば道を外さないでしょう。

雪に埋もれた階段のところから尻セードで一気に下ると樹林帯に入ります。

ここでアイゼンを外し、グリセードとスケートを屈指すれば10分もかからず行者小屋へ到着します。

ここから直接美濃戸への道を下るより、中山乗越から赤岳鉱泉に戻ったほうが道も良く早く下れるでしょう。

赤岳鉱泉からは美濃戸まで走って下るのもよいでしょう。

秀峰登高会若手諸君へ

赤岳鉱泉から美濃戸まで30分を切ったらルノアールでコーヒーをおごりましょう。

板橋は無名峰南稜の登攀後30分で降りました。

健闘を祈ります。

 

 

八ヶ岳 横岳西壁石尊稜

1998年2月26日
荒井・森広(記)

曇~雪~曇

6:20くらいに美濃戸山荘下の駐車場から歩き出す。

北沢に入るとモナカ雪のラッセルになり、進まないので、最初は日ノ岳稜を登る予定だったが、一番近い石尊凌に変更した。

スラブ状の取り付きの壁を登り、安定した岩稜から雪稜になる。

アプローチでは咋日降った雪はほとんど積もっていなかったが、登るにつれて新雪が増えてきた。

上部岩壁の基部では不安定な積雪がかなりあったので、トラパースして縦走路に出るのは危険に感じた。

上部岩壁はすべてガバホールドで易しく、不安は全くなかったが、雪壁になってから少し登ると、アイゼンの爪で硬い旧雪を掟えることができなくなった。

「感じ悪いな」

と思いながらも5mほど上に見える岩を目指してさらに登ると、スリップしたような感覚があって、雪が動き出した。

自力では止められずに、ザイルにぶら下がって止まった。

易しいからといって9ミリ1本で登っていたのだが、止まってよかった。

自分で雪崩を出したのは初めてで、これで危ない雪の感触がわかったような気がする。

もう1本のザイルで確保してもらって登り返し、そのまま雪壁を登る。

かなり広範囲の雪が落ちたようで、硬い旧雪しか残っていないからこの場はもう安心だ。

確保支点を作ろうとして首にかけていたシェリンゲがなくなっているのに初めて気付いた。

やはりあわてていたのかもしれない。

縦走路に出ても、踏み跡は全く残っていないし、ホワイトアウトしてしまって、ルートがわからず、時間がかかる。

雪面をトラパースしなければならないところが出てきたので、危ないからザイルで確保してトラパースしたら、期待に応えて再び雪崩がおきた。

何とか見えるうちに地蔵尾根の下降点までたどり着いたが、まもなく暗くなり、迷いながら下降する。

下ると新雪は浅くなり、行者小屋付近にははとんどない。

時刻は18:40になっていた。