南ア 甲斐駒ケ岳 赤石沢ダイヤモンドAフランケ赤蜘蛛ルート

2000年9月27日(水)~28日(木)
森広、大滝(記)

このルートもずっと昔から登りたかった。

氷登りでは、甲斐駒に何度通ったか知れないが、赤石沢に踏み入った事はなかった。

この2年間、計画は具体化していたが雨に祟られて不戦負の繰返しだった。

奥鐘を終えて4日後、僕の車は竹宇神社に向けて疾走していた。

9月27日

夏用シュラフで寝ていたらとても寒かった。

大陸から寒気が流れ込んでいるそうだ。

ゆっくりして8:40神社出発 16:00八合目でテントを張る。

岩小屋は暗くてどうも泊まりたくない。

奥鐘ではゆっくり出発して失敗したので、真面目に4:00起床。

水も各自1L持つ。

5:30にテントを後にしたら、丁度御来光を拝めた。

しかし、寒い。

所々少々迷いながら踏み跡を辿って行く。

迷ったら左側に行ったほうがいい。

下に下る程テープや布が出てくる。

フィックスロープも沢山ある。

7:00取り付き。

初めて見る赤石沢、多くが直線で構成されている白い花崗岩、少ない草付き。

岩の王国。

わくわくしてくる。

長年、憧れてやっと来られた。

密かに2P目のディエードルをリードしたくて、「森広さん、先に行って下さい。」

と譲るが、2本目のピンが遠くアブミが届かなく交代する。

1P目終了点で合流すると、「大滝さん、次のピッチリードしたくて私に先行ってと言ったんでしょう。」

ばれていたか。

「すいませんけど、次行っていいでしょうか。」

と、お願いすると「どうぞ。」

やったぁ。

V級のディエードル、凄く楽しい。

ぐいぐい、これぞ岩登りの醍醐味。

うーん快感。

3P目 森広リード 結構難しくて恐い。

4P、5Pと快適に進み、いよいよ6P目の人工部分だ。

ハーケンを抜いてある所には、フレンズで言えば、1、1-、2、が2ヶづつあればいいだろうか。

やはり、それらに体重を預けるのは恐い。

アブミビレーで痺れを切らす。

凄い高度感だ。

白稜会ルートの振り子の部分が良く見える。

何だか行ってみたくなった。

白い壁を思いきり振り子で駆けたら楽しいかも知れない。

次のピッチの2本目のボルトが遠く見えたので、大滝が行く。

楽しくアブミをかけかえていく。

14:40 Aフランケ岩小屋に着く。

登攀用具を片付けていたら、オコジョが出てきて「こんにちわ」。

暫く目の前をちょこまかしていた。

実に可愛い。

15:30 八合目 テント撤収して16:00下山開始 20:40竹宇神社着

*大滝のヘッドランプの光量が少なくなっていた。

出発前にチェックした時はとても明るかったのに急激に減退したようだ。

予備電池を持参していなかったので、森広さんから借りた。

今回もまた反省点が出来た。

強行軍だったので3日間位足の筋肉痛が残った。

 

甲斐駒ヶ岳 赤石沢Aフランケ赤蜘蛛ルート

1999年1月15日~1月17日
向畑(記♂38歳)、杉浦(♂29歳)

~最初に感想~

赤石沢は全く初見で取付いたため、アプローチ等の状況がよくわからなかったことや、15日に着いた新雪の処理に手間取ったことなどから、登はんに2日を要し、下山も遅い時間になってしまった。

しかし、壁の概要を把握した上で、もう少しいろいろと考えて登れば、充分1日でも抜けられる壁だと思う。

ルート自体は、クラック、リス等の弱点をつなげたラインで、しかも、巻いたり、回り込んだりせずに、壁の中心部を攻撃的に突いている。

その昔、某クライマーが余分なボルトをたたき落とした気持ちも、個人的には大変よく理解できた。

1月14日

100m先からでも来たことがわかると言われている、騒音が近所迷惑なスカイラインで杉浦君に迎えに来てもらい、竹宇駒ヶ岳神社手前にあるという、無料駐車場を目指す。

1月15日

寝たのがかなり遅かったため、6:30起床、8:00頃からのんびり歩き始める。

8合目の岩小屋がわからない、というよりも、8合目自体がどこだかわからないことや、多分明るくならないと、Aフランケへの下降路がわからないから、7合目に泊まっても同じだということで、非常に快適だとのうわさを聞いていた七丈小屋を目指す。

神社を過ぎ、山道になってきた頃から雪がちらつき、高度が上がるにしたがい、だんだんと積もり始めた。

15:00頃、7合目に着く頃には結構な積雪になっていた。

1月16日

5:30出発。

天気は晴れ。

甲斐駒往復の登山者の他、左ルンゼ、中央稜、Aフランケ白稜会ルートなどに向うパーティが泊まっていたが、既に小屋には誰もいなかった。

8合目からはトレースを追い、Aフランケ基部へと下降。

白稜会ルート1ピッチ目に取付く先行パーティにお礼を言って、となりの赤蜘蛛ルートを登り始めた時には、既に9:00を過ぎていた。

この段階で、早くもビバークを覚悟していたが、ただ、この時点では、大テラスから1~2ピッチはフィックスできて、翌17日には余裕を持って抜けることができると考えていた。

1ピッチ目、杉浦リード。

フォローは全ピッチユマーリング。

ラダーの人工だが、ビレーポイントのテラスに雪がどかっと乗っており、払い落としに苦労していた。

2ピッチ目、向畑リード。

2~3ピッチ目は、70mほど続くジェードルにクラックが走っている。

残置は少ないが、フレンズ、エイリアン、キャメロットなどから選んだサイズがおもしろいように決まるので、普通の人工とそれほど大差なく登れる。

3ピッチ目、ビレーポイントが狭く、入れ代わりが面倒なので、そのまま向畑リード。

内容は2ピッチ目と同様だが、残置が増え、ずいぶんと楽になる。

4ピッチ目、杉浦リードでカンテを人工で回り込み、ワンポイントのフリーから再び人工、さらにハングの乗っ越しに果敢に挑むが、ここではまる。

ハング上には新雪が乗っており、ホールド、スタンスとも乏しいみたいだ。

最後のアブミからハング上に立ち込もうとするが、ついつい足がアブミに戻って来てしまう、ということを5~6回繰り返し、あえなく敗退。

ロワーダウンでビレーポイントに戻って来た。

リードを交代し、気合を入れてハング上に立ち込むが、目の前のスラブには30cmほどの新雪が乗っている。

ピッケルを振り回して除雪しながら、細かいスタンスに立ち込み少しずつ進むが、ふくらはぎがしびれてくるので、浅打ちナイフブレードのタイオフからスカイフック、再びナイフブレードのネイリングと、アブミに乗って休みながら除雪を続ける。

スラブから小ハング上の残置ハーケンにピッケルを引っかけ、アブミをかけてさらに除雪。

結局、ハング上から、大テラスまでの約20mくらいは、除雪と、ふくらはぎがけいれんしそうな立ち込み、抜けそうなネイリングでの休憩の連続だった。

冒頭に登場した、某クライマーの同じクラブの後輩にあたる、ある先鋭的クライマーが執筆した「氷雪テクニック」には、冬季登はんにもちいるピッケルは、「長ければ長いほど良い」と書かれていたが、この時ほど短身のピッケルがもどかしいことはなかった。

この結果、大テラスにフォローを迎え入れたのは、ビバークタイムとしては最適な16:30となっていたので、余計なことはせずに、さっさとビバークの準備を始めた。

シェラフカバーしか上げていなかったので、夜はさすがに寒かった。

1月17日

天気は快晴だが、寒くて体がなかなか動かず、登り始めたのは8:00を過ぎていた。

5ピッチ目、向畑リード。

短いクラックからスラブ、さらに短いクラックからビレーポイントへ。

クラックの部分はフレンズ類の人工。

6ピッチ目、杉浦リード。

出だしのラダーからリスが延々と続く。

ロープスケールも40mほどあり、とても見栄えのするピッチ。

ただし、リスには最初からハーケンが打ってある。

部分的にリスがフレアーするところだけ、エイリアンやロックスを使っていたみたい。

7ピッチ目、向畑リード。

カンテを人工で回り込み、やや右上。

8ピッチ目、杉浦リード。

ワンポイントの人工からフリー、再び人工で樹林帯に突入。

9ピッチ目、向畑リード。

木登りでロープを目一杯伸ばし、Aフランケ頭の岩小屋の下でピッチを切る。

15:00頃終了。

そこでロープをたたみ、白稜会ルートから赤蜘蛛ルート上部につなげたらしい先行パーティのトレースをたどる。

8合目の稜線には16:00頃着。

七丈小屋着17:00、デポを回収、荷物を整理し、17:30下山開始。

満天の星空のなか、甲府の夜景に向って黒戸尾根を下った。

駐車場着23:30頃。