錫杖岳 前衛フェース 黄道光、1ルンゼ

2018年7月14日、15日
野澤、河合(記)

海の日3連休は毎年天気よくないけど、今年は珍しく晴れるという予報。でも暑くなるらしいので、多少は標高の高い錫杖岳に野澤さんと行くことに。狙うは、2年前の宿題、黄道光5p 5.11c。前回は注文の多い料理店登って余った時間に1p目だけトライしてとても苦労したけど、今回はどうなることやら。

7/14
前夜入りして3時間睡眠。5時10分出発。同日程で錫杖入りする薄田さん川上さんパーティはまだ爆睡中。テン場は2番乗り、まったり支度して、8時35分、左方カンテ1p目登攀開始。一番乗り!

1p目(左方カンテ):Ⅲ級 35m(リード:河合)
前来た時より、豪雨の影響か明らかに荒れてる。正規終了点の手間5mの立木でピッチを切る。

2p目(黄道光1p目):5.11a 30m(リード:野澤)
側壁に微妙に遠い間隔でぺツルボルトが並んでる。野澤さんは出だしにカムを決めて壁に取り付いたところ、フットホールドがモゲた!少し下から取り付いてしまった模様。その後核心のコーナーレイバックを行きつ戻りつ、意を決して吠えながら突撃!残念ながらテンション。その後わかり辛いスラブをこなして終了点へ。1時間半位の粘りのクライミング。コーナークラックは湿気ていたとのことで、カムは出だしだけ。
セカンドの私はユマール。最初から空中ユマールでしんどく、普通にフォローした方が楽だったかも。

3p目(黄道光2p目):Ⅱ級 20m(リード:河合)
テラスへ向けて草付トラバース。

4p目(黄道光3p目):5.11c 55m(リード:河合)
本ルートの核心ピッチ。ガチャ大集結!♯0.3~3のカム2セット+♯0.2、1、2、ナッツを揃えて万全と思ったら、♯0.4を自宅に忘れて1個しかないことに気づく。
それにしても暑い!2p目のユマールで汗だく、20分位レストしてからスタート。

出だしはアツアツに温まったハングを越えるけどホールドわかり辛い。カムをセットする間に腕が吸われ、気合のデッドポイントからの癒しのクラック!と思ったら、「びちゃびちゃじゃね~かよ!」思わず叫んでしまう位には濡れ濡れクラック。思わずテンション!と叫びそうになったけど、2p目の野澤さんの魂のクライミングを思い出し、寸前のところで口を噤む。
その後、びちょ濡れのクラックをだましだまし登って、サンシャインクラック入口のハング下でレスト。この間、何回悪態ついたかわからない。憧れのルートがアツアツビチャビチャだなんて、愚痴りたくもなるもの。(当日、左方カンテを登っていた皆様におかれましては、汚い言葉の数々、すみませんでした。)
レスト後、第2核心となるハングに突っ込む。プロテクションの選択を誤り腕がパンプ、最後はサンシャインクラックに届いた左手フィストがすっぽ抜け、涙のフォール、やっちまった…しばし呆然。
その後、魂が抜けてしまい、ノロノロとアツアツのオフセットしたサンシャインクラックを適当にレイバックでこなし、またボルトに戻るとムーブ悪く余裕のテンション。ここが最大核心か~こりゃ条件良くてもオンサイト無理だ~。しかもガバホールドがヌルっとしたと思ったらツチガエルが飛び出したり。
40m地点付近には両手放せるテラス。でも正規の終了点はまだ10mちょっと登らないといけない模様。ろくにカムないんですけど・・・レッジトゥレッジという点でも、ここでピッチ切っていいんじゃね?という誘惑にかられるも、頑張ってちゃんとした終了点のある扇岩テラスへ。2時間近くかかってしまった。後続のパーティの方(1p目で撤退した模様)、すみませんでした。
野澤さんは最初フリーを試みるも、荷物の重さに耐えかね、ユマールに切り替え。55mの斜上クラッククリーニング、お疲れ様でした。

5p目(黄道光4p目):5.11c 40m(リード:野澤)
鉄人の体力を誇る野澤さんの調子が悪そうだ。軽い熱中症かな。扇岩テラスでじっくり休んで水飲んだ後でトライ。セカンドがユマールの場合は、ユマールからのリードはしんどいので、リード固定の方が良かったかも。
最初は8つのボルトが程々の間隔で並んでいて、その後クラックに入る所が悪そう。野澤さんはアメリカンエイドに切り替えてトップアウトに専念していた。後半のハング手前のコーナーも悪そう。ハング部はボルトが噂通りたくさん打ってあって、下の方とコンセプトが異なるように感じた。このピッチも2時間近くかかってしまった。

河合はユマール。1p目よりは傾斜ないから大分楽と思ったけど最後はやはり空中ユマール。終了点に着いたら17時と時間かかり過ぎ、丸一日使ってしまった。
まだ修行が足りないということですね。精進します。
下降は60mロープで懸垂3回。新品ロープがスパゲッティになったり、スタックしかかったりで大分時間かかってしまい、アプローチも迷いかけ、結局ヘッデン出して久々の残業になってしまった。テン場帰着は20時過ぎ。

7/15
当初は、2日目も個別ピッチのRPをかけて黄道光、または北沢フェース右ジェードル~上部錫思杖戯と思ったけど、黄道光の核心5.11cの2ピッチは条件的にRPは厳しいこと、上部錫思杖戯は昨日、遠目に濡れ具合が酷いことを確認していたので、昨日薄田さんと川上さんが登ったというLittle Wing 5.10cに行くことにした。
そもそも起床が6時とやる気なく、取り付きの1ルンゼでは当然の順番待ち、しかも先行パーティのリードが派手に10m位ぶっ飛んだりして(尻打っただけでどうやらほぼ無傷だった模様。よかった。)スタートしたら既に9時40分。

1p目(1ルンゼ)Ⅳ級、Ⅴ+ 50m(リード:河合)
終了点の位置を覚えていたので、トポの1p目と2p目をリンク。途中、手前でピッチ切った先行パーティが進むのを待っていたら、綺麗なランを見つけて癒された。

2p目(1ルンゼ)Ⅳ級 40m位(リード:河合)
野澤さんはⅤ字状岩壁のすぐ手前でピッチを切っていた。後でわかったことだけど、正規?のぺツル終了点は側壁側にあったらしいけど、Little Wing入るつもりだったので問題ない。

3p目(1ルンゼ)Ⅳ級、Ⅳ級(ライン違って多分Ⅴ級)45m位 (リード:河合)
またリンクして、Ⅴ字左のルンゼ~大テラス~ボロボロのフェース。ボロボロのフェースはプロテクション取り辛くて、岩も脆くてちょっと緊張。掴んだアンダーがもげかけた。ハーケンとスリングの残置のある小レッジでハンギングビレイ。

4p目(Little Wing 1p目) 5.10b (リード:野澤)のはずがトラバース15m
さて、Little Wing入口に着いたぞ~と見上げると、そこにはびちょ濡れの壁、滴る水・・・こいつはやべぇ、ということで早々に挫折、1ルンゼのラインに復帰を試みてトラバース。
(後で詳しく聞いたら、薄田さん、川上さんパーティも別のラインでエスケープしたとのこと)フォローの河合は濡れ手で滑って初めてカムを落とすも、幸い大テラスでストップ、先行パーティに下降時拾っていただきました。ありがとうございました。

4p目の続き(1ルンゼ復帰中、10m)(リード:野澤)
先行パーティが懸垂下降していたので待ってから、正規1ルンゼ5p目終了点のぺツルの終了点に復帰。

5p目(1ルンゼ)Ⅳ級30m位(リード:河合)
前回1ルンゼ登った時はLittle Wing 5.10bのラインを登ったので、正規ラインは今回が初めて。出だしのプロテクション取れない所にはぺツルが2つ打ってあった。後はルンゼと見せかけてカンテ登りを楽しんで、適当に終了点へ。ロープの流れが悪い。Ⅳ級よりは悪く感じた。

この時点で14時。順番待ちやら、ルート復帰やら、暑さでだるいやら、大分時間食ってしまった。アタックすればLittle Wing は登れるだろうけれど、本日帰京の野澤さんの明日の仕事がヤバイことになってしまう。ということで、モチベーションも上がらないこともあり(疲れてたんだと思う)、無理せずここで敗退することに。下降は懸垂4ピッチで、15時に取付、テン場で薄田さん、川上さんパーティと合流し、恒例の早足をこなし(ガチャ担いでテン場から登山口まで30分は、とばし過ぎてると思う)、汗だくへとへと下山。
帰京する野澤さん川上さんを見送り、薄田さん、河合は居残り。

7/16
薄田さんが西穂高岳にハイキングに行くというので、私も付き合ってまったりハイキング。標高高くても日差しがあるとやはり暑かった。

今回は念願の黄道光の完登をかけて頑張ってみましたが、結果的には中途半端になってしまいました。オンサイトを逃して悔しかったけれど、憧れのサンシャインクラックをフリーで(テンション交じりだったけど)こなせたのは嬉しかった。実力が足りなかったということで、また機会あれば練習してトライしようと思います。でも、もう真夏には行かないもんね・・・

北ア 錫杖岳 前衛フェース 注文の多い料理店、1ルンゼ

2016年8月10日~12日
薄田、河合、山口(バーバリアン)

この夏休み、前半戦で赤蜘蛛登ったので後半どこ行こう?屏風?滝谷?剱?北岳?夢は膨らみましたが赤蜘蛛でヨレた体は完全回復せず。
ということでアプローチの短い錫杖岳に行くことにしました。今度は連休開始で元気モリモリの山口さんも合流。

8月11日(木)
河合(記)

注文1

10日、また前夜発。中央道は渋滞で5時間かかってしまい、槍見温泉駐車場26:00到着。

11日、登攀意欲バリバリの山口さんと、ヨレヨレ組の薄田、河合の間で起床時間を巡るかけ引きがありましたが、結局5:00起床となりました。
眠い…ゆっくり歩いて汗をかきかきテン場へ。
テン場にて(河)「あー、~もうビール飲みたい」(山)「そんなんで大丈夫?」(河)「大丈夫!取付いたらスイッチ入るから」(山)「(ホントかよ・・・)」
この後も弱気発言を繰り返す主に河合、時々薄田の両名は山口さんの叱咤激励を受けながら取付へ。
注文-2

さて、今日のお題は「注文の多い料理店」。錫杖岳を代表するオールナチュラルプロテクションの好ルートとの噂。目も覚めたし、それじゃあ行ってみよう!

1p目:Ⅳ(リード:薄田)
階段上を草付テラスまで。プロテクションはあまり取れなかったような。準備運動のピッチ。草が結構生えてました。

注文3

2p目:5.8(リード:河合)
テラスを左に少しトラバースしてからクラックを左上~フェースを右上して枯れ木テラスまで。快適なピッチでした。う~ん、いい感じ!薄田さんも思わず「このピッチ、俺がリードすれば良かった…」。でも写真は撮るの忘れました。

3p目前半:5.8(リード:山口)
前夜の車の中でのやりとり(河)「どのピッチリードしたい?」(山)「3ピッチ目で。」(河)「んじゃ任せた!」(薄)「(まぁ頑張れ)」ということで、ハイライトの3ピッチ目は山口さんリードです。キャメ#4×2、#5その他を装備してハング越え~広めのクラック。プロテクションはクラックにとりますが、クラックの幅が広すぎてクラック登りというよりは凹角登り、レイバック主体になり、結構力を使いました。いや~楽しい!弾数の尽きた山口さんは途中のハング下の支点でピッチを切ってました。
注文4

3p目後半:5.8(リード:河合)
あまりに快適で「次は俺にもやらせてくれ~」、ということでリード交代。引き続き快適なクラック(でも割とフェース登り)が続き、思わずにやけてしまいます。最後は少し右にトラバースして水平テラスへ。
注文5

4p目前半:5.8(リード:山口)
当初は河合リードの予定でしたが、(河)「まだ物足りないでしょ?」(山)「そうだね。」ということで、再び山口さんにスイッチ。大き目のクラック→左ハンド、右幅広のダブルクラックでした。少し草が増えてきましたが、まだまだ快適です。最上部は左の草付から回り込めば良いのですが、フォローだったので右壁に行ってみたらボロくてフットホールドが欠けた(落石してすみません)ので諦めて戻りました。最後山口さんは左方カンテの中間支点とかを使ってピッチを切っていました。終了点はもうちょい上だよ~。

注文6

4p目後半:Ⅲくらい(リード:薄田)
最後の10mは薄田さんに締めてもらい、左方カンテとの合流点のテラスに到着。

注文7

この日、注文は後ろにもう1パーティーのみでした。
対岸の「見張り塔からずっと」には3人パーティーが取付いていましたが、ルートが違うような…大丈夫かな。

注文8

懸垂時、水平テラスは後行パーティーが食事中だったため使えず、左方カンテ核心手前の大テラス経由で3回懸垂下降して取付まで。大テラスからロープ引いたら、ロープの流れ悪く最初は引いて動かなかった(セカンド以降に直してもらった)ので要注意でした。

(河、薄)「さて、ビールだ飯だ~♪」(山)「何言ってるんすか。まだこんな時間(14:10)だし、登るに決まってるじゃないすか」(河、薄)「まじ?」(山)「まじ。」(河)「ん~今から左方カンテやったら日暮れそうだしな~、よし、黄道光1p目やってみるか!」
ということで、その場の思いつきで、黄道光へ行ってみることにしました。
左方カンテ取付に行くと、黄道光から降りてくるパーティがいたので、しばし待ち。曰く、3p目のボルトが抜けているらしいとのことでしたが、この時間から登っても3p目には行けないので問題ないかな。

左方カンテ1p目:Ⅲ(リード:河合)
アプローチ。本来の左方カンテ1p目終了点少し下の立木でピッチを切ります。

黄道光1p目:5.11a(リード:河合)
やって参りました黄道光。甲斐駒+注文のダブルパンチでヨレヨレの体で登れるようなルートではないのですが、とりあえず河合がリード。これが中々にキツい!ボルトはペツルですがところどころ間隔が遠く、油断して小さ目のカムを持っていかなかったこともあり、フラフラな体に結構ランナウト、しかも傾斜はハング気味で腕が吸われる…「うぉ~!」とかシャウトし、振り絞りながら核心のクラックを通過。後で写真見るとロープと壁に足が挟まってました。もっと余裕もって登らないと。
注文9

下から「さっさと諦めて降りて来いよ~」オーラ全開の薄田さんを尻目にテンション混じりで何とかトップアウト。5.11aよりは随分辛めに感じました(ヨレてるせいだと思いたい)が、ムーブは大体解決。このレベルをマスターでオンサイトするにはまだ実力不足なことを感じました。次は万全な調子の時にやってみたい!フォローの2名は、また魂飛び出かかった私を尻目に、楽しそうに登ってきました。「わ、私もフォローが良かった、かな?」

当然のごとく1p目で時間切れ、ハイライトの3p目をしっかり目に焼き付け、下降しました。また戻ってくるぞ~!

注文10

この日は結局18:30頃にテン場に戻りました。当然残置し冷やしたビールに潤沢なツマミがお待ちかねです。いや~たまらん!

コースタイム
6:40登山口→7:50/8:30錫杖沢出合テン場→9:00/9:30注文取付→13:00注文4p目終了→13:10懸垂下降開始→14:10/30注文取付→14:40/15:25 左方カンテ取付→15:45黄道光取付き→17:10黄道光1p目フォロー終了→17:50/18:00左方カンテ取付→18:30錫杖沢出合テン場

8月12日(金)
薄田(記)

今回は他会の山口君を加えての錫杖になりました。
8月6日~8日で河合君と甲斐駒・Aフランケ「赤蜘蛛ルート」行って間もない(中2日)ハ-ドスケジュ-ル。
正直赤蜘蛛はアプローチが核心で体力勝負です。昔のクライマーは強かった!!!
お前も片足突っ込んでるでしょうと聞こえてきそうですが(*^ー゜)。
只、天候に恵まれ素晴らしい1週間になりました。
以下、記録
薄田は今回で3回目なので若い(自分も若いつもり)二人にリードを譲りスタ-トです。
写真1_若い2人

新版日本の岩場参照のピッチで1~3P:河合、4~6P:山口、7・8P:薄田が担当。
写真2_河合リード

前回(2、3年前)に登ったときには存在した中間ピンが殆ど抜かれており「カム等」が無いと登れない状況でした。(キャメロット2番以下1セット程度必要。)
その分ピンが無いとルートファインディング能力が問われ、場数慣れしたベテラン諸氏には楽しめるルートに変貌を遂げています。
但し、冬登るには真の実力を問われる厳しいものになるのでは無いでしょうか?
以前あった大量のビレーポイント(リングボルトメイン)は消滅し新たにペッツルのボルトが確保地点に存在します。
写真3_山口リード

ルート中楽しい、これぞ「フリークライミング」言いたいピッチは6p目のバリエーション(リトルウィングライン10b)でここはお勧めです。但しピンは有りません。
写真4_6p目ダイレクトルート

写真5_6p目ダイレクトルート2

現在のクライミング技術からすると容易いのですが高度感も含むあのロケーションの中では雄叫びを上げたいくらい(ちょとオーバー)。
写真6_高度感の中クライミング

コースタイム:
7:50 テント場スタート
8:25/50 取り付き
9:40 2p目終了
10:30 5p目中間
10:45 山口にリードチェンジ
12:40 6p目終了(薄田にリード交代)
13:40 8p目終了
14:00 懸垂下降開始
15:40 取付
16:50 天場
17:40 駐車場

以上