中央アルプス 麦草岳 西面小野川奇美世の滝、正股沢

2000年12月31日から3日間
櫻井、森広、大滝(記)


「奇美世ノ滝」は昔、ルート図集で知ってから、その妖しい名前に魅力を感じ、いつか登ってみたいと思っていた。

桜井さんに誘われ快諾した。

12月30日

21:00 府中本町駅を大滝車で出発。

木曾谷を目指す。

12月31日

7:00 起床。

寒くなくどんより曇っている。

朝食を摂っていると、雨がぱらつき、慌ててフライを被せる。

雨はすぐに止んだが、フライをべースまで持参する事にした。

8:00 キャンプ場出発 林道を歩いて行く。積雪数センチ。

9:00 林道終点 広い工事現場にテント設営。

仮設トイレもあり、すぐ脇の沢から美味しい水も汲める。

林道が工事中の為迂回路を行く。

10:10 奇美世ノ滝着 滝は2ピッチある。

上部は凍っているが、下部は水流がばしゃばしゃ落ちていて全然駄目。

左側から登れないかとラインを目で追うが、途中、氷が薄くなっていてどうにも危険性大だ。

左壁に幅40m高さ40mの物凄く大きな氷壁が待ち構えているが、上部がいまいちボリュームに欠ける。

気温も高く左端の方で時々落氷が発生している。

しばらく三人で協議したが、危険な為、今日は中止。

ばっちり凍ったら素晴らしい氷の伽藍だ。

思いつづけていた奇美世ノ滝は想像以上だった。

仕方ないから、テントに戻って昼寝して、夜は新開発の「キムチおでん」で2000年の幕を閉じる。

内張り、フライ、冬シュラフで暖かい年越しが出来た。

1月1日

7:20 出発 雲多めだが晴れている。

迂回路から正股沢に入る。

延々と河原歩き。

9:00 40mナメ状に着く。

良く凍ってないが右岸をダブルアックスでロープレスのまま越えていく。

10m、10mと滝が出てくるが、各自勝手に越える。

核心部のゴルジュ帯、12mもそのまま通過。

2段30mは大き目だが、段々になっているのでロープレス。

40m大滝は流石に大きいので、ロープを結ぶ。

大滝がリード。

下部は3級だが上部は右が4級、左が4級プラスに感じられた。

取り付く時は、左を登ってやろうと考えたが、泊りがけの荷物を背負ってでは苦しくて、結局右ラインにした。

ロープピッチは28m位。

左岸のブッシュで確保。

アイススクリューは3、4本必要。

13:00 終了。

二俣を過ぎると、20mの滝。

大きいが段々になっているのでそのまま行ってしまう。

後続を待っていると森広さんが登って来て、下の桜井さんの為にロープを用意している。

勝手に登ってきて悪いことをしました。

この辺りからラッセルがきつくなり、四つん這いになったりして懸命に進む。

最後、沢が左に曲がっているのに気が付かず、右方の氷壁がいい感じなので喜んで登って行ったら、「あれ、ルートは左だ。」

ロープを持っていないので、森広さんに登って来てもらってブッシュで懸垂した。

容易な滝を越えると、全ての滝は終わった。

細い詰めに入るが、延々と終わらない。

15:40 ほんの数分御来光を拝んだ。

谷だから仕方ない。

いいテント場を探しながら進むが、なかなか無い。

17:00頃、林の中にぴったり3人用テントを張れる場所があった。

何と幸運なんだろう。

18:00 テントの中でようやく落ち着く。

星、月、少しの町明かり、風もなく、静かな元旦の夜。

1月2日

6:40 起床 夜半より降雪。

風少々、視界悪し。

9:00 出発 ひたすら樹林帯のラッセル。

左寄りに進む様にする。

這松に変わった所で吹雪になる。

激しい風に耐え、稜線に出る。

そこは福島Aコース分岐の少し下辺り。

すぐに樹林帯に入り、吹雪から逃れられた。

立派な道標のある道を赤布に導かれて下る。

12:20 奇美世ノ滝  13:53 キャンプ場。

帰りの林道が場所によってスケートリンク状態になっていて、車が3回スピンした。

あー、怖かった。

 

 

中央アルプス 麦草岳 小野川正股沢、奇世美の滝(下見)

2000年9月16日
櫻井(記)、高橋

台風と秋雨前線でパッとしない天気。

朝からパラパラと雨が落ちてくる。

キャンプ場のすぐ上にゲートがあるので車はキャンプ場に置く。

このキャンプ場はボーイスカウトの管理らしくカマドや水場がきちんと自然のなかに配置されていてなつかしい。

林道を登ると1時間しないで通行止めとなり迂回路へ入ることになる。

発破を使った林道工事で本来の右岸の道は土砂崩れ状態になっている。

「入って死んでもしらないよ」という趣旨の看板が立っている。

迂回路は左岸にけっこう無理やりつけられている。

トポによれば林道終点から数分で正股沢に出合うことになっているが、それらしい沢はなかなか現われない。

2万5千図で見当をつけて3本目に横切った沢に入る。

すぐに古い堰堤が出て、変だなと思っていると30分もしないうちにチョックストーンを持った10mの滝が出てきた。

これで決定的に沢を間違えている事がわかって引き返す。

良く見れば2万5千図に堰堤記号があるではないか。

青い線の水流は書かれてないが沢地形の中にポツンと書いてある。

めざす正股沢はまだ先だ。

今度は間違えないようにと、迂回路が小野川沿いの本来の登山道に合流するところまで行ってから考えることにする。

古い登山道に合流しトポの記述と照合するためにその登山道を登ったり、下ったりして地形図との関係を確かめて見た。

トポによると小野川本流を渡り次に出てくる小橋が正股沢というので、その沢に入ってみる。

しかし10分も行くと水流があまりに情けなく湿地状になってくる。

これもまた違うだろうと、もとの登山道に戻る。

何が何だか混乱してきたので、気をとりなおし登山道をそのまま、奇世美の滝を見に行くことにする。

この滝は下から見上げると滝本体だけでなくその下の小台地の高さも含めてのスケールを感じるので高差100mを超える迫力がある。

滝の本流を取り囲んで半円筒形に側壁がありその表面を水流が伝っている。

こいつは評判通り凍ったらすごい!その滝の迫力を堪能して(夏はまったく登る対象に思えない)また正股沢探しに戻る。

迂回路は6本の沢を横切るのだが、こんどは登山道に合流する手前の沢に入ってみる。

この沢は本来の登山道とは交差しないのでトポとはまったく違うアプローチとなるのだが、入ってみるとゴーロが続き、それらしい谷の広さもある。

地形図の青い水流の線とも一致しているようだ。

しかし40分ほどゴーロを登るとパラパラと降っていた雨が本格的なザーザー降りになってきた。

雲の動きも早く台風の影響を感じてきた。

結局ここまでで引き返すことにする。

急いで迂回路に戻ると沢はかなり増水してきた。

高橋君には悪いが氷のためのアプローチを調べるという意味では満足できたので、山行はここまでとして帰ることにした。

しかし「登山大系」と「アイスクライミング」にあるアプローチの解説はなんだったろうか?堰堤や道、橋などといった人工物を目印にしているとこんな目にも遭うのだなと実感した。

また、長雨の中では、普通、沢と思わない涸れ沢も一人前に見えてしまったため、余計に頭がこんがらかってしまったとも思う。

あまり人の入らない沢などではアプローチを軽く見ると失敗するというよい教訓でした。

温泉情報:木曽福島近くの国道から木曽駒高原へ分岐する道(信号のある立派な交差点)を500mほど木曽駒方向に入ると右手に国民宿舎がある。

ここの温泉が渋い。

500円。

アヒル、鯉、やぎ、チャボが遊ぶ庭と檜作りの湯船、FRPのバブル露天風呂など興味が尽きない。