北穂高岳滝谷 ドーム西壁ニューウェーブ、ドーム北壁右ルート、スベニール・ド・タキダニ、ドーム中央稜

2019年9月7日~8日
柳川、川上(記)

9/6(金)
新宿駅21:30発 – 新穂高温泉1:30(9/7)着

9/7(土)
新穂高温泉1:50発 – 白出沢出合3:00着 – 奥穂高山荘7:10着 – 滝谷ドーム付近9:00着 – ドーム西壁ニューウェーブ登攀10:00~13:30 – ドーム北壁右ルート登攀14:00~15:30 – 北穂テン場16:30着

9/8(日)
5:20起床 – 滝谷ドーム付近6:30着 – スベニール・ド・タキダニ登攀7:00~9:45 – ドーム中央稜登攀10:00~12:00 – 奥穂高山荘13:30着 – 西俣林道出合15:30着 – 新穂高温泉16:30着

かねてから行ってみたいと思っていた滝谷に、柳川さんからお誘いがあり、喜んで乗っからせてもらった。柳川さんは、いつも目一杯登れる素晴らしい計画を提案してくれて、ありがたい。今回も各日2ルート継続、土日2日間で4ルートの計画で行く。

金曜夜に新宿集合で出発。新穂高温泉に着き次第、寝ずにアプローチする。柳川さんは相変わらず歩きが速い。午前9時過ぎに滝谷ドーム付近に着いたら私はバテバテで、泣きの20分仮眠をとらせてもらった。柳川さんも「バテバテですよー」と言ってたが、いや、そうは見えないですけど、、、。

滝谷ドーム付近で休憩をとる

ドーム西壁ニューウェーブ(3ピッチ、10a)
快晴、無風。バテてたけど、クライミングになると元気が復活する不思議。懸垂点があるらしいが、よくわからず、結局ニューウェーブ1ピッチ目終了点まで歩いて降りて、ラペルして取り付きへ。

1P目(10a)川上リードOS
高難度フリーを目指してラペルボルトで拓かれたルート、とトポ(日本の岩場)にあったが、登ってみると、なるほど、と合点する。いわゆる本チャンルートは、ド正対の3点支持ムーブで、浮き石を確認しながら恐る恐る進む系が多いわけだが、このルートは、ダイアゴナルを交えて多彩なムーブでカチをつなぐ。山の壁にしては岩も硬い。支点もハンガータイプで、ピン間隔こそ少し広めだが、近くのゲレンデマルチを登っているような感覚にすらさせられる。
核心は中間部の小ハング越え。

1ピッチ目をフォローする柳川さん

2P目(5.9)柳川リードOS
大バンドを10メートルくらい歩き、背丈大の岩の裏のハンガーで支点を作り、2ピッチ目スタート。
5メートルほど右にトラバースして直上、、、が正規ラインだと思うのだが、柳川さんは、右端の凹角まで10数メートルトラバースし、苔っぽい逆層フェイスを登っていた。私はフォローだったが、この逆層、いやらしい。とても5.9のムーブじゃない。明らかに違うラインだ。よくこれをリードするもんだ。ボルトもないのでカム固め取って突っ込んでたし。
50メートルいっぱいで終了点。

2ピッチ目をリードする柳川さん

3P目(10a)川上リードOS
ボルトに導かれながら、ガバカチをつないで登る。終了点はハンガー二つ。

しばし休憩し、次どこ登るか話し合う。13時を回っていたので、短いのやろうということになり、トポに「時間が余ったら技術的困難を追求するのもいいだろう」みたいに書いてあったドーム北壁へ。トポの書きぶりだと、なんだか難しそうでワクワク。右ルートと左ルートの2本あるが、上部にキレイなハンドクラックが走っている右ルートに食指が動いた。

ドーム北壁右ルート(2ピッチ、体感10b/c)

1P目(体感10b/c)川上リードOS
グレード表記なかったため、どれほどの難しさなのかわからず少しドキドキする。
下部25メートル位はフェースで、支点はボロハーケン。所々に#0.3以下のキャメや、4番位のナッツ(BDストッパー)もきめた。1箇所微妙なムーブがあり、支点が支点だけに緊張。ここが全体通しての核心か。ムーブ強度は10bくらいだが、メンタル要素こみで、体感10b/cといったところ。
25メートル位登るとテラスがあり、残置ハーケンベタ打ち4~5枚。明らかにここがピッチを切る場所だと思うが、目の前にはハング~垂直の、とってもキレイなハンドクラックが、、、。あー登りたい。終了点に気づかなかったフリをして(柳川さん、すみません)ロープを伸ばすと、、、、、やっぱり素晴らしい。
滝谷にこんな快適なクラックがあったなんて。ハンドジャムがバチバチきまる。テーピングなんてしてなかったが、ほとんど触られてなさそうなこのクラックは、とってもザラザラしていて痛かった。でも、これが岩と一体になる感覚。青い空、標高3000メートルの心地よい風、ジャム筋がパンプしてくる得も言われぬ感じ、、、、。やっぱり、クライミングって最高だ。
クラックを抜けた所で、ロープあと5メートルと言われたので、カム3発で支点構築。クラック部分は10aくらいで、チョー快適だった。

2ピッチ目(体感Ⅳ級)柳川リードOS
15メートルくらいの岩稜登りで、ドームの頭へ。

ドーム北壁(右ルートは、中央の顕著なチムニーの右側を登る。矢印で示したのが、快適なハンドクラック部分)

2日目
4時に起きるつもりが、完全に寝坊して5時20分起床。周りはもう完全に明るい。いそいで朝飯を食べてテントを撤収し、ドーム西壁へ。

スベニール・ド・タキダニ(3ピッチ、10a)
取り付きは、ニューウェーブの左10メートルくらい。

1P目(5.9)川上リードOS
途切れ途切れのクラックを登る。ジャミングはほぼせず、フェースムーブ。残置もあるが使わず、オールNP。

2P目(Ⅳ級)柳川リードOS
普通にサクサク。

3P目(10a)川上リードOS
出だしの小ハングを左から越える。左側のホールドが見えず、一歩踏み出すのが怖いが、細かめのフットホールドに立ち込んで左手を伸ばせば「おー、ガバがあるじゃん」
ハングを越えた後、右側の凹角に移るまでのホールドが少し細かい。この辺りが核心か。支点は残置ハーケン&カム。ムーブもあって面白いピッチ。残置無視オールNPも普通に出来そうで、さらに面白くなるだろう。ドームの頭に出て終了。

荷物を持って、少し移動し、中央稜に向かう。

ドーム中央稜バリエーション(5ピッチ、体感5.9)
残置無視。それと、2、4ピッチは、登れそうに見えた別ラインをやってみた。

1P目(Ⅴ-)川上リードOS
適当に登り、上部で少しチムニーする。

2P目var(体感Ⅴ級)柳川リードOS
柳川さんは中央稜は4回目だとのこと。いつもはこのピッチは、右のカンテに出てるそうだが、左のクラック沿いも登れそうに見えたので、試してみる。サクサク。

3P目、歩き

4P目var(体感5.9)柳川リードOS
正規ルートの凹角から、右に5メートルくらい。下部フェース、上部フィストサイズのクラック、というライン。登れそうなので、柳川さんやってみる。ジャミングはほぼしない。クラックを抜けた後に出てくるスラブは簡単に巻けるけど、あえて巻かずに直登すると、デシマル表記の方がしっくりくるピッチに。柳川さんは、黒エイリアン1個ぶち込んで突っ込み(さすがのメンタル)、5.9くらいとコメント。

4ピッチ目下部を登る柳川さん

5P目(Ⅳ級)川上リードOS
本来のルートの右に出てしまったので、10メートルほど歩いて修正。そして、明瞭な凹角を登ると、ドームの頭に出る。柳川さんと握手。これにて今回の登攀は終了だ。

まとめ

今回の自分の課題は、歩きの体力だと思った。初日のアプローチでバテて、柳川さんの歩くスピードについていけない場面があった。
アルパインにおいて、眠らずに行動することはざらだし、この程度の行動時間でバテていては、まだまだだ。どんな厳しい状況下でも、一定のパフォーマンスを維持できるようにならねばならない。夏なら何とでもなるが、冬壁はそんなに甘くない。
アプローチを素早くこなせなければ、不要なビバーク、落氷、落石、雪崩、天候急変など、リスクの増大となってはね返ってくる。撤退を余儀なくされることもあるだろう。岩壁に辿り着けなくては、登攀能力など何の役にも立たない。
この点を改めて肝に銘じ、トレーニングに邁進しようと思った。

以上。今後もさらなる精進をいたします。