剱岳 剱尾根

1999年5月1日~5月3日
向畑、倉田(記)

4月30日(金)

23時54分上野発急行能登に乗り込むが、すごい人。

運良く座れる。

5月1日(土)晴れ

5時半頃魚津着。

富山地鉄に乗り換え6時半頃に上市着。

タクシーで7時頃、馬場島に着く。

小窓パーティーのテントを発見し、なんとなく嬉しく、皆を起こしにかかる。

県警に計画書を提示し、初めて見るヤマタンを手にする。

思っていたより小さかった。

今日は、明日の核心に備えて、行けるとこまでつめないと行けないので、気合が入る。

気合が入っている割に体がついていかず、年かしらなどと無駄なことを考えながら、白萩川左俣をつめ、タカノスワリにて休憩。

ここから、池ノ谷ゴルジュが見える。

今年のゴルジュは雪で埋まっていて歩ける。

天気は晴れ、Tシャツ一枚でも暑い。

剣尾根末端に、10時20分に着く。

岩小屋のツララがとてもおいしい。

休憩して、12時半に出発。

そこから少しで、R10につき、雪壁をつめ、尾根上に出る。

雪は少ないらしくやぶやぶしている。

さすが連休だけあってか、トレースがはっきりとついていた。

途中、部分的に悪いところがあって、何度かロープを使う。

ちなみに、テントを張るのに適したところがいくつかあった。

15時40分、コルE~コルD間で行動終了。

場所がはっきりせず。

5月2日(日)晴れ

6時に出発。

ブッシュが出ていたり、嫌なところがいくつかあった。

コルDはよくわからず通過。

9時半頃ドームや門がよく見える所に着く。

小窓尾根を歩く人がよく見えた。

(途中、こちらのほうに叫ぶ人がいた。小窓パーティーのような気がして、返事をする。)

11時にはコルCに着く。

ここから先は渋滞となる。

先行が1パーティー、後続が2パーティー。

はじめの1ピッチと草付120mの次の1ピッチはⅣ・A1で、人工登攀になる。

岩壁の向こうには小窓の王などが見え、気持ちがいい。

はじめユマーリングをするつもりは全くなかったけど、後続を待たせるといけないから、と言われ、ほとんど経験のない人工登攀に自信がゆらぎ、結局、人工のところは、ユマーリングにする。

はじめの1ピッチは、右上して、カンテを回り込み、右のフェースを右上してのぼる。

一部難しいらしく、先行が苦労しているように見えた。

わたしは、そこをユマーリングで通過し、カンテを越す。

すると、上のロープが支点ではなく枯れた木に引っ掛かっているのがわかった。

そこまでユマーリングで大丈夫そうに見えたので、2回程ユマーリングすると一瞬のことで、枯れた木が抜け、横に振られ岩にぶつかってしまった。

腰をぶつけたらしく、しばらく仰向けで身動きがとれない。

気を取り直してとりあえず上にたどり着く。

ここからは、腰が立たなくて、ピッケルを杖代わりにして登る。

次の120mⅡリッジ、腰が痛くて辛い。

ここら辺の景色はいい。

ちょうど門にあたる次のピッチは、高度感があり、人工でクラックからバンドで左上する。

先のピッチより難しいとのこと。

次のピッチはフェースから岩のもろいルンゼ30mⅢ。

雪はほとんどついていなく、フェースは傾斜がゆるい割に、スタンスが少なく、右のリッジをつかいながら登る。

上部はからがらがらの岩を押さえつけながら慎重に手足をおく。

そこから少しで、ドーム頂上。

ここからは、剣本峰がよく見える。

(約15時)ドームより先も所々悪いところあった。

はじめのワンピッチのみをスタッカットでちょっとへつる、その後はコンテで岩稜を進む。

わたしが、かなり遅くしか歩けないため時間かかるが、わりとコルAに近いところで18時にテントをはる。

5月3日(月)曇り

昨日ほど痛くない腰に少しほっとしながら、7時出発。

岩稜づたいに、基本的に左俣側をいく。

雪壁、ナイフエッジ、もろい岩稜を一歩一歩踏みしめながら進む。

思っていたよりも早く8時半に長次郎の頭。

小窓方面から歩いてくる人をみて、ああ抜けたと感動。

剣本峰まで、歩いては休んでの繰り返しで、9時頃に頂上を踏みしめることが出来た。

時折雲がきれ、別山などが見えた。

早月尾根をゆっくりと下る。

途中で、今まで登ってきた剣尾根が見渡せ、何度も足を止めては見入ってしまう。

12時にチンネ登攀中の小窓パーティーと無線交信し、私が自力下山できることを告げる。

たたでさえ下山が下手なのに、腰が痛くて、途中転びながら、のろのろと下山する。

向畑さんには、ロープを持って頂き、何回も待たせてしまい申し訳なく思う。

休憩を何度かして、15時に馬場島に着く。

<感想・反省>

いつかは行きたいと思っていた剣岳なだけに、私が本当に剣尾根を登れるのかと、真面目に不安で、正直、胃が痛くなるほどでした。

結局なんとか登ることが出来、向畑さんには、本当に感謝しております。

反省として、まず、私の技術、体力、経験が十分でなかった為スピードが遅くなってしまった。

もっといろいろやらなくてはと痛感する。

次に、ユマーリング中の事故で、いろいろなことを考えさせられ、教えられました。

いろいろと目に余ることが多かったはずなのですが、温かく見守って頂いた向畑さんには頭があがりません。

最後になりましたが、腰を打ったことで、小窓パーティーの皆さんに大変ご心配をお掛け致しましたことを深くお詫び申し上げます。