錫杖岳 注文左ルート

錫杖岳 注文左ルート

2022年6月18日~19日

船戸(記)、玉木、小森、早田

注文左ルートの存在についてはトポなどで冬季登攀のルートである事は知っていたが、無雪期にも登攀出来る事を錫杖開拓で有名な石際さんのブログで知り、ずっと興味を持っていた。今回は玉置さんが付き合ってくれるとの事だったので、ついでに若手2名(小森・早田)にも声を掛けて4名で行ってきた。

・6月18日
前日夜の内に、中尾高原口に着いて仮眠後入山。初日は船戸・早田が左方カンテ、玉置・小森が1ルンゼへ。

早田くんは初錫杖だったが、(ブツブツと独り言を呟きながら)頑張って全ピッチノーテンで登ってきた。

4ピッチ目で挟まる早田くん

それにしても、気になったのは左方カンテの残置の多さ。特に核心の6PのCS周りには、捨て縄が2~3本ぶら下がっていた。
あそこをA0して越える事の是非はさておいても、簡単に回収出来るはずのものを置いていくのはどういう了見なのだろう。
とりあえず今回は全てナイフで切って回収しておいたが、最近どんどん増えてきている注文ルートの残置カム然り、もう少し岩場とルート開拓をされた方々への敬意を持った方が良いのではないだろうか

そんなこんなで、我々は16時過ぎくらいには錫杖沢出合のテントに戻ってきたが、玉置・小森が中々戻ってこない。川で冷やしたビールを目の前にお預けを喰らうのは辛いが、ボチボチ帰ってくるだろうと当初は待っていた。ところが17時を過ぎ、18時目前になってもまだ降りてこない。あの二人ならば問題は無いはずだが・・・万一の事を考えるとアルコールを飲む訳にもいかず、18時過ぎたら流石に様子を見に行くかと思っていたところ、ようやく沢の上部に玉置さんが現れた。

続けてその後に小森くんが現れて手を振っている。こっちは2時間近く飲むのを我慢してるのに、呑気に手なんか振りやがって・・・
良いからさっさと降りて来い(怒)

プレモルのエール、お勧めです

・6月19日
夜中にテントを叩く雨の音で目が覚める。結構しっかり降ってるし明日はダメかなーと思いながら再度眠りに落ち・・・たのだが起床時間の1時間近く前に、外が騒がしくて起きてしまう。小森・早田ペアが朝っぱらから盛り上がってるようだ、心の中で二人を一通り罵倒した後、諦めてこちらも起床する。

地面を見ると、思ったよりも濡れていない。とりあえず取り付きの北沢大滝までは行ってみるかと、いう事になる。
北沢大滝に着いてみると、既に先客が登り始めていた。岩も乾いてるように見えるし、予定通り登攀する事に。前日と同じく船戸・早田、玉置・小森のペアだが、早田さんに無理を言って自分が、全ピッチリードさせて貰う事に。ありがとうございます。

1P目:45m 5.6(グレードは石際さんのトポを参考にさせて貰った)
北沢大滝の下部を登る。見張り塔を登った時にも通ったが毎回いまいちラインが分からずに右往左往・・・終了点は滝の本流のすぐ横なので、あまり左に行き過ぎると戻るのが大変になる。

若干、雪渓が残ってました

 

2P目:40m 5.8?
本来はジグザグチムニーの中に入るのだが、前日の雨のせいか見るからにビチョビチョで水も滴っている。どうしたもんかと考えたが3P目以降は日当たり良好でここで諦めるのは勿体無い。チムニー横の右上フェースは草も生えてあまり快適には見えないが、何とか上まで繋がりそうなので、意を決して取り付く。

出だしから、しっとりした触り心地と動く岩に神経をすり減らす。早いとこ1ピン目を取りたいがクラックが見当たらず、効きの怪しいハーケンを1本打って、更に4~5mランナウトしたところでようやくしっかりしたカムを決められて、ほっと一息。その後もジリジリとロープを伸ばし、何とか終了点に。いやー、怖かった

最後は若干薄被り

 

(実は後続の玉置さんは、チムニーを登っていた。意外と挟まれば快適だったとの事・・・巻こうとして墓穴を掘ったか)

3P目:30m 5.6
冬季用の年季の入った終了点からすぐ右の階段状を登った後、今度は左に抜けてバナナ岩の直下まで。

4P目:40m 5.8
ハイライトのピッチ。2本のチムニーの左側を登る。スタンス・ホールドとも探せば出てくるが、動く岩も多いので慎重に。被ったCSを越えるあたりがOW気味でここが核心か(持ってきた4番を唯一使った)

チムニー内の岩も動くので要注意

5P目:25m 5.7
最終ピッチ。気の抜けない5.7との記載だったが、取り付いてみてすぐに意味が分かる。全ピッチ中、1番脆かったのがこのセクションで、特に離陸から数手は冷や汗ものだった。何とか突破し最後は狭いチムニーを抜けて少し歩けば前衛壁の頂上へ。

後続パーティ

今回は早田さんの厚意で、全ピッチリードさせて貰った。登攀記録があるとはいえ、数年前の記録で岩の状況を確かめながらの手探りクライミングとなり、神経を使う部分もあったがその分充実感溢れるクライミングが出来た。錫杖にはまだまだ登っていないルートもたくさんあるし、これからも足繁く通って腕を磨いていきたいと思います。