谷川岳 一ノ倉沢 滝沢リッジ(2Pで敗退)

2003年3月23日
浅野、柴田(記)


駐車場を出たのは午前1時少し前だった。

前週ほど明るくはないが月も出ていてコンディションはよさそうだ。

空にはお星様がキラキラで気温も高く翌日の快晴間違い事が逆に不利だとは思うがまあ何とかなるだろうと出合いに向かい進む。

指導センターでJAC青年部の木下さんと会う。

4ルンゼを単独で登るとのこと。

抜きつ抜かれつで一ノ倉沢出合いまで1時間ほど。

前週同様美しく静かに佇む一ノ倉の壁やリッジに挨拶をして休む事無く登高を続ける。

一ノ倉尾根側の斜面や衝立スラブの雪がかなりここ1週間で落ちたみたいで本谷は前週殆ど無かったデブリで障害物競走状態。

二ノ沢出合いを過ぎてロープ2ピッチ分くらい滝沢寄りに登ったところで左にトラバースし滝沢リッジの取り付きに到着。

登攀用具を身につけて浅野さんリードでスラブとブッシュの雪壁にロープを伸ばす。

柴田はビレー中に急に腹模様が急低下、ビレー解除のコール後はちょっと待ってもらい急いで用足し。

急いでハーネスなどを付け直し、プラブーツのヒモを登攀体制に締め直していなかったことを気にしつつフォローしそのまま2P目をリードする。

雪の状態は思ったより悪く一方でやはり天候は快晴間違いなしの模様。

少しも寒くない。

オムスビ岩まで12ピッチとのことだがこの時点でワンデイでの滝沢リッジ狙いには決して条件がよくない事にいやがおうにも気づく。

自分は月曜日は休暇にしてあったので最悪ドームあたりでビバークとなってもどうってことはないが、浅野さんは明日は朝から那須工場に出張でラインの出荷判定会議との事だし、このまま突っ込むと腐った軟雪に二進も三進も行かなくなりハマる可能性が非常に高い。

2P目のビレーポイントにフォローしてきた浅野さんと状況分析して撤退で合意、登り始めたばかりなのに情けないがここで降りる事とした。

懸垂3Pで取り付きに戻り、キジ跡はピッケルで四散させ本谷をゆっくり下る頃には朝日は一ノ倉の岩壁を鮮やかに染めていた。

時刻は5時30分くらい、今から頑張れば1・2の中間稜や4ルンゼに行って行けないこともないと思ったが、一旦下がったモチベーションはやはりそのまま上昇することも無く出合いまで一直線。

二ノ沢にはトレースが残っており登っていったクライマーのモチベーションを羨ましく思う。

このあたりでヘルメットが落ちていたので指導センターに届けることにしてザックにくくりつける。

何度も後ろの一ノ倉沢を振り返りつつ出合いまで。

今日が今シーズン最後の谷川というのは初めから分かっていたので少々名残惜しいがまあ今シーズンは中央稜も3ルンゼも登れた事だし今回は滝沢リッジの下見と自分を納得させ、こうなったら早く帰って子供と遊びポイントを挽回しようと前向きに駐車場を目指す。

ピッケルもバイルもアイゼンもザックに付けてしまったので湯檜曽川に滑り落ちないように足元に気をつけつつ林道に付けられた高速道路を指導センターまで戻る。

帰路はユテルメに寄る事も無く交代で関越を飛ばし横浜を目指す。

お昼過ぎに帰宅して眠いのを我慢しつつ子供と公園で遊んだ。