波勝崎 海金剛 左壁秀峰ダイレクトルート

2000年1月8~9日
向畑(記)、倉田

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もともと記録をとっていなかった上、仕事が忙しくてほってあったので、記憶があいまいになっており、結構間違えているかも知れません。

また、結局適当に登ってしまい、ライン自体も記録としての価値は高くはないと思いますが、これから行こうとしている人もいるようなので、アプローチや岩場の概念等も含めて、参考にしていただければと思います。

正月山行を情けないことに腰痛で敗退し、実家に帰ってごろごろしていたらさらに悪化して、とても冬山に行けそうな状態ではなくなってしまった。

暖かいところにリハビリに行こうと考えていたら、ヨセミテを目指すという倉田さんから西伊豆の海金剛に誘われた。

エイドの重い道具一式背負って歩けそうにないことや、暖かいところでもアルパインのようなクライミングには不安があったが、フレンズやピトンなど、重いものは一切持ってくれるということだったので、せっかくの連休でもあり出かけてみることにした。

取りあえず雲見を目差すが、埼玉の田舎からは西伊豆はかなり遠い。

出発したのも遅かったが、着いたのは2時半頃になっていた。

途中、雨具を忘れてきたことに気付き、セブンイレブンでビニールガッパを買ったが、冬山との気持ちの切り替えができず、他にも何か忘れているような気がして怖かった。

雲見集落から枝道を右に入り、オートキャンプ場の受付を通り過ぎたところにある造成中の空き地で車中ビバーク、翌朝起きてから海金剛へのアプローチを探すことにした。

翌朝、それらしき踏み跡を見つけて、近くの路肩に車を止めてラーメンを作っていると、通りがかりのおじさんに、「そこは止めちゃだめだよ」と言われた。

キャンプ場の手前にキャンブ場のお風呂があり、駐車場に1日500円と書いてあったので、管理人のおばさんに聞きに行くと、「がけ登りに来たのかい」と言われてしまった。

どうやら、最近は皆さんこちらを利用されているようだ。

踏み跡は、ところどころ崩れているがよく踏まれており、危なそうなところにはフィックスまで張ってある。

ただ、ビニールのひもが張り巡らせてあるところがあり、それがはずれて風になびいている。

目印はもっと簡単なマーキングで充分だと思うし、ごみになるのでやめるべきだと思う。

30分ほど歩き、最後のフィックスを懸垂すると海金剛の基部についた。

先行の2人パーティが中央稜末端を乗っこし、右壁側へと回り込んでいる。

とりあえず、初登ルートであるVAGABOND(バガボンドと読むらしい、放浪者の意)を登ろうと思っていたが、彼らも同じルートを登るらしい。

右壁樹林帯の下にテントを張り、ゆっくりと食事をして、もうだいぶ登ったかなと思ってVAGABONDの取り付きに行ってみると、まだ下でしゃべりこんでいて取り付いていない。

しかたがないので倉田さんがトポを持っていた、SURF&SNOW(サーフアンドスノーと読む、意味不明)というルートを登ってみることにした。

SURF&SNOWは左壁なので、来たところを下って登り返さなければならない。

めんどうなので、そのまま中央稜を乗っこして草付き帯をトラバース、取り付きと思われる岩場と草付きのコンタクトラインを目指し、「この辺かな」

と思ったところから登はん開始。

登り始めは、多分お昼ごろだったと思う。

8日

1ピッチ目、35mⅢ級、向畑リード、もろい岩場を直上し、バンド状の立ち木まで。

2ピッチ目、30mAA1+、Ⅳ級、倉田リード、凹角の右のリスをネイリング、リスは右上のハング沿いに続いており、この段階でなんとなく全然違うルートを登っていることに気付くが、おもしろそうなラインなのでそのまま登ってもらうことにした。

リスはハングを越えてルンゼへと延びている。

ユマーリングで回収しながらルートを追うと、タイオフの連続でリスも一部脆そうだ。

ただ、タイオフが多いのは、ピトンのサイズが合っていないだけのような気もするが、初めてのネイリングで3時間かけてリードした倉田さんに敬意を表し、AA1+にしといてあげよう。

ナイフブレード、ブレード、アングル、ロストアロー、エイリアンなどを使用。

2ピッチ登っただけで、早くも薄暗くなりかけてきたので、ロープをフッィクスして下降。

テントに戻ったのは18時頃だと思う。

9日

4時ごろ起きて用意するが、外は結構寒く、6時頃までテントの中にいた。

再び中央稜を越えて取り付きに戻り、ユマーリングを始めたのは7時近かったと思う。

岩場の前の入り江には、岩礁に漁船で釣り人が次々と運ばれてきて、岩登りをしている下では釣りをやっているというちょっと変な光景だ。

3ピッチ目、45m、Ⅲ級、向畑リード、一枚岩のきれいなスラブだが、木がいっぱい生えている。

傾斜はないが、足を置くのが苔だらけでちょっと怖い。

できるだけ岩の露出している部分を登り、ロープを目いっぱい伸ばす。

どん詰まりには、スラブを取り囲むように扇状の岩場が立ちはだかり、その手前の立ち木でピッチを切った。

4ピッチ目、25m、Ⅲ級、倉田リード、クラックにプロテクションを求め、扇状の岩場の切れ目を右上。

フレンズ、キャメロットなど使用。

5ピッチ目、30m、Ⅲ級、向畑リード、右側のルンゼに回り込み、木登りから左側の外傾テラスへ。

ブッシュ帯はここで終わり、上部はすっきりとしたフェースとなっている。

ルンゼ内の木に、かなり古そうなスリングが巻きつけてあり、初めて残置物を発見。

さらにピッチを切った外傾テラスには、ビレーポイント用らしいピトンが2本残置されていた。

支点を打ち足そうと思い、リスにピトンを叩き込んでいると、横の岩が浮いてくる。

取りあえずスリングで連結してアンカーを作ったが、とてもユマーリングしてもらう気になれず、フォローで登ってもらった。

6ピッチ目、30m、Ⅳ級、向畑リード、岩が積み重なったような逆そうフェースで、見た目は脆そうだが、選んで登ると意外と硬い。

縦横にクラックが走っているので、ナッツ、エイリアン、フレンズなどでプロテクションは取れる。

右のクラックから、バンド状をトラバースし中央稜を回り込むと、RCCボルトの立派なビレーポイントがあった。

当初登る予定だったVAGABONDへと合流したようだ。

7ピッチ目、25m、AA1、Ⅳ級、倉田リード、正面は前傾フェースで、その切れ目である右側のクラックを登る。

フリーで登るつもりで取り付くが、力尽きて、すぐにフレンズ架け替えの人工となる。

でも、多分フリーでも登れそうな感じだ。

クラックから右の凹角に移る。

凹角の手前にプロテクション用のRCCボルトが残置されていた。

8ピッチ目、50m、Ⅲ級、向畑リード、右側に回りこみ、脆いルンゼを直上、ロープを目いっぱい伸ばし、海金剛の頭へ。

12時40分着。

海金剛の頭からは、さらに伊豆半島中央部への山稜へと尾根が続いている。

下の入り江では、相変わらず釣り人がのんびりと釣りをしていてロケーションはなかなかいい。

下降は、ほぼVAGABOND沿いに下れた。

ここを降りる人が多いようで、残置のカラビナがあったりして下降ルートが整備されていた。

降りる途中でVAGABONDを登ってきた、昨日のパーティと擦れ違った。

テントに戻ったのは15時、のんびりと片付けて16時に歩き始めたが、VAGABONDパーティが上から3ピッチ目あたりで、「ロープが来ない」とか言ってはまっている。

明日は雨の予報なので、今日中に降りられるといいなと思ってしばらく見ていたが、下で心配していても仕方がないので歩き出した。

結局、ずいぶん簡単なルートを登ってしまったことになりますが、個人的な好みとしては、弱点をついたよいラインだったと思います。

ただ、倉田さんの目的であったエイドクライミングの練習という点では、かなり物足りない山行になってしまいました。

ほんの一部分しか登っていないので間違っているかも知れませんが、海金剛は大きな一枚岩の岸壁ではなく、小川山や瑞垣のように、いくつもの岩場が積み重なったような構成になっているので、岩の部分を選んで登らないと、結構簡単に巻けてしまったりしそうです。

特にエイドクライミングの場合、難しそうなラインをあえて選んで登らないと、あまり練習にもならないような気がします。

また、クラックやリスは豊富にあり、立ち木も多いので、既成のルートにこだわらずに、自分でラインを引いて登ってみても、そう難しくはないと思います。

行き詰まっても、割と容易に下降できそうです。

逆に、クラックやリスが多くて残置が少ないので、既成のラインを追うこと自体もなかなか大変そうで、あまり意味のあることでもでないように感じます。

ボルトを打つのはすすめませんし、打つ必要性も低いと思います。

また、砂岩のような岩質なので、打つ場合も手打ちで充分、ボッシュ等はいらないような気がします。

ただ、ビレーポイント用には、リングボルトよりもRCCやペツルの方が良いかも知れません。

中央稜の古いボルトラインでは、チップが浮いているボルトを多く見かけました。

これは多分浅打ちではなく、脆い岩質と、海岸でもあるため風化が激しいため、リングが浮いてきているんだと思います。

私たちは岩場の基部までテントを持って行きましたが、そう広いスペースがあるわけではありません。

上から見ると、左壁下にもテントスペースが整地されていましたが、落石からは、あまり安全ではではないかも知れません。

駐車場から海金剛までは30分程度なので、そちらをベースにしてもよいかも知れません。

管理人さんによると、VAGABONDパーティはいったん戻って駐車場にテントを張り、お風呂も入って翌日再び岩場へと出かけていったそうです。