越後三山縦走

1997年12月28日~1998年1月1日
平松、関、水柿、杉浦、瀧島(記)

(みんなで楽しく)これが今回の山行のコンセプト。というのも秀峰登高会は、いい意味で各々が自分の山を追求して、ヘンな強制やシガラミがなく、自分勝手に好みのスタイルで好きな山での小人数の活動がメインだ。普通の週末だけでなく、正月や5月、夏の長い休みも合宿と呼べるようなスタイルの山行は少ないかもしれない。振り返れば自分の正月もいつも自分が首謀者で2人か3人だった。

今回は「行きたい人この指とまれ」方式のオープン参加。ただし事前のトレーニング山行は参加が条件。そして水柿、平松の新人2人と、ブランク明けの太郎、直前入会だが経験のある杉浦、それに少ししぼみぎみの私とメンバーは5人にもなった。今回は縦走登山なので大人数のデメリットよりも大人数の楽しさを優先させた。

越後駒周辺の雪稜は以前から気になっていたが、佐梨川の源流地域に東京電力のダムの計画を知った事が、私の気持ちに火を着けた。ダムのない佐梨川源流に今一度触れたかった。10月には家ノ串尾根と正面尾根の偵察を兼ねて雪山沢に入った。そして例年通り、正月山行に向けてのトレーニング山行を数回こなしたが結果は惨澹たるものだった。ワカンを着けてのラッセル経験のない水柿もいる事だし、2回のトレーニング山行を雪尾根でやった。11月の鹿島東尾根と12月の谷川岳南面の幕岩尾根は両方とも雨と雪不足で、ラッセル訓練には全くならなかった。奥多摩の天狗岩でのアイゼントレーニングと数回のミーティングのみで、準備不足で本番を迎える事になる。

最初の計画では家ノ串尾根からの駒ヶ岳、中ノ岳があくまでメインで、三山縦走は第二の目標だった。雪が少ないためにトレースのない家ノ串尾根が登れそうにないときは、現場で目標を小倉尾根から駒ヶ岳、そして中ノ岳、八海山までの三山縦走に変更する旨は事前に打ち合わせておいた。

12月28日 雨のち雪

最終の新幹線は予想に反してガラガラで、一両をほぼ独占状態で、安全祈願の酒盛りをしつつ、浦佐に向かう。快適なステーションビバークの後、パッキング中にナント太郎がスパッツを忘れてきた事が判明した。太郎の顔から血の気が引いていくのがわかった。電話帳で山道具屋を探して、太郎は長岡までスパッツを買いに行った。あさ7時前に電話で起こされて、店を開けてくれた長岡の山道具屋のおじさんに感謝。そんなこんなで登山口の駒の湯を出発したのは、 10時を回っていた。駒の湯には雪のかけらのなく、シトシト雨が降っていた。こんな状態では、家ノ串尾根への未練は完全にすっ飛んで、目標は越後三山の完全縦走に絞れてしまった。ほとんどラッセルなければ、今日中に駒の小屋も可能と判断して、ハイペースで歩き出した。標高900メートル位で雪が出てきて、雨もいつしか雪へとかわった。百草の池あたりから膝までのラッセル。駒の小屋直下のヘッドランプをつけて、17時45分駒の小屋に到着。10:20駒の湯 17:45駒の小屋

12月29日 ガスのち快晴

あまりに快適な小屋に心の底から感謝。スパッツ忘れ事件の遅れも取り戻す事ができて太郎も一安心のようだ。駒ヶ岳山頂はガスの中。こんなに簡単に登れてしまって、感激もない。稜線を真南に辿り中ノ岳を目指す。途中で天気は快晴に変わり薮に少しの苦労をしただけで昼過ぎには中ノ岳着。ここから見える魚沼の田んぼには相変わらず雪は全くなく、春の甲斐駒あたりから下界を眺めているような気分だ。八海山からはわらじの仲間パーティーが登ってきて、十字峡へ下っていった。今日も小屋の誘惑に負けて、泊まってしまった。アルコールの減りかたはやたらと早い。駒の小屋7:30 駒ヶ岳8:10 中ノ岳小屋13:40

12月30日 高曇り

今日が今回のハイライトのオカメノゾキの通過だ。気圧配置は南岸低気圧型で東京では冷たい雨が降っているとラジオは伝えている。ここ越後はどんよりとした高曇りで視界も利く。正月としては、風はあまりに生暖かい。ここ、中ノ岳からの下りも視界が利けばなんてことはない。まずは大斜面をがんがん下る。御月山は約100メートルの登りかえしだ。ここからは、尾根がやせて、このやせ尾根は延々、五龍岳まで続く。良好な視界と、トレースにも助けられて、ピッチが上がる。何ヶ所かある岩場も、鎖が使える。水無川から、荒山あたりには、魅力的なリッジが突き上げている。五龍岳には1時40分に着き、今回初めてテントを張った。ロープは一度も使わず、あまりにあっけないオカメノゾキの通過、だった。中ノ岳小屋6:05 五龍岳13:40

12月31日 風雪

夜中に50センチ位積もったようだ。テントは周りからかなり押されたが、何とか除雪はせずに朝を迎えた。一人で、ツエルトビバークの練習をした水柿はほとんど埋もれていた。やっと冬山らしい天気になり、気合いも入る。テントを出る前に、ルートを頭に叩き込んで出発する。視界は良くて20メートル位、風も強い。入道岳でルートが45度左に振れるが、この天気の中では、わらじの仲間の赤布に助けられた。八ツ峰の岩峰は30メートル位までの小粒な物だが、この天気ではロープはフル稼動。鎖にピックとツエアッケをねじ込んでの登りと、懸垂下降の連続で時間がかかる。後半のピークはどれがどれだか解らなかった。最後の地蔵岳を雪崩に気をつけながら左から巻いて、千本桧小屋に転がり込んだ。五龍岳8:10 千本桧小屋16:30

1月1日 晴れ

好天の中、スキー場へ下山。越後の湿った雪と悪天を覚悟してのいたのに、あまりに呆気なく終わってしまった。達成感、満足感も今一。

ど吹雪の八ツ峰は厳しかった。