フリーで登れちゃった縫道石山南東稜

2002年10月13日
三好、瀧島(記)


地の果て、本州の最北端の下北を目指した。

下北半島がちょうど斧の形をしているが、斧の刃先に今回の目的地の縫道石山はある。

大体こういうツアー話は飲み会の席で話が決まる。

今回も例外ではなかった。

下北が遠いのは承知の上だったが、どの位遠いかまでは考えずに参加を決めた。

調布を10時頃スタートし交代で運転しながらひたすら北を目指した。

東北道をかっ飛ばしていると正面に北斗七星が見える。

眠いけれど気分は悪くない。

初日は眠い中、西稜を登った。

そして2日目は眠気も抜けて南東稜にむかった。
良いルートの条件を列記すると、
岩が堅い。

(一部の変人を除いて)
見栄えがする。
内容が変化に富んでいる。
景色が良い。
頂上に突き上げる。
適度な難しさ。
ルートファインディングの楽しみがある。
カムが気持ちよく決まる。
などなど

南東稜はこのすべてを満たすルートだ。

途中には巨大な岩峰のツルムがありそれを正面からよじ登る。

これがまたそそられる。

さらに言えば,だいたい山自体がかっこいい。

縫道石山は下北のおだやかな大地の中にエルキャピタンのようにそそり立つ岩峰だ。

それに海が見える。

遠いというハンディーを持っているがわざわざ来た甲斐があった。

こんなルートを登れて今回はしあわせだった。

頂上からは下北の大地が穏やかに広がっているのが見える。

反対側には海だよ。

漁船がのんびり走っている。

うっすら見えるのは津軽半島でしょう。

その先にはきっと北海道が見えるんだ。

道の駅で目を覚ますと低い雲が垂れ込めていたが、天気は大丈夫そうだ。

中島、赤井パーティーはルート図でエイドのピッチがない緑友ルートを目指した。

登山道から東壁基部に行く踏跡が分かれる所に要らない荷物をデポした。

南東稜の取り付きは東壁基部を回り込んだ稜の末端を一段登ったところだ。

1P目30mⅤ+
瀧島が行こうとしたが出だしで躊躇して、みっちょんにタッチ。

彼女はハーネスを装着すると眠る女から登る女に変身する。

出だしの凹角は左からクリアーして後はスルスルとロープを延ばす。

自分もセカンドの安心感も手伝いフリーでクリアーした。

以下つるべ。

2P目30mⅣ+
岩茸のはえたフェースを登りクラック下のビレー点まで。

3P目40mⅤ+
登る女は刺激的なクラックにカムを決めながらレイバックで豪快に登っていった。

彼女は太りぎみの小さな体からは想像できないパワーを秘めているのだ。

上部はクラック通しに左から乗越していった。

岩は堅いので豪快に動ける。

気分は最高だ。

4P目40mⅤ
裏側のチムニーを登る。

上部は左から回り込む。

見た目より悪い。

登りついた所がツルムのテッペンだ。

緑友ルートでビレーしている赤井君にコールする。

頂上のハイカーが見物してくれている。

5P目15m懸垂下降
ツルムの裏のコルまで15mの懸垂。
そこから草付きを50m歩き。

6P目15mⅥ-
登る女はアブミのスタンバイもしてから取り付くがフリーでクリアー。

瀧島もセカンドの気軽さも手伝いあっさりフリーで。

ホールドは探せばあるしランナーも取れる。

7P目40mⅤ+
左にラダーがあるが陸奥ルートだろう。

フェースの弱点を探しながらじりじりと高度を上げる。

アドレナリンが体中を駆け巡る。

指先と足先に神経を集中する。

残置も少しはあるがカムを決めたほうが安心だ。

一面岩茸だらけの感動のピッチだ。

8P目Ⅲ+45m傾斜が緩むが気は抜かずに登る。

9P目ⅡからⅢ45m

頂上では緑友ルートを登った中島、赤井が迎えてくれた。

ルート図にはA1のピッチが含まれていたので、ふたりともアブミは持っていたが、使わずにフリーで登りきることができた。

内容はたとえば明星山P6南壁の数本のフリールート、東北で言えば黒伏山の中央ルンゼと比べても遜色ない。

それほどすばらしいロングフリールートだった。

 

縫道石山 緑友ルート

2002年10月13日
赤井、中嶋(記)


10月13日(日)

晴れ

全体的に岩は堅く、フリクションもまあまあでクラックも多い。

開拓から時間がたっていて、また海から近いせいもあるのだろうか、残置ピンが錆びだらけであまり当てにならない。

積極的にカム類を使うある意味今日的なフリークライミングが出来た。

岩の種類は火山の根っこなんかに多いヒン岩だと思うのだけど、花崗岩をもっとパキパキにしたような感じ。

クラックがきれいにパラレルで、中のフリクショも花崗岩ほどではないため、チョック類はすわりがわるそうでほとんど使わなかった。とうぜんカムも花崗岩ほどは安定感が無いので、ランナウトと相まってなかなか緊張感が味わえる

緑友ルートは東壁の真ん中あたりを「オールフリーで登るラインで人気がある」ということで登りたいと思った。

前日西稜を登っているので、東壁のルートにしても少しはルートが見つけやすいだろうと思っていたが、近づいてみてもなかなか判然としない。

朝日を浴びた東壁をアプローチ途中から眺めると左に開いた大きなジェードルが陰影の関係で目立つので目が行ってしまうが、後でわかったが同じ岩の右の方に右に開いたジェードルがあってそこがラインになっている。

上部はもっとラインがわかりづらい。

どこが取り付きかも判らないまま藪を漕いで基部に出たところ、いかにも弘前ルートの取り付きらしいちょっとした広場があり、そこから左にトラバースすれば緑友とおぼしきラインに入れそうだったので行ってみることにした。

古いトポでは6ピッチになっているが途中のスケールなどあまり一致していなくて、計5ピッチで頂上まで抜けた。

以下ピッチごとの概略

1P 5級位 45m中嶋

残置ピンはあまり当てにならないが、ラインを確認できる程度にはある。

快適なジェードルをフリーで登ると30m位で安定したテラスに出るが、次のピッチの見通しが立たないのでもうちょっと伸ばす。

2P 3級+? 40m 赤井

ブッシュが多くラインが判りづらいが、さすがは赤井さん、見事に藪の弱点を突いて次のピッチのチムニー下のテラスへ。

3P 5級位 45m 中嶋

トポと現在位置を確認できた数少ないポイントで、開いたチムニーというか、右向きの狭めのジェードルを登ると中央バンドの右端に出る。

全体に大きな構造がなくなって判りづらくなるけど、思いきって直上すると素晴らしいフリーのラインになっている。

ただしビレーポイントがよくわからず、残置ピンにカム2つ追加でアンカーを作る。

4P 5.10a? 45m 中嶋

ここまで引っ張ってしまったので責任を取ってこの先もリードさせてもらう。

相変わらずラインは判りづらく、左に逃げればすぐブッシュだし、右に行くともうちょっと傾斜があって明瞭な弱点は無い。

結局直上気味に浅い凹角を登るが、ピンは少ないし何よりこの手のルートにしては非常にムーブが厳しかった。

ぎりぎり楽しみながらリードできたという感じ。

ここいら辺はクラックやリスも乏しくて、ランナウトに耐えながらなんとか頂上直下のブッシュに入って終了。

このピッチに関してはラインをはずしていたような気もするが、当たりのラインがどの辺だったかはいまだに判らない。

5P 3級-? 25m 赤井

頂上まであと少し。

見た目よりは難しくてうかつにロープは解けない感じ。

程なく海の見える気持ちの良い頂上へ。

東南稜を登っている瀧島・三好パーティを待って頂上で優雅にお昼寝をした。

頂上直下でビレー中に、昔ここで登っていたという年配の方が声をかけてくれたが、「地元のクライマーたちは今でも一応岩茸のために登りたくても登らないようにしている」

と言っていた。

現にこうしてそこまで登ってきてしまっていたのでなんと返事をしてよいものか困ってしまった。

おわり