南アルプス 甲斐駒ケ岳 赤石沢Aフランケ赤蜘蛛、奥壁左ルンゼ(途中敗退)

1999年7月24~26日
小谷、荒井(記)

7/24

駒ケ岳神社 – 5:40 黒戸尾根 – 13:00 8合目 – 15:30 Aフランケ基部

久しぶりの黒戸尾根で2人(少なくとも私(荒井))は、くたくたとなる。

8合目からAフランケ基部まで所々迷いながら下る。

残置ロープに助けられ右フェースの基部へたどり着く。

ツェルト1張り分のスペースを見つけビバークする。

水もとれ快適。

19:00消灯。

7/25

4:30発 – Aフランケ赤蜘蛛取付 – 5:10 赤蜘蛛の登攀 – 14:40 終了点 – 15:30 8合目

ビバーク地点から赤蜘蛛ルートへ向かう。

1箇所残置ロープの頼りになる。

じゃんけんで勝った小谷さんのリードで登攀開始。

奥壁まで登るつもりで荷物を持ってきたので登りに手間取る。

荷物の重ささえ気にしなければ岩は堅く、天気もよく快適。

途中フレンズが有効にきまる。

終了点に着いたのは14:40 9時間以上もかかってしまった。

予定していたBフランケ赤蜘蛛は諦め、明日は奥壁左ルンゼへ行くことにする。

8合目まで登り、ツェルトを張る。

(水は、八丈バンドをトラバースして右ルンゼの取付きでとれる。)

18:30消灯

7/26

4:30 発 – 奥壁左ルンゼ取付 5:30 – 左ルンゼの登攀 – 5P目F2へのトラバースで落石を発生させ負傷のため敗退(同ルート懸垂下降3P) – 左ルンゼ基部 – 8合目11:30 – 黒戸尾根 – 17:10駒ケ岳神社

3:00起床 必要以外のものは、岩小舎にデポ。

4:30発。

途中で水をくむ。

取付きで多少迷う。

今日は、私がリードで始める。

1P目以外と悪く手間取るがその後はペースが上がる。

5P目、私がリードでF2へトラバースしていたときに不覚にも落石を発生させ自ら手と足に負傷する。

パートナーには申し訳ないが、登攀を諦めることにする。

ここから懸垂下降3Pで左ルンゼの基部に着く。

8合目までもどり、荷物をまとめて黒戸尾根を下るが、負傷した足をかばいながらの下降なので時間がかかってしまった。

17:10 駒ケ岳神社到着。

甲斐駒ヶ岳 赤石沢Aフランケ赤蜘蛛ルート

1999年1月15日~1月17日
向畑(記♂38歳)、杉浦(♂29歳)

~最初に感想~

赤石沢は全く初見で取付いたため、アプローチ等の状況がよくわからなかったことや、15日に着いた新雪の処理に手間取ったことなどから、登はんに2日を要し、下山も遅い時間になってしまった。

しかし、壁の概要を把握した上で、もう少しいろいろと考えて登れば、充分1日でも抜けられる壁だと思う。

ルート自体は、クラック、リス等の弱点をつなげたラインで、しかも、巻いたり、回り込んだりせずに、壁の中心部を攻撃的に突いている。

その昔、某クライマーが余分なボルトをたたき落とした気持ちも、個人的には大変よく理解できた。

1月14日

100m先からでも来たことがわかると言われている、騒音が近所迷惑なスカイラインで杉浦君に迎えに来てもらい、竹宇駒ヶ岳神社手前にあるという、無料駐車場を目指す。

1月15日

寝たのがかなり遅かったため、6:30起床、8:00頃からのんびり歩き始める。

8合目の岩小屋がわからない、というよりも、8合目自体がどこだかわからないことや、多分明るくならないと、Aフランケへの下降路がわからないから、7合目に泊まっても同じだということで、非常に快適だとのうわさを聞いていた七丈小屋を目指す。

神社を過ぎ、山道になってきた頃から雪がちらつき、高度が上がるにしたがい、だんだんと積もり始めた。

15:00頃、7合目に着く頃には結構な積雪になっていた。

1月16日

5:30出発。

天気は晴れ。

甲斐駒往復の登山者の他、左ルンゼ、中央稜、Aフランケ白稜会ルートなどに向うパーティが泊まっていたが、既に小屋には誰もいなかった。

8合目からはトレースを追い、Aフランケ基部へと下降。

白稜会ルート1ピッチ目に取付く先行パーティにお礼を言って、となりの赤蜘蛛ルートを登り始めた時には、既に9:00を過ぎていた。

この段階で、早くもビバークを覚悟していたが、ただ、この時点では、大テラスから1~2ピッチはフィックスできて、翌17日には余裕を持って抜けることができると考えていた。

1ピッチ目、杉浦リード。

フォローは全ピッチユマーリング。

ラダーの人工だが、ビレーポイントのテラスに雪がどかっと乗っており、払い落としに苦労していた。

2ピッチ目、向畑リード。

2~3ピッチ目は、70mほど続くジェードルにクラックが走っている。

残置は少ないが、フレンズ、エイリアン、キャメロットなどから選んだサイズがおもしろいように決まるので、普通の人工とそれほど大差なく登れる。

3ピッチ目、ビレーポイントが狭く、入れ代わりが面倒なので、そのまま向畑リード。

内容は2ピッチ目と同様だが、残置が増え、ずいぶんと楽になる。

4ピッチ目、杉浦リードでカンテを人工で回り込み、ワンポイントのフリーから再び人工、さらにハングの乗っ越しに果敢に挑むが、ここではまる。

ハング上には新雪が乗っており、ホールド、スタンスとも乏しいみたいだ。

最後のアブミからハング上に立ち込もうとするが、ついつい足がアブミに戻って来てしまう、ということを5~6回繰り返し、あえなく敗退。

ロワーダウンでビレーポイントに戻って来た。

リードを交代し、気合を入れてハング上に立ち込むが、目の前のスラブには30cmほどの新雪が乗っている。

ピッケルを振り回して除雪しながら、細かいスタンスに立ち込み少しずつ進むが、ふくらはぎがしびれてくるので、浅打ちナイフブレードのタイオフからスカイフック、再びナイフブレードのネイリングと、アブミに乗って休みながら除雪を続ける。

スラブから小ハング上の残置ハーケンにピッケルを引っかけ、アブミをかけてさらに除雪。

結局、ハング上から、大テラスまでの約20mくらいは、除雪と、ふくらはぎがけいれんしそうな立ち込み、抜けそうなネイリングでの休憩の連続だった。

冒頭に登場した、某クライマーの同じクラブの後輩にあたる、ある先鋭的クライマーが執筆した「氷雪テクニック」には、冬季登はんにもちいるピッケルは、「長ければ長いほど良い」と書かれていたが、この時ほど短身のピッケルがもどかしいことはなかった。

この結果、大テラスにフォローを迎え入れたのは、ビバークタイムとしては最適な16:30となっていたので、余計なことはせずに、さっさとビバークの準備を始めた。

シェラフカバーしか上げていなかったので、夜はさすがに寒かった。

1月17日

天気は快晴だが、寒くて体がなかなか動かず、登り始めたのは8:00を過ぎていた。

5ピッチ目、向畑リード。

短いクラックからスラブ、さらに短いクラックからビレーポイントへ。

クラックの部分はフレンズ類の人工。

6ピッチ目、杉浦リード。

出だしのラダーからリスが延々と続く。

ロープスケールも40mほどあり、とても見栄えのするピッチ。

ただし、リスには最初からハーケンが打ってある。

部分的にリスがフレアーするところだけ、エイリアンやロックスを使っていたみたい。

7ピッチ目、向畑リード。

カンテを人工で回り込み、やや右上。

8ピッチ目、杉浦リード。

ワンポイントの人工からフリー、再び人工で樹林帯に突入。

9ピッチ目、向畑リード。

木登りでロープを目一杯伸ばし、Aフランケ頭の岩小屋の下でピッチを切る。

15:00頃終了。

そこでロープをたたみ、白稜会ルートから赤蜘蛛ルート上部につなげたらしい先行パーティのトレースをたどる。

8合目の稜線には16:00頃着。

七丈小屋着17:00、デポを回収、荷物を整理し、17:30下山開始。

満天の星空のなか、甲府の夜景に向って黒戸尾根を下った。

駐車場着23:30頃。