農鳥岳 大井川東俣 滝ノ沢

2002年8月14日から3日間
深沢、大滝(記)


積年の目標である正月のアイスクライミングに向けて地形を知るために夏の滝ノ沢を目指した。

8月14日 晴れ

奈良田の発電所7:35出発 10:50大門沢小屋 14:35稜線 15:05上河内岳。

現在は誰も歩いていないだろうが、大門沢下降点より上河内岳、さらにその先までしっかりした道が続いている。歩かないのは勿体無いくらいだ。

塩見岳が格好いい。

ここからいよいよ池ノ沢池を目指して降る。

歩き難いガラ場を下り、時々道を確認しながら進む。

意外と踏み跡がある。

時々、新しそうな黄色いテープもある。

16:30 ひょっこりと池に出た。40x50m位か。

水深は浅く、枯れた木が何本も水底に横たわっている。

左から小沢が入っているので水は綺麗だ。

池畔の草地にツェルトとタープを張り、焚き火をした。

深山の山上池は静かだ。

8月15日 晴れ

6:00出発 シュラフカバーだけで寝たらとても寒かった。

踏み跡があったり、なかったりする道だが7:35池ノ沢小屋にたどり着く。

小屋は現在使用されていないようで、陰鬱としていた。

この頃より曇りだす。

大井川東俣と出合い、その広い河原を歩く。

釣り人4人に遭う。

太いワイヤーの残置が多い。東海パルプの木材切り出しの名残かも知れない。

9:45白峰沢出合通過。10:10滝ノ沢出合。

出合から15分ほど行くと、2段50mが見えた。

下段は緩い。上段は冬になったら、立っているのは15から20m位か。

丁度ここで、雨になってきた。

出合に戻って停滞するか、雨の中登るか、迷った。

様子を見ていると、弱く降ったり、止んだりしているし、対岸の山も見えているので大降りにはならないだろうと判断し、登ることにした。

深沢君が居るのでロープを出して左から巻いた。

短く切って、3Pで巻き終わるとすぐ60m滝だ。

落差は大きいが、右から巻きながら見ると、4段で構成されていてそんなに大変でないかも知れない。

この後は容易なスラブ滝と6、5、4、6mと小滝が続き、40mの滝を迎える。

水流の右を登っていくが、少し被った形状になる。

ハーケンが1本あって、古いシュリンゲが付いている。これを登るのは恐い。

右から巻こうと行って見るが、そこも岩の乗り越しが難しいし、確保も出来ない、また滝に戻って残置シュリンゲを捨て、ランニングを採り覚悟を決める。

左足を遠いスタンスに伸ばし手はぬめったホールドをまさぐる。

重荷に耐え、えいやっと越す。

ハーケンがもう1本あったのですぐランニングを採る。

次は空中にせり出した右へのトラバース。

お腹の前のロープの結び目が岩に当たって動き難い。

岩登りの要諦は、落ち着く事だと自分に言い聞かせながら登っていく。

氷登りとしては難しく無い滝に見える。

登り終わって、右下を見たら急な草付きで、とても来られそうにない。

強引に右から行かなくて良かった。

ルートファインディングは、やはり難しい。

居る所は、後半のゴルジュ帯を見下ろすかなり上の方、ここから上部が遠望出来る。

30、20、6、6、50mとあるが、傾斜は緩く見える。

最後の滝、2段60mは物凄く大きい。

近くで見る事が出来ないので良く分からないが、一番大変かも知れない。

ゴルジュの両岸は立っているので、小さく高巻くことは出来ない。右から延々と大高巻きとなる。

右岸は岩峰になって居て巻けない。

所々、踏み跡があり、シュリンゲが1本落ちていた。たまには人が来て居るらしい。

3:00ナメ通過。

唯一、美しい場所だ。

ここから泊まる所を探しながら進むがいい所がない。

二俣を過ぎると水流が消えるらしい。

その上はハイマツ帯なので泊まれない。

先程、右岸に傾斜の緩い草地があったので、そこまで戻り、整地して、ツェルトを張る。

岸より高くなっているので、増水の心配はない。

雨模様なので焚き火は無し。

夜中、とても寒かったので外を見たら、満天の星だった。

深沢君も寒そうなので、コーヒーを沸かして身体を温めた。

8月16日 快晴

6:00出発 ハイマツ帯で20分ほど奮闘し、後は高山植物を愛でながら、高度を稼ぐ。

森林限界なので、藪漕ぎはない。

降り向けば塩見岳の勇姿。何時か行こう。

稜線を歩く人が見えてきた。

農鳥岳も西農鳥岳も行った事がなかったので、左寄りに登って行ったら西農鳥岳の頂にぽんと出た。

7:35到着 8:20出発 9:40大門沢下降点 12:00大門沢小屋

途中、前会長の浅田家族に会う。

時間が早かったので帰ることにする。

深沢君の祖父母の家が奈良田の旅館だったので、お風呂に入れて貰い、気持ちよく帰った。

アイスクライミングの作戦

初日は池ノ沢まで行く。

池まで行かなくてもいい、手前の平らなところで泊まる。

2日目は滝ノ沢F1下に荷物を置き、2段50m、60mを空身で登る。

もしも、F1上及びF2上が安全そうならば、降りて滝を巻いて荷物を上げ、幕営。

危険そうなら、滝ノ沢出合で幕営。

ここが上手く行けば、翌日が楽になる。

3日目は、恐らく小さな滝はロープレスで行けると思う。

問題は、最後の2段60mだ。

頑張るしかない。

ここで荷揚げをするだろう。

この日は何処で泊まる事になるか、時間との兼ね合いだろう。

予想では、夏と同じ二俣手前かも知れない。

上がりすぎると風が強いだろう。

上がるなら、大門沢側まで行かねばならない。

 

冬の瀧 朝日夕日も なき巌  野沢節子

冬瀧の 真上日のあと 月通る  桂信子

 

南アルプス 農鳥岳 大井川東俣滝ノ沢(敗退の記)

2001年12月30日~2002年1月1日
森広、櫻井、大滝(記)


12月29日

深夜、奈良田第一発電所に着く。

車5~6台あり。

テントが張りにくいので、少し戻って奈良田橋の袂に張った。

 

12月30日

7:50発 小雪ちらつく。

林道や登山道に雪10センチ程あり。

小尾根を巻く辺りでスパッツ着用。

大門沢小屋手前5分位の右から入り込んだ沢に、氷瀑があった。

つららの集合体だが、段々になっているので登れそうだ。

1ピッチ分ありそうだ。

小屋を覗くとテントが1張りあった。

窓が大きく明るい小屋だ。

水も流れている。

しばらく山腹を巻いて行くと広い河原に出る。

そこからラッセルが始まった。

膝下、膝上、樹林帯に入ると、急斜面になるので腰くらいまである。

一気にぺースは落ち、労多く時間だけが過ぎていく。

なかなかテントスペースが見つからないが、4時、2200mと言う看板の所が、かろうじて3人用テントが張れた。

ここ以下にもここ以上にもいい所は無かった。

一晩中吹雪いていた。

大変なラッセルと、今後の悪天候予報とで、我々の意気は消沈した。

翌日進んでも、滝ノ沢まで辿り着かないかも知れない。

着いたとしても、谷に入ってから雪になるかも知れない。

そうしたら、雪崩が怖い。

降雪が無くても、氷の部分が終わってからのラッセルでどれだけ時間がかかるか知れない。

風雪のテントの中で各人、心境悶々とした。

結論は、稜線まで、行ければ農鳥岳まで行こう、と言うことになった。

朝まで吹雪いていたので、ゆっくりと起きて準備をしていたら、若い男性二人が上がってきて、そのままラッセルに突入して行った。

8:40発 僕達も直ぐ後を追ったが、追いつけない。

ラッセルしている人に追いつけない。

凄いパワーだ。

空はどんどん晴れて快晴になった。

富士山や、駿河湾、伊豆半島も見える。

・・田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ・・
猛烈なラッセルを抜きつ抜かれつして、12時頃稜線に着いた。

半端じゃない強風だ。

塩見岳、荒川岳が良く見える。

大井川方面を遠望し、相談の結果、下山することにした。

大門沢小屋には15時に着いた。

小屋の上の方で45センチ位の積雪があった。

小屋の中から富士山が見える。

 

2002年1月1日

謹賀新年 8:30発。

晴れ。

午後から曇り。

例の氷に向かう。

近づくと左にもあった。

右が25m、左が15m。

全体的に氷は薄い。

段の所でランナーを採って行けば大丈夫だろう。

右の滝をスクリュウ4本25mで抜け、左の潅木でビレー。

Ⅳ級?潅木で懸垂。

左の滝は15m位だが良く凍っている。

ここも段々になっている。

抜ける所が難しく、右アックスのブレードを氷と岩の間に噛ませて、左足を高い位置の氷から飛び出している岩に苦労して持ち上げ、左のアックスを薄氷にコチンとあてがい、乗り越した。

Ⅳ級?
スクリュウ3本 右の潅木で懸垂。

12時頃止めて下山。

14:20駐車場に着いた。