南ア 深南部の沢

2019年8月9日~8月14日
中和(単独、記)

飯豊川に行く予定だったが、諸般の事情で中止になった。去年は自分の食中毒とケガで行けなかったので、飯豊川には縁が無いのかもしれない。1人での山行であれば、山深いエリアの沢旅が良いということで、南アルプスの寸又川に行くことにした。

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山行概要:
沢でも尾根でも、山の反対側に抜けるルートが好きだ。とはいえ、南ア南部では公共交通機関で行ける登山口など知れているので、静岡の寸又峡温泉から南信濃の遠山郷に抜けた。使った沢は以下3つ。下西河内は釣り遡行だったが、上西河内からは台風に追いつかれないよう竿は封印した。

・大井川水系/寸又川/下西河内(遡行)
・大井川水系/寸又川/逆河内/上西河内(下降)
・大井川水系/寸又川/逆河内本谷・火打沢(遡行)

台風の進路次第では途中下山もあるかと思っていたが、まぁ天気は持ったので逆河内まで遡行できた。15日からは大雨予報であったため、4つ目の梶谷川の下降は諦めて中ノ尾根山から朝日山への尾根で退散。

コースタイム:
8/9(D1)~8/14(D6)までの5泊6日。
D1:寸又峡温泉(08:38)~下西河内出合(10:47)~前黒ノ沢(13:58)~丸盆ノ沢(16:35)-宿泊地(16:45)
D2:宿泊地(06:01)~三俣(09:29)~二俣(12:32)~水源(13:35)
D3:水源(05:52)~丸盆岳(07:15-08:05)~鎌崩のコル(08:47)~二俣(11:13)~上西河内出合(15:56)
D4:上西河内出合(05:55)~岩小屋(09:15)~大沢出合(10:53)~明河内出合(16:03)
D5:明河内出合(06:06)~二俣(12:59)~火打沢大滝(16:32)
D6:火打沢大滝(05:22)~中ノ尾根山(07:58)~白倉山(10:25)~朝日山(12:31-13:00)~梶谷集落(15:02)

各ルートについて:

【下西河内】
複数のゴルジュを有しており、最初のゴルジュは釣り師による残置ロープなどがあるが、それ以降はクリーン。水量が多いのでシャワークライムはとてもしんどいが、高巻きも概して悪い。なるべく水流沿いの遡行を志向した方が良いと思う。ゴルジュの間は安定した河原になっており、泊まり場の心配はいらない。

大滝は無いが泳ぎ必須

三俣の先のゴルジュを抜けるとすぐに二俣で、ここから先は歩くだけ。1700mくらいで水が涸れて笹薮へと消える。獣道を拾えばカモシカ平まで、大した藪漕ぎもなくたどり着ける。

寸又で名高いゴルジュ沢は逆河内と栗代川だが、どちらも何も無い区間が長いため、ややもすると冗長に感じてくる。一方、下西河内は安定した面白さが続く。詰め上がった先が深南部屈指の展望地であるカモシカ平というのもいい。山深さ、水量の多さ、ゴルジュ突破など寸又川の良い部分がまとまった名渓だと思う。

下西河内_遡行図

【上西河内】
大滝以外は見るべきものはない。渓相・水量・魚影のいずれも下西河内に遠く及ばない。鎌崩のコルからの下降はガレルンゼで不安定だが、丸盆からの沢と合流してからは単なる河原歩きになる。
大滝は左岸の尾根から大きく高巻く。尾根上の壊れた祠のあたりから適当に下降すれば、大滝の下にでる。大滝の下からはゴルジュが断続するが、ゴルジュ内に問題となるものは無い。明るい広河原が出てくれば逆河内の本流は至近。

上西河内の大滝

【逆河内】
流程が17kmに達する大規模な支流だが、ほとんどの区間で側壁が緩まない。側壁が屹立した本格派のゴルジュは全体の1割にも満たないが、急なザレ状の側壁に挟まれた渓谷が延々と続く。

逆河内の典型的な渓相

名前の由来となった逆地形(穿入蛇行)は4m滝から始まる。登った記録もあるが、川幅一杯の大水量を吐き出し、左側壁で跳ね返りながら落ちている。どうみても突破不能なのでロープを出して左岸を巻いた。少し先の幅3mの淵は泳ぎでも突破できたが、最狭部の淵は泳ぎでは突破不能。側壁トラバースから水流が弱い場所への飛び込みで突破。これより先は明河内まで問題になるところは無かった。

最狭部(左壁をへつって飛び込む)

明河内より上流のゴルジュは、滝を内蔵しているので突破が難しくなる。釜淵ゴルジュは右岸からまとめて巻き、それに続くゴルジュは出口の3mハング滝だけ左岸から巻いた。その先の8m滝は左岸から巻いたが、これは超大高巻きになってしまい懸垂3回で戻る。
渓相が明るくなってくると大滝で、これを右のザレから簡単に巻いた所が二俣。火打沢に入っても滝が連続して悪いが、水流の重さは既に無い。この沢も詰めは笹薮だが、やはり獣道を使うと厳しい藪こぎも無く主稜線に到達できる。

逆河内_遡行図

【中ノ尾根山~朝日山~梶谷集落】
全体を通して踏み跡があり、手を使う藪こぎはない。無数の獣道が交錯するので、どれが道なのか不明瞭だが、たまに赤札が出てくる。2万5千図で名前が付いている場所には全て山頂標識があり、現在位置の同定は容易。朝日山から梶谷集落への登山道は荒れている。

主要装備:
ハーケン 10枚、トライカム#0.25~#2、ハンマー、60mロープ、15mフローティングロープ、アブミ(未使用)、沢靴(ラバーソール)、軍手、ツェルト、のこぎり、釣り竿、ラジオ、携帯電話

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深南部の山は、主稜線でも携帯の電波が無い場合が多い。今回も最終日までネットに繋がらず、台風情報はラジオからという古式ゆかしいスタイルだった。日高や南会津でも主稜線なら携帯の電波が入る当節、ここは主稜線であっても不感地帯が多々ある。日向林道や左岸林道が機能不全になって久しいが、おかげで寸又川や逆河内の源流部へのアクセスは格段に難しくなった。こうやって精神的・空間的に街からの距離が保たれている事が深南部の魅力の一端ではないかと思う。