大井川水系 大根沢

南アルプスに大根沢山という山がある。「ダイコンたくさん」ではなく「おおねさわやま」と言う。この山を源流にする沢はいくつかあるが不勉強な自分は明神谷くらいしか遡行していない。そんな訳で、山名の由来となった大根沢に行くことにした。


中和(単独、記)

概要:
2022/11/03~11/06
信濃俣河内支流の西河内から大根沢にアプローチ。
大根沢支流のブナ沢から寸又川まで下降後、杓子沢を遡行して大根沢山。

11/3 快晴
赤石温泉付近に車を停めて自転車で畑薙ダムに移動。林道をしばし歩いて信濃俣河内に入渓する。渇水期なので信濃俣河内に水の重さはなく、紅葉を眺めながら歩くだけで西河内の出合に到着。

畑薙は紅葉シーズン

アプローチに使った西河内は「何もない」の一言で表現できる沢だ。小滝とミニゴルジュが散見される程度の下降向きの沢で、登って面白いと感じたなら感性が豊かな人だと思う。水源も低くH1400くらいで枯れる。稜線に上がると焚火ができないのでH1600あたりの傾斜地をそれっぽく整地して宿泊。ぞんざいな整地だったので、傾斜でズリ落ちては起きるを繰り返す嫌な夜になった。

11/4 快晴
夜明けと同時にガレた沢を登ってコルを目指す。不安定なガレを登らず、横着して右手の尾根に逃げるとあっけなくコルに出た。
コルから水の少ない沢を下降していくと40分ほどでブナ沢の源流部に出る。ここから杓子沢(地図に名前がないが大根沢山の南西に詰める沢)出合まで3時間で下降できると予想していたが、滝が多く2倍ほどの時間がかかった。
途中、木の根を支点に懸垂したらロープを引けずに登り返したり、大高巻きしてのルートミスもやらかしている。適正な判断ができる人ならもっとスピーディに下降できるとは思う。

H1600付近の12m滝
大滝はないが10mくらいまでの滝が点在

滝やゴルジュで薄暗いブナ沢から一転し、杓子沢の出合は薪も豊富な明るい河原で宿泊好適地。ここより下流の大根沢の中下流部はゴルジュはあるものの小滝と釜が続くきれいな渓が寸又川本流まで続く。この日は大根沢橋よりやや下流に泊まった。

サクラ沢出合の二俣

11/5 快晴
この日は寸又川まで下降した後、杓子沢出合まで登り返して同沢を遡行するのが目的。泊地を出て大根沢を下降していくが、渓相は相変わらず穏やかだ。にしても林業のゴミが非常に多い。大根沢には森林鉄道の支線や営林小屋があったので何となく予想していたが、ブルドーザー、ワイヤー、吊り橋、小屋、森林鉄道など林業ゴミの展覧会となっている。

コマツ製ブルドーザー

左岸の大根沢事業所跡を見送るとすぐに寸又川との出合だが、ここはゴルジュ内に全水量が1mほどの幅で圧縮されて落ち込みとなっている。高さは2mほどなのでトラバースして釜に飛び込めば下降できるが、すぐ横に森林軌道があるので歩いて寸又川に出合う。

上から見た落ち込み

大根沢出合からは左岸林道に上がって時間短縮しようとしたが、この林道は相変わらず崩落地だらけで極悪だった。釣り師によると思われるトラロープが残置されているが、落ちたら良くて大怪我の崩落地にロープの強度も固定方法も不明なゴミで突っ込めるのが信じられない。豆腐メンタルの自分はトラロープに命を預ける気にならず、適当な場所で懸垂して大根沢に降りて杓子沢の出合まで戻った。

画像だと何が何だかわからないが、崩落地にトラロープがフィックスされている

ここからは大根沢の南西に詰めあげる杓子沢の遡行だが、基本的に上に行くほど難しいしヌメる。下流は小規模なゴルジュと小滝のみだが、中流は5m前後のヌメる滝が連続し、上流部はV字谷からの崩落壁という品揃え。
中流部の終わりであるH1580で三俣状になって沢が東に屈曲するが、本流と思われる沢の水は伏流し、地図にない支流からは大量の水が流れこんでいる。地図と現実の不一致にひどく困惑させられたが、一番風格のある本流と思われる涸れ沢を遡行したら正解だったようで、すぐに水は復活した。と同時に左右の壁が立って来てルンゼ状になってくる。快適な幕場は諦めざるを得ない雰囲気だが、H1750付近に奇跡的に平坦な場所をゲットし快適な夜を過ごした。

最上流部。同じような滝が3つ続いて崩落地に出る

11/6 快晴
この沢は詰めが崩落壁なので、どこで逃げるかの判断が核心になる。なまりきった今の体とメンタルで崩落地を登る気になれないので、遡行中も脱渓ポイントのチェックばかりしていた。途中5m滝を高巻きするためロープを使って一段上がると、5m滝が3つ連続する上は崩落地となっているのが見えた。頑張って登ってもすぐに遡行終了になるのがわかったので、懸垂して一段降りて滝下の右岸から脱渓。あとは藪を漕いで大根沢山に到達。この先はほぼ登山道なので、14時前には赤石温泉にたどり着いた。

コースタイム:
11/3:赤石温泉(10:30)-信濃俣林道終点(11:02)-西河内(12:49)-西河内H1600(15:29)
11/4:西河内H1600(5:39)-コル(6:11)-杓子沢出合(14:27)-大根沢橋(15:50)-泊地(16:10)
11/5:泊地(6:40)-寸又川(8:13)-大根沢橋(10:50)-杓子沢出合(11:57)-杓子沢H1750(15:27)
11/6:杓子沢H1750(6:37)-大根沢山(9:35)-赤石温泉(13:50)

装備:
60mロープ、荷揚げ用補助ロープ、トライカム#2まで(未使用)、ハーケン数枚(未使用)、アブミ(未使用)、沢靴(ラバーソール)、軍手、シュラフ


アルパインの岩場における残置やラッペルボルトの是非を語るクライマーは多いが、登山者もペンキと赤札の設置について少しは思いを巡らせても良いのではないか。
もちろん百名山や丹沢・奥多摩あたりの登山道ならば、立派な道標があろうが等間隔で刺々しい色のペンキマークがあろうが何か言うつもりはない。そういう場所だと承知しているからだ。
また、赤札をゼロにしろなどと言う気もない。バリエーションにおいて、ルートの取付きや尾根の下降点に確信が持てないとき、無造作につけられた赤札で一安心したことも一度や二度ではないからだ。
ただ、未整備であることが魅力の深南部において、ペンキや赤札で過剰にルート整備するのは、山域の特性を無視した身勝手な行為だと思えてならない。例えるなら谷川岳や剱岳の岩場をラッペルボルトで整備するのと同レベルの暴挙なのではなかろうか。

過剰なペンキの典型、この後も赤札が連打されている

 

 

笠間 ターゲット

笠間 ターゲット
河合(記)

この冬トライして最も印象に残った1本は?
問われると、それはスプラッシュでも秋雨でも、スカラップでもない。「ターゲット」。この1本に尽きる。
パートナーがおらずひっそり出かけたある日、アプローチで迷いに迷い、何故か鎖場にぶち当たり、ペットボトル転げ落としながら辿り着いた笠間ボルダーで、出会ってしまった。
このルートはひっそりと口を開けていた。ボルダーで3級、リードで5.10cという、よくわからないグレードが付いている。
綺麗に割れた弓状の前傾ハンドクラックで、出だしはフィンガーだ。
笠間で一番美しいのでは、と思う。
高さは取付から7~8m。下地は最悪、斜めの岩盤か木の根が飛び出た急斜面。リードならカムを2~3個決めるだろうか。
チョーク跡は、やはりついていない。
当初、見た目に圧倒され、トライするつもりはなかった。
しかし、石器人スラブの鬼トライを重ねるうち、ソールも心も擦り切れ、あまりに美しい割れっぷりに気が少々触れて「やってみるか」となった。
トライするにはそれなりに葛藤があった。
「万が一にも落ちないか」
「Point of no returnはどこか」
「クラック内のコンディションは?」
「落ちたら大怪我確実・・・でも頭から落ちなければ死なないよな・・・」
最終的にグラウンドアップは諦め、トライ前に抜け口に回り込んだ。
マントル位置に葉がヤバイ量乗っていないか確認(多少乗ってたが無視)。登攀に使わない部分のクラックに手を入れ、湿気と幅に問題がないことを確認。申し訳程度にマット1枚とサーマレストを敷き、やにわにトライを開始。マットの上に落ちられる気がしない。
出だしのフィンガーからシンハンド部分が少しテクニカルだったが問題なく、タイトハンドに手を捻じ込んだ。
「これならクライムダウンできる。行こう」
心は決まった。
後は絶対の自信のあるハンドジャム。
しかし、安全圏から飛び立つあの感覚。
久々に、アルパインをやっていた時の感覚を思い出した。
最後はワイドハンド気味、ジャムの決まりは甘くなったが、予想通りの容易さ。
多分15秒位であっさり片付いた。
リップ部分は、やはり少し枯葉が乗っていた。
妥協して掃除しときゃ良かった。
最後まで手はジャムのみに拘り、丁寧にマントルを返して抜けた。
周りに誰もいない中、一人、小さく「やった」と呟いて、足早に取付に戻った。
こうして無事に抜けられたので、とりとめもない記事を書いている。
この割れ目に触れ合った時間は多分1分に満たないけど、凝縮された時間だった。

そもそも、私はメンタルが弱い。
クライマーのくせに、安全圏から離れることが嫌いだ。
当然ランナウトが苦手、RやXの付くルートは基本、興味の外だ。
今回、自分の興味とは真逆のルートに触れて体感したのは何か。
それは、精神的な、目に見えない部分での「クライミング」だった。
この手のクライミングの、安全圏に抜けた時の、全身から迸る充実感は、筆舌に尽くし難いものがあることもわかった。
でも、登ってみて思う。
こういうクライミングは、苦手だ。
私の芸風ではないし、適性もないことも何となくわかった。
どっと疲れを感じつつ、再び石器人スラブでソールと心を磨く作業に戻った。
【蛇足】
・体感グレードは、多分リードしたら5.10b位。5.10cはかなり甘いと思う。
・ボルダーグレードの3級は、オンサイトトライでの葛藤を加味していると思われる。
・間違っても、ハンドジャムのできない人や、やったことない人が、グラウンドアップ・
ロープなしで取りついてはいけない。
・もう二度とやりたくないと今は思っているけど、また気が向いたら登ってしまう可能性
もゼロではない。
・ボルダートライは全くお勧めできないけど、クラッカーが自らを試す一本にはなると思
う。(リードすれば楽しいと思います!)

瑞牆山 十一面岩正面壁 アレアレア

瑞牆山 十一面岩正面壁 アレアレア
河合(記)

アレアレア。
名前を見るだけで特別な感情がこみ上げる。
初めて買ったマルチピッチトポ「日本マルチピッチ」でこの名前を知ったのは10年前。当時は遙か雲の上の存在で、自分がトライする日が来るとは思わなかった。5.12マルチ黎明期に菊地敏之氏により開拓された、憧れのルートだ。取りつく人が未だに少ない本ルート、せっかく登ったので少し詳し目に紹介してみる。

以下注意!
このルートを本気でトライ予定の方には、野暮な情報てんこ盛りなので、行き詰まるまで見ない方が良いと思います。また、ムーブやプロテクションを記載しているので、オンサイト(下から通しでは誰も成功していない?)を狙う人もこの下を読まないで下さい。

【ルート解説】
・アレアレア 5.12b 10ピッチ
(使用ギア)
ヌンチャク12
カム0.25、0.4×2、0.5、0.75、1、2、0.2/0.3、0.3/0.4、0.4/0.5、紫、赤リンクカム

(1ピッチ目:5.11d:30m)
・燕返しのハングの右端からスタート。最初はハーケンとリングボルト、すぐにハンガーボルトが出現し核心に入る。核心は直上してから右上するのがオリジナルラインとのことで、ボルダー2~3級程度のパワー全開のリーチが必要なボルダームーブ、小柄だと辛い。右に大きくトラバースしてから直上し核心を巻くこともできるらしいが、プロテクションのハンガーボルトから大分離れるし、岩も脆そう。
核心後は遠いホールドを処理しつつ右上し、ハングから抜け出す所が第2核心。ここは以前あったと思われるガバのもげた痕跡があり、脱落部分はブランクなので、初登時より難しくなっているだろう。
ハングを抜けると、コーナークラックに入る。ハーケンがあるけど、カムも必要。最後はフィンガークラック。同様にボルダリーな砂の塔5.12aより少し難しく感じ、11台とはとても思えず、体感5.12a。

1ピッチ目
(2ピッチ目:5.7:20m)
・ハーケン、リングボルト、RCCボルトラダーのスラブを直上気味に辿った。オリジナルラインにはほとんどプロテクションがないらしいので、私の登ったラインはオリジナルとは異なるようだ。ボルトラダー沿いに登ると5.7では済まず、ホールドも分かりづらくて、体感5.10aのスラブで油断できない。

2ピッチ目

(3ピッチ目:5.7:20m)

・ベルジュエール3ピッチ目と共通で、フェイスを登り、最後灌木帯に入る癒しのピッチ。体感5.8。2、3ピッチは容易にリンクでき、合わせて40m弱。

3ピッチ目

(4ピッチ目:5.12a:30m)
・フェイスのピッチだけど要所でカムが必要。出だしは3ボルト左カンテを登る。出だしのランナウトが激しく岩も風化気味、5.10ノーマル程度だけど慎重に。2ボルト目の位置に戦慄!その後、右に大きくトラバースして垂壁に入り、ボルトにクリップしてからボルダー2級程度のボルダリーな核心をこなす。ヌメっていると辛いところ。その後、穴やクラックにカムを決めつつ直上、右に微妙なトラバースをこなし、最後にランナウトで5.10d程度のカンテを登る。変化に富んでいて面白い。私が瑞牆で登った他のフェイス5.12aルート全て(太陽の登1、2、5ピッチ、ギャラクシアン、医者の娘、砂の塔等)より難しく感じ
、体感5.12b(易し目)。一緒にトライした川上さんも「人生最難の5.12a」とコメント。

4ピッチ目

(5ピッチ目:5.7:20m)
・一度ダウンクライムしてルンゼに入り、よく濡れている苔だらけのコーナークラックを登る。1つ目のプロテクションセットまでが怖い。これも5.7では厳しく、短いながら悪く感じ、体感5.9。ロープを余分に伸ばせば、白クマのコルから途中離脱可能。

5ピッチ目

(6ピッチ目:5.12b:20m)
・本ルートのハイライトとなるフィンガークラック。プロテクションには特に注意が必要。出だしは浅い溝やフレアードクラックのため、プロテクションセットが困難、初登時は残置ハーケン2つをフィックスドプロテクションとしたとのこと。しかし、現在は上側のハーケンが折れて消失(誰か落ちたらしい。無事だったのか?)、下側の1本のみ。そのため、ハーケンのみをプロテクションとして核心ムーブ後半で落ちると、確実にグラウンドフォールだ。
しかし、オフセットカムやリンクカムを使えばプロテクションは一応セットできる。私は残っている下ハーケンを0.2/0.3オフセットカムで補強(効きは良い)、その上に紫リンクカム、一度クライムダウンしてアグレッシブテスト後に突っ込んだ。鍵となる紫リンクカム(オフセットカム0.4/0.5も効く?)は、頑張ればまぁまぁの効きでセットできるけれど、固め取りできず、位置が少しでもずれるとアグレッシブテストで容易に吹っ飛び、大墜落に耐えられるかはわからない。核心ムーブを起こしながら追加でマスターカム青色や灰色もセットできるけど、とても力を使うので大変。このような状況のため、出だしは現在PD相当だろう。
ルートは、出だしの数手が核心でボルダー2級程度、その後小核心こなし大レスト、その後レイバック主体の5.11-程度のフィンガークラックを登る。レイバックが多いので疲れるし、プロテクションセットも結構シビア。残置ハーケンが4箇所位あるけど、使わないでも登れる。日当たりが良いのでヌメるとしんどい。春うらら2p目5.12aより核心ムーブとプロテクションは明らかに厳しいけど持久力的には易しく、体感5.12b(易し目) PD。
このピッチのみをトライする人も多いらしいけど、ショートピッチトライとマルチピッチの6ピッチ目としてのトライは全くの別物で、このピッチの真価は下から繋げてきた時にこそ体感できると個人的には思っている。

6ピッチ目

(7ピッチ目:5.11d:30m)
・全く油断ならないピッチ。オリジナルラインは、ピナクルに登ってボルダー1級程度の地ジャンから始まる極悪の2手をこなす。初登者の菊地氏にトライ中にお会いしたので伺ったところ「地ジャンはしていない」とのこと。しかし、私より遙かに強い再登者達も地ジャンしたそうで、初登時とホールド状況が変わっているかもしれない。
ところが、川上さんが、右から回り込む画期的なラインを発見した。リーチが必要だけど、5.11+で収まる強度だ。やはり現地で菊池氏に伺ったところ「その(川上さんの)ラインでは登っていない」とのこと。
ルート攻略は出だしが鍵。オリジナルラインはランジ一発、飛び先のホールドはいまいちで、微妙な体のコントロールが難しい。できる人は多分すぐできて、できない人にはずっとできない系のムーブ。川上ラインはホールドを見出すのが核心、一見不可能そうだけれど、絶妙に続いている。キーホールドが遠いので、身長165cm未満の人に川上ラインは不可能かもしれない。出だしの核心をこなすと、ホールドのわかり辛い5.10c程度の右上スラブ。プロテクションはほぼリングボルトで一部RCC、一部抜けかけていて怖い。最後は簡単な5.7程度のクラック。ベルジュエールの終了点の太い灌木でピッチを切った。トータ
ルで体感オリジナルライン5.12b(と言うより、1級のボルダーと言う方がしっくりくる)、川上ライン5.11d(易し目)。オリジナルラインを経由するなら、間違いなくダントツで人生最難のイレブンルート。

7ピッチ目

(8ピッチ目:5.10b:35m)
ここからはベルジュエールと共通。前半はチムニー登りからステミングを交え傾斜の緩いコーナークラックを登って5.8位。プロテクションはスリングで延長しておかないと後で地獄を見るらしい。後半は逆イの字に見えるT字クラックで快適なレイバックとハンドクラック。体感5.10b。

8ピッチ目

(9ピッチ目:3rd:30m)
・クライミング要素はほぼなく、走って登れる。

(10ピッチ目:5.8:20m)
・出だしの被ったクラックは少々トリッキー。後はクラックを少し登って最後は簡単なスラブ。体感5.9。

10ピッチ目

【体感グレード】
〇トポのグレード(トポによって微妙に異なる)
5.11d→5.7→5.7→5.12a→5.7→5.12b→5.11d→5.10b→3rd→5.8
〇体感グレード
5.12a→5.10a→5.8→5.12b→5.9→5.12bPD→5.11d→5.10b→3rd→5.9
私のグレード感は大分甘いようだ。「太陽の登」は3ピッチ目5.12c(5.12bに感じた)以外はトポ通りに感じたのだが…

【実際のトライ】
ほとんどのトライを秀峰の川上さん、1日ずつ秀峰の玉置さん、山崎さんに無理言って付き合ってもらった。深く感謝。
(1日目:2020年夏)
全体像把握のため7p目までトライ。難しいピッチは何れもRPできず、一部ムーブもこなせなかったけど、ある程度勝負になることを確認。ただ、この後が長かった…
1p目5.11d:河合×、川上フォロー×
2p目5.7:川上OS、河合フォロー〇
3p目5.7:河合〇、川上フォロー〇
4p目5.12a:川上×、河合フォロー×
5p目5.7:川上OS、河合フォロー〇
6p目5.12b:河合×、川上フォロー×
7p目5.11d:川上×フォロー×、河合×
(2日目:2020年夏)
4p目まで到達するも、ヌメりに負けて4p目はRPできなかった。翌日のトライ用に1~3p目をフィックス。
1p目5.11d:川上×RPフォロー×、河合×××RP
2p目5.7:河合RP、川上フォロー〇
3p目5.7:川上〇、河合フォロー〇
4p目5.12a:河合××、川上××
(3日目:2020年夏)
2日目の翌日、朝イチで3p目までユマールして、早めに4p目をトライし何とかRP。かんかん照りになったので午前中に白クマのコルから脱出。
4p目5.12a:河合×RP、川上×フォロー×
5p目5.7:河合RP、川上フォロー〇
(4日目:2020年秋)
秋遅くに白クマのコルからベルジュエールの大フレーク経由で、7p目と6p目をトライ。コンディションは割と良かったけど、7p目の地ジャンは止まらなかった。6p目はトップロープで探り、ムーブは全て解決するも、問題はプロテクション。
7p目5.11d:河合××、川上×フォロー×
6p目5.12b:河合××、川上××
(5日目:2021年春)
大フレーク経由。7p目で地ジャンしまくり、遂に止めるも、その後のムーブを詰めておらずRPできず。シャウトでお騒がせしました。川上さんは別ラインを探り、見事発見。これなら5.11dで登れる!ということで、ランジが止まらなくなった私も新ラインに参戦し、やっと7p目のRPに成功。6p目は残りの時間にトップロープで探るも、ランジの失敗で指がズタズタ血だらけ、まともにトライできなかった。
7p目5.11d:河合××××RP(川上ライン)、川上××××
6p目5.12b:河合×、川上×
(6日目:2021年春)
大フレーク経由。前回オリジナルラインでは7p目がRPできず悔しかったのでRPするも、地ジャンは何回か失敗で確率は低い。川上さんは自分のラインできっちりRP。その後、6p目に本腰入れて取り組む。トップロープ2便でムーブ、プロテクションを固め、残り2便はトップロープだけどプロテクションセットありでもノーテンションで繋がった。でも結構ギリギリだったので、いつリードするか悩む。
7p目5.11d:河合×RP(オリジナルライン)、川上RP(新ライン)、フォロー〇
6p目5.12b:河合××‐‐川上×××××
(7日目:2021年秋)
個別RPの完了が見えてきたところで梅雨入り、夏に新型コロナウイルスに感染し肺炎を発症して病院送り、後遺症で長きに渡る自宅療養、振り出しに戻ってしまった。2ヶ月半ぶりのクライミングで山灯花5.13aトライした翌日にアレアレア。無謀と言う他ない。当然、ズタボロにされた。1p目で指先の皮が破れて大流血、ホールドを血まみれにしながらヨレヨレトライ。2p目5.7のスラブのフォローすら落ち、最後は中指人指し指全面をテーピングぐるぐる巻きにして4p目の核心をトライ、引きつけられずムーブが起こせなかった。悔しい。川上さんは4p目をフォローながらノーテンで上がってきて、昨年からの成長を
感じられたようだ。
1p目5.11d 河合×、川上フォロー×
2p目5.7川上〇、河合フォロー×
3p目5.7川上〇、河合フォロー〇
4p目5.12a川上××フォロー〇、河合×
5p目5.7河合〇、川上フォロー〇
(8日目:2022年4月10日)
この日は甲府で27℃と初夏の陽気、しかしアプローチは所により膝下の雪で濡れた。前日の湯河原幕岩ボルダーの疲労を引きずりつつ、10ヶ月ぶりの6p目トライ。核心の青エイリアンをセットしていたスロットが何故か広がっていてスカスカ、仕方ないのでマスター青を入れたら見事スタック、ゴリゴリ引っ張ったら取れたけどクラックの幅が広がってしまった。ごめんなさい。ホールドとしては使わないはず。上部のハーケンも1本抜けていて、ホールドも壊れていてムーブとプロテクションの変更を余儀なくされた。岩の風化が進んでいて脆い部分があるので注意が必要だ。1便目は下部をエイドしてトップアウトし
2便目でムーブとプロテクションの確認と修正。出だしの紫リンクカムを上手く決める方法を見つけた。これは今日中に行けそうということで、3便目は出だしのみリハーサルし、トップロープを引き抜いた。そして夕方の4便目で意を決してRP。緊張した。川上さんも昨年できなかった核心を解決し、トップロープながらノーテンとなった。さぁ、次はワンプッシュだ。
6p目5.12b 河合×××RP、川上×××-×
(9日目:2022年6月18日)
仕事が忙しすぎたり、風邪引いたりで、2ヶ月ぶりの外岩復帰。リハビリ初戦にアレアレアという無茶。当然のごとく各駅停車だったけど、全てムーブはこなせた。今回は山崎さんに付き合ってもらい、難しいピッチは全てリードさせてもらった。7p目(ランジは3位飛んだけど止まる気がせず川上ライン経由)を終えたところで雨が降ってきて時間切れ。
山崎さんは手応えあった模様(?)。私はボロボロでめちゃくちゃ疲れた。
1p目5.11d 河合×、山崎フォロー×
2p目5.7山崎OS、河合フォロー〇
3p目5.7山崎OS、河合フォロー〇
4p目5.12a河合×、山崎フォロー×
5p目5.7山崎OS、河合フォロー〇
6p目5.12b河合×、山崎フォロー×
7p目5.11d河合×、山崎フォロー×
(10日目:2022年6月25日)
遂にトライ日数が二桁になってしまった。既に甲府は37℃、灼熱が予想されたけど、玉置さんに付きあってもらい下からリトライ。今回はオールリード。リード&フォローよりリード固定の方が休めるし荷物も軽いので楽なことがわかった。
1p目は出だしのボルダームーブは気合でこなすも、後半のハング抜け口で落ちてしまい、その後コーナークラックの抜け口でも落ち、2テンションで抜けた。やり直すには体力に不安があったのでそのまま継続。2、3p目を無難にこなし、4p目の極悪垂壁へ。しっかり左手で保持り倒して渾身のデッドを止めた。そのままノーテンで5p目までこなす。
6p目は、ワンプッシュ成功の可能性ある時以外は出だしの危険ゾーンをリードしないことに決めていた。紫リンクカムの渋いセットを練習してからハンドゾーンまでエイド、一度降りてからノーテンで上まで繋げた。7p目は川上ラインを経由して問題なく再登。時間に余裕があったので、4年ぶりにベルジュエールのT字クラック8p目5.10bを登った。実はこのピッチは初めてのリード。ロープの流れが悪くなりそうなのでT字クラックの下でピッチを切った。今までのピッチに比べれば大分楽だったけど、雨が降ってきた。9p目の3rdを駆け足でこなして撤収。十一面岩山頂は、ワンプッシュ成功時まで取っておこう。かな
り疲れたけど、体が動くようになってきた気がする。
1p目5.11d 河合×、玉置フォロー×
2p目5.7河合〇、玉置フォロー〇
3p目5.7河合〇、玉置フォロー〇
4p目5.12a河合〇、玉置フォロー×
5p目5.7河合〇、玉置フォロー〇
6p目5.12b河合△、玉置フォロー×
7p目5.11d河合〇、玉置フォロー×
8p目5.10b河合RP、玉置フォロー×
9p目3rd河合RP、玉置フォロー〇
(11日目:2022年7月2日)
3週連続アレアレアを下からトライ。そして3週連続で雨に降られた。今回は再び川上さんが、スピーディーフォローで、ワンプッシュを完全サポートしてくれるとのこと、ありがたい限り。
予報では午後早くから崩れる感じだったので夜行して、6:55に登攀を開始した。流石に3週連続なのでムーブは大体覚えていて、スムーズに1p目を突破。しかし前の週より湿度と気温(この日甲府は36.5℃)のせいか、日差しはないのにヌメっている。2、3p目も問題なくリンクし、途中でベルジュエールパーティを抜かせてもらった。4p目は、左手がヌメりでしっかり保持れず、何度もチョークアップして意を決してデッドしたら止まった。後半のカンテもヌメりで気持ち悪く、足が切れたりしたけど押し切った。5p目は出だしノープロで怖いけど、流石に慣れた。
そしてついに6p目に到達した。鍵となる紫リンクカムが一発でベストな位置に決まった。行くしかない。心を落ち着け、集中を限界まで高めて意を決して突っ込むも、出だしのレイバックホールドがヌメって発進できない。スタートの足位置を調整したらスリップ、あっけなくテンション。逸る心を落ち着けて、少し間隔を置いてからやり直す。今度は発進できた。出だしのレイバックがかなりギリギリですっぽ抜けそうだったけど歯を食いしばって耐えた。届いたフィンガージャムもヌメった!もう危険ゾーンに入っていてやり直しは利かない。スパークしそうになる頭を、もう1人の自分が「落ち着け」と宥める。冷静
にガストンし、フィンガージャムを改めて渾身の捻りでバチ効かせた。指よ、ねじ切れてしまえ。「大丈夫だ、行ける」。スタティックにハンドクラックへ。その後の小核心を越え渾身のデッドでガバを取ったところで一旦緊張の糸が切れ、気がついたら大絶叫してい
た。お騒がせしました。その後、もう一度ギアを入れ直し、パワフルレイバック音頭をこなして終了点へ。なんと表現してよいのか、とにかく凝縮された時間だった。しかし、こんなに頑張ったのに雨がぽつぽつ来てしまった。がっくし。
雨が辛うじて一旦落ち着いたので、急いで登ることにした。7p目は川上ライン経由、フルパワー気合一発でこなし、ベルジュエールのパーティを再び抜かせてもらった。8p目は時間がないので、ロープ流れが悪くなること覚悟で途中ピッチを切らずに繋げたら、途中のランナーは結構伸ばしたのに、最後は綱引きになった。8p目終了点では雷鳴が鳴り響き、再びぽつぽつ来始めた。走って9p目を1分でこなすも、10p目のスタート時点でザーザー降り始めた。これまたダッシュの2分クライムで十一面岩てっぺんに着いて、とりあえず叫んで2秒後にはロアーダウンで下降開始。川上さんを十一面岩頂上に上げる時間はなく
、すぐに横殴りの嵐。しかもロープがロープに乗ってスタック、大雨の中登り返すはめになり、すぐ処理して岩陰に逃げ込んだ。寒い。後1分遅れたら完登を逃した可能性が高く、ギリギリのタイミングで、12:25完登!全く余韻に浸る暇はなかった。途中から急いだ
せいか5時間半と、難易度の割にはスピーディーに登れたと思うけど、その分疲れた。大雨は30分程度で上がったので、冷えた体を日光浴で温めてから、ゆっくり下った。
1p目5.11d 河合〇、川上フォロー×
2p目5.7河合〇、川上フォロー〇
3p目5.7河合〇、川上フォロー〇
4p目5.12a河合〇、川上フォロー×
5p目5.7河合〇、川上フォロー〇
6p目5.12b河合×〇、川上フォロー×
7p目5.11d河合〇、川上フォロー×
8p目5.10b河合〇、川上フォロー〇
9p目3rd河合〇、川上フォロー〇
10p目5.8 河合〇

ワンプッシュ完登後

(全体を通じての印象)
・10ピッチに及ぶマルチなので相応の体力は前提として、本ルートに重要なのは悪いムーブをヨレた状態でもこなせるような、瞬間的な出力を維持する力だと思う。5.11+~5.12-の各ピッチでは個性的かつ強度のあるボルダームーブが次々と待ち受けている。内容は前傾壁からスラブ、クラックと変化に富んでおり花崗岩のオールラウンドな能力が必要だ。容赦のないランナウトや難しいプロテクションセットが要求され、残置プロテクションも良くないので、易しいピッチを含め全般にグレード以上の厳しさを感じる。疲労が蓄積した状態で、落ちられないフィンガークラックの最大核心が待ち受けており、フィジカルだけでなくメンタルの強靭さが求められる。内容は濃く、グレードよりは内容を求めるトラッドなクライマーにお勧め。マルチピッチ特有の全身疲労の中で、祈るように一手、また次の一手を出していく、そんな完全燃焼ができると思う。こんな厳しくも素晴らしいルートを開拓して下さった初登者に感謝。
開拓者は、ヨセミテのアストロマンのような経験を日本でもできる場を求め、本ルートを開拓したと言う。私は本家アストロマン未経験なので、アレアレアを登って、改めて開拓者にそこまで言わしめたアストロマンを是非トライしたいと思った。

奥只見 袖澤南沢岩穴沢左俣 白石沢スラブ

202291718

川端・右田(記)

新潟県魚沼市の奥只見シルバーラインの長~いトンネルを抜けた先の秘境に奥只見湖がある。その山肌に雪崩に磨かれた大スラブの絶景があるそうなので行ってきた。

9月16日

奥只見ダム駐車場

9月17日

奥只見ダムの駐車場から歩き始める。袖沢から南沢の途中までは林道歩き、そのあと林道は崩壊しているため沢に降りる。そこで沢靴に履き替えてアプローチシューズをデポ。沢靴にしたが伏流しているため少しの間、乾いたゴーロ歩き。間もなく岩穴沢出合(Co720)で水流もあり沢登りの雰囲気となる。左俣を進み先の二股は左沢を選択。この二股まではナメが多いが1ヶ所悪い滝があり川端さんはジャミングで抜け、私はトライするも断念しロープ出してもらう。左沢の入り口は狭く見逃してしまうほど。ヌメヌメスラブ滝は左岸を巻いたが足元は崩れまくって悪かった。そのあとは3段のヌメヌメ滝、川端さんは沢バイルを使って抜けたが持ってこなかった私はロープ出してもらう。

その後、開けた場所にでて詰めの全容が見えた。無理でしょ~!稜線に続くのは垂壁に見える水の滴る岩壁だった。左岸は傾斜がまだマシに見えてのでそこから支尾根に上がることにした。藪斜面を木登り状態の3ピッチで尾根に乗り猛烈な藪漕ぎが始まった。Co1220のピークを目指し、そこから今度はキャンプ地のCo780まで白石沢左岸尾根を下る。藪を漕ぎ始めて6時間が経ち二人とも手持ちの水がなくなり、日も暮れてヘッデンで藪を下る。今日も残業か~!闇の中、傾斜がきつくて足場がなくなったりするのでロープを出し進む。豪雪地帯のため斜面の木は根本から下向いちゃってる。支点といっても気休め程度で懸垂で降り始めるとズズズとロープが抜けそうになる。Co800付近から懸垂下降すると藪が切れスラブとなり地面が見えた?ん?暗くて見えない。さざ波?ダメだ~!ダム湖だ~!降り立つ陸地がなく登り返す。そこからは40mほどトラバースし懸垂でやっとこキャンプ地に到着。

キャンプ地は白い砂地で沢水があり快適そのもの。沢ではヘッデンに無数の目が反射している。海老だ。

川端さんと焚火を囲んで宴。寝転んで満点の星空を見たりしている内に日付けが変わる。もう寝よう。

918

今日も何があるか分からないから。としっかりと水を汲んで歩き始める。沢を進んでいくと大岩にぶつかり、クライミングシューズに履き替え、右岸のスラブを登って巻く。間もなく白い大スラブの中に入っていく。この景色を求めて来たんだ、目に焼き付ける。

 

登りやすそうなところを登っていたら1081ピークに出た。もっと下降に近いピークに出たかったのに・・・。稜線はまた濃い藪で覆われているため漕ぐ。1時間半ほどでCo1190、そこから沢地形を下降し岩穴沢左俣右沢に入る。右沢は下降に踏み後があったり、途中の懸垂では残置スリングがあった。あとは来た道を辿って駐車場へ。

白石沢スラブがメインのつもりだったが、そこまでのアプローチが印象深く思い出になる山行だった。楽しかった~!軽いノリで一緒に行ってくれた川端さんに感謝です。ありがとうございました!

コースタイム

917日 駐車場630~南沢830~岩穴沢左俣左沢左岸尾根1230~キャンプ地2010

918日 キャンプ地7301081ピーク1040~岩穴沢出合1430~奥只見ダム1730~駐車場1810

装備

ハーケン(使用せず)、沢バイル、沢靴フェルト、ロープ30m、クライミングシューズ

錫杖岳 注文左ルート

錫杖岳 注文左ルート

2022年6月18日~19日

船戸(記)、玉木、小森、早田

注文左ルートの存在についてはトポなどで冬季登攀のルートである事は知っていたが、無雪期にも登攀出来る事を錫杖開拓で有名な石際さんのブログで知り、ずっと興味を持っていた。今回は玉置さんが付き合ってくれるとの事だったので、ついでに若手2名(小森・早田)にも声を掛けて4名で行ってきた。

・6月18日
前日夜の内に、中尾高原口に着いて仮眠後入山。初日は船戸・早田が左方カンテ、玉置・小森が1ルンゼへ。

早田くんは初錫杖だったが、(ブツブツと独り言を呟きながら)頑張って全ピッチノーテンで登ってきた。

4ピッチ目で挟まる早田くん

それにしても、気になったのは左方カンテの残置の多さ。特に核心の6PのCS周りには、捨て縄が2~3本ぶら下がっていた。
あそこをA0して越える事の是非はさておいても、簡単に回収出来るはずのものを置いていくのはどういう了見なのだろう。
とりあえず今回は全てナイフで切って回収しておいたが、最近どんどん増えてきている注文ルートの残置カム然り、もう少し岩場とルート開拓をされた方々への敬意を持った方が良いのではないだろうか

そんなこんなで、我々は16時過ぎくらいには錫杖沢出合のテントに戻ってきたが、玉置・小森が中々戻ってこない。川で冷やしたビールを目の前にお預けを喰らうのは辛いが、ボチボチ帰ってくるだろうと当初は待っていた。ところが17時を過ぎ、18時目前になってもまだ降りてこない。あの二人ならば問題は無いはずだが・・・万一の事を考えるとアルコールを飲む訳にもいかず、18時過ぎたら流石に様子を見に行くかと思っていたところ、ようやく沢の上部に玉置さんが現れた。

続けてその後に小森くんが現れて手を振っている。こっちは2時間近く飲むのを我慢してるのに、呑気に手なんか振りやがって・・・
良いからさっさと降りて来い(怒)

プレモルのエール、お勧めです

・6月19日
夜中にテントを叩く雨の音で目が覚める。結構しっかり降ってるし明日はダメかなーと思いながら再度眠りに落ち・・・たのだが起床時間の1時間近く前に、外が騒がしくて起きてしまう。小森・早田ペアが朝っぱらから盛り上がってるようだ、心の中で二人を一通り罵倒した後、諦めてこちらも起床する。

地面を見ると、思ったよりも濡れていない。とりあえず取り付きの北沢大滝までは行ってみるかと、いう事になる。
北沢大滝に着いてみると、既に先客が登り始めていた。岩も乾いてるように見えるし、予定通り登攀する事に。前日と同じく船戸・早田、玉置・小森のペアだが、早田さんに無理を言って自分が、全ピッチリードさせて貰う事に。ありがとうございます。

1P目:45m 5.6(グレードは石際さんのトポを参考にさせて貰った)
北沢大滝の下部を登る。見張り塔を登った時にも通ったが毎回いまいちラインが分からずに右往左往・・・終了点は滝の本流のすぐ横なので、あまり左に行き過ぎると戻るのが大変になる。

若干、雪渓が残ってました

 

2P目:40m 5.8?
本来はジグザグチムニーの中に入るのだが、前日の雨のせいか見るからにビチョビチョで水も滴っている。どうしたもんかと考えたが3P目以降は日当たり良好でここで諦めるのは勿体無い。チムニー横の右上フェースは草も生えてあまり快適には見えないが、何とか上まで繋がりそうなので、意を決して取り付く。

出だしから、しっとりした触り心地と動く岩に神経をすり減らす。早いとこ1ピン目を取りたいがクラックが見当たらず、効きの怪しいハーケンを1本打って、更に4~5mランナウトしたところでようやくしっかりしたカムを決められて、ほっと一息。その後もジリジリとロープを伸ばし、何とか終了点に。いやー、怖かった

最後は若干薄被り

 

(実は後続の玉置さんは、チムニーを登っていた。意外と挟まれば快適だったとの事・・・巻こうとして墓穴を掘ったか)

3P目:30m 5.6
冬季用の年季の入った終了点からすぐ右の階段状を登った後、今度は左に抜けてバナナ岩の直下まで。

4P目:40m 5.8
ハイライトのピッチ。2本のチムニーの左側を登る。スタンス・ホールドとも探せば出てくるが、動く岩も多いので慎重に。被ったCSを越えるあたりがOW気味でここが核心か(持ってきた4番を唯一使った)

チムニー内の岩も動くので要注意

5P目:25m 5.7
最終ピッチ。気の抜けない5.7との記載だったが、取り付いてみてすぐに意味が分かる。全ピッチ中、1番脆かったのがこのセクションで、特に離陸から数手は冷や汗ものだった。何とか突破し最後は狭いチムニーを抜けて少し歩けば前衛壁の頂上へ。

後続パーティ

今回は早田さんの厚意で、全ピッチリードさせて貰った。登攀記録があるとはいえ、数年前の記録で岩の状況を確かめながらの手探りクライミングとなり、神経を使う部分もあったがその分充実感溢れるクライミングが出来た。錫杖にはまだまだ登っていないルートもたくさんあるし、これからも足繁く通って腕を磨いていきたいと思います。