南アルプス 甲斐駒ケ岳 戸台川本谷

1998年12月30日~1999年1月1日
浅田、櫻井、山本、荒井、井上、児矢野

12月30日

前夜の車の疲れも残って、入山の日の朝は遅い。

河原の駐車場には駐在もあって、計画書を集めている。

10:00駐車場発 12:30丹渓山荘下。

大型テントを張る。

水もとれ、便所もある快適なキャンプ。

このあと、舞姫の滝を見に行ったが、水量の少なさ、冷え込みの足りなさ、たぶん両方のために登るような氷の状態ではなくほとんど岩が剥き出しだった。

さらに本谷奥の右手上に氷が見えたのでアプローチしてみる。

鶴姫ルンゼだろうか、50mほどガレを登ると垂直を含む15mほどの氷瀑にあたる。

つららの集合体でそれぞれが細すぎるのでトップロープを試みるが、右からの巻きがまた悪く、時間もないのであきらめる。

12月31日

7:00発 8:30 F1下 12:00 F2上(駒津沢出合い)
4時半には起きよう、と話し合っていながら皆で寝過ごしてだらしなくも、結局出発は7時になってしまった。

F1は左に豊富な水量の滝がしぶきを上げて落ちており、右半分も不完全な凍結で安定してない。

これからの長丁場に備えてここは右のルンゼの氷を登る。

ここは20m・70度程度。

そのあと本谷に平行してやや不安定な高巻きをしばらくしまた本谷の河床に降り立つ。

F2は中央は薄い氷の幕の裏をバシャバシャと水が落ちているのが見えるが、右の岩に沿っては比較的厚い氷がきのこ状に伸びている。

最新ギアに身を固めたYさんがリードする。

Yさんは本当に岩に沿うラインをねらうが、結局、氷のあるほうに戻ってきてロープを伸ばした。

ジェフ・ローのビデオの見すぎか?
駒津沢出合いのF1はしっかり登れそうだった。

「ここで、遊んでテントに戻るのもいいか?」

などとも考えた櫻井だったが、パーティーの総意は「ちゃんと上まで行こう」

だったので、駒津、奥駒津とそれぞれ、よだれをたらしながら横目で見送った。

F2から上は、やや単調な谷歩きが続く。

時々出てくるナメの氷を乗り越えることと、特に左岸の枝ルンゼにいくつかあらわれる巨大な氷のシャンデリアが、刺激を与えてくれる。

アイスクライミング(白山書房)のトポでは迷わず本谷を詰めていけると思えたが、実際はいくつかの二俣状の分岐でそれぞれ判断が必要だった。

途中、新しいビバーク跡があり、ここからトレースがはっきりつけられていた。

15:00六方石ルンゼ出合い 16:00トラバース開始
六方石ルンゼの出合いを見送ると本谷の右の稜に赤テープが見え、先行のトレースもここを進んでいる。

これについていくと、尾根状をあがっている。

右には六方石の稜線が近くに見え、時間、体力を考えるとビバークなしでキャンプに戻るにはここでトラバースしたほうが良さそうだということになった。

氷と雪のつまった広いルンゼをトラバースし六方石への扇状の斜面に出る。

ラッセルが深くなり(ひざ上から腰)体力を使う。

高遠の灯火が見え西の空がオレンジから紫、そして闇に染まっていく。

しかし、この日は13夜で闇が濃くなると今度は東の空から月が照らしてくれる。

対岸の斜面の疎林には月光があたり雪面には潅木の落とした影がくっきりと見える。

18:00六方石稜線
稜線直下の岩場を回りこむと、フラッシュライトのような月明かりが顔にあたり、そこが稜線だった。

風は強いが甲府の夜景も美しく、ピークを踏めなかった甲斐駒ケ岳も月明かりの下、ヒマラヤのジャイアンツのように妖しく美しかった。

22:45丹渓山荘下キャンプ着

1日1日

深夜残業となってしまった昨夜の疲れで、さらに登る元気を無くし結局、予定を早めて帰ることにした。

 

 

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