瑞牆山 小ヤスリ岩 蒼天攀路

河合(記)

十一面岩の奥にひっそり聳える小ヤスリ岩。この岩を意識したのは、今年、ベルジュエールを登った時だった。明瞭な左右2つのカンテ、真ん中の美しいフェース、それぞれに合計3本の難ルートが拓かれているらしい。その中でも特に目を引くのは右のカンテ、蒼天攀路3p目。グレードは発表時5.12bで、最新のトポでは5.12aとされているようだ。アプローチが結構遠く、他にルートもほとんどないため、パートナー核心っぽい。少ない便数で登らないと厳しそうなので、来年トライしようと思ったけど、今年付き合ってくれるパートナーが見つかったので、行ってみることにしました。

8/17 day 1

玉置さんに付き合ってもらって初トライ。8時40分植樹祭駐車場出発。取付まで特に迷わず10時到着、10時40分出発。

1p目(5.10b、35m位):河合リード
最初は出だしにぺツルのある汚い泥ルンゼ。靴についた泥をぬぐいつつ、次は浅いコーナークラックを最初はボルト頼り、途中から大きなカムが頼りに登る。バランス悪い感じ。睡眠不足、かつ季節外れのノロウィルス食中毒からの病み上がりで体調は悪い。2回位足がつりかけたので、不意落ちしないよう慎重に登る。最後はびしょ濡れのコーナーを避けつつ終了点へ。終了点はぺツル、RCC、リングが混在。

出だし
コーナー。ぺツル2つ位あったはず

2p目(5.10a:20m位):河合リード
最初は少し被り気味のチムニー、途中から何とも不思議な三角形に変貌。チムニー内でグルンと1回転。後半三角形になってからは背中で体をスタックさせてイモムシ登りができるようになり、簡単になった。大き目のカムは1セットで十分。あまりオフウィズス登りにはならなかった。上から登っているクライマーを覗き込むと面白い。

チムニー下から
人間が挟まってる

3p目(5.12b:30m位):河合リード
さて、楽しい前菜は終了でメインディッシュだ。大分時間経ってしまって、13時45分スタート。出だしはクラックをレイバックで直上~左トラバースで最初から悪く、凄まじい高度感。調子も出ないし怖くて、1ボルト目はエイドでプレクリしてからスタートしてしまった。2ボルト目まではバランスが悪いけど何とか大丈夫、でも3ピン目がめちゃ遠そう、と言うより、そもそも見えない。カンテの反対側の大分上みたいだ…手前に発見したクラックに半開き♯0.5キャメを突っ込みテンション。あぁ、弱い…その後、恐怖しながら突破。どうやらここが最初の核心みたいだ。なお、♯5キャメは、残しておくとロープ流れ悪くなるので、結局外した。

ビレイ点を見下ろす
カンテを越えると美しいフェース

その後はしばらくマイルドで、美しいフェースをエンジョイ、と言いたいけど、ボルト間隔は遠いし、風強くて寒い。6ボルト目まで各駅で到着するも、7ボルト目が遠くて怖くてムーブが起こせない。核心直前の左フレークに伸び上がって片っ端からカムを突っ込むも全部外れ、その度にパンプしてフォール。玉置さんに持ってきてもらったアブミで核心ムーブ手前までのムーブを省略するも、核心ムーブできなきゃ進めないので結局ダメ。カムの選択肢が尽き、意を決して右足に乗り込んで突っ込んだら何とかムーブがこなせた。最初から恐れず突っ込めばよかった。
8ボルト目までのムーブも引き続き悪く、やはり足がポイントだった。久々にカンテも使った。かなり精魂絞り出す。
8ボルト目~9ボルト目間も結構遠い。ボルト少し上に♯0.3キャメが決めたけど、なくてもほとんど変わらない。意を決して右カンテのガバへランジしたら、取り損ねた!ぶっ飛びたくない一心で気合で耐えて、今度は左ガバへデッドしたら、何とか取れた。このシチュエーションでこのムーブか!

点々とボルト

最後はマントル返してから、傾斜の落ちた簡単なカンテ状を登って終了。トップアウトに1時間半もかかってしまったけれど、抜けられてよかった。

花唄小径(5.8:30m位):河合リード
蒼天攀路3p目は河合のみのトライ。玉置さんにも小ヤスリ岩のてっぺんに立ってもらうべく、蒼天攀路2p目終了点から右にトラバースし(ロープ付けないと危ない)、もう1本リード。でも、このルート、結構悪い。上のテラスから6キャメを決めるまでの緊張感が中々。蒼天攀路の1,2ピッチ目よりしんどい。足元は抜けかけたリングボルト1個で、微妙なムーブ。その後はマイルドになったけどランナウト気味で落ちられない系。

最後はノープロのフェース

再び小ヤスリ岩のてっぺんに着いたら、もう夕方になっていた。頂上も素晴らしい!景色を堪能してさっさと下山。下降は何とかオンサイトできたが、ヘッドライト下山になった。

てっぺんにて

8/26 day 2
一度は封印しようと思ったけど、時が経つほど悔しさは募り、1便目でおおよそのムーブはこなせていた(気がした)ので、今度は、Sさん(会員外)を誘って出撃。今度は1,2p目を省略して3p目までショートカット。植樹祭駐車場から85分かかった。小ヤスリのコルまで標高差550mを登る。

1便目
各駅ヌンチャクがけに徹する。やっぱり♯0.5キャメは使ってしまったが、今度は各核心セクション2回以内で、ばちっとムーブが決まる。これは行けるかも??

2便目
気合入れてトライしたら、最初のトラバースがこなせてしまった。レストポイントで呼吸を整えつつ6ボルト目以降の第2核心へ、と言いたいところだけど既にヨレヨレ。無我夢中で吠えて7ボルト目に到達し、必至でレストするもパンプが取れない。8ボルト目までの最後の核心ムーブがテンションムーブだったため再現できず、その場のアドリブで頑張るも後1足1手で無念のドカ落ち。その後のムーブも一発でこなせたので悔しい。さっさとトップアウト。

3便目。
Sさんは2撃であっさり登ってしまった。まずいっ、蒼天パートナー消失の危機!腕は2便目で頑張り過ぎて終わりかけていたけど、ビレイ含めて1時間空けて、気合で3トライ目。トラバースは危ういところで抜けるも、出だしからガタガタ。腕も回復せず、第2核心手前でヨレきってフォール。カチ筋が残っておらず、ムーブを確認して終了。時間切れでSさんの1,2p目トライもまた今度になり、辛うじてパートナー消失危機を脱する。

登れてないけど、あまりの爽快さにガッツポーズ!

9/9 day 3
前日に行こうとしたら、秋雨前線にやられて雨だったのでカサメリ沢モツランド。翌日に望みをかけて控えめに登ろうと決意してオリーブ5.11cをまったり流すも、たらこ5.11dが面白くてついムキになってカチ筋パンプ。
当日朝は駐車場びしょ濡れ、それでも風当たり強いので乾くと信じてSさんHさんと突撃。アプローチも荒れてて、うっかりシロクマのコルまで登り過ぎてしまった。
取付についたら意外と乾いていたので、まず濡れた花唄小径5.8をエイドで登る。核心はろくにエイド効かない上。落ちられないので緊張。5.10台あると思うのだけど。
頂上は猛烈な風。頂上から懸垂下降しながらヌンチャクがけと掃除。核心は濡れていた。

1便目
トラバースは自動化でスムーズにできたけど、その後保持できず3ボルト目クリップした直後、落ちてしまった。トップアウトせず戻る。

2便目
明らかに前日の腕パンプが残っているが、足は元気だ。ホールドは生暖かくてちょっとヌメる。これは足で耐えるしかないということで頑張ったら何とか登れた。

終了点にて。この時点で登れてないですけど

初トライの翌日、最新のトポで5.12aとされている、カサメリ沢のギャラクシアンにトライしてみたら、フラッシュ寸前まで行けた(ヌンチャクかかってたし、最後落ちたけど)。蒼天攀路3p目と1グレードは差を感じた。ムーブを固めて登り終えた今、初便の印象よりはよくなったけど、それでも易し目のは5.12bあるのではと感じた。トラバースの怖さ、ボルトの遠さ、高度感が体を固くしていることが影響しているかもしれない。

5.12のマルチという敷居の高さや遠いアプローチからか、あまり登られていないルートのようですが(おかげで順番待ちなくて助かった。2パーティいたらちょっとしんどい)、ロケーションは日本離れしていて、ムーブも面白いです。岩も固くて美しいし、てっぺんは快適で眺めは素晴らしいし、これでアプローチが近ければ人気ルートになりそう。遠いと言われるボルト間隔は、クリップホールドやロープ流れの関係で仕方ない気がします。3ボルト目以降はぶつかる出っ張りもないし、思いっきりぶっ飛べば良いかと。アブミやらカムやら動員した私が言っても説得力ないですが、チョンボ棒なんて使わず、トップアウトできるかドキドキしながら登った方が楽しめると思います。開拓はほんと楽しかっただろうな~と羨ましく思いました。
道連れになっていただいた玉置さん、Sさん、Hさんありがとうございました。