立山東尾根

2021年10月2~3日
齊藤(記)、中和

雪山の足慣らしに立山でも…
そう計画をして立てた雄山東尾根。
正直舐めてました…。こんなにもキツイとは(笑)
雪山は雪の状況によって難度が変わるのは判っては居ました。
出発日の朝の大町は雪予報。翌日は晴れになって居たので、土曜日の午後には晴れるだろうと安易な気持ちでいた…

 

金曜日夜にパートナと合流して扇沢へ。
大町あたりから雨が降ってきたが、気温は高く7度
ホントに雪かな? 黒部平辺りで雨だと雨の中歩くのは危険だなぁと話し合いながら就寝。
朝起きると扇沢でも見事な銀世界となって居ました。

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【扇沢も降雪であった】

これで濡れずに歩けると2人とも降雪に歓喜する。
始発のバスで黒部湖へ。 黒部湖は扇沢以上の降雪で既に雪一面といった感じ。

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【黒部湖もたくさんの降雪が見られた】

わくわくしながらケーブルカーを使って目的地の黒部平へ向かう。
黒部平の園地は、吹雪の様相となって居た…

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【黒部平は吹雪の様相(笑)】

丁度、同じルートを計画をしていた友人パーティに出会う。彼らは天候悪化とラッセルなどを考慮して奥大日に変更したとのこと。その彼らに見送られながら黒部平を出発した。
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【歩き始めからラッセル】

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【この辺はまだまだ久しぶりの雪景色に歓喜をしてた(笑)】

当然のことながら、トレースは無い。出だしからくるぶしラッセルである。
この尾根は、近所にゴンドラの電線がある為、その点検道が続いている。
快適な道を歩いていく。途中から電線は大観峰の方に向かう為、道も当然そっちの方に向かっていくが、だんだんと目指す主稜線から離れていく。藪の切れ間を狙っていこうかと話をするが、何か決定的な目印が欲しい為もう少し歩くがいい加減離れていくのも明確になってきた頃に手頃なルンゼが出てきたのでここを登攀する事にした。

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【適当なルンゼを登る】

遥か上部には尾根が見えている。

尾根を目指しルンゼを上がるが、中間地点から悪くなる。
1枚岩があり良い感じのスラブ岩である。自分は何とか超える事が出来たが、パートナは断念。
左から何とか合流する。その後、尾根を目指し左上をしていく。

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【かなりの斜面ではあるが、なぜか嬉しそうなNさん(笑)】

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【ジャンクションピーク辺り。この辺がやばかった】

何とか尾根に取付くことが出来た。尾根には、なんか手掛かりや薄い登山道でもあるかと思ったが、全く無く藪一面であった…。考えが甘かったと改めて痛感した。

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【トレースがあれば快適な登り?】

ここからは藪漕ぎをしながらラッセルを行っていく。
この頃には、天気は吹雪となっており、降雪も激しく腰ラッセルの箇所も出てきていた。

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【ラッセル祭り全開中。どこを通っても胸ラッセル状態💦 】

藪をわけわけ登っていくと岩峰が出てくる。右も左もあまり良い感じではない。
岩の割れ目から生えている草を手掛かりにムーブを起こし何とか突破。後続のパートナは苦戦💦。一段降りてそこから登りなおして何とか突破した。ちょうど2350-2400mのポイントであった。
この辺から森林限界になって来るためハイマツも出てくる。
藪漕ぎが無くなったので歩きやすくなったかというと今度は降雪が行く手を遮る。
ある程度傾斜があるところは良いが平らな所は雪が溜り、腰ラッセルである。
登攀が苦手なパートナには、平地でのラッセルをお願いして登攀系のルートの時には、平地でのパワーが出ない自分が先頭に立ちとお互い役割分担をしながら進んで行く。
今日中に、何とかP2783まで目指したいが、この状況だと厳しい。
16時を時間期限として良テン場を探しながら進んで行く。P2640に何とか張れそうなポイントを見つけた為、この日はここで幕営とした。

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【今日はここは越える事ができないとビバーク決定地】

雪は朝からずっと降り続いていて、テン場についても降っていた。寝る前に再度除雪を行い就寝とした。
2人とも完全に舐めてた為、夜はかなり冷えて寒かった。寒さもだが、トイレに行きたかったが、トイレに行くのも面倒だし寒いし雪だらけになる為、朝まで我慢の夜が続いた。

 

翌朝起きると直ぐにトイレに向かう。雪は止んで、ガスも晴れているが上空にはまだ重たい雲があった。

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【翌朝。ガスは晴れたが雲がかかっていた】

今日は曇りの一日なのか?そう話ながら準備を進める。空も明るくなってきた頃にテントを撤収して出発をする。

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【今日もラッセルやる気満々のNさん】

現在の標高が2650m弱 目指すピークは3000m。350m程度上げる計算にはなるが、昨日よりも雪が多いことなどを考えると一刻の猶予も許されない状況であった。15:15には最終バスが出てしまう為、15時までには、室堂に着きたいその為には、13時までにはトップアウトをしないといけない。7時間弱しか行動時間が無い。
焦っても雪が無くなる訳はなく、眼前にはたっぷりと新雪が積まれており、胸ラッセルも上等!であったが、ご来光およびモルゲンロートに光る立山はとても美しく足を止めてカメラのシャッターを押さずには居られなかった。

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【朝日が立山を照らし始める。贅沢な時間の始まりだ】

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【モルゲンロート】

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【ご来光】

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【贅沢な時間に苦しさも忘れた一時】

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【モルゲンロート2】

当初テン場予定であった、P2786に到着。ここからは下りも少しずつ入ってくる。
怪我で下りに不安を抱えるパートナは下りは慎重に。見ているこちらもひやひやである。
1つ目の大きな下りを越え、先頭を交代。私が先行して2つ目のギャップを超える。
これを超えると後は雷電峰へのひたすら登りとなる。

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【贅沢な時間が終わり再び苦しい時間へ(笑)】

ここまでは、腰上ラッセルがデフォルトで、1時間に50mを上がらないペースであったが、この辺からは少しずつ雪も締まってきてまた、風もあたるところになってきたので雪も飛び出しておりハイマツも所々顔を出して来た。そうなればこっちのもの! 両手両足を使い登っていく。
片手にピッケルを埋め、片手は雪の中に手を突っ込み、アイゼンを効かせながら快調に高度を稼いでいく。
サイコーに気持ちの良い瞬間である。

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【通ってきた道を振り返る】

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【トレースがしっかりと見て取れる】

雪壁を登り終えると、岩峰が出てくる。
岩峰群を適当に登るとピークに着く。雷電峰である。ピークには標柱跡らしきものがあるが標識など何も無かった。

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【雷電峰直下 雄山の社と神社が見て取れる】

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【雷電峰と雄山】
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【時間があったら行こうかなんて話してた龍王岳とNさん】

 

パートナとがっちり握手を交わし、雄山までの残りの道を進む。
現在10:15 何とか昼前に抜けれそうだ。雄山までの登りは今までとは全く異なりラッセルもほとんどなくあってもくるぶし程度のものとなり快適なものであった。上部に人工物らしきものが見える。
そう。登山道の道標である。あそこまで行けば終わる。と最後の力を振り絞り登る。
そしてようやく道標のロープを越え登山道へたどり着く。終わった…。

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【そして登山道。ついに帰宅できると確信した瞬間(笑)】

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【東尾根上部。雷電峰までがキツカッタ】

パートナとがっちり手を交わし無事に抜けられた事を祝う。そして雄山山頂社に行き雄山の山頂に向かう。
9月の終わりに取った鳥居は雪で埋もれていた。山頂の神社も半分ほど雪がついていた。

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【雄山社 スキーヤーがちらほら】

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【雄山神社】

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【9月に来たときはもちろん下をくぐれた鳥居。今は埋まっている】

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【Nさん】

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【筆者】

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【2人でがっちりと!サイコーの山行をありがとう!!!】

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【雄山から劒岳を望む】

なんとすがすがしい気分なんだろうか。眼下には2日間格闘してきた尾根が広がりそして今朝、先程自分たちがつけたトレースが深々と刻まれていた。あそこは大変だった。あそこも急登だったと先ほどまでの景色が脳裏に浮かぶ。
相方とがっちり肩を組み記念撮影を行い遠くに見える劒にあいさつをして社に戻る。ここでのんびり一本たてる。
後は一の越経由で下山をするだけである。今は丁度11時。遅くても13時には室堂に着くだろう。
何よりも帰宅が出来る目途がたったことが嬉しい。15時の終バスに間に合わなければ今日も室堂に泊まらないといけないかもと何回も何回も頭を過ったからだ。パートナは、まだ全快とまでは行っておらず下りに不安があるので、ゆっくり下山をするとのことで、一の越で待ち合わせとした。
一の越で再度出合い室堂に向かった。12:45 そして室堂に到着をした。

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【室堂に無事に到着】

装備を解除してアイゼンを外し13時のトロリーで帰路に着いた。大観峰からのロープウェイでは、昨日の道がくっきりと見え自分たちが通った道。登ったルンゼなどを確認をしながらの下山であった。こんなにも満足感のある山行はなかなか無かった。
本当にお疲れ様でした。2日間協力をして共に戦う。久しぶりの感覚であった。やはり雪山はサイコーである…。

 

改めて、こんなサイコーの山行を共にしてくれたパートナに感謝をしたい。

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【黒部平から。すべてはここから始まった(笑)】