瑞牆山 カンマンボロン 太陽の登

河合(記)

相変わらず緊急事態宣言に翻弄されていますが、隙間の記録です。

『(前略)…これらを登るためには「アルパインクライマーにしては充分な、5.11、12を登った経験」程度ではだめで、5.12、13という数字を日常茶飯事とする実力がなければならない。つまり、フリークライマーとして高レベルにあるということが前提で、それによって初めてこうした付加価値の高いルートを登ることができる。(日本マルチピッチ フリークライミングルート図集(菊池敏之著、山と渓谷社))』

トポに書かれた一節が、当時、5.12aをやっとこ登ったばかりの私に深く刺さった。5.12や13を日常とできれば、きっと世界は大きく広がるのだろうと。

時は経ち、5.12a位なら一日で、ある程度片付くようになってきた。そこでマルチピッチも、今までの5.11台からワンランク上げ、5.12の混じるものに手を出し始めたのが昨年。実力が足りず、手を出したアレアレア、太陽の登ともに完登できずにシーズンを終えた。今回、シーズンを跨いで、やっと太陽の登を完登することができたので、記録しておく。

【太陽の登(6ピッチ、5.12c)について】

詳細はトポを参照してもらえばと思うので、各ピッチの感想。

(1ピッチ目:5.12a)

見た目と裏腹に体感しっかり5.12aあるスラフェース。嫌らしい1歩があり、出だしで湿気ていることも多く、緊張する。核心を抜けても、上部でもうひと勝負あり、朝イチアップなしで登るには中々ハードなピッチ。途中の左側の木を使うとつまらなくなるので、限定した方が良いと思う。

スラフェースに張り付く@1ピッチ目

(2ピッチ目:5.12a)

1ピッチ目と性質が変わってオーソドックスなフェースクライミング。出だしが小川山のジェットストリームっぽい。つまり怖い。その後は薄いカンテを右に左に弱点を突きながら登る、長さもあって快適で素晴らしいピッチ。瑞牆の5.12aの中では登り易い方だと思う。

立ち昇るジェットストリーム臭@2ピッチ目

(3ピッチ目:5.12c)

すっきりしたフェースにひたすら立ちこむピッチ。出だしのトラバースが遠くて悪いけど、私は横っ飛びランジで解決、リーチなくても不可能ではないはず。他に極端に悪いムーブはなく、ノーハンドレストできる箇所もあるけど、次々出てくる小核心を一つでもミスるとおしまい、集中力の持久力が必要。このピッチも本当に素晴らしい!明らかに下の2ピッチより難しく、難し目の5.12bに感じた。

晴れると爽快、でも風強くてビレイヤー殺しの3ピッチ目

(4ピッチ目:5.10a)

ボルト2本の短いピッチ。今までの快適なフェースとうって変わって岩が非常に脆く、踏んでも壊れないフットホールドを探し出すのが核心。慎重さが必要。

次々とホールドがもげる4ピッチ目

(5ピッチ目:5.12a)

スラフェースから、垂直のカンテを絡めて登る変化に富んだピッチ。出だしの岩が少々風化気味だけど、気になる程ではない。ムーブは少々トリッキー。上部のカンテも中々面白く、最後のライン取りに悩むところ。このピッチも瑞牆の5.12aにしては易しい印象。

攻めたライン取りの5ピッチ目

(6ピッチ目:5.7)

省略する人も多く、それも頷ける要注意のピッチ。出だしのトラバースからのダウンクライムは問題ないけど、その後のボロボロのルンゼはノープロテクションで神経を使う。ただ、これを登らないとカンマンボロン頂上には行けないので、ワンプッシュ時は外せない。


最後はノープロの易しいチムニーと歩き@6ピッチ目

(全体を通して)

花崗岩の典型的なスラフェースが続く、素晴らしいルート。特に、2、3ピッチ目の解放感やスケールは本当に素晴らしい。ただし、2、3ピッチ目は、完全な弱点主義で登ると、左側の脆いカンテ部分に入ってしまうので、なるべくボルト沿いに登ることを心がけた方が良いと思う。

【記録】

・初日(昨年)(パートナー:川上さん)

1ピッチ目5.12a:河合リード×、川上フォロー×

2ピッチ目5.12a:川上リード×、川上フォロー×

3ピッチ目5.12c:河合リード×(2ボルト目で寒さ敗退)

下降後

1ピッチ目5.12a:河合リード×RP、川上リード×××

・2日目(昨年)(パートナー:川上さん)

1ピッチ目5.12a:川上リード×、河合フォロー〇

2ピッチ目5.12a:河合リードRP、川上フォロー×

3ピッチ目5.12c:川上リード×、河合フォロー×

4ピッチ目5.10a:河合リードOS、川上フォロー〇

5ピッチ目5.12a:河合リード×RP、川上リードFL

下降後

1ピッチ目:川上リード××RP

・3日目(今年)(パートナー:川上さん)

1ピッチ目5.12a:河合リード〇、川上フォロー×

2ピッチ目5.12a:川上リード×、河合フォロー〇

3ピッチ目5.12c:河合リード××、川上リード××

4月の暖かそうな日、花崗岩復帰戦で久々に太陽の登に取りついた。しかし、例によって風が強くて寒い。気合で1、2ピッチ目をノーフォールでこなすも、滅茶苦茶腕がパンプしてしまった。3ピッチ目のランジは感覚を忘れていて、何度も壁に膝を強打。その後のフィンガークラックからの左上トラバースは、以前フォローした時のライン取りが誤っていたことが判明し、ムーブをイチから作り直しで体力消耗。2便目で中間部のレストポイントまでたどり着くも、後半の核心で落とされてしまった。無念。しっかり要所のムーブを記憶して下降した。

・4日目(今年)(パートナー:Sさん(会員外))

1ピッチ目5.12a:河合リード〇、Sさんフォロー×

2ピッチ目5.12a:Sさんリード×、河合フォロー〇

3ピッチ目5.12c:河合リードRP、Sさんフォロー×

4ピッチ目5.10a:SさんリードOS、河合フォロー〇

5ピッチ目5.12a:Sさんリード×、河合フォロー×〇

6ピッチ目5.7:河合リード〇、Sさんフォロー〇

中々都合と天気が合わず、ノーズ以来全然マルチに行っていないというSさんを、「快適マルチですよ~2ピッチ目と5ピッチ目はオンサイト狙えますよ~」と甘い言葉で誘い出した。極悪人だ。

先行パーティを見送ってから、すっかり慣れた1ピッチ目をこなし、未だに核心以外のムーブがうろ覚えの2ピッチ目をノーテンでこなした。やはり出だし2ピッチで結構体力を削がれる。先行パーティは3ピッチ目以降行かないようだ。

2ピッチ目のフォローからの3ピッチ目のリードは、すぐはしんどいので15分位休んでスタート。出だしのランジは、この日は一発で止まった。その後、クラック、上部の小核心群に耐えてRP。かなり疲れた。Sさんは、「怖い」を連呼するものの、ムーブを全てこなして登ってきた。リーチあると出だしのトラバースは問題ないらしい。

4ピッチ目はSさんが慎重にこなした。Sさんの踏んでいたフットホールドは河合が踏んだら壊れた。

5ピッチ目もSさんがオンサイト目指して取りつくも、トリッキーな花崗岩にやられていた。ワンプッシュチームフリー的には、どちらかRPしない限り先に進めないけど、Sさんは既に疲労困憊、無理言って付き合ってもらっていたこともあり、フォローをノーテンでこなして良しとすることにした。しかし、出だしの核心で、私も手がスリップ、落ちてしまった。疲労は確実に溜まっている。テラスまで降ろしてもらい、すぐにやり直し、上部カンテを落ちそうになりながら気合でこなして、今度は何とかノーテンで抜けた。

ここまで来たら、最後の6ピッチ目を登らなければならない。ホールドのもげるボロいルンゼを、固い部分選んでチムニーして、カンマンボロン山頂へ。登攀時間6時間、下降はフィックスのゴボウ+70mロープ懸垂下降4回で30分強。支点がよく整備されているので下降も快適。

こうして、個別ピッチRPとともに、ワンプッシュもどき(厳密には5pのリードが落ちていてやり直していないので、フォローはノーテンだがワンプッシュチームフリーでない)での完登を終えた。終えてみてわかったのは、5.12のピッチをこなすと、明らかに5.11のピッチとは異なる重いダメージが体に蓄積されるということだ。これは、まだ私が5.12を日常と出来ていないことの証拠だ。マルチピッチ仕様に体を戻すとともに、5.12を日常とする位、力をつけねばと感じた。