剱岳 池ノ谷右俣ドーム稜

2001年5月3日から4日間
向畑、倉田、浅野(記)


装備:登ハン用具各自一式/ピッケル、バイル、アイゼン、カラビナ(1人/10~15)、スリング(1人/長短約15位)、ハーケン(ブレード゙厚刃×6、アングル×3)、アブミ(2)、確保器、カム(エイリアン#1~#4×2、キャメロット#1~#2×1、キャメロットJr各1)、ユマール(使用せず)、ロープ(50m×2)

※ 1)人工のピッチがあるのでアブミは必須(フラットソールの場合でもあった方が良いと思われる)

※ 2)ハーケンは薄刃も3つ位あった方が良い(ビレイポイント作成に使用。ランニングでは使用せず)

※ 3)カムは積、無雪期問わず上記数量で対応可能と思われる

※ 4)ユマール必須のピッチは無かったので省略可能(状況判断による)

行動:

5/3 夕刻高麗川駅発(向畑さん車使用)~馬場島着

5/4 馬場島発6時~池ノ谷二股正午着

5/5 池ノ谷二股~ドーム稜取付き~10ピッチ目にてB/V

5/6 B/V地~長次郎の頭~剣岳本峰~早月尾根下山~馬場島着18:00

概容:

1. 今回、池ノ谷は雪で全てつながっており徒歩にて通過可能だった。

2. 右又上部は傾斜がキツく、又ドーム稜取付き下部は上部に比較的広めの雪面を持つ狭いルンゼ状を通過する箇所があるので条件に注意。

3. ドーム稜下部は、比較的岩が硬いが中間部草付き帯より上部は脆いピッチが多い。

4. ルート上にB/Vポイントは、随所可能。

5. 残置ビレイ点は比較的しっかりしている方だと思う。

又、ハイ松も多いので利用出来ることが多い。

ただしピッチの切り方によっては自分で設置しなけれならないこともある。(当たり前か?)

6.人工及びフリーの全ピッチにおいて残置は比較的多い。

ただし、所々カムを使える箇所も多いため、不安を感じた場合の利用は可能。

記録

5月3日

秀峰に入会して初めてのアルパイン的山行だ。

「今年のゴールデンウィークは、R4に行こう!」と考えていた。

怪我をしてから丸4年近くが過ぎ、なんとかアルパインルートに向かってもこなせるかもしれないと思ったからだ。

R4ならアックスの使用が多いからへたれ状態でも何とかなるかなしれないとも思った。

でもそれ以上にR4は登りたいルートだったから。

秀峰の方々も剣周辺の計画が多いと聞き「良し、良し…」とほくそえむ自分は不気味だ。

自分は向畑、倉田パーティーに混ぜてもらうことが決まった。

しばらくして向畑さんが「R4だけじゃ日にちがもったいないからドーム稜も登りましょう」ということになった。

「ドーム稜???」

いろいろ記録を探したが、見つからない。

池ノ谷の中ではメジャーなのかもしれないが、池ノ谷自体そんなに人が多くないと聞く。

いろいろ探した結果、やっと昔の本を1つ見つけた。

「岩稜づたいに所々フェイスが出てくるみたいだな…。」

第一印象はそんな感じだった。

「ともかく出発までに仕事を片付けておかなきゃ」

といつになく真剣に労働する日々が続いた。

んがしかし!!!そんな努力の甲斐もなく5/2出張が決定。

今回の出張は、帰りが遅くなることが確実で2日夜出発は絶望的になった。

毎度のことだが「…またか。」

とあきらめてごめんなさいの電話を向畑さんにかけると出発を一日伸ばし、5/3日にしてくれると言うではないか!!!でもそうするとR4かドーム稜のどちらかになってしまう。

申し訳ないと思いつつも甘えてしまうことにした。

向畑さん、倉田さんどうもありがとさんです。

日程を変えさせてしまった上に30分遅刻して、高麗川に6:30到着。

「すまん、すまん」と思いながら、関越道を新潟へ。

荷物を満載した向畑さんのスーパーカーのエンジンが、うなりをあげる。(悲鳴か?)

知りませんでしたが、倉田さん。

結構踏むのね…。

馬場島に着いたのは0時を回った位だ。

GWだけあって駐車場はいっぱいだ。

駐車場の端にテントを建てて明日はどうしようかと作戦会議を行う。

R4かドーム稜か…。

しかし会議の結果は「詳細は明るくなってから決めましょう」だった。

ハハハ…。

5月4日

夜が明けて警備隊に登山計画書を提出に行く。

小窓尾根は満員御礼の状態だ。

「っで、R4はと…何々…。」

氷は無く夏と同じ状態だと言う。

水流があるのかな?「俺、わらじなんて持ってきてないぞ」

心の中でつぶやく。

と言う訳でドーム稜に決定。

装備を選択し二股に向かって6時頃(だったと思う)出発。

天気は良くて暑い位だ。

ゴルジュの上部にはまだブロックが多数引っかかっていて、ちょっとやだ。

デブリも落ちきっているようだけどやっぱりちょっとやだ。

やだ、やだ言ってもしょうがないのでとぼとぼ歩くとお昼頃二股に到着する。

ここまで雪渓はつながっており、なんなく登ることができたのはラッキーだったと思う。

剣尾根末端付近に先客のテントが2張り。

「ここにしましょう」と整地してツェルトを張る。

あとは3人外でゴロゴロ。

天気が良くて非常に気持ちが良い。

しばらくすると何パーティーか下山して来た。

聞くと剣尾根を登ったらしい。

そのパーティーに聞くとやはりR4は雪が無いようだ。

自分の目で確認に行けば良かったのだが、ドーム稜モードだったのと眠かったのとでそのままダベッってしまった。

明日は早いので夜7時頃には寝ることになる。

他のパーティーは明日下山なのかえらくウルサイ。

楽しいのは解るけど少しは考えるべきだと思った。

夜、寝る前に外に出ていると剣尾根の上にでっけー月が出てた。

寒気がする程の光景だった。

しばらくアルパイン的なことが出来なかったのでこれから又こういう世界に身を置けると思うととても嬉しかった。

でもシュラフカバーだけは結構寒く、よく眠れなかった。

これから又こういう世界に身を置くのかと思うととても馬鹿だなと思った。

5月5日

今日は子供の日、ドーム稜クライミングの日だ。

まだ暗い2時頃起きる。

食事をすませて撤収。

出発の準備を整える。

昨夜の騒ぎを思い出し、撤収時ガッチャン、ガッチャンわざと大きな音をたてた自分は結構嫌われるタイプかもしれない。

右俣を詰める。

雪は表面がクラストしているだけで、結構歩きづらい。

雪渓が切れていないか不安だったが、ずっと繋がっていて助かった。

2時間程歩くと傾斜がキツクなり幅の狭いルンゼ状になってくる。

条件が悪いともろに食らう地形だ。

ただの歩きからいつのまにかダガーポジションになっている。

ヘルメットは早めにつけておいて良かったと思った。

途中、2人パーティーにぬかされ、順番は2番目になる。

彼らの装備から判断すると今日中にドーム稜を抜けるつもり?らしい。

ドーム稜は何とかルンゼ(すみません名前忘れました)F4直下を横切り、右上する形で始まった。

1P

F4直下やや左のフェイスで足場を切ってカムでビレイポイント作成。

無雪期ならどこかに残置があったのかもしれないがこの時期は埋まっている?F4の下部をトラバースして草付き緩傾斜帯を登る。

残置は少ないが気をつければ落ちるようなとこではない。

草付きを上がりきった所で約15mほどトラバース。

残置のビレイポイントでピッチを切る。

2P

ビレイポイントからスラブ状のフェイスを直上。

2P目終了点まで右か左を選択できるらしいがアイゼン、手袋で右に行く気はしない。

フリーで左側を登る。

途中から岩稜側面づたいに登る形になる。

この辺はF4の上部にあたるみたいだ。

約40メートルで右に一段上がった所でビレイ。

3P

右に約5~6メートル程、トラバース後、正面のフェイスを直上。

この箇所は人口のピッチらしい。

残置も間隔、利き共に比較的良好。

フェイスにそって右側面にコーナークラックが走っている。

カムがばっちり決まる。

また、手袋を取っても冷たさは感じなかったので「何の、何の…」とフリーにこだわる。

しかし上部で結局人工。

面白かったんだけど時間をかけ過ぎた。

向畑さん、倉田さんごめんなさい。

ビレイポイントはフェイス終了点の残置でビレイ。

4P~

フェイスが終了したところで、容易な雪の段傾斜帯となる。

ここからは先頭向畑、セカンド浅野、サード倉田の順に、時間短縮の為ロープいっぱいに伸ばしながらの同時登攀となる。

念の為トップはブッシュにランニングを取り、セカンドが架け替え、サードが回収だ。

状態によるだろうが今回はさほど困難な箇所ではない。

約200m位か?上部の傾斜が急になる(ハイ松)帯でピッチを区切り最初のオーダーに戻る。

5P

ハイ松帯から急傾斜の凹状部を登る。

やさしそうなら同時登攀としたかったが難しくは無いが、今思えばきっちりビレーして良かったピッチだった。

草付き帯のダブルアックスで同じくハイ松にてビレイ。

6P

少し解りにくいピッチだった。

雪積期と無雪積期の時とラインが違うのかもしれない。

自分はブッシュ沿いに左上、Z状になる為ローブの流れに注意しながら右へ。

雪面を直上しフェイスに突き当たるのでカムとハーケンでピッチを区切る。

7P

「どっちだろう…。右?左?」少し迷う。

アルパインルートでの事故の多くはルートファインディング゙のミスにより発生することが多いので慎重に考える。

最初左へ行くと急な岩稜。

戻って右を見ると6P目と同じような草付き斜面。

フラットソールなら左の方が面白いと思う。

でも今は右でしょう。

んで右をアックスでガシガシ…。

20m程登ると雪混じりのリッジになりリッジを越えた反対側でビレイ。

8P

リッジを右から回り込むようにも見えるが、B・Pより直接リッジ通しに登る。

なぜかここから急に岩が脆くなる。

ランニングも取れないので慎重に登る。

ここも難しくはないが、脆い為、気を使うピッチだ。

リッジが終了すると緩傾斜帯になりハイ松でピッチを切る。

ハイ松にはずいぶん御世話になっている。

しかし情けないことに浅野はここで集中力が切れて音を上げ、向畑さんにトップを交代。

代わってくれる人がいると言うのは大変有りがたいと思った。

9P

出だしでスラブを2~3メートル左上。

このピッチの核心はこのスラブだと思う。

後は容易な岩稜通しに登る。

10P

目の前にフェイスがある。

左が浅い凹状のため、ひょっとしてルート図にある上部核心?と思われたが、イマイチはっきりしない。

向畑さんのリードだが、自分はこのピッチが一番難しいと思った。

このピッチで暗くなる。

当たり前だがアイゼンでフリクションが効く訳もなく暗がりでエッジが見えにくい中、ここを登りきった向畑さんはすごいと思う。

かっくい~!拍手、拍手!!!

11P

11P目は、丁度10P凹状部の上からスタートする。

夜になってしまった。

傾斜が無い為、易しいリッジ状を登るというより移動すると上部核心の凹角につきあたる。

凹角は12P目に相当するのだろう。

ルート図通りで多分「ああこのことか…」と迷うことは無いと思う。

今日はここでビバークとなる。

ビバーク地は、11P終了点。

丁度上部核心のビレイポイントにあたる。

残置、カム等でこれでもか!とばかりに支点を設置しロープをFIX。

3人が座れるだけのテラスを削ってツェルトを被る。

傾斜しているので居心地が良いとは言えない。

ビバークするなら8~9ピッチ目の方が横になれるから良いと思う。

風は無く、天気も良いので悲壮感は全く感じない。

やっぱり5月なんだね。

向畑さんがストーブを抱え、倉田さんが水を作る。

雪を取る為、頻繁に出入りする倉田さんはすごいと思う。

ありがとう~!拍手、拍手!!!特に作業をしていない自分は、「ありがとうね」と思うものの、たいしたことをする訳でもなく今日のことを考える。

自分と向畑さんのスピードの差はなんだろうって。

間違い無くプロテクションの数だと思う。

踏んでいる場数が違うからかなとも思う。

時間があったら、リードしたいと言っていた倉田さんに悪いことしちゃったな…。

いろいろ勉強になった一日でした。

5月6日

12P

今日も快晴。

今回はついてる。

昨夜は流石に寒かったが、結構寝ることが出来た。

簡単に食事を取って、出発の準備をする。

ノッケから上部核心だ。

出だしはビレイポイントより一段上がった箇所より左にトラバースする形でルンゼに入る。

岩は積み木状で脆い為、少し気を使う。

フラットソールなら直接、硬い箇所を選択して直上した方が良いかもしれない。(セカンド、サードはどうやったのかな…?)

ルンゼ内はまだ氷雪壁状でダブルアックスで登るも、厚みがなくなりすぐにフリーとA0になる。

ランニングは結構取れる。

一部傾斜が立った箇所があり、2~3度フリーを試みるが、昨日のことを思い出し2回程、アブミを使用。

後はフリーでルンゼ突き当りでビレイ(岩を使用)フリー有り、人工有り、ダブルアックス有り。

このピッチとても楽しい。

13P

ルンゼのすぐ右上がリッジになっており、そこを直上するようだ。

このピッチは登る前にルンゼからリッジ上にあがってビレイしてもらった方が良いと思う。

実際自分らもそうした。

リッジ自体、傾斜も緩く岩も硬い為、さほど難しくは無い。

ルート図では残りは1ピッチなので、あせることはないと思いきや最後に脆い部分を越すと、稜線に出てしまった。

ハイ松でビレイしながら考える「???。」

最後は快適な3級フェイスを越えるはずなのだが目の前のそれはどうみてもただの雪の斜面だ。(長次郎の頭だったらしい?)

よくわからん!!!結局、そのまま本峰頂上に立つ。

快適な3級フェイス、フェイスよフェイス、フェイスちゃんあなたはどこへ行ってしまったの?向畑さん、倉田さんと握手を交わす。

天気も良くて大変気分が良い。

足の状態を懸念していたので、早月尾根はゆっくり下ることにする。

でも心配なさそうだ。

午後6:00馬場島に到着。

家に帰る。

明日から仕事だ。

嫌だな・・。

今回の山行でこれからも又、登ることが出来ると思えるようになった。

秀峰の皆さんに御世話になることになり初めてのアルパインはとても楽しかった。

これからどこまで行けるかは自分次第だね。

向畑さん、倉田さんには自分の都合や技術不足で大変、大変申し訳なかったです。

次回はもう少しレベルアップするよう努力するのでこれからもお願い致します。

おしまい

 

北ア 黒部丸山 1ルンゼ~剱岳 平蔵谷フェース中央ルンゼ~名古屋大ルート

2000年8月17~20日
本郷、関、宮島(記)

今回のプランは、丸山から立山、さらに剱岳と3つの壁を登攀しながら縦走するという壮大なものだ。

岳人に憧れる私好みのプランであるが、何せ復帰2戦目でもある。

同行の二人には本当に感謝したい。

~入山日(丸山1ルンゼ 左ルート)~

1ルンゼ取り付きは落石の集中する所だ。

取り付き手前でザイルをつけ登攀開始。

全装備、水を背負っての登りはIII級でもシンドイ。

特に核心のIV+は泣きそうだった。

トップの関くんを本郷さんとほめたたえる。

終了点で傾斜はぐんと落ちる。

ザイルをといて、踏み跡を歩き出す。

が、そのうち草がやたら濃くなり、所々現れる露岩もいやらしく、再びザイルをつける。

そうこうしていると、ついに草におし戻されるように、前に進めなくなってしまった。

稜線まであと3ピッチ程度という所で、検討委員会を開く。

壁にとどまり不確定要素の多い状況下で翌日再び稜線を目指すか、より確実(快適そう)な内蔵助平へ下降するかだ。

安全重視(快適重視)の我々は全会一致でアプザイレンを開始(16:30頃)。

明るいうちに1ルンゼの下降を終了した。

後はダラダラを内蔵助平へ下るだけだ。

~2日目(内蔵助平~真砂沢)~

再び検討委員会を開く。

結局予定を変更し、行ってみないとよくわからない立山ではなく、勝手知ったる真砂沢を目指すことにする。

入山2日目ではあるが休養を兼ねて本日は移動日としたのだが、キャンプ場に着いた頃は、みんな必死の形相となっていた。

本郷さんの友人の加藤さん一行のテントで酒と食事をごちそうになり生き返った。

~3日目(真砂沢~平蔵谷下部上部~剱沢)~

みんな今日が勝負の日と心得ている。

今日登っておかないと、丸山の1本だけで合宿が終わってしまうかもしれない。

平蔵谷の雪渓は、取り付きがバックリと口を開けている。

本郷さんトップでボラードにてアプザイレンするが、恐ろしかった。

中央ルンゼルートは壁の中の自然なルートでいかにもクラシックという感じがする。

それにしてもルート図はメチャクチャだ。

合っているのはラインだけで、ここまでいい加減なルート図も初めてだった(「日本の岩場 下」)。

大休止のあと上部岩壁へ。

成城大ルートは先行パーティがおり、天候も不安定な様子の為、(本郷さんには申し訳ないが)以前登っている名古屋大ルートを登攀する。

まさにこれしかないというライン取りに感動する。

あわよくば成城大ルートもなどとのたまわっていた私が一番ホキている。

源治郎尾根の下降では、少々遅れてしまった。

翌日の為、テント場を剱沢へと移動するが、新人の頃のホキホキだった事を思い返したり、今日の充実した登攀をかみしめていた。

~4日目~

最終検討委員会を開く。

計画を遂行する為にも、立山を目指すか。

早めに安全地帯である、室堂を目指すかだ。

だが決をとるまでもなく、パーティの心は一つになっていた。

敢えて最終日に危険を冒してギリギリのアタックをかけるべきではない(早く温泉につかり、下界のメシを食らおう)と英断したのだ。

「桜」では合宿が無事終了した事、天候にも恵まれた事などを、ギョーザを8人分注文して祝った。

 

 

剱岳 八ツ峰 Ⅵ峰Cフェース剣稜会、本峰南壁A2ルート

2000年8月14日から19日
櫻井(記)、高橋

8月14日

黒四ダム – 真砂沢出合い

夏の内蔵助平は初めてだった。

雪のある時は疎林の雪原といった感じだが、夏は濃い緑の中少々息の詰まる歩きだ。

昼過ぎに真砂小屋前のキャンプサイトにテントを張る。

この日の核心は二俣に1年前デポされた食糧などの回収だ。

二俣までは河原の散歩を40分ほど。

八ツ峰側の大岩わきの急斜面にある、と聞いていたがどこも背たけを越すフキのような草で覆われている。

河原を歩き回りこの辺だろうという所を下から角度を変えながら眺めると吊ってある細ひもがなんとか見つかった。

草をかき分けゆるい泥壁をずるずるさせながら登って一斗缶に触れるところまできたが、頭の上に吊り下がっている重い缶はどうにも手では支えられそうもなく、結局、缶を別のラインで確保しなおし、古いひもを切り落として何とか回収できた。

なんだか救助訓練をしているようだった。

隣にはサンナビキの青い袋がやはり枝にぶら下がっていた。

食糧(冬用で楽しいものは含まれてなかったけれど)、燃料をたっぷり調達してこれで一安心。

キャンプサイトは雪渓のすぐ下で夜は吹き降ろしの冷風で寒かった。

8月15日

長次郎雪渓-Cフェース剱稜会ルート-Ⅴ、Ⅵのコル-長次郎雪渓

早起きしたつもりだったが長次郎の雪渓には先行パーティが10人くらい見える。

結局5パーティの4番目に取り付く。

岩とのコンタクトラインも開いたところもなく安定していた。

評判の通り簡単だが景色が良く爽快なルートだった。

昼過ぎには終了点に着いたがガスが濃くなってきたので八ツ峰の上を回るのは止めⅤ、Ⅵのコルに降りた。

この辺はゆるいスラブ状に石がゴロゴロしていてやっかいだった。

雪があればスタスタだろう。

長次郎雪渓を下りテントにもどった。

8月16日

休養日(櫻井)

長次郎雪渓から本峰頂上往復(高橋)

8月17日

真砂沢出合いから別山平

8月18日

別山尾根から平蔵谷のコル-南壁A2取り付き-A2-頂上-別山尾根

平蔵谷のコルの下は山靴にアイゼンをつけての雪渓トラバースとなりちょっとしたアルパイン気分だった。

ここには我々を含め3パーティが取り付いていた。

上部はスレート状の岩のエッジが非常に鋭く、しかもはがれ易いのでロープを傷めないように気を使ったが、登り自体の難しさは無かった。

この日は天気も良く1日中のんびりした気分だった。

私は頂上に抜け出るバリエーションが大好きなのだが、穂高の稜線を歩いた程度の感じしか無かった。

8月19日

室堂から下山

去年のヨーロッパの後から肩を傷めてしばらく岩から遠ざかっていたことと、新人を連れての山行でバリエーションとしての刺激は無かったが、初めて夏の剱岳を体験しその良さも、人の多さも納得できた。

夏山とは言え山靴とアイゼンは必携だった。

 

黒部別山南尾根~三ノ窓尾根~剱岳

1995年5月3日~5月6日
瀧島、大滝、桑原、大橋、板橋、森広

5月3日
曇り 7:30黒四ダム発。P7→P6→二段岩峰→P5の手前で雪の斜面を崩してテント設営(18:30)

5月4日
薄曇り3℃、7:10出発 10:15大切戸発 12:00P3のコル  15:00別山山頂 16:00二股 近藤岩にてテント設営 夜雨降り夜半雪になる

5月5日
8時頃雪止み、9:00出発 快晴 暑い! 渡辺斉さんの2人パーティと共に登った 15:30三ノ窓着 他のテントは15張りくらい

5月6日
浅田パーティと合流し、7:00発 快晴 8:45剱岳山頂 11:10早月小屋  14:10林道着

南尾根の岩場でロックハーケン使用。4~5枚あった方がよい。スノーバーやデッドマンは使用しなかった。三ノ窓は容易。ザイルも使わない。小型スコップはテント場で役立った。