谷川岳一ノ倉沢 衝立岩雲稜第一ルート

2019年9月29日
柳川、川上(記)

ベースプラザ2:50発-一ノ倉沢出合3:30着-中央稜基部5:20着-アンザイレンテラス6:15着-ボサテラス11:30着-衝立の頭13:45着-中央稜基部15:30着-ベースプラザ17:45着

28日夜、雨。谷川岳に向かう国道291号を車でひた走る。ワイパーの音が一定のリズムを刻む。

谷川岳周辺の景色がいつにも増して陰鬱に感じられるのは、自分の気持ちを反映しているからだろうか。だが、適度な恐怖心はクライミングにもっとも必要な要素の一つであり、精神面のセルフコントロールはとてもよくできていると感じる。

衝立岩雲稜第一ルート。以前はよく登られていたそうだが、最近はピンがだいぶ古くなっていてロシアンルーレット状態だ、とか、そんな噂は、かねがね聞いていた。たしかにネットを見る限り、近年の記録はかなり少ないようだ。
だが、登攀史に残るクラシックである本ルートは是非登ってみたいと思っていたし、ピンがそんな状態なら、なおさら早く登った方がいい。柳川さんも同じ思いであったようで、心強いパートナーを得て、うれしかった。
今年6月頃から狙っていたものの、計画を立てると降水予報となり、転進が続く。本来であれば、日が長く、かつ、テールリッジまで雪渓がつながっていてアプローチ容易な5~6月初旬に取り付くのが最良のタクティクスなのだろうが…。日が短いと、何かトラブルがあってビバークになるのもイヤなので、今回の計画が今季最後のチャンスかなー、と話し合っていた。

この日の谷川岳は、前日夜までがっつり雨。今回もダメかと落胆するが、午前2時に起床し、とりあえず取り付きまで向かうこととした。雨は止んでいる。

テールリッジを登り、中央稜の基部に立つ。意外と岩は乾いていた。夜明けの時刻にくっきりと姿を現した衝立岩は、近くで見ると流石の迫力がある。柳川さんが「ホントに登れますかね」とぽつり。私は、自分が思っていたことを言われたようで、ドキッとした。詰まる所、ただただ、ピン抜けが怖いのだ。その気持ちはよくわかった。

中央稜基部から見る衝立岩

衝立スラブをフィックスに導かれてトラバースし、草付帯を少し上るとアンザイレンテラスだ。「順番どうします?」と聞くと、「どっちでも」との返事だったので、ありがたく私が奇数ピッチをやらせていただくこととした。

アンザイレンテラスにて

1p目(Ⅴ-)川上リード
左上気味に登り、最後は右に出る。ピンは新しいリングボルト主体でしっかりしており、問題なし。終了点はハンガータイプ。聞いた話では、映画(クライマーズ・ハイ?)の撮影で2ピッチ目くらいまではボルトが打ち替えられたらしく、その辺りまでは、確かにピンはしっかりしていた。

1ピッチ目をフォローする柳川さん

2p目(Ⅳ、A2)柳川リード
ビレイ点から左に出て直上。フリーで10数メートル登ってから右にトラバースし、人工で第一ハングを乗り越す。ハング部はやはりパワーを使い、疲れる。柳川さんは慎重にアプローチし、豪快にハングを越える。

第一ハングを越える

3p目(Ⅳ、A2)川上リード
人工やフリーを交えて、右上気味に登る。古いハーケンが主体なので、ピン抜けを警戒して積極的にカムも使用した。とはいえ、きめれるところは限られる。
第二ハングを横目に、側壁を乗り越すところが少し悪い。残置にアブミをかけるが、次のハーケンはかなり上。少し上にフィンガーサイズのクラックがあったので、カムをきめてみたら、電子レンジ大の岩がグラグラ動く。ダメだ。ほかに、ボールナッツがあれば効きそうなリスもあったが、肝心のボールナッツは、「多分使わないから大丈夫っす」とか適当なことを言ってフォローの柳川さんに預けたままで、激しく後悔した。仕方ないので、右足でアブミの最上段に乗り込んで背伸び。両手は岩を持って、左足は壁にスメア。微妙なバランスで次のアブミを掛ける。エイドに慣れてる人には普通のムーブなのかもしれないが、人工2回目の私には、きつかった。今さらながら、単なるアブミの掛け替えルートではないことを痛感する。
すぐ上のリングボルト乱打の場所でビレイ。
キャメは、0.1、0.3、0.5番を使用した。

第二ハングを越えたあたりにて

4p目(Ⅳ、A1)柳川リード
左上気味に岩を登る。柳川さんはどうか分からないが、私は「よっしゃー、Ⅳ級A1だー」となめてたら、フォローでも疲れた。支点がだんだん貧弱になってきて、精神的にもきついところだと思う。フリーのパートも岩に草が生えていてホールドが見えづらいところがあり、いやらしい。

4ピッチ目を見上げる

5p目(Ⅳ、A1)川上リード
このピッチはカムが比較的よくきまり、安心。上部で、傾斜の落ちたルンゼ状にフリーで乗り込む。マイクロカムを固め取って数手出す。乗り込んだらハーケンがあった。ほどなくして、ボサテラスに抜ける。
キャメ0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、2番あたりを使用。

ボサテラスにて

6p目(Ⅴ)柳川リード
ビレイ点から上を見る限り、草や木が生えていて、簡単そう。でも、「このピッチ、ちゃんとⅤ級で、嘘ついてないですよね」と柳川さんが念押ししてスタート。つまり、グレードに現れないいやらしさがあるという「谷川あるある」を警戒していたわけだが、やはりここもそうだった。草付きでフットホールドが見えないし、滑るし、地を這うようなクライミング、ってやつ。でも、柳川さん、サクサク。Ⅴ級はⅤ級なんですね。

7p目(A2)川上リード
洞窟ハングの乗り越し。
リングボルト×2、青ボールナッツ、キャメ0.1、ハーケン×4を人工でつなぎ、ハング越え。洞窟ハング周辺は、いつも湿っているからか、残置の腐食が特に激しい。とあるハーケンはもげかかっていて、使う気にならなかった。昨年登ったGクラブのKさんの時は使えたそうなので、この1年で腐食が進行した模様。

洞窟ハングの取り付きにて

8p目(Ⅲ)柳川リード
10メートル位の凹角を登り、あとは草付きを適当に。リングボルト2つで終了点。

9p目(Ⅲ)川上リード
草付き、ときどき岩。適当に登って衝立の頭へ。

衝立の頭にて

柳川さんとがっちり握手を交わす。とにかくノートラブルで抜けることができて、本当に良かった。クライミングを始める前から知っていた、名高い衝立岩を登ることが出来て、感無量だ。
ルート自体は巧みに弱点を縫っていて、素晴らしい。登ってみて、初登者のセンスと時代を超えた記録に、改めて尊敬の念を抱いた。そして、これがフリー化されているとは驚きだ。帰りのテールリッジから衝立岩を振り返り、伝説のクライマーたちに思いを馳せた。

まとめ

支点はおおむね赤黒く変色しているが、ピン抜けしそうだと感じる程のひどさはまだなかった。しかし、たとえどこかの支点が朽ちたとしても、最初からネイリング覚悟で行くならば登れそうだ。いずれにしても、ナチュラルプロテクションは必携だと思う。細かいリスが多いので、最小サイズのボールナッツや極小カムがとても有効だ。フィンガーサイズ以上のカムが極められる場所はかなり限られる印象。
KさんやS田さんの記録は大変参考にさせていただいた。感謝です。

追記
9月28日
瑞牆山十一面岩末端壁
帰ってきた田吾作

実は、この週末は谷川岳は雨でダメだと思っていて、前日の28日土曜は瑞牆マルチに転進していた。昼頃に柳川さんが予報を見て、「あれっ、日曜は谷川いけそうですよ」の一言で再転進が決まったというわけで。せっかくなので、土曜の分も簡単な記録を記したい。

植樹祭駐車場6:20発-十一面岩末端壁7:00着-帰ってきた田吾作登攀7:30~11:30-トラベルチャンス&ガールズで遊ぶ-末端壁取り付き15:30着-植樹祭駐車場16:00

当初は瑞牆も午後からひと降り来るかも、という予報だったので、短めのマルチに取りつくこととした。

帰ってきた田吾作(4p、5.11c)

1p目(10c)柳川リード、OSならず
取り付きは末端壁の調和の幻想の右5メートルくらい。パッとしないコーナーを登る。見た目は簡単そうだが、意外とムズい。レイバックになるので、パワーを使う。柳川さんはテンション交じりで抜ける。

2p目(11c)川上リード、OSならず
下部は、フィンガー~甘いハンドのコーナー。甘いハンドとブリッジングで耐えるところが悪く、プロテクションは核心越えねばとれなくて、テンション。ここが11cだと思う。15メートルほどで一旦テラスに出る。
上部はスラブ。トポには「ランナウトしつつ登る」なんて簡単に書いてあるけど、、、何とも苦労した。出だしにキャメ0.1と0.3を固め取りして、突っ込むのだが、なかなか踏ん切りがつかず、少し行っては戻りを繰り返す。
えいやとムーブを起こすと、もう戻れない。カムを足下4メートルにしたところで小さなポケットがあったので、ナッツをねじ込む。が、明らかに効いてなくて、足ガクブル。結局、ちゃんとしたプロテクションから7~9メートルのランナウトで抜ける。落ちたら相当ヤバイだろう。かなり時間をかけてしまった。
このスラブ、必死すぎたので、客観的なグレード感がわからないが、せいぜい10bくらいか?この程度でボルトは打たない、という精神性が感じられ、印象深かった。私はもっと精神の鍛錬が必要だ。

2ピッチ目を見上げる

3p目(10a)柳川リードOS
短いオフウィズスを登る。サクサク、問題なし。とてもしっかりした広いテラスに出る。

4p目(トラベルチャンス11b、PD)川上リード、2回でRP
このピッチは、トラベルチャンスを登る。小さいナッツとキャメ0.1をかためてムーブを起こすところがあり、少し緊張。ここがPDの由来か。2回やってレッドポイントした。内容はとてもよく、面白い。柳川さんもトップロープで、楽しんでいた。

トラベルチャンス

ついでに、すぐ隣のガールズ(5.9)も登ってから、同ルート下降。
2回目の懸垂で、木に直掛けしたら、ロープが引けなくなり、プルージックで登り返したため、時間をくった。反省。

谷川岳 一ノ倉沢衝立岩中央稜、一ノ沢左方ルンゼ

2019年3月2日~3日
川上、山崎(記)

3月2日 谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜
当初、土曜日は一ノ沢左方ルンゼ、日曜日に中央稜の予定でしたが、前日夜から小雪が舞っていたので、土曜日は衝立岩中央稜に変更。当日の天気は朝のうち薄曇りのち晴れ。
センター発500。一ノ倉沢出合600。左に一ノ沢を分けた先から本谷のデブリが現れ始める。テールリッジには末端からではなく、衝立スラブ側から取り付く。中央稜取り付きに800頃。
なお、この日の朝、知っている限りでは東尾根に1パーティ2人、三スラに1パーティ3人、一ノ倉尾根に1パーティ3人が入っていました。

1P目 川上。雪のついたスラブを左上。40m。中間支点は灌木などで取る。雪の下にハーケン。2P目 山崎。1P終了点から左にトラバース後、ルンゼ状を直上。25m。3P目 川上。本来なら右にトラバースして衝立側正面フェースに出るところ、真っ直ぐ上に見える残置物に導かれ烏帽子側フェースを直進後左上。30m位だったか。
4P目 川上。とても難しそうなので難所大好きの川上リード。下部は左面に手足なし。右側にあるリス、カチ、棚などを使うが、難しく突破に時間を要す。中間支点はハーケンあり。さらに上部は被った凹角で、挑戦するも突破は困難となり、最終的にはあの手この手でずり上がる。終了点はボロいスリングが巻かれた立木。

ボロいスリングの巻かれた立木

5P目 山崎。本ルートが走る烏帽子側正面フェース目指してルート修正し、本来のルート4P目チムニーの上に出る。そこから凹状フェースを登り終了点。25m。
6P目 川上。ルンゼ状から烏帽子側の開放的な凹角状のフェースを登る。中間支点ハーケンあるが、クラックが走っているのでトライカムなども使う。40m。
この時点で14時を回っていたのと、メインピッチは終わったということで終了とし、同ルート下降する。途中ロープの引っ掛かりなどあったが、15時頃には取り付き着。
この日の中央稜は我々のパーティのみでした。

3月3日 谷川岳一ノ沢右壁左方ルンゼ
当日の天気は朝から曇り。天気は下り坂でしたが、日中は何とか持ちそうな状況。
センター発400。一ノ倉沢出合500頃。一ノ沢に入って急な登りの途中、最初の二俣が現れるが、左手が一ノ沢本谷で、左方ルンゼには左を行く。右手からはルートミスしたのか、一団が続々と下ってくる。
取り付き着630頃。この日左方ルンゼに入るパーティは我々を入れて5パーティの大盛況。
うち山頂に抜けたのは3パーティ。
1P目取り付き。ロープ無くても行けそうだが、先行パーティの落とす氷塊が時折飛んでくるのでロープを出す。出だしだけ傾斜の緩い氷で、あとは2P目の氷瀑の前まで緩い雪面。40m。
2P以降は、特に難しくない滝を交代で登って行く。確か4P目。左側は氷が薄く、中央を行き、右岸側の立木にある残置まで。25mくらい。4P目終了点から下を覗く。4P終了点からは緩雪面。5P目手前までロープを引き摺っていく。本ルート核心の5P目チムニー滝。川上リード。確保支点は左岸側の岩角へ巻き付けたスリングやハーケンを打ち確保支点とした。乗り越えた後40mほどロープ伸ばし左岸側でビレイ。
滝は、左面に薄い氷が張っており、チョックストーンの左側を登る。それほど苦労せず突破できた(写真は現地で偶然会った友人に取ってもらったもの)。
その後、中間稜までは先行者の階段状トレースがあり、雪も締まって容易。
中間稜核心のナイフリッジもトレースがあったため難なく突破。一応スタンディングアックスビレイで確保。ナイフリッジ後はロープをしまい、東尾根に向けのんびり登って行く。ガスで真っ白のオキの耳には1200頃到着。天神平経由で1500には下山。

谷川岳ヒツゴー沢

2018年8月5日(日)
薄田(単独、記)

行程: 谷川温泉6:00 ~ ヒツゴー出合7:30 ~ チョックストーン滝8:30 ~ 稜線 10:45 ~ 谷川温泉15:00

「熊だー!」
世の中暑すぎるので沢に逃げようと計画したが山も暑かった。甘かった。
20年前に1回入っていたが連続する滝はほぼ直登でき、単独でも行ける事はわかっていたので計画。
8/4の夜埼玉を出発。谷川温泉には23:00に到着、涼しい。(国道の温度計は24℃だった。)
前回駐車できたスペースはチェーンでガードされて入れない。モ・・・何とか言う団体の私有地だった。仕方なく空いている僅かなスペースを探し駐車。
レガシーの窓を僅かに開けてすぐ寝る。
4:30にアラームセット。夜中20年前にはいなかったかに起こされたが我が家とは比べものにならない涼しさだったのでよく寝られた。
6時前に出発。途中の沢が崩れていたがセンターの管理人言われた程の荒れ形では無かった。但し、20年前に歩いた場所が崩れて沢身を行かなければならない所が大分増えたように思った。
二股手前で右手のヤブ中から「がさがさ」と音がすると思ったその瞬間、恐怖におののいた熊さんと目が合ってしまった。こっちもびっくりしたが熊さんも人間が怖いのか猛スピードで斜面を駆け上がっていった。
体長は1.2m位の若いヤツで母親がいたらとどきどきしたが単独だったので助かった。
逃げてくれてありがとう。長いこと山に入っているが生熊を見るのは初めてで良い経験(あまりしたくないが)だった。
出合に7:00前に到着。準備して入渓。程なくして逆くの字滝、朝一で体が動かないので前回と同じく1段目を上がって左から巻く。後は連続する滝を全て直登。流石、銘渓ヒツゴー沢であります。
1箇所残置ハーケンにΦ7シュリンゲがお助け紐状態で2m位垂れていて有り難くA0をさせて貰った。之は助かりました。大きい滝が終わる頃から谷も開けお日様がガッツリ夏の日差しで攻撃してきます。此処からは熱中症との戦いです。クエン酸入り塩タブレットを舐めながらふらふらしながら登っていくと足下がいい加減になり1回スリップダウン。おしりをしこたま岩にぶつけて痛かった。
稜線直下は熱中症寸前で頭が半制御不能状態。10:45に稜線着。新潟側からの涼しい風に助けられ命拾い。肩の小屋まで登り天神尾根を下るが登って来る人来る人が暑さで死にそうな顔(多分自分も)なのが印象的でした。

谷川岳 一ノ倉沢一ノ沢 左方ルンゼ

2018年3月4日
薄田(記)、野澤

コースタイム:
一ノ倉出合 5:00
F5 8:40
一ノ倉出合 12:00

「ヤバいよヤバいよ」
F5上の雪田から降ってくる雪崩でF5入り口にてビレーするデカ目のヤツにやられ、飛ばされたがアンカーに助けられ事なきを得た。
この時薄田はテンションを貰って雪壁を下降中。ハーケン抜けてたら一ノ沢の出合まで死へのダイブがスタートするところでした。
前日の予報は水上での最高気温が17℃を告げていたがいつもどおり出合まで行くだけ行って判断しようと某駐車場を出発。先々日の雪は締まったようで普通に歩きやすかった。
出合に到着しても雪面は締まっており早く1・2の中間リッジ早く抜けられたら何とかなりそう。結局何とかならなかったが・・・
先輩から教わった出合で足のすね以上埋まったら引き返すという敗退基準はクリアーしていたが気温基準がそれを越えていた。
コップ側からデカイヤツが来ていて出合から30mも行かないくらいで高さ6、7m位のデブリが斜めに走り雪崩のすさまじさを再認識。
一ノ沢の本流に入り傾斜が増す頃から雪崩れ通過後の樋状滑り台が断続的に続く。
F1、F2は簡単なので各自フリーで登る。F3からロープを出し野澤先行でスタート。
氷が柔らかいのか快調にロープを伸ばす。但し、先行1パーティーが落とす時折大きい氷が弾丸となって普通に飛んでくるので上を見ていないとヤバい。

薄田、一度拳1/3程度がバウンドを読み切れず左胸にHIT、痛かった。
ビレー解除の声に薄田スタート。簡単なるも50mいっぱい伸びていたので脹ら脛のレストの為若干休憩を入れながら登る。
F4リードを薄田に交代。出だしF3より急だが4mも登るとバンド伝い、左右に逃げられるので見た目ほど難しくは無い。
氷部は25m程で抜けて更に5m雪面を左に上がり立木(残置シュリンゲ有り)でビレー。

続く雪壁も50mいっぱいで左手の立木でビレー、そこから核心のF5チョックストーンが見える。更に50m弱で手前の右壁下部にハーケンを2枚打つが1枚は半分しか入らない。
さて、この頃から強めの日射のもと気温も上がり塵雪崩が落ちてくる。
核心は野澤君の番だが既にゆるゆるの雪と申し訳なさ程度に付着した氷のためか難しそう。
そうこうする内に上部雪田からの塵雪崩落下間隔が狭まり大きさも増してきた。

薄田にリードを交代するもチョックストーンの左手には微かな氷しか無く傾斜も強いので逡巡。右手手前に目を移すが氷は付着するも気温の上昇でグズグズの状態、草付き状だが傾斜も有り支点取れないのでこちらもヤバイ。
そうこうする内に上部雪田から間欠的に重めの雪崩が降ってくる。
「もう駄目だ!」降りると決断。
薄田、そのままテンション入れながら50m下降。途中、野澤君がビレー中大きめの1発を食らいセルフにぶら下がる。ハーケン、効いてて良かった。
何とか立木まで降りてそこから懸垂開始。50m2回ではF3取り付きに届かず薄田7m程クライムダウン。後はテンションとクライムダウンで一ノ沢本流に到着。
助かった。

反省点はなんと言っても気温上昇。こんな日に入っちゃ行けない。しかし先行1パーティーはしっかり抜けて我々がセンター到着前に降りて来ていた。もう一点はもう1時間早くスタートが必要だった。

谷川岳天神尾根(雪上訓練)

2017年12月3日(日)
赤井(L)、小池(記)、高嶋、柳川、山崎、谷水、柏舘(合計324歳)

赤井さんが企画してくださり、本年も谷川岳天神尾根雪上訓練が実施されました。以下にご報告します。

前夜泊組の、赤井さん、柳川さん、高嶋さん、柏舘さん、小池の5名は22時頃に土合集合。他にもう一組がいるだけでスペースは充分にあり快適だ。
酒、つまみを持ち寄り、テントでなごやかに宴会中、ピンポン玉くらいの小ねずみの来訪があった。足もまだ遅いくせに警戒心がなく、テント周囲をしばらくウロウロしており愛らしかったが、食料の管理には要注意だろう。
翌朝、山崎さん、谷水さんとロープウェイ乗り場で合流。最終便に間に合わない場合があるため、片道だけの購入にするのが良いらしい。

9時過ぎ、天神平で降車すると雪不足の不安も一気に解消、一面の雪に迎えられ心が踊った。赤井さんを先頭に、若手陣が続いてハイペースで天神尾根を一気に登っていく。


無風、雲もない紺碧の晴天に汗をかきつつ振り返ると白い浅間山、富士山まで綺麗に冴え冴えと美しい。

10時半頃、天神ザンゲ岩にザックを置き、近くの斜面で雪上訓練。
1)滑落停止
2)3名づつ2班に分かれ、肩がらみ、腰がらみビレイ
12時半から13時頃まで昼休憩後
3)スタンディングアックスビレイ
4)雪上での支点構築(スノーバー、竹ペグ、土嚢、ブッシュ等)
訓練終了
15時撤収
15時45分ロープウェイ天神平駅着、下山後解散。

滑落停止。滑落はまず、しないことが一番。次にピッケルを刺し、型はどうあれとにかく初期段階で止めることが重要。


ビレイでは、バケツを掘り足場をつくって、上部に垂直よりやや角度をつけ打ち込んだスノーバー2本でセルフをとり、腰がらみ、肩がらみ等を立ったり、座ったり、重心や向きを変えて繰り返し練習して確認した。


掘り固めたバケツの足場がしっかりしているかどうかと、体重差や落ち役の落ち方の上手下手によっても、滑落を止める難度は大きく変わることを体感できた。山崎さんは不意落ちの動きもうまくてビレイヤーは引きずり落とされてしまうのに、私が懸命に転がり落ちても柳川さんは絶妙ソフトに止めてくれて微動だにしないのだった。斜度がないため、もっと勢いをつけ駆け下りる等、負荷を強くしなくては練習にはならなかったのではと思い申し訳なかった。
肩がらみのビレイではロープを流すことで衝撃を吸収すると教えていただきつつも、不意に墜落がくると、ガツンと止めてしまいがちであった。


対して、午後の訓練でのスタンディングアックスビレイでは、カラビナを介して間接的になるためか、より安定してロープを流すことができ、力のかかり方の比較もできたように思う。


ヤッケの肩はかなり擦れて熱くなり、雪訓なので2軍装備でとの指定に納得した。
立ち位置での肩がらみは、体を棒のようにまっすぐに、ロープを体前に保持して摩擦を大きくすること、手繰り時もすぐ制動できるよう手の位置に気をつけること、とのアドバイスを頂く。

のち、支点構築の練習にうつり、まずスノーバーを使って、打ち込み角度と向きを確認しながらアンカーを作った。柔らかい雪ではV字の開放部を谷側に、硬いときは逆に打つというが岳連の行った実験では保持力の差がなかったらしく、セットしやすい向きでよいらしい。雪が硬く埋めきれないときは、露出しているスノーバー上部でなく雪面でタイオフする。いずれにしても連結するスリングは溝を掘ってセットし、アンカーが脱落しにくい下部の方向へ加重がかかるように気をつける。などなど、支点をより抜けにくく、強くする方法を様々実践した。富山県警では摩擦を高めるため、スキーのシールも使っているとの話をうかがっていたら、柳川さんが自作の現物を持っておられ、見せていただく。バーの幅に合わせてカットしたシールを貼ったとのことで、かなり引き抜きへの抵抗が増すようだった。
竹ペグは十字に重ねスリングをかけ埋める角度を変えて強度の変化を確認した。加重に対し直角にしないと、上から踏んでいても抜けてしまうなど、セット次第でかなり脆弱になることもあると感じた。


竹ペグ支点の崩壊による滑落事故の実例もうかがい、支点強度の重要性を再認識する。会に新人が入り人数が増え、活気が出てくる、丁度今のような頃合いは危ないと経験値で感じる、とのお話もうかがった。長く第一線で山をやっておられる赤井さんならではの重みある言葉に、身が引き締まる思いがした。
続いて土嚢に雪をつめ、スリングで縛り、掘った雪穴に埋め、溝から出した先端へロープを通して懸垂下降を試した。竹と比較すると、こちらはかなり安定感を感じる。


このほか、ブッシュをスコップで掘り出し、笹の枝の根元近くを束ねたクレイムハイストでも良いアンカーが得られることを確認した。


最後に、スノーボラードの概念を教えていただき、訓練終了。美しい晴天の谷川で、新しい仲間との楽しい交流もでき、充実した1日であった。

赤井さんの長く深い経験に基づいた知識、技術を分けていただいた、今回の機会に感謝しています。これからも技術と知識を身につけ危機管理能力を高め、山に向き合っていきたいと感じました。ありがとうございます。

谷川岳 一ノ倉沢 烏帽子沢奥壁中央カンテ

5/21
2週間ぶりの谷川です。今回は薄田さんと電車で谷川行。土合駅行の最終列車に間に合うように乗車。意外と終電が早かったため、21:00前には土合駅に着きました。そのまま一ノ倉沢出合まで行って幕営。他にテントが3張ありました。

 

5/22
4:40出合出発。雪渓は後退していましたが、相変わらずテールリッジまで繋がっていて楽でした。
5:50 中央カンテ取付到着。取付には石川から来た3人パーティー。多分2人の我々の方が早いだろうということで先行させていただけることになりました。感謝。
6:05
1P目:Ⅲ+(リード:河合)
今回は薄田さんにお願いして、面白そうな奇数ピッチは河合リード。感謝です。まずはトラバース、それからルンゼ状を左上でした。トラバースは問題なかったですが、ルンゼ状に出てからピンは2つしか見つけられず、結構ランナウト。岩ボロい感じ。
中央カンテ_20160522_写真2
2P目:Ⅲ(リード:薄田)
ルンゼを左上、バンドまで上がります。簡単ですが途中のピンは2つしか見当たらず。Ⅲ級程度で落ちるようなら来る資格なしってことですか・・・
中央カンテ_20160522_写真3
3P目:Ⅳ(リード:河合)
顕著なバンドを左上してからカンテに出ました。カンテは左側から回り込み気味に登りましたが、またピン2つしか見つけられず。結構高度感ありプアプロは嫌な感じだったので、思わずキャメ#0.3をしょぼい岩穴に突っ込みました。フォローしてきた薄田さんの話では1つピンを見落としていたらしい・・・ライン取りミスったのかな。ここまでで1時間といいペース。
4P目 Ⅲ(リード:薄田)
チムニー手前まで。浮石が多かったこと以外印象に残っていない・・・
5P目:Ⅴ-(リード:河合)
チムニーをステミングで越えていく楽しいピッチ。残置は豊富ですが、入口にキャメ#1をかませて補強しました。
さくっと登れましたが、フォロー確保中に、ポケットに入れていた相棒のコンデジが吹っ飛び彼方に消えて行ってしまいました・・・人に当たらないで良かった・・・アクセサリーカラビナも環付を使おうと大反省。本チャンで初めて石以外のものを落とし、凹む。
中央カンテ_20160522_写真4
6P目:Ⅲ(リード:薄田)
難しそうな垂壁を避け、左に回りこんでから右上してボロいフェースを登りました。せっかくなら垂壁にピン打ってくれればいいのに。相変わらずプアプロで、ボロいフェース越えた所にやっと2ピン目が・・・この辺りも浮石てんこ盛りで、直接触れなくても少しのロープ操作ですぐ落石が発生します。
7P目:Ⅴ(リード:河合)
今日のメインディッシュ。フリーで行けなかったらお仕置きだ!との薄田さんの煽りを受けて出発。最初の垂壁は3m位、上のホールドは下からだとわかりにくいけどガバ(一部浮いてる)。魅惑の残置が垂れ下がってるけどプロテクションだけ取らせてもらってさくっと通過。次のハング気味コーナークラックは、左側のフェースにカチホールドが結構あったのでそちらから登れそうでしたが、やはり目立つクラックを選択。クラック入口の残置に加えキャメ#2をかませ離陸。レイバック気味にクラックを登り、最後はステミングして通過。ひよって残置ナッツなどに支点取りすぎロープ流れが悪くなったのでクライムダウンしてセットし直したりしてたら結構疲れ、時間も食ってしまいました。ん~やっぱⅤかⅤ+位かな・・・
8P目:Ⅳ(リード:薄田)
ん~左上気味に登って行ったはずですがよく覚えていません。どうやらフォローのピッチは記憶に残らないようです。ピンの数が下部と比べ多くなってきたような。
9P目:Ⅲ(リード:河合)
草付混じりのフェース→左側のルンゼ状。ルートが少し判りづらいけれど、ピンが結構あるので導かれるままに烏帽子岩基部を目指しました。途中25m位の所に支点があったけれど、明らかにルートの終了点でなかったので無視。ルンゼをステミングで越えたところ(少し悪い。Ⅳ位ありそう)で、ロープが40m位出てしまいました。しかしいくら回りを探せど終了点はなし。明らかに踏み跡のあるバンドが左に続いているけど、ロープ足りなそう・・・目の前にあまり効いてなさそうなRCCとボロいリングボルトが並んであったので、アングルハーケンを打ち足してピッチを切りました。このピッチが今日一番時間かかったような・・・
中央カンテ_20160522_写真5
10P目:Ⅲ(リード:薄田)
バンドをトラバースし、直上。ロープ10m少しでルート終了点でした。9P目で無理しなくてよかった。この時点で10:15。登攀に4時間10分かかりました。主に7、9ピッチでもたついた私のせいでちょっと時間かかりすぎたかな・・・
下降は、烏帽子の裏側を空中懸垂1発でルンゼの底に降り、そこから草付トラバース点までもう1ピッチ念のため懸垂、そこからビレイして南稜終了点地点まで1ピッチでした。慎重に行ったら1時間かかりました。
南稜終了点は賑わっていました。ここから6ルンゼ→南稜を懸垂下降6ピッチで下降しました。1時間40分かかりました。
中央カンテ_20160522_写真6
烏帽子沢奥壁のバンドトラバースは、ロープなしで下降しましたが結構おっかなかったです。懸垂しているパーティもいました。最後のテールリッジ下降は、前回の反省を踏まえアプローチシューズで下降したら快適でした。
それにしても暑い一日でした。2週間前とは大違いです。諸事情で水が2人合わせて1リットルしかなく、取付で飲みで干してしまい、半分熱中症気味でフラフラ下山。さらに一ノ倉沢出合に戻りザックを回収したところ、辺りに散らばる文庫本・・・カラスか何かにイタズラされたようです。何で食えない文庫本なんかわざわざ破壊したのだろうか・・・狩猟の本だったのがいけなかった?
中央カンテルートは変化に富んでいて面白いルートでしたが、思っていたよりプアプロ(特に下部)でした。後、岩がボロいです。ロープ操作で落ちるような小さな浮石が無数にテラスとかスタンスに乗ってます。
この日南稜、中央稜を始め、各ルートは結構混んでいました。

 

コースタイム:
4:40一ノ倉沢出合→5:00テールリッジ末端→5:50/6:05中央カンテ取付→7:05 3P目フォロー終了→10:15中央カンテ終了点→11:15/25 南稜終了点→13:05/20烏帽子沢バンド→ 14:35/15:00一ノ倉沢出合→15:45ロープウェイ駅

谷川岳 一ノ倉沢 衝立岩中央稜

2016年5月8日
薄田、野澤、河合(記)

5/5、小窓尾根から早めに帰ってきて、野澤さんと河又でフリークライミング(体にキレなし成果なし・・・小窓引きずってる?)をしていた時のひとコマ。
(河)「今年残雪めっちゃ少ないっすね~。今週の土日どっちかで太刀岡山フリーかなと思ってたんですが、もしかして谷川の壁とかもう登れます?」
(野)「今年の残雪なら、もう行けるんじゃない?」
(河)「なら、行きませんか?リハビリで取付きやすいルートを。」
(野)「じゃあ、中央稜か南陵かな。」
という感じで、あっという間に急遽、谷川行が決まりました。薄田さんも加わり、3名で日曜に行くことになりました。

 

5/7、22:00都内某所集合し、一路谷川へ。久々に(車で)行った谷川は、水上ICからロープウェイまでの間にセブンイレブンだけでなく、ファミマができていました。いつの間に??

 

5/8は4:00起き。眠い目をこすりながら出発です。何しろ登るのは一ノ倉沢の誇る人気ルート、順番待ち上等の中央稜。順番待ちで残業や途中敗退なんて嫌なのでなるべく早く出発です。
4:50出発。予報は晴れ、高気圧ど真ん中だったので天気は心配していませんでしたが、予想外に風が強い!
途中、4人組のクライマーらしき集団とすれ違いました。残業っぽくなかったので、もしかして条件悪くて撤退?やっぱりフライング??有笠フリーへ転戦???など少し焦りましたが(なら聞けばよかったのに・・・)、一ノ倉沢出合に着いて一安心。これは登れる!
最初の滝は巻きましたが、すぐ雪渓に乗れ、スイスイとテールリッジに取付けました。
中央稜_20160508 写真2
中央稜取付についてびっくり。誰もいません。後方も誰も見えません。もしかして一ノ倉沢貸切??(ほかに後から南稜に1パーティー入っていました)
さて、早速登ります。最初は野澤さんにリードしていただき、途中から河合にスイッチです。各ピッチの感じ(河合の私見)は以下のとおり。
1P目(リード:野澤)
スラブから逆層っぽいフェースを左上。特に問題なし(フォローだし)。Ⅳもあるのかな。岩が脆い感じ。これはこの後ずっと感じました。
中央稜_20160508 写真3
2P目(リード:野澤)
左にトラバースして烏帽子奥壁側に回り込み、ルンゼを直上。Ⅱよりは絶対ムズいと思いました。野澤さんは右にトラバース用のピンが見える方の支点でピッチを切っていました。
中央稜_20160508 写真4
3P目(リード:野澤)
このままルンゼを直上することもできそうだけど、ルートは右にトラバースしてリッジに出てからフェースを直上(Ⅳ)。トラバースはよく見ればピンもスタンスもしっかりありました。
中央稜_20160508 写真5
4P目(リード:野澤)
核心のピッチ(Ⅴ-)らしいです。フェースから上部のチムニーへ。確かにチムニー入ったら少し悪かったけど、左のフェースからフォローしてきた薄田さん曰く「Ⅲ+だな」。
5P目(リード:野澤)
記憶にあまり残っていないけれど確かルンゼ状だったような。
6P目(リード:河合)
「ぼちぼちリードする?」ということで出番が回ってきました。きれいな凹角を直上。スタンスもホールドも豊富で快適でした。ピンにコケや土が詰まっていたので、我々が今シーズン(無雪期)最初のパーティー?
中央稜_20160508 写真6
7P目(リード:河合)
トポでは(Ⅱ)位のピッチが上まで100m続くらしいです。稜線上のルンゼ状を右に左に抜けていきます。傾斜も寝てきました。ピンも支点もたくさんですが、ロープが重いです。40m位伸ばしたところでピッチ切りました。上まではまだ2ピッチはあるなぁ。滝沢スラブの方からは落石や雪渓崩壊の轟音が時々していました。
中央稜_20160508 写真7
ここで薄田さん野澤さんと相談。「もうクライミングっぽくなくなったし、ここまででいんじゃない?」ってことで、上まで抜けずに下降することにしました。幸い、本日中央稜に取付いていたのは我々だけでしたし・・・
傾斜が緩いってことは、大体浮石が結構乗っていて、しかもこのルートはリッジでロープも引っかかりやすい。ということで、こまめにピッチを切りながらじわじわと下降しました。支点がたくさんあった理由がわかった気がします。結局9ピッチくらいで下降したかな。結構時間食いました。しかも強風でめちゃくちゃ寒い!日差しは強いのに・・・ガタガタ震えながらの下降でした。
中央稜_20160508 写真8
取付に戻って、テールリッジを下降。アプローチシューズをテールリッジ末端にデポしてきたので、ガバガバのクライミングシューズで下降したのですが、それでも痛いのなんのって。今日の核心は間違いなくこの下降でした。ところどころ少し悪いところがあり、濡れていたら怖そうです。懸垂支点が結構ありました。
中央稜_20160508 写真9
涙目になりながら末端に着きました。薄田さん野澤さんはとっても短いバイル(ゴルジュハンマーとか)で、グリセード。あっという間に視界から消えました。曰く「大人の遊びさっ」私はゴルジュハンマーでグリセードする勇気がなかったので軽アイゼンで走って追いかけました。下は芽吹きたての新緑が眩しく、春だ~でも気温は初夏だ~
 中央稜_20160508 写真10

 

15:30に登山指導センターに戻ってきました。往復10時間以上といい運動でした。実は今回が初の一ノ倉沢でしたが、少なくとも中央稜は東北で慣れ親しんだ(?)黒伏山南壁位(それ以上?)にボロく感じました。傾斜緩いせいもあるかと思いますが、しっかりハマっているように見える岩も叩くとパコパコと軽い感じ。信頼できる岩は見た目より少なかったです。
下降中や帰りの運転中に「調子悪いな~」と思っていたら、どうやら風邪を引いていたようで、月曜は情けなくダウン。ちょっとホロ苦の一ノ倉沢デビューでした。

 

コースタイム:
4:50登山指導センター→5:30一ノ倉沢出合→6:00/10テールリッジ末端→7:00/7:25中央稜取付→10:45/11:15 7ピッチ目終了点→13:15/25 中央稜取付→14:30/40 一ノ倉沢出合→ 15:20登山指導センター

谷川岳 東尾根

2016年3月13日(日)
薄田(単独、記)

コースタイム(アバウト):
ロ-プウェイ駐車場 4:00 - 一ノ倉沢出合 5:30 - 左方ルンゼ 6:00 - 第二岩峰 7:00 - 第一岩峰 9:00 - 稜線 9:50
天気今一だったし、パートナーいないので一人でした。
(HP)一人で東尾根
雪は昨年より遙かに少なく、第二岩峰は左に回り込んでリングボルトの上のルンゼ状(15m3級程度)を登る。
(HP)岩峰
ビレーヤーいないので勿論フリー(落ちればマチガ沢で雪だるま)。
先行がホールドの「雪のけ」をやってくれたけど、使うホールドが違うので再度「雪のけ」。
その後先行(若い男女)を抜いたので、稜線までずっとプチラッセル。
オキの耳で可愛い山ガールがタイミング良く登ってきたので写真を撮って貰った。
(HP)山頂にて
勿論、先に撮ってあげました。
おしまい。

谷川岳 一ノ倉沢 二ノ沢右壁

2015年3月7日
向畑(記)、坂口(東京YCC)

2時40分、センター発。天気は曇り。2週間前に来た時はラッセルで一ノ倉沢出合まで2時間半かかったが、今日は1時間で到着した。
4時15分出合発。二ノ沢のクレバスは左から越える。6時15分頃右俣から右壁に入る。
ところどころ腰近くまでもぐるが、大体膝下までのラッセル。それほど状態がいいとも言えないかもしれないが、曇っているので大丈夫だろうと思い取り付く。

第一の氷瀑は傾斜がないのでノーザイルで超えるが、氷が薄くピックが岩をたたく。氷瀑上の雪壁の上の氷はさらに薄くて登れない。ここでアンザイレンして向畑リード。以降交代につるべで登る。

左のルンゼの氷を登り、ベルグラを右にトラバースして正規ライン上の雪壁に戻る。55m。氷を探してスクリュー2本でビレー。
雪壁を登り帯状ハング取り付きまで30m。ハング下の氷柱にタイオフでビレー。

ところが、帯状ハングに氷がない。所々、薄いベルグラが乗っている程度で出だしは岩が出ている。特に、通常登られているとされている傾斜が緩い右側には全くない。仕方がないので急傾斜の左の草付きラインを登る。ブッシュとピトン、イボイボを打ってランナーを取るが、結構ランナウトする。ハングを越えてからさらに、草付きとベルグラを右にトラバースして正規ラインの雪壁に戻る。35m。残置ボルト1本を見つけ、ピトン(効いてない)とスクリュー(全く効いていない)を打ち足しビレー。

過去の経験から、谷川は雪の多い年は、氷の発達はあまりよくないことが多い。この分では、上部雪壁の状態も悪いのではないかと思われたが、そうでもなかった。

帯状ハング上の雪壁を直上。30m。ブッシュでビレー。
ここから滝沢リッジにエスケープすることもできるが、尚も直上する。突き当たりの岩を左に回りこんで雪壁のできるだけ右よりを登る。35m。右側の岩にピトン2本打ってビレー。
さらに雪壁を登る。45m。右側の岩にピトン2本でビレー。
草付きをトラバースして滝沢リッジに。15m。急斜面上のブッシュでビレー。時間は13時30分。
ここまででも結構かかってしまったが、大した距離でもないのに、雪がたっぷり乗った滝沢リッジを抜けるのに、さらに3時間かかってしまう。このころから雪がちらつき始める。

滝沢リッジの雪稜を登る。45m。ブッシュでビレー。
さらにリッジを登りドームの基部に。途中からコンテで75m。ドーム着16時30分。小降りながら、本格的に雪が降り始める。
ドームの基部を右にトラバースし、Aルンゼへの懸垂支点に。20m。

Aルンゼには三スラを登ったクライミングファイト・伊藤さんと、さがみ山友会・河崎さんのものと思われるトレースがあって助かった。
Aルンゼからドームのコルに上がり、国境稜線に。17時15分着。
ガスで視界がないなか、トレースを頼りに西黒尾根を下る。センター着20時15分。下界では雨になっていた。

ちなみに、冬の二ノ沢右壁の核心は、帯状ハング上の不安定な雪壁であると言われている。特に、初登の鎌田さん、市橋さんパーティ、第2登で単独初登の細貝さんも、この雪壁を登らないと右壁を登ったことにならないとして、こだわって登っている。
しかし、最近は早い時期に上部雪壁の雪が落ちてしまい、全面スラブが出ていることがよくある。そのため、仕方のないことであるが、最近は上部雪壁を登らずに、滝沢リッジにエスケープしているパーティが少なくない。
今回は、雪が多いことに加え、曇っていて気温が上がらなかったこともあってか、比較的安定した雪壁が続いていた。ただ、全体的に氷の発達は良くなく、状態が良かったのか悪かったのかはよくわからない。

ついでに、女性の年齢を公表するのはマナー違反なので個々の年齢については触れませんが、合わせて102歳のパーティのため、登っている時にはそれほど感じなかったが、西黒尾根の下降がきつかった。年齢とともに、西黒の下りが年々長くなっているような気がしてます。

 

谷川岳 一ノ倉沢 二ノ沢右壁

2014年10月19日(日)~10月20日(月)
薄田(記)、野澤

 

30年ぶりに二ノ沢右壁に行ってきました。
当時は25歳のバリバリの現役だった(?)。ヘボクライマーは相変わらずだが何といっても若かった。又、手前みそながらいい体だった(少なくても腹筋は割れていた)。
今回、数年前の幽ノ沢(右フェース)での失敗もあるので、乾いた日を狙ったつもりだったが・・・。

10月19日

パートナーは当クラブの最若手(?)の野澤君であります。
車はロープウェーの平場駐車場にとめ5:00には出発、出合が7:00くらい。
30年前は8月のお盆の時期だったので雪渓通しに行けたが、今回は右岸ヒョングリの滝下降点からのアプローチとなる。
そこからが藪が酷く道が解らない始末。
(近年は殆ど登られていないことが後日判明。)
2回行きつ戻りつ迷って3回目に方向の目鼻をつけて藪こぎ開始。
下降目標地点となる松木手前の木で腐った残置シュリンゲを発見。
シュリンゲはやばいので、その木に直まきして懸垂下降。
二ノ沢着地が8:40くらい。
雪渓が消えたばかりなのか岩は砂混じりで悪い。
薄田リード(全ピッチ)でスタート。
1~2ピッチでロープを外せるかと思いきやずっと悪い。
三つ又下大滝では、ハーケンを微妙なバランスで打ち込んで越えました(かなり怖い)。
その後右壁に入るがツルベで無いのでペースが上がらない。
30年前は全体を通して残置が少ないのでハーケン1本でセルフビレーを取っていたと思う。
今回は慎重を期して各ピッチに1本打ち足して、勿論回収するので時間がかかった。
帯状ハングは新旧のボルトが多めに有るので、楽なA1であります。
帯状ハング上3ピッチくらい登ったところで暗くなってきたので、ビバーク地を探すが傾斜もきつくなってきてるので良いところが無い。
それでも2人がおしりを下ろせる場所までロープを延ばしてハーケンを2本打ちました。
しかし、暗くなり気も焦っていたのか、効きの確認を結果的に怠り(効いたと思いこみ?)ビレー体制に入ろうとして体重がかかった瞬間にそれが起きた。
山側を正面にビレー点に体重をかけたが、体の上下を軸に180度回転して超急な滑り台を降りるがごとく背中を斜面に擦りながら滑落し出した。
20mは落ちたでしょう。
次の瞬間、ハーネスにテンションが掛かった。何で止まったのか?気が動転していて解らない。
生きている事だけは間違いない。
意識ははっきりしている。
30mはランナウトしているのでハーケンではない。止まって良かった。本当に良かった。
ヘッドランプを出して上を見てみると10m位上の岩角に今にも切れんばかりの状態でロープが1本引っかかっていた。神様に感謝である。
ショックと左足の痛みでしばらく動けなかった。
野沢君が心配して声をかけてきたので取り敢えず大丈夫だと返す。
よく体を点検すると右の人差し指から血が出ている。痛みは興奮しているせいか感じない。
残置ハーケンを探して、そこまで怖いけど振り子で移動。
更に、ハーケンを打ち足してセルフを取る。
今度は2本ともハンマーで叩いて確認したのは言うまでも無い。
野沢君に近くでビバークポイントを探してセルフを取るように指示し、それぞれの場所でビバークに入る。
ツエルトは無いので、各自着られる物を全て着て少し腹に入れ寝に入るが、まともに座れる場所が無いので完全にハンギング状態で外傾した岩角に体を預ける程度の態勢なので殆ど眠れない。
夜半からは風が吹き出し10月とはいえ寒い。
薄田はザックから銀マットを取り出し体に巻き付けたが、風もあり体がずり落ちるので何度まき直したことか。

10月20日

殆ど眠れないまま朝日が上州武尊方向から昇ってきたので、行動を開始する。
腹に行動食を入れスタート。
左足が痛むが登れないほどでは無く我慢である。
左手の右手人差し指の痛みは幾らか和らいだが、握力が100%出ない。これも気合いである。
2p程で滝沢リッジの終了点となる。
リッジに出た後も草付が濡れいて悪い。
ここで7:00くらい。
悪いことに雨も降り出す始末。
ドームまでの草付きが雨で更に滑って悪い。
途中やられたロープを外してザックにしまう。
Aルンゼの下降点は立派なアンカーに変貌していてびっくりした。雪崩で遭難した遺族が取り付けてくれたようだ。
ロープが1本なので、8の字でセットして各自懸垂下降に入る。
この頃から更に雨が強まる。
合羽は上着のみなので寒い。
ルンゼ全体が濡れているので、痛んだロープをカットしてロープを結ぶ。
薄田リードで3から4ピッチでドームから上がってくる岩場(残置ボルト多数有り)に到着。
それから100mくらい登り、やっと登山道に出た。17:00くらい。
助かった!良かった!実感である。
後は西黒を下るだけ・・・