大井川水系 大根沢

南アルプスに大根沢山という山がある。「ダイコンたくさん」ではなく「おおねさわやま」と言う。この山を源流にする沢はいくつかあるが不勉強な自分は明神谷くらいしか遡行していない。そんな訳で、山名の由来となった大根沢に行くことにした。


中和(単独、記)

概要:
2022/11/03~11/06
信濃俣河内支流の西河内から大根沢にアプローチ。
大根沢支流のブナ沢から寸又川まで下降後、杓子沢を遡行して大根沢山。

11/3 快晴
赤石温泉付近に車を停めて自転車で畑薙ダムに移動。林道をしばし歩いて信濃俣河内に入渓する。渇水期なので信濃俣河内に水の重さはなく、紅葉を眺めながら歩くだけで西河内の出合に到着。

畑薙は紅葉シーズン

アプローチに使った西河内は「何もない」の一言で表現できる沢だ。小滝とミニゴルジュが散見される程度の下降向きの沢で、登って面白いと感じたなら感性が豊かな人だと思う。水源も低くH1400くらいで枯れる。稜線に上がると焚火ができないのでH1600あたりの傾斜地をそれっぽく整地して宿泊。ぞんざいな整地だったので、傾斜でズリ落ちては起きるを繰り返す嫌な夜になった。

11/4 快晴
夜明けと同時にガレた沢を登ってコルを目指す。不安定なガレを登らず、横着して右手の尾根に逃げるとあっけなくコルに出た。
コルから水の少ない沢を下降していくと40分ほどでブナ沢の源流部に出る。ここから杓子沢(地図に名前がないが大根沢山の南西に詰める沢)出合まで3時間で下降できると予想していたが、滝が多く2倍ほどの時間がかかった。
途中、木の根を支点に懸垂したらロープを引けずに登り返したり、大高巻きしてのルートミスもやらかしている。適正な判断ができる人ならもっとスピーディに下降できるとは思う。

H1600付近の12m滝
大滝はないが10mくらいまでの滝が点在

滝やゴルジュで薄暗いブナ沢から一転し、杓子沢の出合は薪も豊富な明るい河原で宿泊好適地。ここより下流の大根沢の中下流部はゴルジュはあるものの小滝と釜が続くきれいな渓が寸又川本流まで続く。この日は大根沢橋よりやや下流に泊まった。

サクラ沢出合の二俣

11/5 快晴
この日は寸又川まで下降した後、杓子沢出合まで登り返して同沢を遡行するのが目的。泊地を出て大根沢を下降していくが、渓相は相変わらず穏やかだ。にしても林業のゴミが非常に多い。大根沢には森林鉄道の支線や営林小屋があったので何となく予想していたが、ブルドーザー、ワイヤー、吊り橋、小屋、森林鉄道など林業ゴミの展覧会となっている。

コマツ製ブルドーザー

左岸の大根沢事業所跡を見送るとすぐに寸又川との出合だが、ここはゴルジュ内に全水量が1mほどの幅で圧縮されて落ち込みとなっている。高さは2mほどなのでトラバースして釜に飛び込めば下降できるが、すぐ横に森林軌道があるので歩いて寸又川に出合う。

上から見た落ち込み

大根沢出合からは左岸林道に上がって時間短縮しようとしたが、この林道は相変わらず崩落地だらけで極悪だった。釣り師によると思われるトラロープが残置されているが、落ちたら良くて大怪我の崩落地にロープの強度も固定方法も不明なゴミで突っ込めるのが信じられない。豆腐メンタルの自分はトラロープに命を預ける気にならず、適当な場所で懸垂して大根沢に降りて杓子沢の出合まで戻った。

画像だと何が何だかわからないが、崩落地にトラロープがフィックスされている

ここからは大根沢の南西に詰めあげる杓子沢の遡行だが、基本的に上に行くほど難しいしヌメる。下流は小規模なゴルジュと小滝のみだが、中流は5m前後のヌメる滝が連続し、上流部はV字谷からの崩落壁という品揃え。
中流部の終わりであるH1580で三俣状になって沢が東に屈曲するが、本流と思われる沢の水は伏流し、地図にない支流からは大量の水が流れこんでいる。地図と現実の不一致にひどく困惑させられたが、一番風格のある本流と思われる涸れ沢を遡行したら正解だったようで、すぐに水は復活した。と同時に左右の壁が立って来てルンゼ状になってくる。快適な幕場は諦めざるを得ない雰囲気だが、H1750付近に奇跡的に平坦な場所をゲットし快適な夜を過ごした。

最上流部。同じような滝が3つ続いて崩落地に出る

11/6 快晴
この沢は詰めが崩落壁なので、どこで逃げるかの判断が核心になる。なまりきった今の体とメンタルで崩落地を登る気になれないので、遡行中も脱渓ポイントのチェックばかりしていた。途中5m滝を高巻きするためロープを使って一段上がると、5m滝が3つ連続する上は崩落地となっているのが見えた。頑張って登ってもすぐに遡行終了になるのがわかったので、懸垂して一段降りて滝下の右岸から脱渓。あとは藪を漕いで大根沢山に到達。この先はほぼ登山道なので、14時前には赤石温泉にたどり着いた。

コースタイム:
11/3:赤石温泉(10:30)-信濃俣林道終点(11:02)-西河内(12:49)-西河内H1600(15:29)
11/4:西河内H1600(5:39)-コル(6:11)-杓子沢出合(14:27)-大根沢橋(15:50)-泊地(16:10)
11/5:泊地(6:40)-寸又川(8:13)-大根沢橋(10:50)-杓子沢出合(11:57)-杓子沢H1750(15:27)
11/6:杓子沢H1750(6:37)-大根沢山(9:35)-赤石温泉(13:50)

装備:
60mロープ、荷揚げ用補助ロープ、トライカム#2まで(未使用)、ハーケン数枚(未使用)、アブミ(未使用)、沢靴(ラバーソール)、軍手、シュラフ


アルパインの岩場における残置やラッペルボルトの是非を語るクライマーは多いが、登山者もペンキと赤札の設置について少しは思いを巡らせても良いのではないか。
もちろん百名山や丹沢・奥多摩あたりの登山道ならば、立派な道標があろうが等間隔で刺々しい色のペンキマークがあろうが何か言うつもりはない。そういう場所だと承知しているからだ。
また、赤札をゼロにしろなどと言う気もない。バリエーションにおいて、ルートの取付きや尾根の下降点に確信が持てないとき、無造作につけられた赤札で一安心したことも一度や二度ではないからだ。
ただ、未整備であることが魅力の深南部において、ペンキや赤札で過剰にルート整備するのは、山域の特性を無視した身勝手な行為だと思えてならない。例えるなら谷川岳や剱岳の岩場をラッペルボルトで整備するのと同レベルの暴挙なのではなかろうか。

過剰なペンキの典型、この後も赤札が連打されている

 

 

北岳バットレス 下部フランケ~Dガリー奥壁

2021年10月2~3日
山崎-船戸、浅野-小池(記)

山行タイム/行動記録:

10月2日(土)前夜、某所集合 快晴 
先発組の山崎、船戸、小池 アプローチ下見とガチャデポ

05:15、芦安駐車場発(バス)

06:13-06:30、広河原インフォメーションセンター
緊急事態宣言解除後、初の週末とあって、ハイキングも盛況。かなりの人出。センター男子トイレ前に見たことないほどの大行列ができていた。吊り橋をわたった広河原山荘のほうは比較的、すいていた。

09:10-09:20、大樺沢二俣
風光を楽しみビバーク適地を探したりしつつ、のんびりと大樺沢を詰める。

12:10、Cガリー出合 周辺をチェック
二俣あたりの沢は枯れていたのに、水がけっこう流れており、明日も汲めそう。
Cガリーを飛び石をたどり渡渉後、まもなくの岩のところを右に入ると、取り付きへの踏み跡がある(登山道わきに目印のケルンあり)少し登って、傾斜がゆるくなったあたりの岩盤上部で再度沢筋をわたり、対岸の踏み跡を登っていくと、視界が開け足元が草付きになる。そのまま登れば下部岸壁取り付きに至る。Cガリー出合いから30分くらい。

12:45-13:45、取り付き下見
下部岸壁の各ルートをみながら相談。いちばん簡単で落石リスクも少なそうな5尾根支稜経由が早くて良いのだろうが、もし明日渋滞行列になっていたら、すいていそうな十字クラックから行こうか、などと検討しつつ、ガチャのデポ。見た感じ、十字クラックは予想に反してあまり楽しそうなルートではなかった。登られてなくて、何か詰まっていそうだ。1Pだけでもためしてみようかとの気力も萎え、翌日への体力温存を最優先に、早々にテン場に下る

14:40、大樺沢二俣

15:00、白根御池小屋
コロナ下での今シーズンから テント泊までも事前予約制になり、オンライン事前決済に変わった。密を避ける配慮もあってのことだろうが、人数制限か、連休や土日は予約が早く埋まってしまうので要注意 (何度もやむなく山行中止してきたが、台風などの気象条件悪化の場合は、予約取り消し願いのメールがきて、払戻ししてくれる)  前日から営業再開したばかりの白根御池小屋の生ビールをありがたくいただき、翌日に備える。一番の不安は時間のこと。2時間並んだとの記録もあった。渋滞に巻き込まれて足止めを食らうと、バスをのがして、最悪、夜叉神峠のゲートまで4時間くらいは林道の登り道を歩かなければならないだろう。 16時40分発の最終バスが出てしまったあと、個人でタクシーを呼ぶという最終手段があるが、それでもゲートが閉まる18時前に夜叉神を通過しなくてはならず、17時半広河原出発がデッドライン。それまでにはなんとしても下っておきたい。

19:00、就寝

10月3日(日)快晴

1:30、起床
某所より、後発にて参加の浅野さんと合流 会えてよかった!

3:00、白根御池小屋発
3:30、大樺沢二俣
4:25、バットレス沢出合
4:30、Cガリー出合
4:50  下部岸壁 5尾根支稜取り付きで支度 4尾根に行く3人パーティーの先行が1組いるのみ 空が明るくなり稜線が見えてきた

広河原から見えた快晴の北岳 左側に大樺沢が見える
取り付き下部から見た全景

5時すぎ、山崎-船戸組先行、続いて5時30分頃 浅野-小池組も登攀開始

~下部岸壁~

1P目、(浅野)5尾根支稜の角まで
傾斜はそれほどでもなくスタンス、ホールドも豊富にあるが、プロテクションをとれるところがない。朝いちの岩は指につめたく 緊張感がある くの字型にルートがまがるところで、流れが悪くならないよう付近の立木をビレイ支点にピッチを切る。

2P目、(小池)角から広めの草付き前まで
ところどころ草や木が生えているスラブ 残置ハーケンと木で数カ所、中間支点がとれる。フリクションのきかないチャートスラブのツルツル感がここから実感できる。傾斜がゆるくなり、草つきになってきたところで、それ以上のばすと、とれなくなりそうだったので、立木支点で適当にピッチを切った。

3P目、(浅野)草付きから一段上がった岩面のビレイ点まで
先行の山崎-船戸組が、わりと悪そうな右側のルンゼをコンテで登っていくのが見えた。そのすぐ上部に先行の3人パーティーがつかえている様子をみて、浅野さんは違うラインをとり、ビレイ点から斜上する細いレッジ伝いに、岩の中間部くらいまでのばしたところで切った。

4P目、(小池)中間部ビレイ点から、横断バンド、下部フランケ取り付きまで
やさしいスラブ壁面をほぼ直上していくとすぐ、横断バンドに出た。そこから草付きを数メートルのぼると、下部フランケ1P目取り付きの左、Dガリーそばに何本か古いスリングのかかったビレイ用支点がある。

~下部フランケ~

1P目、(浅野)5.10a、20m スラブ~Ⅳ、15m V字凹角
支点からバンドを右へ。この1P目が下部フランケ核心ピッチ。スラブ面の真ん中くらいのところに、直上するへこみがあり、ハーケンがたくさん打たれている。チャートのスラブではなかなか手強い角度。細いリスに指をひっかけて登るが、草付きへ抜けるところがとくに悪い。抜けると草付き上部に安心して立てるスペースがある。前の二人はここでビレイしていたが、浅野さんは、続きも短いからと繋げた。切らずに続けた次は、Ⅳ、15mの凹角をステミングであがり左へ。凹角内部の中間支点は豊富にある残置ハーケンでとれる。

2P目、(小池)Ⅳ+、20m。V字凹角。
ここも右壁にハーケンが連打されている。前の凹角と似たような感じのルンゼを登る。上にハングがかぶさってきたところを左に抜けていくとビレイ点あり。立木に残置スリングがかかっている。振り向けば快晴の空を背景に、富士山が裾まできれいに見えた。こんなに晴れているバットレスなんて、神様の贈り物か奇跡か。

3P目、(浅野)Ⅳ+、40m。V字凹角。
チョックストーンを乗越し、ハング下を左へ。抜け口に、手のホールドがみつからず、緊張する。閉塞感のあるルンゼが続いたあと、左方向へ抜けていくと視界がひらけ、開放的なDガリー全貌がよく見える。
からりと晴れて空気も澄んでおり、終了点近くのチムニー、城塞のあたりまでハッキリ見える。こんな風に爽快な高度感を味わいつつ、ゴールにむかってまっすぐ登っていけるロングルートはそうそうないのではないだろうか。

4P目、(小池)Ⅳ+、25m~?フェイスに走るクラックから草付きトラバースへ連続、Ⅲ、40mくらい。(途中で切って懸垂)
カンテを伝って走るクラックをたどって、Dガリーへの横断バンドを探しつつ登る。ここかな?と思われるところで、途中から、Dガリーへ向かう草付きへトラバース。「支点があまりとれない 迷いやすい」との記録も多数目にしていたので、よくよく下調べしておいたつもりが、うっかり斜上しすぎてしまい痛恨のミス。 バンド途中にスリングがかかった支点のボルトをみつけたので、一旦切って、フォローの浅野さんに一段下へ先に行ってもらい、解除後、正解と思われるバンドへ懸垂でおりた。心もとない支点を頼りに、降りはじめてみれば階段状に歩ける傾斜。このピッチまで順調だったのに、時間のロスが痛い。

5P目、(浅野)Ⅲ、40m。Dガリーを詰める。
それほど傾斜のない草付きを、Dガリーを辿り登る。コンテでも大丈夫そうではあるが、中間支点をとりつつ左のルンゼ方向から4段ハングの直下テラスにまであがれば、安定したビレイ点がある。50mロープぎりぎり、残り1mくらいまで、するすると出た。

下部フランケ側から、トラバース先のDガリー方向を見る 青丸、先行の山崎さんが4段ハング真下のテラスに到達したあたり 赤丸 ビレイポイントの船戸さん

~Dガリー奥壁~

1P目、(小池)Ⅴ+、40m。4段ハング クラック
4段ハングをクラック沿いに乗越していく、トポ上Dガリー核心。1段目のハング面、左側と右側にクラックがあり、右のほうが登られているようだが、ロープをまっすぐ伸ばせそうだったので、左のフィストサイズのクラックに挑戦するも、下部に足置きにいいホールドをみつけられず、かなり体をあげないとひっかからなく苦しい。この1段目と、最後の段が難しかった。さいごも幅広のフィストサイズで、左側高い位置にホールドがあったが、そこをみつけるまで探りながら3番で結局カムエイド。この4段ハングピッチは全体で20m程度と短いけれど、弾切れが心配になり、カムをずらしながら、残置ハーケンに支点をかけかえつつあがった。(ハンドサイズのカムを2セットも持っていたので、心配いらない数だった。)最後のハングを乗り越すと眼前に、Dガリーのピンク色のスラブが広がる。ゆく先に、いくつかのハーケンとボルトがまとまって見えるので、あれがビレイ点かな?と、そこまでロープをのばし、シンハンドサイズのクラック沿いにスラブを10mくらい進み、残しておいたリンクカムと3番で補強してピッチを切る。

しかし、この位置からの引き上げだと、クラック抜け口にセットしてきたほうの3番が干渉してしまい、ロープアップに難儀した。こんな風に抜け口に短くカム支点をとるなら、ハングをぬけたすぐのところにあるリングボルトと そのへんの適切なクラックを使って、上から覗きこめるくらい近い距離のところをビレイ点にしておくのが正解。またしても時間をくってしまい 先行との距離もさらに開いてしまう。そこへとなりの4尾根からあがってくる3人パーティーのコールが聞こえ、視界に入ってきた。追いつかれて、もし、抜け口渋滞にはまってしまったら、広河原への下山デッドラインを超えてしまうかもしれない。

ハング抜け口でビレイする山崎さんと、クラック核心部の船戸さん

2P目(浅野)Ⅴ、40mくらい クラック スラブ
スラブに走るハンドサイズのクラックをたどり右方向へ登る 手足とも豊富にホールドがあってよく効く感じだが、痛い。チャート岩質のクラックが滑りそうなのと面倒で、テーピングもロクにしてこなかったため、拳や指のあちこちが切れて血が滲む。ハンドサイズといっても、次第に幅が広くなる。足も深くハマり、痛い。続いてシンハンドくらいの微妙なサイズのクラック。しかし広々とした視界のDガリーは開放感があって爽快。さわやかな風が抜けていった。ハーケンやリングボルトは、残置が多すぎて ピッチもどこで切ってよいのか不明瞭。残置にカムで補強してどこでも切れるように思う。

Dガリー2P目 スラブをすいすい登っていく浅野さん 上部中央に4Pめチムニー入り口、左側に城塞ハング入り口が見える

3P目、(小池)Ⅳ、30mくらい。スラブ
このつるつるスラブをランナウト気味に直上するのかな?怪しげな残置以外とれなさそうで、悪いように見えるので、やや右方向へ浅めルンゼをたどり、4尾根ルート近くにある潅木で中間支点をとった。そこから逆くの字型に本来ルートへ戻る方向へ、次ピッチのチムニーをめざして左上、チムニー真下で切った。このピッチはかなり悪いらしいときいたが、それほど難しく感じなかった。本来ルートから右に逃げてしまったのかもしれない。ここで4尾根方向から登ってくる3人パーティーが新たに突然現れた。同ルートを後ろから来ていたはずのガイドパーティーの皆さんだった。時間切れか、Dガリー奥壁をやめ、ショートカットしてきた模様。同じ抜け口に向かって3パーティー集中となる。みんな帰りのバス時間のことを考えているだろう。

4P目、(浅野)Ⅳ+、30m。オフウィズス チムニー
右側の壁に1箇所、ハーケンが打ってあるほかには、プロテクションをとれるところがない。ステミングとチムニー登りで体をねじこみズリあげ、じゃまなザックにもがきながら少し進み、右壁プロテクションのあたりで、早々に壁の右上へいったん抜けてから、反対側へチムニーを跨ぎ越える。わたったところのすぐそばがビレイポイント。

Dガリー4P目 オフィズスチムニーを乗越す船戸さん

5P目(小池)Ⅳ,15m  スラブからチムニー  城塞ハング
ビレイ点から、城塞ハング入り口までのスラブは短く、傾斜もさほどないが、支点がとれずランナウトするので絶対に足を滑らせたりできない。

しかし恐怖より下山時間のほうが気になり、4尾根ルートから来てビレイしているガイドパーティーをすり抜けるように駆け上がり、ハング入り口へ突進してしまった。入り口からすこし被った、浅い凹角をあがりチムニーへ。

内部はやや曲がっていて、ハーケンもたくさん打ってある。まず右壁レッジに打ってあるピンでランナーをとる。ホールド、支点ともたくさんあるので、見た目ほどには悪くなく、後ろも続いているので、なんでもありのステミングとチムニー登りでさっさと抜ける。

最終ピッチ、城塞ハングを通過中の山崎さん

12:20-12:30、dガリー奥壁終了点
抜けたところの、根元にたくさんスリングのかかったハイマツを支点に終了。

崩落後、ほとんどのルートの最終ピッチがここ城塞ハングに集中、名物の渋滞がおきるボトルネックになっている。もし、何かで誰かがつかえてしまうと、たちまち大渋滞になるだろう。先行の山崎船戸組にかなり遅れてではあるが無事に続いて、待つこともなく素早く抜けられてよかった。

13:00、登山道
終了点からの登り道で踏み跡を見失い、少々迷子になってのち先行の2人と合流。お待たせして、すみません。下山時間の広河原からの足が気になり、すぐに走っておりる覚悟でいたが、せっかくだから山頂踏んできたら?と言っていただき、最終手段のタクシー手配が確定した。その場で電話予約、帰りの足も確保できて、ひと安心したのち、お言葉に甘えて、山頂へ。

13:10-13:25、北岳(3193m)   ありがたく山頂を踏む。
15時 大樺沢二俣16時40分頃 広河原

広河原発17時30分で、と、予約していた車が既に到着していた。大きい荷物を積みたいとお願いしていたところ、乗合と同じバンタイプの車両にしていただき、おかげで大型荷物もトラブルなく積めました。さらに現地で相乗りを3名、申し込まれたこともあって、かなり安くすみました。乗合価格とあまりかわらなかった。船戸さん交渉ありがとうございます。

 

おもな確保系共同装備
・ダブルロープ50m×2本
・カム1式(キャメサイズ目安 0.3×10.5×20.75×21×22×23×2 うち紫と緑各1はリンクカム代用 黄色1はトーテムカムで代用)4番サイズも、手元にあれば核心で使えたと思うがかさばるので持って行かなかった (なくてもいけた)
・アルパインヌンチャク 8本位
・スリング 120cm、60cm適宜  捨て縄、ビナ各種 など
・ナッツ類は持っていったが使用せず

携帯電波状況
ドコモは広河原から大樺沢、山頂付近のほぼ全域で使えたがAU、ソフトバンクは 大樺沢周辺、テント場とも電波がはいらないらしい。

 

かかった時間
下部岸壁1時間強、下部フランケ2時間、トラバースに40分くらい、Dガリー奥壁3時間弱。
以前ソロで登ったとき、Dガリー奥壁2P目スラブ上でお茶にしたと浅野さん。風流です。セルフをとってゆっくり景色を楽しみながら、この岩盤の上で一服できたら、幸せだろう。時間に余裕があれば、いろいろ楽しみながら登りたかった。
行程的に下山時間が気になるので、もう1泊する余裕があるといいと思った。

念願のルート
前に4尾根から登ったとき、Dガリー奥壁を登るクライマーがよく見えた。いつか あそこにいきたいと、当時の仲間たちと目標にしたルートである。しかしどうにも縁に恵まれず計画すれば、そのたび魔法のように必ずなにかがおきて、中止や天気敗退を繰り返すうち何年もたってしまったのだ。今度こそ登りたかった。今シーズンもまた何回かいろいろあったのち、念願の快晴、絶景。下部フランケDガリー奥壁からの北岳登頂がようやくかなった。名前からしてカフカの「城」みたいであった「城塞」ハング。最終Pまでたどりつけるのだろうか、抜けられて終えてしまったら、さぞや感無量だろうと思いきや、時間が気になるあまり、これで夜道の林道歩きを免れた!という安心感と達成感のほうが大きかった。勿体ないことです。本来的な、登れたという喜びは、あとからジワジワと来ました。

しつこい台風や想定外のアクシデントに何度もめげそうになりましたが、諦めずに行ってみよう、と励まし続けてくれたメンバーみなさんに感謝しています。

南アルプス 荒川出合の氷爆

2019年2月2日~3日
玉置、小池、中和(記)

今シーズンは氷の状態が悪いようで、あれこれ候補地が上がるも、目的地が決まらない難民状態。マルチのアイスに行きたかったのと、北側斜面なので氷の状態も良いだろうと信じて、南アの荒川出合の氷爆に行くことにしました。
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概要:
南アルプス 荒川出合の氷爆
2019/02/02 3ルンゼ・右のナメ滝
2019/02/03 2ルンゼ・正面大滝

コースタイム:
02/02(土) 開運トンネル(05:20) – 荒川出合(08:00) – 3ルンゼ出合(09:30) – 登攀終了点(16:30) – テント(18:30)
02/03(日) テント(08:30) – 2ルンゼ出合(08:30) – 2ルンゼ大滝(10:30) – 登攀終了点(16:30) – テント(21:00) – 開運トンネル(23:40)

行動記録:

2/2(土) 晴れ
開運トンネルから荒川出合まで10kmの林道歩き。除雪バッチリなので非常に歩きやすい。
林道歩きが多い自分は感覚が麻痺しているが、他の2人にとっては苦行でしかないと思う。荒川でのアイスを推薦した手前、氷が無かったら2人から氷のような視線を浴びての林道下山になるけど、2ルンゼに氷爆の存在を確認して一安心。2ルンゼ付近の平地にテント設営して、身軽な装備で3ルンゼに移動。

出合から1時間程、軽いラッセルを交えて氷爆の基部に到着。3ルンゼの各ルート状況は以下のとおりで、右のナメ滝に取り付く。

アーリースプリング: 上部のみ氷結し下部は草付が露出。登れない
夢のブライダルベール:氷は繋がっているけど、中間は一部がツララの集合体のよう。
右のナメ滝:過去の記録より氷の幅は狭い。左ルートは草付が露出している。

右のナメ滝
ブライダルベールとアーリースプリング

1p(30m)  小池さん
結構立っている部分が数メートル程あり、このピッチが一番悪く感じた。左岸の赤い残置スリングがある木でピッチを切る。

2p(30m)  玉置さん
傾斜は緩いがトラバース気味に登るのが、何となく落ち着かない。ルートが左右に分かれる場所が吹き溜まりになっており、除雪してピッチを切る。

3p(50m)  中和
左ルートと右ルートに分かれるが、状態が良い右ルートを登る。序盤は立っているが、一段上がると後は何てこと無いナメ。左ルートと合流する辺りで、ロープ一杯になったので適当な灌木でピッチを切る。

この上にも、もう1段小さな滝があったけど、時間が押していたのでここで終了。左岸の尾根を懸垂3回連続で滝下に戻ったが、林道に復帰する頃には真っ暗になっていた。

2/3(日) 晴れのち雨

昨日のヘッデン下山の反省も踏まえ、13時をリミットに撤退することを申し合わせていた。が、大量に担ぎ上げた酒と食料のためか、体調不良のメンバーが出たり、寝坊したりと、いきなり暗雲が立ち込める。

2ルンゼ出合からすぐに10m以下のナメ滝が連続するので各自フリーで適当に登る。ナメ滝群の上は吹き溜まりになり、所々腰ラッセル。結構しんどく、10時過ぎになって大滝基部に到着する体たらく。3段で構成される大滝は、1段目だけ登って時間切れかもね、などと言いあう。

2ルンゼ正面大滝

1p(40m) 玉置さん
滝の左側を登るが、氷が固い上に、昨日の疲れもあるのか本調子ではないようだ。1段目の落口まで一気に抜ける予定だったが、弾切れを起こしそうになり、核心部を越えたところでピッチを切る。

2p(20m) 小池さん
1段目の上部。傾斜は70度位だけど、最初の数mだけは氷が脆いので、足が決まらず苦しそうな印象。それ以後は安定した登りで難なく越えていき、1段目の落口でピッチを切る。

3p(30m) 中和
1段目の落口から右岸尾根にトラバースして下山予定だったが、両岸立っており、やむを得ず2段目も登る。1段目に比べればユルユルだけど、落ちると大滝の基部まで大ジャンプになるので確保してもらう。この辺りから本格的に雨が振り始めてきた。

4p(30m) 小池さん
目論見が外れて、2段目の落口からも尾根に移れないので、結局3段目も登る。傾斜は50度位だが、落ちると1p目より下まで行ってしまうので確保する。この滝の上は雪に埋もれたナメ滝が続くのでロープは仕舞う。

3段目の上からはラッセルしながらの遡行になるが、雨で濡れた雪でアイゼン団子が酷い。数歩でドラえもんの足のようになりゲンナリ。
下降路である右岸の尾根は、トポだと簡単に下山できるような記述だが、想像より急峻で、日没+雨+ガスでルーファイが非常に難しい。装備も体も雨でビショビショで悲壮感が漂う。懸垂3回交えて大滝の下に戻り、テントに帰ったのは21時。テントを片付け、林道を各自下るが、所々スケートリンクになっており、全員が複数回コケた。結局、全員が開運トンネルに到着した頃には日付が変わっていた・・・。

出発時間遅れ、同ルート下降しなかった等、ミスが重なって下山が遅くなってしまいました。反省点や課題が盛り沢山ですが、スケールの大きい氷爆で2日間遊べて楽しかったです。小池さん、玉置さんありがとうございました。

南アルプス 甲斐駒ケ岳 赤石沢Aフランケ赤蜘蛛、奥壁左ルンゼ(途中敗退)

1999年7月24~26日
小谷、荒井(記)

7/24

駒ケ岳神社 – 5:40 黒戸尾根 – 13:00 8合目 – 15:30 Aフランケ基部

久しぶりの黒戸尾根で2人(少なくとも私(荒井))は、くたくたとなる。

8合目からAフランケ基部まで所々迷いながら下る。

残置ロープに助けられ右フェースの基部へたどり着く。

ツェルト1張り分のスペースを見つけビバークする。

水もとれ快適。

19:00消灯。

7/25

4:30発 – Aフランケ赤蜘蛛取付 – 5:10 赤蜘蛛の登攀 – 14:40 終了点 – 15:30 8合目

ビバーク地点から赤蜘蛛ルートへ向かう。

1箇所残置ロープの頼りになる。

じゃんけんで勝った小谷さんのリードで登攀開始。

奥壁まで登るつもりで荷物を持ってきたので登りに手間取る。

荷物の重ささえ気にしなければ岩は堅く、天気もよく快適。

途中フレンズが有効にきまる。

終了点に着いたのは14:40 9時間以上もかかってしまった。

予定していたBフランケ赤蜘蛛は諦め、明日は奥壁左ルンゼへ行くことにする。

8合目まで登り、ツェルトを張る。

(水は、八丈バンドをトラバースして右ルンゼの取付きでとれる。)

18:30消灯

7/26

4:30 発 – 奥壁左ルンゼ取付 5:30 – 左ルンゼの登攀 – 5P目F2へのトラバースで落石を発生させ負傷のため敗退(同ルート懸垂下降3P) – 左ルンゼ基部 – 8合目11:30 – 黒戸尾根 – 17:10駒ケ岳神社

3:00起床 必要以外のものは、岩小舎にデポ。

4:30発。

途中で水をくむ。

取付きで多少迷う。

今日は、私がリードで始める。

1P目以外と悪く手間取るがその後はペースが上がる。

5P目、私がリードでF2へトラバースしていたときに不覚にも落石を発生させ自ら手と足に負傷する。

パートナーには申し訳ないが、登攀を諦めることにする。

ここから懸垂下降3Pで左ルンゼの基部に着く。

8合目までもどり、荷物をまとめて黒戸尾根を下るが、負傷した足をかばいながらの下降なので時間がかかってしまった。

17:10 駒ケ岳神社到着。