奥穂高岳 南稜

2002年4月29日
櫻井、森広、池﨑(記)


今回はお盆休みの初心者3人シャモニ組のためのスキルアップも兼ねて岳沢でベースを張ることとなった。

昨日の明神岳は雪こそ無かったのものの天気も展望も良くとても楽しかった。

そんな明神岳南西尾根を登りながら櫻井さんに「南稜行きたいっす」なんて話をしていたら、早起きできて天気も良くて明神岳南西尾根が一日で片付いたので2日目にして南稜に行けることとなった。

6時過ぎにテントから出る。

昨日の明神岳は予定通りに起きられたが、今日は寝坊だ。

岳沢小屋のテラスで身支度をして登り始める。

滝沢大滝を目指してデブリを避けながら締まった雪の斜面を登っていき、滝沢大滝手前のブッシュ帯に取り付く。

櫻井さん、池崎、森広さんの順で取り付くが、途中池崎が体重をかけすぎてホールドがぐらぐらになり、ワンポイントだけ森広さんがロープをつけて登る。

ごめんなさい。

後で気付くが、実際の取り付きは大滝手前のルンゼで、今回取り付いたブッシュ帯は実際のルートよりちょっと手前のようであった。

それでも途中に残置シュリンゲが1本あった。

その後も交互に現れるブッシュと雪の斜面をひたすら登ると、トポ(※1)でいう「3Pの雪壁」に出る。

ここは手前を右から回り込んでリッジに這い上がるが、リッジに這い上がるほんの2~3mくらいの雪壁が体感では垂直に近いものがあり緊張する。

ピッケルとバイルを根元までしっかり雪面に刺して登る。

本ルート中では個人的にはここが一番集中した。

当初はこのリッジを乗り越したところの「3Pの雪壁」をトリコニーの取り付きと考え、ロープを出したが後から見ると違ったみたいだ。

天気は快晴。

雪は付いていないのでアイゼンは外す。

全ピッチ櫻井さんトップ。

1、2P:ホールドもスタンスも豊富。2ピッチ目辺りからアルパインちっくな雰囲気になってきてわくわくする。

3P:岩が敷き詰められ安定したテラスから始まる。ここがトリコニーの取り付き。3ピッチ目はこのテラスの左端から取り付く。

4P、5P:小ピナクル群をまいて雪がついていたならナイフリッジであろうはい松のリッジを通り、トリコニーの真中の岩峰の右横でピッチを切る。

6P:右から回り込むように岩峰を越えて尾根上に出て終了。

この後は正面に見える雪壁及びその手前のナイフリッジがちょっといやらしそうだったので、ロープをつけて進むが、ナイフリッジを越えて雪壁の下まで行くと実際はそれほどの斜度でもなかったため、ここでロープを外す。

あとはひたすら広い雪の斜面を登り南稜ノ頭に着く。

反対側の涸沢も見える。

涸沢には沢山のテントが張られている。

岳沢の十数張りのテントの倍以上はありそうだ。

天気はとても良く稜線上でもほとんど風はない。

のんびり休憩したのち前穂に向けて歩き出す。

稜線上は岩稜と雪のトラバースが7:3くらいの感じか。

前穂のピークは割愛して、マッチ棒が林立しているような岩のちょっと上から適当な所を前穂高沢へ向けてトラバースする。

雪は腐ってて歩きにくくもあるが、あの斜面でガチガチだとかえって気を使いそう。

トラバースの途中のガレで、体重をかけた石が浮いてて「ガラガラッ」と落石を起こすと同時に体がスコンと沈んだ。

すると丁度一抱えくらいの岩が自分の胸元で止まっている。

先を歩いていた櫻井さんが戻ってきて手を差し出してくれたが、動くと抱えている岩が崩れそうで急には動けない。だましだまし動いて櫻井さんに引っ張ってもらって抜け出す事が出来た。

あーびっくり。ちょっと注意散漫だったか。

やがて前穂からの下りのトレースと合流して前穂高沢を下降する。

昨日、明神から見えていた急な斜面も実際に立ってみると思ったほどではないが、雪は腐っているが部分的に固い事もあり始めのうちは真下に向かってズコズコとは降りられず、しばし横を向いて降りる。

それにしてもこの沢はスキー(スノボ?)の跡がついている。

幅が結構狭い所もあるので、こんなとこよくすべれるよなぁって感心。

奥明神沢と合流する手前からは高度感もなくなり勢いづいてズコズコと真下を向いて下降する。

昨日下降した奥明神沢と合流した頃には登りの疲れもあってか腿が張っている。

でもサブザックにはアイゼンを付けるところが無いので結局アイゼンを付けたまま下降を続ける。

途中で一息ついている間につぼ足スケーティングでビュンビュンの櫻井さんに抜かれ&引き離されつつ岳沢のテン場へ。

テン場に着くと管野さんと堀田さんが居た(当然か。)。

天気も良くてのどかな一日を過ごしたようだ。

おまけに発泡酒まで担ぎ上げてくれていた。んんん~たまらんっ、と喉に染み渡るのだった。

このご恩、いつかお返ししなければ。

ちなみに岳沢小屋の名物はラーメン(¥1000)らしい。ダシから小屋でとっているとのこと。

おかみさんが「わざわざラーメン目当てに来る人もいるんですよ~。」なんておっしゃっておりました。

要所で十分に休憩も取り、天気も良くて至極快適な春山的な山行を堪能できた。

桜井さん、森広さんありがとうございました。

※1:山と渓谷社 ROCK&SNOW BOOKS アルパインクライミング

<タイム>
6:30 岳沢-9:30 雪壁取り付き-10:30 トリコニー取付き-11:50 トリコニー終了点-13:25 南稜ノ頭 14:00-16:30 前穂高沢-17:30 岳沢