瑞牆山 十一面岩正面壁 アレアレア

瑞牆山 十一面岩正面壁 アレアレア
河合(記)

アレアレア。
名前を見るだけで特別な感情がこみ上げる。
初めて買ったマルチピッチトポ「日本マルチピッチ」でこの名前を知ったのは10年前。当時は遙か雲の上の存在で、自分がトライする日が来るとは思わなかった。5.12マルチ黎明期に菊地敏之氏により開拓された、憧れのルートだ。取りつく人が未だに少ない本ルート、せっかく登ったので少し詳し目に紹介してみる。

以下注意!
このルートを本気でトライ予定の方には、野暮な情報てんこ盛りなので、行き詰まるまで見ない方が良いと思います。また、ムーブやプロテクションを記載しているので、オンサイト(下から通しでは誰も成功していない?)を狙う人もこの下を読まないで下さい。

【ルート解説】
・アレアレア 5.12b 10ピッチ
(使用ギア)
ヌンチャク12
カム0.25、0.4×2、0.5、0.75、1、2、0.2/0.3、0.3/0.4、0.4/0.5、紫、赤リンクカム

(1ピッチ目:5.11d:30m)
・燕返しのハングの右端からスタート。最初はハーケンとリングボルト、すぐにハンガーボルトが出現し核心に入る。核心は直上してから右上するのがオリジナルラインとのことで、ボルダー2~3級程度のパワー全開のリーチが必要なボルダームーブ、小柄だと辛い。右に大きくトラバースしてから直上し核心を巻くこともできるらしいが、プロテクションのハンガーボルトから大分離れるし、岩も脆そう。
核心後は遠いホールドを処理しつつ右上し、ハングから抜け出す所が第2核心。ここは以前あったと思われるガバのもげた痕跡があり、脱落部分はブランクなので、初登時より難しくなっているだろう。
ハングを抜けると、コーナークラックに入る。ハーケンがあるけど、カムも必要。最後はフィンガークラック。同様にボルダリーな砂の塔5.12aより少し難しく感じ、11台とはとても思えず、体感5.12a。

1ピッチ目
(2ピッチ目:5.7:20m)
・ハーケン、リングボルト、RCCボルトラダーのスラブを直上気味に辿った。オリジナルラインにはほとんどプロテクションがないらしいので、私の登ったラインはオリジナルとは異なるようだ。ボルトラダー沿いに登ると5.7では済まず、ホールドも分かりづらくて、体感5.10aのスラブで油断できない。

2ピッチ目

(3ピッチ目:5.7:20m)

・ベルジュエール3ピッチ目と共通で、フェイスを登り、最後灌木帯に入る癒しのピッチ。体感5.8。2、3ピッチは容易にリンクでき、合わせて40m弱。

3ピッチ目

(4ピッチ目:5.12a:30m)
・フェイスのピッチだけど要所でカムが必要。出だしは3ボルト左カンテを登る。出だしのランナウトが激しく岩も風化気味、5.10ノーマル程度だけど慎重に。2ボルト目の位置に戦慄!その後、右に大きくトラバースして垂壁に入り、ボルトにクリップしてからボルダー2級程度のボルダリーな核心をこなす。ヌメっていると辛いところ。その後、穴やクラックにカムを決めつつ直上、右に微妙なトラバースをこなし、最後にランナウトで5.10d程度のカンテを登る。変化に富んでいて面白い。私が瑞牆で登った他のフェイス5.12aルート全て(太陽の登1、2、5ピッチ、ギャラクシアン、医者の娘、砂の塔等)より難しく感じ
、体感5.12b(易し目)。一緒にトライした川上さんも「人生最難の5.12a」とコメント。

4ピッチ目

(5ピッチ目:5.7:20m)
・一度ダウンクライムしてルンゼに入り、よく濡れている苔だらけのコーナークラックを登る。1つ目のプロテクションセットまでが怖い。これも5.7では厳しく、短いながら悪く感じ、体感5.9。ロープを余分に伸ばせば、白クマのコルから途中離脱可能。

5ピッチ目

(6ピッチ目:5.12b:20m)
・本ルートのハイライトとなるフィンガークラック。プロテクションには特に注意が必要。出だしは浅い溝やフレアードクラックのため、プロテクションセットが困難、初登時は残置ハーケン2つをフィックスドプロテクションとしたとのこと。しかし、現在は上側のハーケンが折れて消失(誰か落ちたらしい。無事だったのか?)、下側の1本のみ。そのため、ハーケンのみをプロテクションとして核心ムーブ後半で落ちると、確実にグラウンドフォールだ。
しかし、オフセットカムやリンクカムを使えばプロテクションは一応セットできる。私は残っている下ハーケンを0.2/0.3オフセットカムで補強(効きは良い)、その上に紫リンクカム、一度クライムダウンしてアグレッシブテスト後に突っ込んだ。鍵となる紫リンクカム(オフセットカム0.4/0.5も効く?)は、頑張ればまぁまぁの効きでセットできるけれど、固め取りできず、位置が少しでもずれるとアグレッシブテストで容易に吹っ飛び、大墜落に耐えられるかはわからない。核心ムーブを起こしながら追加でマスターカム青色や灰色もセットできるけど、とても力を使うので大変。このような状況のため、出だしは現在PD相当だろう。
ルートは、出だしの数手が核心でボルダー2級程度、その後小核心こなし大レスト、その後レイバック主体の5.11-程度のフィンガークラックを登る。レイバックが多いので疲れるし、プロテクションセットも結構シビア。残置ハーケンが4箇所位あるけど、使わないでも登れる。日当たりが良いのでヌメるとしんどい。春うらら2p目5.12aより核心ムーブとプロテクションは明らかに厳しいけど持久力的には易しく、体感5.12b(易し目) PD。
このピッチのみをトライする人も多いらしいけど、ショートピッチトライとマルチピッチの6ピッチ目としてのトライは全くの別物で、このピッチの真価は下から繋げてきた時にこそ体感できると個人的には思っている。

6ピッチ目

(7ピッチ目:5.11d:30m)
・全く油断ならないピッチ。オリジナルラインは、ピナクルに登ってボルダー1級程度の地ジャンから始まる極悪の2手をこなす。初登者の菊地氏にトライ中にお会いしたので伺ったところ「地ジャンはしていない」とのこと。しかし、私より遙かに強い再登者達も地ジャンしたそうで、初登時とホールド状況が変わっているかもしれない。
ところが、川上さんが、右から回り込む画期的なラインを発見した。リーチが必要だけど、5.11+で収まる強度だ。やはり現地で菊池氏に伺ったところ「その(川上さんの)ラインでは登っていない」とのこと。
ルート攻略は出だしが鍵。オリジナルラインはランジ一発、飛び先のホールドはいまいちで、微妙な体のコントロールが難しい。できる人は多分すぐできて、できない人にはずっとできない系のムーブ。川上ラインはホールドを見出すのが核心、一見不可能そうだけれど、絶妙に続いている。キーホールドが遠いので、身長165cm未満の人に川上ラインは不可能かもしれない。出だしの核心をこなすと、ホールドのわかり辛い5.10c程度の右上スラブ。プロテクションはほぼリングボルトで一部RCC、一部抜けかけていて怖い。最後は簡単な5.7程度のクラック。ベルジュエールの終了点の太い灌木でピッチを切った。トータ
ルで体感オリジナルライン5.12b(と言うより、1級のボルダーと言う方がしっくりくる)、川上ライン5.11d(易し目)。オリジナルラインを経由するなら、間違いなくダントツで人生最難のイレブンルート。

7ピッチ目

(8ピッチ目:5.10b:35m)
ここからはベルジュエールと共通。前半はチムニー登りからステミングを交え傾斜の緩いコーナークラックを登って5.8位。プロテクションはスリングで延長しておかないと後で地獄を見るらしい。後半は逆イの字に見えるT字クラックで快適なレイバックとハンドクラック。体感5.10b。

8ピッチ目

(9ピッチ目:3rd:30m)
・クライミング要素はほぼなく、走って登れる。

(10ピッチ目:5.8:20m)
・出だしの被ったクラックは少々トリッキー。後はクラックを少し登って最後は簡単なスラブ。体感5.9。

10ピッチ目

【体感グレード】
〇トポのグレード(トポによって微妙に異なる)
5.11d→5.7→5.7→5.12a→5.7→5.12b→5.11d→5.10b→3rd→5.8
〇体感グレード
5.12a→5.10a→5.8→5.12b→5.9→5.12bPD→5.11d→5.10b→3rd→5.9
私のグレード感は大分甘いようだ。「太陽の登」は3ピッチ目5.12c(5.12bに感じた)以外はトポ通りに感じたのだが…

【実際のトライ】
ほとんどのトライを秀峰の川上さん、1日ずつ秀峰の玉置さん、山崎さんに無理言って付き合ってもらった。深く感謝。
(1日目:2020年夏)
全体像把握のため7p目までトライ。難しいピッチは何れもRPできず、一部ムーブもこなせなかったけど、ある程度勝負になることを確認。ただ、この後が長かった…
1p目5.11d:河合×、川上フォロー×
2p目5.7:川上OS、河合フォロー〇
3p目5.7:河合〇、川上フォロー〇
4p目5.12a:川上×、河合フォロー×
5p目5.7:川上OS、河合フォロー〇
6p目5.12b:河合×、川上フォロー×
7p目5.11d:川上×フォロー×、河合×
(2日目:2020年夏)
4p目まで到達するも、ヌメりに負けて4p目はRPできなかった。翌日のトライ用に1~3p目をフィックス。
1p目5.11d:川上×RPフォロー×、河合×××RP
2p目5.7:河合RP、川上フォロー〇
3p目5.7:川上〇、河合フォロー〇
4p目5.12a:河合××、川上××
(3日目:2020年夏)
2日目の翌日、朝イチで3p目までユマールして、早めに4p目をトライし何とかRP。かんかん照りになったので午前中に白クマのコルから脱出。
4p目5.12a:河合×RP、川上×フォロー×
5p目5.7:河合RP、川上フォロー〇
(4日目:2020年秋)
秋遅くに白クマのコルからベルジュエールの大フレーク経由で、7p目と6p目をトライ。コンディションは割と良かったけど、7p目の地ジャンは止まらなかった。6p目はトップロープで探り、ムーブは全て解決するも、問題はプロテクション。
7p目5.11d:河合××、川上×フォロー×
6p目5.12b:河合××、川上××
(5日目:2021年春)
大フレーク経由。7p目で地ジャンしまくり、遂に止めるも、その後のムーブを詰めておらずRPできず。シャウトでお騒がせしました。川上さんは別ラインを探り、見事発見。これなら5.11dで登れる!ということで、ランジが止まらなくなった私も新ラインに参戦し、やっと7p目のRPに成功。6p目は残りの時間にトップロープで探るも、ランジの失敗で指がズタズタ血だらけ、まともにトライできなかった。
7p目5.11d:河合××××RP(川上ライン)、川上××××
6p目5.12b:河合×、川上×
(6日目:2021年春)
大フレーク経由。前回オリジナルラインでは7p目がRPできず悔しかったのでRPするも、地ジャンは何回か失敗で確率は低い。川上さんは自分のラインできっちりRP。その後、6p目に本腰入れて取り組む。トップロープ2便でムーブ、プロテクションを固め、残り2便はトップロープだけどプロテクションセットありでもノーテンションで繋がった。でも結構ギリギリだったので、いつリードするか悩む。
7p目5.11d:河合×RP(オリジナルライン)、川上RP(新ライン)、フォロー〇
6p目5.12b:河合××‐‐川上×××××
(7日目:2021年秋)
個別RPの完了が見えてきたところで梅雨入り、夏に新型コロナウイルスに感染し肺炎を発症して病院送り、後遺症で長きに渡る自宅療養、振り出しに戻ってしまった。2ヶ月半ぶりのクライミングで山灯花5.13aトライした翌日にアレアレア。無謀と言う他ない。当然、ズタボロにされた。1p目で指先の皮が破れて大流血、ホールドを血まみれにしながらヨレヨレトライ。2p目5.7のスラブのフォローすら落ち、最後は中指人指し指全面をテーピングぐるぐる巻きにして4p目の核心をトライ、引きつけられずムーブが起こせなかった。悔しい。川上さんは4p目をフォローながらノーテンで上がってきて、昨年からの成長を
感じられたようだ。
1p目5.11d 河合×、川上フォロー×
2p目5.7川上〇、河合フォロー×
3p目5.7川上〇、河合フォロー〇
4p目5.12a川上××フォロー〇、河合×
5p目5.7河合〇、川上フォロー〇
(8日目:2022年4月10日)
この日は甲府で27℃と初夏の陽気、しかしアプローチは所により膝下の雪で濡れた。前日の湯河原幕岩ボルダーの疲労を引きずりつつ、10ヶ月ぶりの6p目トライ。核心の青エイリアンをセットしていたスロットが何故か広がっていてスカスカ、仕方ないのでマスター青を入れたら見事スタック、ゴリゴリ引っ張ったら取れたけどクラックの幅が広がってしまった。ごめんなさい。ホールドとしては使わないはず。上部のハーケンも1本抜けていて、ホールドも壊れていてムーブとプロテクションの変更を余儀なくされた。岩の風化が進んでいて脆い部分があるので注意が必要だ。1便目は下部をエイドしてトップアウトし
2便目でムーブとプロテクションの確認と修正。出だしの紫リンクカムを上手く決める方法を見つけた。これは今日中に行けそうということで、3便目は出だしのみリハーサルし、トップロープを引き抜いた。そして夕方の4便目で意を決してRP。緊張した。川上さんも昨年できなかった核心を解決し、トップロープながらノーテンとなった。さぁ、次はワンプッシュだ。
6p目5.12b 河合×××RP、川上×××-×
(9日目:2022年6月18日)
仕事が忙しすぎたり、風邪引いたりで、2ヶ月ぶりの外岩復帰。リハビリ初戦にアレアレアという無茶。当然のごとく各駅停車だったけど、全てムーブはこなせた。今回は山崎さんに付き合ってもらい、難しいピッチは全てリードさせてもらった。7p目(ランジは3位飛んだけど止まる気がせず川上ライン経由)を終えたところで雨が降ってきて時間切れ。
山崎さんは手応えあった模様(?)。私はボロボロでめちゃくちゃ疲れた。
1p目5.11d 河合×、山崎フォロー×
2p目5.7山崎OS、河合フォロー〇
3p目5.7山崎OS、河合フォロー〇
4p目5.12a河合×、山崎フォロー×
5p目5.7山崎OS、河合フォロー〇
6p目5.12b河合×、山崎フォロー×
7p目5.11d河合×、山崎フォロー×
(10日目:2022年6月25日)
遂にトライ日数が二桁になってしまった。既に甲府は37℃、灼熱が予想されたけど、玉置さんに付きあってもらい下からリトライ。今回はオールリード。リード&フォローよりリード固定の方が休めるし荷物も軽いので楽なことがわかった。
1p目は出だしのボルダームーブは気合でこなすも、後半のハング抜け口で落ちてしまい、その後コーナークラックの抜け口でも落ち、2テンションで抜けた。やり直すには体力に不安があったのでそのまま継続。2、3p目を無難にこなし、4p目の極悪垂壁へ。しっかり左手で保持り倒して渾身のデッドを止めた。そのままノーテンで5p目までこなす。
6p目は、ワンプッシュ成功の可能性ある時以外は出だしの危険ゾーンをリードしないことに決めていた。紫リンクカムの渋いセットを練習してからハンドゾーンまでエイド、一度降りてからノーテンで上まで繋げた。7p目は川上ラインを経由して問題なく再登。時間に余裕があったので、4年ぶりにベルジュエールのT字クラック8p目5.10bを登った。実はこのピッチは初めてのリード。ロープの流れが悪くなりそうなのでT字クラックの下でピッチを切った。今までのピッチに比べれば大分楽だったけど、雨が降ってきた。9p目の3rdを駆け足でこなして撤収。十一面岩山頂は、ワンプッシュ成功時まで取っておこう。かな
り疲れたけど、体が動くようになってきた気がする。
1p目5.11d 河合×、玉置フォロー×
2p目5.7河合〇、玉置フォロー〇
3p目5.7河合〇、玉置フォロー〇
4p目5.12a河合〇、玉置フォロー×
5p目5.7河合〇、玉置フォロー〇
6p目5.12b河合△、玉置フォロー×
7p目5.11d河合〇、玉置フォロー×
8p目5.10b河合RP、玉置フォロー×
9p目3rd河合RP、玉置フォロー〇
(11日目:2022年7月2日)
3週連続アレアレアを下からトライ。そして3週連続で雨に降られた。今回は再び川上さんが、スピーディーフォローで、ワンプッシュを完全サポートしてくれるとのこと、ありがたい限り。
予報では午後早くから崩れる感じだったので夜行して、6:55に登攀を開始した。流石に3週連続なのでムーブは大体覚えていて、スムーズに1p目を突破。しかし前の週より湿度と気温(この日甲府は36.5℃)のせいか、日差しはないのにヌメっている。2、3p目も問題なくリンクし、途中でベルジュエールパーティを抜かせてもらった。4p目は、左手がヌメりでしっかり保持れず、何度もチョークアップして意を決してデッドしたら止まった。後半のカンテもヌメりで気持ち悪く、足が切れたりしたけど押し切った。5p目は出だしノープロで怖いけど、流石に慣れた。
そしてついに6p目に到達した。鍵となる紫リンクカムが一発でベストな位置に決まった。行くしかない。心を落ち着け、集中を限界まで高めて意を決して突っ込むも、出だしのレイバックホールドがヌメって発進できない。スタートの足位置を調整したらスリップ、あっけなくテンション。逸る心を落ち着けて、少し間隔を置いてからやり直す。今度は発進できた。出だしのレイバックがかなりギリギリですっぽ抜けそうだったけど歯を食いしばって耐えた。届いたフィンガージャムもヌメった!もう危険ゾーンに入っていてやり直しは利かない。スパークしそうになる頭を、もう1人の自分が「落ち着け」と宥める。冷静
にガストンし、フィンガージャムを改めて渾身の捻りでバチ効かせた。指よ、ねじ切れてしまえ。「大丈夫だ、行ける」。スタティックにハンドクラックへ。その後の小核心を越え渾身のデッドでガバを取ったところで一旦緊張の糸が切れ、気がついたら大絶叫してい
た。お騒がせしました。その後、もう一度ギアを入れ直し、パワフルレイバック音頭をこなして終了点へ。なんと表現してよいのか、とにかく凝縮された時間だった。しかし、こんなに頑張ったのに雨がぽつぽつ来てしまった。がっくし。
雨が辛うじて一旦落ち着いたので、急いで登ることにした。7p目は川上ライン経由、フルパワー気合一発でこなし、ベルジュエールのパーティを再び抜かせてもらった。8p目は時間がないので、ロープ流れが悪くなること覚悟で途中ピッチを切らずに繋げたら、途中のランナーは結構伸ばしたのに、最後は綱引きになった。8p目終了点では雷鳴が鳴り響き、再びぽつぽつ来始めた。走って9p目を1分でこなすも、10p目のスタート時点でザーザー降り始めた。これまたダッシュの2分クライムで十一面岩てっぺんに着いて、とりあえず叫んで2秒後にはロアーダウンで下降開始。川上さんを十一面岩頂上に上げる時間はなく
、すぐに横殴りの嵐。しかもロープがロープに乗ってスタック、大雨の中登り返すはめになり、すぐ処理して岩陰に逃げ込んだ。寒い。後1分遅れたら完登を逃した可能性が高く、ギリギリのタイミングで、12:25完登!全く余韻に浸る暇はなかった。途中から急いだ
せいか5時間半と、難易度の割にはスピーディーに登れたと思うけど、その分疲れた。大雨は30分程度で上がったので、冷えた体を日光浴で温めてから、ゆっくり下った。
1p目5.11d 河合〇、川上フォロー×
2p目5.7河合〇、川上フォロー〇
3p目5.7河合〇、川上フォロー〇
4p目5.12a河合〇、川上フォロー×
5p目5.7河合〇、川上フォロー〇
6p目5.12b河合×〇、川上フォロー×
7p目5.11d河合〇、川上フォロー×
8p目5.10b河合〇、川上フォロー〇
9p目3rd河合〇、川上フォロー〇
10p目5.8 河合〇

ワンプッシュ完登後

(全体を通じての印象)
・10ピッチに及ぶマルチなので相応の体力は前提として、本ルートに重要なのは悪いムーブをヨレた状態でもこなせるような、瞬間的な出力を維持する力だと思う。5.11+~5.12-の各ピッチでは個性的かつ強度のあるボルダームーブが次々と待ち受けている。内容は前傾壁からスラブ、クラックと変化に富んでおり花崗岩のオールラウンドな能力が必要だ。容赦のないランナウトや難しいプロテクションセットが要求され、残置プロテクションも良くないので、易しいピッチを含め全般にグレード以上の厳しさを感じる。疲労が蓄積した状態で、落ちられないフィンガークラックの最大核心が待ち受けており、フィジカルだけでなくメンタルの強靭さが求められる。内容は濃く、グレードよりは内容を求めるトラッドなクライマーにお勧め。マルチピッチ特有の全身疲労の中で、祈るように一手、また次の一手を出していく、そんな完全燃焼ができると思う。こんな厳しくも素晴らしいルートを開拓して下さった初登者に感謝。
開拓者は、ヨセミテのアストロマンのような経験を日本でもできる場を求め、本ルートを開拓したと言う。私は本家アストロマン未経験なので、アレアレアを登って、改めて開拓者にそこまで言わしめたアストロマンを是非トライしたいと思った。