2025冬 Joshua Tree記録

2025年12月24日〜2026年1月6日
河合(記)

「I’ll be back.」
夕暮れのJerry’s Quarryで一人呟いたあの日から1年、再び彼の地に戻ってきた。
奴は変わることなく静かに佇んでいた。
さぁ、1年ぶりの再会を楽しもうではないか。
今冬のJoshua Tree遠征が始まった。

1年前、一人でEquinoxだけ執拗にトライし続け、同行者には幼稚園児扱い、岩場で会った人からもクレイジー認定、いつしかHidden Valleyキャンプ場に巣食うイカれた日本人として微妙に有名になってしまった昨冬、結局Equinoxは登れる気配もなく敗退を喫した。
クラックを始めるきっかけとなった憧れのルート、このままでは終われない。
当初は一人でリトライするつもりで、改めて準備を行うことにした。

そんな折、救世主は職場に現れた。
噂に聞いていた職場最強クライマー、ボルダラーTさんが転勤で東京に姿を現したのだ。
何でも、四段を登ったことがあるとか。
早速ホームジムの秋パンで雑談していると、ボルダラーと聞いていたのに、「ロングナイト5.12bを登った」だの、香ばしいワードがポンポンと出てくる。
もしや、「こちら側」では?
ということで、Equinoxの話を切り出してみると、「いいね!」の反応。
よしっ、じゃあ年末行くか!
その場のノリで2年連続のジョシュア行きの同行者が決まったのであった。

その後は、神奈川県絶滅危惧種調査ボランティアの終わった8月から、本格的な準備を開始。
Tさん始め、皆さんに付き合ってもらいながら、小川山で指に悪そうなルートを登った。
天まで上がれ5.12bはフィンガージャム要素がほとんどないことを愚痴り、故吉田和正さん遺産の厩戸皇子5.12bの名ルートっぷりを堪能、甲府39℃の中ローリングストーン5.12dを蜘蛛の巣払って登り、ヌメる流れ星5.12dでぶっ飛んで流れ星になりかかったりしながら夏シーズンを過ごした。
フィンガージャムの練習にはあまりならなかった気がするけれど、(私にとっては)高難度トラッドをきっちり登り切るトレーニングにはなった気がした。
そんなこんなで8~9月に少し貯めたマイルも、10月の26連勤110時間残業海外出張付きという前時代的労働環境でクライミングしている場合ではなくなり、ほぼ無に帰してしまった。
11月に入って漸く仕事が落ち着いたのでクライミングを再開、スーパーイムジン5.12bでリハビリ、体が戻ってきたところで花崗岩シーズンは終了。
名張ツアーで1年ぶりのいかさま師5.12bをギリギリ仕留め損なう(無念!)位まで持久力を戻し、城ケ崎シーズンに入ってブリザード5.12dに少し遊んでもらったところで、準備期間が終わった。
いよいよ出国となったが、やはり10月のロスは大きく、不安が残った。

12月24日 雨
前日夜に、サンタクロースからの嫌がらせで地雷級の仕事が飛んできたが、爆発前に処理して、今年何回目か、もはやよくわからない出国。
米国を通るのは2回目か。
フライト10時間を「短いなぁ」と思う位には感覚が麻痺してきている。
あっという間にロサンゼルス空港に着くと、Hertzレンタカーの前は水浸しだ。
「雨降ってんじゃん…」
「西海岸って冬は雨少ないんじゃないの!?」
と思ったが、気を取り直して陽気なHertzのおねーさんとやりとり。
荷物を見て「中くらいのSUVにアップグレードしたら?」と営業をかけられた。
Equinoxまでのアプローチはダート道で、深い水たまりができそうだった記憶があり、不安に駆られて思わずアップグレードしてしまった。
結果的にはこれが大正解、アップグレードしなかったらボルダーマット2枚が載らなかった。
Equinoxまでの路面自体は雨にもかかわらず、2駆でも全く問題ないレベルだったが…
その後は、Tさんと眠気に耐えて運転を交代しながら4時間半位かけてJoshua Treeの街まで。
クリスマスの帰省ラッシュで鬼のように道が混んでいた。
途中Denny’sに入り夕食、日本との、あまりのメニューの違いに戸惑った。
到着したJoshua Treeの街は思ったより雨が降っていないようだった。
この日はHigh Desert Motel泊。
駐車場横ではサバクトビネズミ(多分)が爆走していた。

12月25日 晴れ 風少し強め
まずはキャンプサイトを押さえに行かないといけない。
朝早くHidden Valleyキャンプ場へ行き、既に現地入りしていた松本のTさんKさんOさんパーティからサイト情報はいただいていたが、他に首尾よく空いていた平らで広めなテントサイトを運よくゲットできた。

駐車場の広くて平らなサイト24

入口にテント代を支払いに行って、すぐにEquinoxに向かった。
路面は全く問題なかったが、アプローチ道が昨年より青々としている気がした。
これはどうやら気のせいではなく、今年は雨が多くて植物が元気なようだ。
花も昨年ほとんど見なかったが、今年は真冬にも関わらず結構咲いていた。
前日の雨にも関わらずEquinoxは当然のように乾いていた。

早速テンション爆上がりのTさんがトライ、指をぼっこぼこに痛めつけて下りてきた。
やはりムズいらしい。
河合は、まずはトップロープでトライ。
記憶を頼りにジャムとスメアを繰り出す。
1年のブランクを経て、ジャムの場所は結構忘れていたが、思いのほかすいすいと中間部核心を抜けたところで、手順がわからなくなりテンション。
想定より感触が良く、次の2便目で1テンとなった。
しかし、昨年の最高高度までは辿り着けず。
この日のEquinoxは貸し切りだった。
帰り道に、やたら耳のデカいウサギと遭遇。
昨年は1頭も見かけなかったぞ。
その後、買い出ししようと思ったらスーパーはクリスマスで全部休み、空いていたJack in the Box(ハンバーガーチェーン店)でジャンキーな食事。
この日から、屁とげっぷが止まらず、Tさんドン引き。
米国のジャンキーな食事は私のやつれた胃腸には合わないようだ。
我々のテントサイトは駐車し易い場所にあって、1台分丸々空いていたので、ほぼ毎日、車中泊クライマーの溜まり場となっていた。
Bishopのレンジャーや幼少時代を沖縄で過ごした人など、色々な人が声かけてくれて、入れ替わり泊まっていくので、中々楽しかった。

12月26日 晴れ 凪
Equinox2日目。
アプローチの入口がわかりにくくて荒れていたので、Tさんと小石を置いて整備を始めた。植生を踏圧から守るためにも、帰り道迷わないようにするためにも大事な作業だ。
この日は凪いでいて気温も11℃前後と非常に登りやすい。
湿度は60%位と昨日に続き少々高めだったが、乾き手の河合は気にならない。
この日はトップロープで3回トライし、中間部の核心に手こずるも、3回目で遂にノーテンとなった。
これは行けそうだ。
Tさんも、昨日よりは大分感触が良くなったようだ。
流石に強い。
「明日からリードだねー」と話す。
この日は漸く行きつけのスーパーStater Brosが開いていて念願の牛肉が買え、昨年に続きステーキ+パン+スープの日々が始まった。

12月27日 晴れ 爆風
さあ、今日からRPトライだ!
と気合入れつつ、爆風予報なのでまったりアプローチ整備しながら向かった。
小石しか目に入らなくなったら、うっかりサボテンの棘が指に刺さった、いてぇ。
何やってるんだ…
このルートに通っている人なら知っている。
「爆風の日はグレードが上がる」
それでも覚悟を決めて1便目からリード。
前半の核心を辛うじて超えたが、クラック左面のゴミスタンスに乗せた足が、風でバランス崩れると簡単に抜ける。
クラックに刺したカムも、カラビナが揺れてクリップできない。
「ヤバイ、ぶっ飛ぶ、クリップできた!」
という感じで中間部の核心は超えたが、後半の幅広フィンガーゾーンをこなすパワーは残っておらず、呆気なく落ちた。
あまりに怖かったので、次の便はトップロープに戻すも、普通にテンションが入った。
だめだこりゃ。
Tさんも強風の洗礼を受け、ロングフォールでぶっ飛んできた。
この日は地元の1パーティ、ブロンソン氏とご一緒した。
惜しいところまで行っていた。
インディアンクリークの0.4を8つ使う狂ったフィンガールートをお勧めされた。
5.13b/c位らしいのだが、ルート名を忘れてしまった。
ブロンソン氏は5.12・5.13クラックを登りこんでいるらしく、ヨセミテやインディアンクリークの色々なルートの情報を教えていただき、感謝。
なお、経験豊富なブロンソン氏曰く、「俺の指は結構太いけど、Equinoxは5.13aに感じるぜ」とのこと。
かなり惜しいところまで行っていたが、これからスペインにクライミングトリップとのことで、「Good luck!」との言葉を遺して去っていった。
なお、後日RPしたとMountain Projectを通じて連絡があった。
なお、多分この日から(もっと前からだったか?)、Equinoxをトライする面々の残飯を漁るサバクトビネズミが出現するようになったが、この日は顔見せのみ。
まだ警戒されているようだ。

夕方が近づくと影が伸びる
夕闇シルエットのJerry’s Quarry

この日はロス在住で、昨年もお世話になった日本人のTさんと、クライミングギアの充実っぷりに定評のあるNomad Venturesで待ち合わせ。
ボルダリングマットや電源等の支援物資を貸していただいた。
海より深く感謝だ。
時間も遅くなったので、この日はPanda Expressで夕食。
安い、量多い、味濃い。

12月28日 晴れ 爆風
この日も爆風予報だったのと、3日間のEquinoxトライで指がいい感じに腫れてきていたのでレスト日とし、スティングレイ5.13d見学ツアーへ。

逆Slashfaceを見つけた

1本手前の谷に入って迷うも、無事辿り着いた。
あまりの傾斜に、登っていないのに指が疼いた。
Fixが張ってあり、誰かトライしているようだ。

圧倒的な傾斜が中々伝わらないStingray 5.13d
アプローチに咲いていた小さなデイジーEriophyllum wallecei

デイジーの花畑もあり、マクロレンズを持ってきて良かった!
その後、More Monkey than Funkey5.11cを見に行くも、トポの誤った矢印に惑わされ、また迷った。
Tさん曰く「瑞牆のアルカイックスマイル5.12a位」のルーフで、Separate Realityを知っている身としては、あまり食指が湧かなかった。

かわいいウチワサボテンを撮っていたら背景に不審者が混じった
トライ中の人がいたMore Monkey than Funky 5.11c

そもそもエンクラ(米国ではfun climbと言うらしい)する余裕が今後あるのか。
この日は29 Fitnessでシャワーを浴びた(5ドル)。
クライマーが来ることをよくわかっていて、スムーズに使わせてもらえた。

お世話になった29 Fitness

この日も牛肉ステーキで、Stater Brosで買った肉が、かつてない大当たりだったが、どの部位の名前だったか忘れた。
Eye何とか、だったような。

当たりの肉の写真はこれだったか?

12月29日 晴れ 爆風
この日も爆風予報だったが、めげずにEquinoxへ。
気温6.5度、爆風、めげた。
めげないTさんは1本トライするも、出落ちして、めげてエイドダウンしてきた。
だよねぇ。
河合は結局トライせず。
Tさんがパーフェクトな無風レストポイントを発見して、そそくさと避難。
この日はクリスチャン氏パーティとご一緒した。
このクリスチャン氏、名に偽りあり。
爆風の中トライして落ちて「〇uck’in 〇uck!」と叫んでいた。
おいおい、その名前でそれ言うか?
Tさんはツボにはまったようで、その後、もはや間投詞のように「〇uck’in 〇uck!」と口ずさんでいた。
この頃からTさん(英語話せない、本人談)の英語かぶれ率が上昇。
日本語で話しかけると謎のアヤしい英語が返ってくるようになってきた。
頻出ワードは「You can do it!」「Come on!」と、やたら前向き。

クリスチャンらしくないクリスチャン

その後はJerry’s Quarry周辺のボルダーエリアを見学して遊んだ。
気持ちの良さそうなランジルートV6があってそそられたが、ぐっと我慢。
Equinox登るまでは他は触らないぞ。
と思ったら、アプローチシューズで簡単なV0位の岩を登ってしまった。
クライミングシューズを履いていないのでノーカウントだ。

ランジのV6課題

「頼む、登らせてくれ……」の図
チムニー遊び
葉緑体を持たない寄生植物のPholisma arenarium

この日は、East Gateのビジターセンターを見学してから、肉を焼いた。

12月30日 晴れ 微風
この日は待ちに待った微風の日だ。
落とす気満々でEquinoxへ。
1便目で後半核心を超え、最後のレストポイントへ入れるも、途中足が切れてキャンパになって大幅に力をロス、最後の核心で落とされた。
でも、ノーミスなら行ける確信を得た。
2便目は、同じくキャンパになってしまったが、最後の核心を超えて、「行った!」と思った。
しかし、最後の最後で完全に余力がなくなり、後3手のところでぶっ飛んだ。
ロープに足が入らざるを得ないので逆さま落ち…
Tさんは、この日2便目で修正してきて、きっちりと完登!
が、しかし、小指の感覚が戻らないらしい。
大丈夫か?
この日はこの後が受難だった。
地元の3人パーティが来て、おねーさんがトップロープを懸垂下降しながら張っていた。
その後3人でトライしていたので3便目を出すタイミングを待ったが、なんか皆ずっとコンコンやっている。
聞いてみると、紫トーテムをスタックさせたとのこと。
「まじかっ!」
なんで0.4サイズのクラックに0.5なんて入れてるんだ、というか入ったんだ…
曰く、「テンパって入れちゃったわ」とのこと。
緩やかに屈曲しているルートなので、普通に下からビレイしてもらってロアーダウンでセットすれば、テンパることもあるまいに…
別のお兄さんにチェンジするも、あまりにずっとコンコンやっているので痺れを切らせ、
「回収得意なんで、代わりにやってあげるから1便出させてくれ」と頼んで、日没直前に泣きの1便。
しかし、残置カムが気になって集中できず、落ちなくなっていた中間部の核心で、残置カムが視界に入ったら普通に落ちた。
しかも、落ちた際にチョークバックに手が当たって、ブラシが岩の間に消えていって回収不能に…
なお、この岩の割れ目は靴を落とした人もいるらしく、昨年もブラシ1本飲み込まれたので、物を落とさないよう、要注意。
運よく残置カムは手では使わないところだったが、足置きには邪魔だった。
その後ヘッドライトを上げてもらい、意地になって1時間位格闘したが、結局残置カムは回収できず。
寒さと苛立ちで、思わず「くそっ!」と夜空に吠えて、下で待っている面々の空気を凍らせてしまった。
すんません…

寒空の下、意地になって回収作業

やらかしたパーティも、真っ暗な寒空の下、ハンマーとナッツキーを振り回す姿にいたたまれなくなったらしく、「俺たちのテントサイトに来てくれたら暖かいもの出すよ~」と言って去っていった。
スタックパーティが先に帰ったので、その後ダラダラ片付けしていると、奴が出た。サバクトビネズミだ。
日が落ちたら極めて図々しくなり、サーマレストの上に落ちたパンくずを、目の前で漁り始めた。
ついにTさんのギア袋の中にまで勝手に侵入し、勝手に出られなった。
「オラオラオラー、どうしたー」
「〇uck’in Stupid Mouse!」
「〇uck’in 〇uck!」
「お前はバカだー」
「袋のネズミとはまさにこのことだなー」
「とらわれすぎぃー」
「う〇こするなよ、絶対う〇こするなよ」
「やべぇ、かわいい…」
「う〇こしそう、こいつ…大丈夫か?」
「完全に今こいつ途方に暮れてるよ」
「動きはぇぇ」
「人間のエサに頼り切った結果がこの有様だぞ、君たちっ!」
「簡単に袋に入ってきましたもん、なんにも考えずに袋にはいってきましたよ、こいつ」
「あぁ、出たっ」(う〇こではない)
「(すぐにサーマレストにこぼれたパンくずを漁り始め)お前ちょっとは逃げろよ…」
という謎会話がネズミ動画に録音されていた(どれが誰の発言かは黙秘)。
私は認識できなかったが、Tさんの話ではもう1匹いるらしく、どうやら、つがいでEquinoxをトライする面々の残飯を漁る特等席を縄張りとしているらしい。
岩の下に結構新鮮なう〇こが散見されたわけだ。
丸くて恰幅の良いネズミだったが、岩の上での動きはとんでもなく俊敏だった。
沈んだ心が癒された。

夕方に撮ったサバクトビネズミの一種(Grasshopper Mouse)。足は長くない

この日は回収で遅くなったので2回目のPanda Express。
せっかくのTさんのRP祝いなのに、河合は珍しく凹み切っていて申し訳なかった。
なお、Tさんは河合がカムを叩き続けている間に、地元パーティとの英会話を楽しんだらしく、次にトライするルートとして、Leave it to Beaver5.12aをお勧めされたとのこと。
おっ、Tさんの英語力が進化しているぞ!

12月31日 曇りのち雨 無風
一晩寝たら、どん底に沈んだメンタルは不思議と戻っていた。
最近、歳のせいで物忘れが激しく、Tさんも呆れる程なのだが、今回は幸いしたようだ。
「せっかくの美しいルートを残置無しで登れないのは悲しいけど、The Noseも残置だらけだった。細かいことは気にせず登ろう。残置トーテムは足置きに邪魔で難しくなったので、よりChallengingだ!」と前向きに捉えることにした。
アプローチのJoshua treeの花房が膨らんできているのを発見、癒された。

花は2月に咲くらしいJoshua Tree。ポリネーターは1種類の蛾だけとか

この日は雨予報だったが、午前中は持ちそうな気配だった。
チャンスは1便のみと読み、入念にアップして準備し、離陸した。
11℃、湿度30%、無風、最高のコンディションだ。
やはりそこには憎き残置カムがあったが、もはや何も感じず、踏みかけたが淡々と避けて足置きをこなした。
指が腫れていて思ったより指が入らなかったり、逆にスタックして抜かなくなったりもしたけど、やはり何も感じない。
淡々と、「指抜けねーなー」「腕戻ってこねーなー」「足切れないようしっかりゴミ踏むぞー」「ここで落ちたくねーなー」など、緊張半分であれこれ考えながら登っていたら、ほぼノーミスで最後のレストポイントまで辿り着いていた。
前日の2便よりは明らかに余裕がある。
「これは、ミスらなければ行ける。」
最後の核心は力が入ったが、慎重にこなしてビクトリーガバスタンスへ。
「あー、しんどっ。」
思わず、ぽつっと一言呟いていた。
念入りに休んでから、全力で保持り倒して超慎重にマントルを返し、てっぺんに到達、終了点を手繰り寄せてクリップ。
「終わった。」
呟いてから、叫んだ。
終わってしまった。
このルートを登りたくてクラックを始めた。
10年位は経ったかもしれない。
登れてしまった。
最初にこみ上げてきたのは、いつものように芯から湧き上がる完登の喜びというよりは、一抹の寂しさだった。
「終わった。」
これ以外言葉にならなかった。
気が付いたら、涙が流れていた。
とっても嬉しいはずなのだけど、何か一つの長い旅路が終わったような気がした。
暫くしゃがみこんで、動けなかった。

終わった…

ふと、遠くから声が聞こえると思ったら、今日から合流のロスのTさんMちゃん夫妻だ。
めそめそしている姿をしっかり激写されてしまった、恥ずかしい。
その後記念撮影もしてもらえて、感謝。

記念撮影

足掛け2年、12日30便をかけてEquinox5.12cが登れた。
ローリングストーン5.12dや流れ星5.12dは、決して良い時期とは言えない夏にトライしたが、Equinoxよりずっと易しかった。
今まで登った他の5.12d以上はあるであろう城ケ崎トラッド(タランピオン、タランチュラ、スカラップ、ブリザード)と比べても日数、便数ともほぼ倍以上の労力がかかっていて、瑞牆か小川山にあったら5.13aはついていると思う。
Tさんも同じ感想で、少なくとも小川山の2本とブリザードよりは難しいとのこと。
だがしかし、ここは激辛サンドバッグの地、Joshua Tree。
昨日カムをスタックさせたパーティの青年は、「他にこれより難しい5.13をいくつも登っているけど、5.12台だと思う」と話していた。
また、Tさん曰く、河合はどうやら昨年作った難しいムーブに固執していたようで、もっと易しい登り方もあるらしい。
極端に難しいムーブはないので、持久力があって、この手のフィンガーに慣れている人はあまり難しく感じないのかもしれない。
それでも上部のガバ(だったらしい)フレークがぶっ壊れて綺麗さっぱりなくなっている現在、5.12cということはないだろうと思う。
圧倒的な存在感とかっこよさ、最初から最後までフィンガークラックという素晴らしくも恐ろしい内容がこのルートの全て。
グレードはあくまでも、人により付け足された特性の1つに過ぎない。
「目いっぱいのフィンガークラック」
これを体験したい人に、このルートは良いターゲットとなるだろう。

さて、無事終わったので次は残置トーテム破壊ミッションだ。
「ぶっ壊して回収するぞー」と意気込んでいたら別のパーティがやってきて、「えっ、カムスタック?紫トーテム?何それ、俺、丁ちょうど欲しいサイズなんだよね。俺が頑張るからいいよ!あ、ティックは参考にしたいから残しておいてねー」と陽気な兄ちゃんが言うので、回収とティック消しは任せることにしたが、残置カムの回収に成功したか、ティックをちゃんと消してくれたかはわからない。
ロスのTさんがフォローでEquinoxを初トライ、静かに闘志に火が付いた模様。
これでJerry’s Quarryとはお別れだ。
名残惜しく、何度か振り返った。
なお、ロスのTさんが1週間後に再訪したところ、カムは無事回収されていたとのこと、よかった。

さて、残った時間で何をやろうか。
残りの日程は、散々付き合ってくれたTさんの専属ビレイヤーだ。
まずはTさんがSlashface V3がやりたいとのことなので、マットを取りに戻ったが、雨が降ってきてしまった。
それでもTさんは華麗にオンサイト。
曰く、「Equinoxの方が、よっぽど怖い」

Slashface V3をオンサイトするTさん
別角度から。高い!

続いてロスのTさん、Mちゃんととともに河合もトライしたけど既に普通に雨、核心で2回右足がスリップしたところで敗退。
さすがに靴が濡れてると無理か。
マントルもあまり良くないらしく、リップがびしょ濡れの状態だったので、核心を抜けられなくて良かったのかもしれない。

雨が本降りになってきたのでキャンプ場に戻ってくると、朝、Spider Line5.11dを登るかもと話していた松本からの3人パーティが、まだ取りついているではないか。

Spider Line 5.11dを登る松本のTさん

「これは雨でも登れる!」ということで、いそいそと雨の中Spider Line5.11dに向かう。
オンサイトトライをTさんに譲ってもらうも、普通に出だしでテンション。
カムを入れたいスロットを指でも使うパターンで、突っ込めなかった。
その後各駅停車で上に抜けたが、コーナーのステミングが中々日本にない感じで面白かった。
しかし、Tさん曰く「瑞牆のアルカイックスマイルっすよ、これ。」とのこと。
このコメント、遠征中、別の場所でも聞いた気がする。
Tさんも河合と同じところでテンション、びしゃびしゃの上部をこなしたところで、日が暮れたので撤収。
この日はロスTさん夫妻のテントで、松本の3人組を交えて大宴会。
Tさん夫妻プレゼンツのおでんやチャーシュー、松本組プレゼンツの白米に酒で幸せな大晦日を過ごせた。
ありがとうございました。
RP後の飯や酒は、やはり格別に旨い。

1月1日 雨のち曇り
新年明けましてびしょ濡れ。
朝は一時的に雨が止んでいたが、すぐにまた降りだした。
松本組がBig Bob’s Big Wedge V5はルーフクラックだから登れると話していたのを思い出したので、ゆっくり支度して行ってみることにした。
場所は例によって最初迷いかけたが、岩の間からうなり声がしたのですぐ見つけられた。
松本組のTさんが渾身のトライで吠えていた。

Big Bob’s Big WedgeをトライするKさん

抜け口から手前に向けて結構濡れていて滴ってきたり、下地に小川が突然鉄砲水のように爆誕したりしていたが、とりあえず1便出させてもらう。
サイズは外人には多分快適であろうが、手が薄い私にはフィスト気味。狭まっているところを丁寧に選んでワイドハンドを決めていく。
Separate Realityのルーフ出だしを思い出すサイズ感だ。
後半はさらに拡がってきて、手をクラック奥に突っ込んで、びっちょりであまり感じることのできないフリクションに頼ることに。
ジャムが抜けそうで怖い。
袖に容赦なく水が入ってきたところでギブアップしたが、濡れていても大体こなせたので、ルーフ部分は問題なさそうだった。
しかし、抜け口のびちゃびちゃフィスト部分を少しだけ練習したところで、あまりの濡れっぷりに心が折れた。
アラスカのアンカレッジから来たパーティも、頑張っていた。
雨の日に考えることは、皆同じだな。
「やっぱこの時期、アラスカじゃ登れないの?」
「うん、無理。」
そりゃそうか。
その後は、クライミングしていたらまず行かないであろうCotton Wood方面へドライブ。
最初はガスに覆われてどうしようもない感じだったが、Cotton Wood Springに辿り着いた頃には雨が止んだので、軽くハイキング。

これが砂漠のオアシスか。水は湧いてなかったけど

その後はCotton Woodのビジターセンターへ。
自然史の展示が充実していて、とても興味深く、また面白かった。
欲しかった花の図鑑も手に入った。
文化的な側面に重点を置いているEast Gateのビジターセンターよりは、こちらのビジターセンターの方が私にはずっと楽しく、思わず長居。
その後は、天気が回復してきたので、路端にあるガイド説明板に片っ端から止まって、記念撮影を繰り返した。
説明板の内容も結構面白くて、飽きない。

謎のサボテン群落

大平原の景色は壮観で、日本ではまず見られない素晴らしい景色だった。
この辺りはMojave Desert(Joshua Tree側)とColorado Desertの境界線になっていて、山を境に大きく景観が異なる。
多分クライマーはMojave Desert側にしか用がないと思うけど、Colorado Desertの大平原は一見の価値があるので、是非レスト日に見に行ってみることをお勧めしたい。

Colorado Desertの大平原

その後シャワーを浴びに29 Fitnessに向かったら、駐車場にどっかで見たことのあるような、ないような兄ちゃんが、しきりにこちらを見てくる。
「Are you trying Equinox last year?」
「Yes! Exactly!!」
思わぬところでの再会、無事完登したことを報告できたが、名前を聞くのを忘れた。
後日聞いたところでは、この日、松本組は雨上がりにHot Rock5.11cを登ったとのこと。
腑抜けた我々とは違うなぁ。
モチベーションの高さに頭が下がった。
この日は、Black Bear Dinerで豪華なハンバーガー。
夜は歯磨きしながら岩を下見するというTさんのルーティーンに同行、月明かりに浮き上がる名ルートの数々は、幻想的だった。
コヨーテにも出会った。

1月2日 晴れのち霧
ようやく晴れた。
ここは本当に砂漠なのか、小一時間問い詰めたくなる(多分Tさんが河合に)。
この日はTさんセレクトのWangerbanger 5.11cだ。
にもかかわらずオンサイトトライをもらってしまった、ありがとう。
駐車場に着いたら、ちょっと遠くにはっきりと見えて、とてもかっこいい。
近くで見ると、どう見てもシンハンド-オフフィンガー核心のスプリッターだ。

左がWangerbanger 5.11c、右がO’Kellkey’s Crack 5.11a

これは、いかさま師に鍛えてもらった、にわかなばらーもどきとしては、落ちられない。
車に鍵閉じ込めをやりかけたことが気がかりなTさんの駐車場全力疾走往復というハプニングがあったものの、無事離陸。
何事もなく核心を通過するも、足が滑って片手キャンパとなってしまった。
気合で耐えてワイドに入り込むも、奥がしっとり濡れている。
これまた気合で終わりかけた腕を回復させ、危なげありながらオンサイト。
やらかしかけてしまったので5.11b易し目位に感じたが、乾いていたら5.11a位なのかもしれない。
Joshua Treeのグレードにしてマイルドだなと思ったが、Japanese Thin-hand Magicだろう。
その後、終了点をリップから続いているクラックに作ってしまい、ロープがスタックしかけて、泣きを見た。
何とか可能な範囲でクリーニングし、ロープを解いて、隣の易しいパーティの道案内で壁に向かって左側から下降(実は右側下降の方が楽との噂が…)、残りはもう1回途中まで登ってエイドダウンで回収した。
Tさんは危なげなくフラッシュ、隣のO’Kellkey’s Crack のパーティから終了点を借りて下降してきた。
O’Kellkey’s Crack 5.11aの出だしは非常に高くて悪く、プロテクションも決められず、私のリーチでは、できる気がしなかった。
トライしていたおねーさんは、パートナーのショルダーを踏んで出だしを突破していたらしい。

Wangerbangerの取り付きは絶景

スプリッターハンターのTさん河合は、すぐに次なるターゲット、Heart of Darkness 5.11aに移動。

王蟲が見える…

駐車場のOyster Barは満杯で停められず、隣の駐車場から歩いた。
そして、また迷った。
空身で捜索して何とか発見、中々凄いところにあった。
これを見つけた人は、きっと心に闇があったに違いない。

岩の間にあるHeart of Darkness 5.11a

Tさんが何事もなくオンサイト。
河合も下部でカムの選択ミスって外すのが核心で、後はどこが核心かわからないうちに終了点に着いていてフラッシュ。
日本にあったら5.10cの易し目か5.10b位だろう。タイトハンドからシンハンドの短い綺麗なルートだった。

さて、時間が余ったので次なる課題をTさんに「どうする?Big Bob?、Spider Line?、他行く?」聞くと、Big Bob’s Big Wedge を終わらしたいとのことで、さらに移動。
途中から猛烈な霧の中に入った。
Big Bob’s Big Wedge V5は、前回雨でトライできなかった抜け口からトライ。
4番タイトサイズのスカスカフィストで、極めて悪い。
湿度もついに95%から100%に進化してしまった。

繋げに備えてルーフ部分をワークするTさん。しかし抜けが…

途中、Equinoxでカムをスタックさせた地元クライマー一行が来た。
スタックしたカムと闘っていた兄ちゃんは、めちゃくちゃルーフクラックが上手い。
抜けのムーブを教えてもらうも、フィストのサイズが違い過ぎて再現しない。
結局、最後、「これならいけそう」というムーブを見つけるも、湿度100%とランディングの悪さに日和って突っ込めず。
1時間半位頑張ったが、Tさんとともにトップアウトできないまま終わった。
悔しい。
JoshuaのV5、恐るべし。
瑞牆か小川山にあったら、間違いなく初段以上はついているであろう。
なお、最後はがっつりハイボルダーのため、ロープ付けてカム刺してインバージョンするのが正解かもしれない。

極悪の抜け。フィストの厚みが欲しい。フェイスムーブもだめだった

締めは我々のキャンプサイトにあるStem Gem V4でナイターだ。
このルート、マットなしでスタートするのはどうやっても不可能。
私もTさんも、マット3枚積んで、ようやく離陸できた。
途中で別のナイターパーティが合流してマットが増加。
父親が海兵で子供時代は沖縄にいたらしく、日本を懐かしんでいた。
女性の方は非常に上手く、ささっとRPしていた。
Tさんは粘りのトライでRP、河合は離陸が精一杯、右膝がぶっ壊れそうになったのでトライを中止したが、右膝の芯が暫く痛かった。
特に遠征では、体に悪いルートにムキになってはいけない。
なお、このルート、下降も結構怖い模様。

Stem Gemでナイターに勤しむTさん

この日も遅くなったので夕食はPanda Express。
今回はよくPandaのお世話になっている。

1月3日 曇り
朝起きたら、サイトの端を靴だけ持った人が通り過ぎて行ったと思ったら、やにわにクラックをフリーソロし始めた。

フリーソロしている…

朝っぱら、岩峰に大体人がいるのだけど、どうやらフリーソロ朝活している人が結構いるようだ。
この日は再びロスのTさんMちゃん夫妻と、さらにロス在住Kさんが合流。
Tさんが自らのプロジェクトになっているLeave it to Beaver 5.12aをやるとのことなので、合流させてもらうことにした。
Mちゃんは隣のClean and Jerk 5.10cがプロジェクトとのこと。
Leave it to Beaver 5.12aは見た目、出だしと中間部のプロテクションが悪そうだった。
松本組がロングフォールで怪我してしまったと聞いていたのもあり、後半戦でヨレているのも言い訳に、下から攻める気力が湧かず、最初からトップロープで遊ばせてもらうことにした。
2便目で、テラスから上は左回りでノーテンとなったが、プロテクションがヤバそうだったので右回りに変更。
この日、ロスのTさんはRPしてプロジェクトに終止符を打った。
気持ちの入った素晴らしいトライだった。

BeaverをRPするロスのTさん

感化されたTさんは4便目で気合のRPをしていた。
直前にはBeaver取り付きのV6もオンサイトしていたし、流石だ。
瑞牆Tシャツが光るぜ!

BeaverをRPするTさん

私は、一瞬RPトライが頭をかすめるも、ムーブとカムを丁寧に決めつつ結局、4便まったりトップロープで登った。
トップロープは好きではないけど、こういう時に頭空っぽにして楽しめるのはありがたい。
夕食は皆で鍋と、Walmartで仕入れたサーロインステーキで大宴会。
肉が旨い、鍋が旨い、幸せだ。

1月4日 曇り
クライミング最終日だ。
日程後半の日々の過ぎ去るスピードは、とても早く感じた。
Tさんにお願いして、朝イチでLeave it to Beaver 5.12aに1便付き合ってもらった。
今回必須品だったマグマカイロを忘れて車に取りに戻ったら、ハヤブサが岩峰に止まっていた。
今回も上空を舞っているのを数回見ている。
Beaverは最後うっかり足が切れたりしたけど、余力を持って登れた。

BeaverをRPする河合

日和らずに、1日で詰め切るべきだったかもしれない。
でも、ロスTさんのベータもあったし、5.12aにしては少々悪いように感じ、体感5.12b易し目といったところ。
TさんはBeaver取り付きのV5のトラバース課題を完登した後、Beaver左横のClean and Jerk 5.10cを華麗にオンサイト。
下部の岩が冷たいらしい。
Mちゃんも冷たいと言っていて、嫌な予感…
出だしがどう見ても悪そう…

Clean and JerkをトライするMちゃん。5.10cとは思えない迫力!

結局河合も出だしの冷たさと悪さに苦しめられ、思わず悪態ついたけど、後半は口笛吹きつつフラッシュ。
体感5.10d.
Joshuaのグレードは出だしを考慮していないのか。
次にトライを開始したおねーさんは出だしをこなせず何度も飛び降り、辛うじてセットしたカムは見事に花が咲いていた。
「まずくね?」と思っていたら、敗退していた。

壁に咲いた一輪のカムの花

最後はTさんとイリュージョンの世界に旅立つため、Illusion Dweller 5.10bへ移動。
Tさんオンサイト、河合フラッシュ。
まさにイリュージョンの住人になるかのような、今回登った中で一番楽しい、素晴らしいルートだった。
70mロープ必携!
体感5.10c。

Illusionへの旅を約束するIllusion Dweller

その後は、日本では非合法の葉っぱをキメているおじーさんのアツいBeaverトライを見たりしながら最後の夕方をまったりと過ごした。
Tさんは、「Equinox? ITAI-ITAI!!」などという謎の会話をおじーさんとしていたそうで、ちゃんと伝わったそうな。
締めは昨年同様、Joshua Tree Saloonで宴会!
相変わらず旨い。
実は今回、夕食で何度もトライしていたがいつも混んでいて5連敗、6度目の正直で入れた。
Equinoxより難しいんでは?
昨年と同じウェイトレスさんが担当で驚いた。
この日はHigh Desert Motel泊。
「荷物が入らない!」と、何度も首をかしげるTさんが印象的だった。

荷物入らん…

1月5日 晴れ
名残惜しくも、ロスまで運転、今度は3時間位で到着。
入国審査は空いていて一瞬だった。
あぁ、帰りたくない。

1月6日 曇り
夕方帰国。
うっかり、今回使ってない方のパスポート番号(仕事上、パスポート2枚持ち…)でVisit Japan Webに登録してしまい、「パスポートと番号が合いません」表示が…
最後に、またやっちまった(初めてではない)。

そんなこんなで、2回目のジョシュア遠征が終わった。
地獄の26連勤を耐え抜いた甲斐があって、働き始めて初めて14連休が取れ、中11日をJoshua Treeで過ごすという贅沢な日々を過ごすことができた。
何より、Equinoxを完登できたことが嬉しい。
Equinoxはオンサイトもたくさんされているようで、高レベルの人々には特に難しくないルートだと思うけれど、私のような、働き始めてから(実質的に)クライミングを始め、際立つ才能もなく、仕事に多大な悪影響を受けながらも辛うじて細々と続けているような凡人クライマーにとっては、特別かつチャレンジングな1本だった。
再び魂を注ぎ込めるような1本に出会える日を楽しみに、まだまだ登り続けたいと思う。
最後に、Equinoxへの長い道のりを付き合ってくれたTさん、また今回も大変お世話になったロスのTさんMちゃん夫妻、ご一緒したKさんと松本組のみなさま、そして昨年同行してくれたK君コンビ、その他お世話になったみなさま、どうもありがとうございました。

成果
Equinox 5.12c RP
Leave it to Beaver 5.12a RP
Wangerbanger 5.11c OS
Heart of Darkness 5.11a FL
Clean and Jerk 5.10c FL
Illusion Dweller 5.10b FL

宿題
Spider Line 5.11d
Big Bob’s Big Wedge V5
Stem Gem V4
Slashface V3

 
 

ギリシャ・カリムノス島

2025年9月19日〜28日
小池、山崎、船戸、薄田(記)

5月の小川山集会で分厚いトポを小池さんから見せて貰い「ギリシャ」か「いいなー」程度にしか思っていませんでした。
海外経験と言えば約40年前にパラグライダーの仕事がらみで韓国と台湾にしか行ったことが無くましてやクライミングで海外なんて仕事を引退してフリーに成ってからくらいにしか淡く思いをいたすしかなかったです。
そんなとき(6月初旬)山崎さんから当初二人の予定だったが船戸君参加希望となり私に参加打診のラインが入りました。
検討の結果会社の若手役員から「老い先短いのだから行けるうちに行ったほうが良いと」背中を押されyesと返事。
そこからが大変、最初にエアーラインのチケットGet。BOOKINNG.COMで小池さんらが取得済み中華系吉祥航空(上海トランジット)の往復チケットGet。
続いてアテネからコス島(エーゲ航空)&帰りのカリムノス島〜アテネをTrip.comでゲット(BOOKING.COM)ではうまく買えませんでした。
それから順序が違うがパスポートGet,現地でスクーターレンタルのために国際免許Get等々。もう大変。
今回は海外経験豊富な小池、山崎両氏の全面バックアップもあり何とか無事に行って登って帰ってこれたけど一人で全部やってたら上海までの往復が精一杯だったと思います。
一番グレードが高かったのが成田ーアテネーコス島までの「バゲージスルー」。
上海で小池さんが現地のAIR lineのちょっと偉い人とネゴ、コス島まで通しで運ん貰い無事にコス島まで予定通り到着。小池さん凄いです。(私も仕事で見習います)
ここでやっと行程記録(船戸君、都合でアテネ〜成田は別行動)

9/19 成田~上海浦東
   (トランジット6時間有ったので上海プチ観光)

9/20 上海浦東1:10~アテネ国際7:38
   コス島10:45~カリムノス島
   (タクシーでゲストハウス)
   14:00位からゲストハウス裏手徒歩10分で
   軽くクライミング

9/21〜25 各ペアでクライミング&観光

9/26 カリムノス島7:30~アテネ国際8:30
   (ここから3人で行動)

9/27 アテネ国際14:45~上海浦東5:05

9/28 上海浦東8:00~成田12:00

コス島(マスティハリ港)からカリムノス島(ポティア港)は高速艇で40分位だが北風が強く波も高いので海水飛沫がデッキ上シートに座っていると何度も降りかかり顔がしょっぱい。
古いけどサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」が自然と口から出た。下手くそだが風が強く誰も聞こえない。
ポティア港からは小池さん予約のタクシーでゲストハウスまで20分。
当たり前だが日本人は我々だけで周りに居るのはヨーロッパ各地からの人々(おそらく)。顔の彫りが深く格好いい(可愛いーー)

「ゲストハウス」
バルコニーから間近にテレンドス島が見え、夕日が沈む時は絶景。(これぞリゾート。朝食もここで取りました。)
以前はオーナーさんファミリーの自宅でリノベ済み。広いリビング&キッチン(冷蔵庫、食器完備)、ベッドルーム二室(4BED+sofaBED)洗濯室+洗濯機、洗面、トイレ、シャワールーム一緒のスペース(バスタブ無し)
シャワーは太陽熱温水だが4人使って十分余裕のタンク容量だった。
飲料水は水栓からは海水濾過水で少し塩味が残るので飲料不可。ミネラルウオーターを買うかマスーリ周回道路途中に有る給水所でペットボトル等に確保の2パターン。
食事は外食か自炊だが小さなスーパーがマスーリ周回道路途中に3件くらいあり日本のコンビニの130%の品ぞろいで必要なものはアルコール含め大概ゲット可能。物価は日本の約120%アップ(野菜類が高い)

「クライミング」
グランデグロッタ(どっかぶりのケーブ)は早めに日が当たるので午前中が勝負。
薄田、船戸組は「アフタヌーン」エリア付近中心なので14:00位までは日陰で快適。
いちいちルート名を上げるのは大変なので6c、7a位までのグレードを多数登りました。
シーズンで言うとTOPシーズンは10月らしいが混むらしいのでちょっと暑いが今回行った9月中、下旬くらいが狙い目では無いでしょうか?約1週間滞在したが毎日晴れて乾燥して日本の湿気が懐かしく成る。
イコール岩はパリパリで二子の冬みたいに冷たくない(当たり前か)
今回薄田はグランデグロッタ付近しか触ってないが他にも山ほどエリア、ルート(1,800以上)が有るので石灰岩好きの諸兄にはたまらない所ではないでしょうか。
日本の各エリアが「虎の穴」(アニメタイガーマスクのレスラー養成所)だとすればカリムノスはエンジョイクライミングエリアと言い得るでしょう!
また行きたい。

P.S:アテネの旅行者用ホテルのエレベーターにびっくり。何と動き出したら壁が露出し ておりビックリ、要は内扉が無く手を挟んだらなくなっちゃう状態。日本基準が当たり前と思ったら大間違い。
帰りアクロポリスの最寄り地下鉄駅乗車で市内周遊チケットで改札通過したが終点の駅で改札手前に待ち受ける職員にチケット見せたらエリア外乗車でペナルティー支払いを告げられビックリ
私は65オーバーなので約3千円、他2名はその倍ふんだくられました。
後ろの外人さんは文句言ってたけど我々は時間がもったいないので素直に支払い。
肝心なクライミングの記録は出て来ないじゃないかとクレームの声が聞こえそうですがもう少しお待ち下さい。
何せ海外クライミングビギナー(この年齢で)なので色々有ります。

 
■ 準備編

1.パスポート取得:何せ40年前の大きめの赤いやつはとっくに失効。これは地元越谷で手続き出来て割とスムーズ。

2.国際免許取得:現地でスクーター等レンタルに必要。ショップのおばちゃんがチェックしてました。各エリアは駐車スペース狭いのでスクーターが便利。
整備不良なのか回転を上げないとドライブしない。また、ノーヘル、サンダルばきは捕まると罰金と注意されたがマスーリ付近で警察の姿は見かけませんでした。

「ギア」
1.ロープ:各ルートが長いので最低70M必要、出来れば80M
2.ヌンチャク:各自20本がベター(各ゝが違うルートをトライする場合有れば)
3.ヘルメット:ノーヘルも居たが8割程度装着(自己責任)
4.シューズ:各自の好みだがどっかぶりで無ければ堅めがベター
5.ビレーグラス:ルート長いので必携
6.ウェアー 上:Tシャツ、下:薄手のクライミングパンツ(ヨーロッパクライマーはほぼ短パン)朝夕はウインドブレーカーかフリース、雨具:持参したが雨降らずで未使用

「バゲージ」
預け入れは吉祥航空は23Kgだがエーゲ航空は15kg迄なので行きだけ追加料金払いました。(複数で行く場合は要分散)

「SIM」
ワールドSIMが使えました。(ハウツーは事前に)

「反省点」
薄田は4日目午後から咳、鼻水止まらず翌日からゲストハウスで留守番。
11時間のフライトのダメージも有ったが直前の3連休も休まずクライミング。
ツアー中にコンディションを崩さないようなコンディション作りが必要でした。

 
■ 交通・準備

レンタルスクーター
手前から125cc (20€/日) 50cc 2台 (14€/日) 200cc (25€/日) と総じてアジア圏より割高、ピークシーズンは事前に予約しないと借りられないおそれあり。
「WhatsApp」を活用し、事前に店舗の目星をつけて相談しておくのがおすすめ

コス島からカリムノス島へ
夏季は季節風「メルテミ」による午後の欠航リスクに注意が必要。

帰路に利用したSKY expressのプロペラ機
週3便の運行で風の影響を受けやすいが、今回は定刻通りであった。

 
■ ゲストハウスと環境

滞在した一軒家
バルコニー正面には島のシンボル、テレンドス島の全景が望める好ロケーション。



島内各所にある給水所
ボトル持参で飲料水の補給が可能。(写真は18番)

路地の裏手に位置する岩場
生活圏とエリアが隣接している。

近隣の雑貨店
日曜を除き、毎朝焼きたてのパンが店頭に並ぶ。

 
■ クライミング

マスーリ村近くのクライミングエリア
どっかぶりの看板ルートが揃う「Grande grotta」とその北側に位置し日陰が長く午後も快適な人気エリア「Afternoon」を一望できる。
写真下部の矢印箇所を拡大すると、「L’Uomo Che No….」をトライする船戸氏の姿が確認でき、このエリアの圧倒的なスケール感を感じていただけるだろう。
北端のSpartacusには稜線に抜けられる6ピッチマルチの快適★★★ルート「3 Stripes」がある。眼下の絶景を楽しみながら登攀でき、グレード感は城山の西南カンテ程度。
所要時間の目安は待機・休憩を除き登攀終了点まで約2時間。終了点からはロープを使わずにSpartacusの取り付きまで戻れるが下降路はやや迷いやすいため注意を要する。下降の所要時間は約1時間。

Afternoonエリアにて「L’Uomo Che No….(6b)」をトライする船戸さん

テレンドス島を背にしたAfternoonエリアの快適なビレイ

Grande grottaの超有名ルート「DNA (7a)」をオンサイトする山崎氏
とても混んでいてひとり1トライしかさせてもらえなかったのが心残り。こうした人気ルートを狙うなら早朝出発で確保しなくてはならないと痛感。

テレンドス島から望む対岸のマスーリ村
島内からもGrande grottaの巨大な岩壁が際立つ。島への渡し船は片道3ユーロ、所要約10分で早朝から深夜まで運航されている。島側の岩場へはグループでのチャーター交渉による送迎が効率的である。

初日は滞在先至近のPoets Zeusエリアで足慣らし
貸切状態の「GOAT TRAIL (6b)」にて人物のサイズ比からもうかがえる岩壁の圧倒的な広大さに圧倒された。

最終日はPoets mainエリアへ
「Pepe Gilles (6c)」55mもの長さを誇る立体的な星付きルート。このような壁で登るほどに増すロープの重みへの対策に長めのクイックドローを多めに携行したい。

 
■ そのほか

ポティアの街を一望する丘の上に建つAgios Savvas修道院
ビザンチン様式の美しい壁画を鑑賞できる。クライミング以外にも古城巡りや南欧の風情ある街並みの散策、バイクでの島巡りなど豊富な観光資源もこの島の魅力である。

 
 

北アルプス 硫黄尾根

2025年4月30日~5月5日
赤井、右田(記)

ずっと気になっていた硫黄尾根に行くことができた。知らない人が多い硫黄尾根はみんな知っている槍ヶ岳の西鎌尾根から東に延びる魅力的な山稜です。
春の硫黄尾根は脆いのがネックだが寒さや体力面ではそこまで厳しくない。地熱のせいか標高を上げても藪が濃いことが想定外だった。
捨て縄は長いものを多めにあったほうがいいし懸垂の時のロープスタックを避けるには捨てビナも多いほうがいい。あと、長期縦走ではテントは重くてもダブルウォールで行くべきだと思った。藪、岩、雪、長い、どれも楽しめる硫黄尾根、面白かった!
赤井さんありがとうございました!

4月30日
朝5時に七倉ゲートからタクシーで高瀬ダムまで。そこからは歩きで湯俣まで3時間ほど。壊れかけた橋を渡ると硫黄尾根の末端となる。登山体系では水俣川側から取り付くとありピンクテープを意識して進むがどれもそれっぽくない。うろうろしたあと諦めて突っ込み笹藪をこいで尾根上に立つ。尾根に出れば藪こぎしなくて済む!と根拠のない期待ははずれ。標高2000m弱から斜度がきつくなってきたのでアイゼンを装着。雪が出てくると藪が隠れて楽~!とか思う時もあれば踏み抜くこともあり雪は雪で厄介だな・・・春山だししょうがないか・・とか思ったりして進む。標高2100m辺りで整地された居抜き物件を見つけたので1日目の行動終了。
このあと硫黄岳前衛峰群となりしばらくテント適地がなかったので正解だった。前々夜に降雪がありトレースは消えていたのでここにテントを張った方はもう西鎌へ抜けた頃だろうか。硫黄尾根で人と交わることはなかった。

5月1日
天気は晴れていて風もない。
アイゼン履いて歩き始めるとすぐにリッジ上になって岩稜中心になってくる。硫黄岳前衛峰はP1~P6とあるがそれ以上に小さいピークがあって、どれがどれだかはっきりしない。尾根が南から西に方向を変えるところでP6にいることがわかる。P6は広くて360°眺望良好。大休憩しながら硫黄尾根を歩くのが面白くなってきているのをしみじみと感じる。P6から小次郎のコルへの下りでいいところがなくまたうろつく、結局はごっそりと崩れた斜面を懸垂で下降した。全体的に脆いので以前はいい斜面だったのが崩れたのかもしれない。小次郎のコルから硫黄岳への登り返しは藪が濃い!標高2500mでも立派なツガが密生している。私より背が高くて体が硬い赤井さんは大変でしたね。硫黄岳山頂付近はハイマツと雪原となる。山頂は台地上で広くて緊張が一気に緩む。槍ヶ岳が見えるハイマツの影にテントを張った。

5月2日
朝から雪と強風
天気が回復するのを待ち風が弱まったので昼近くになって出発。ガスが濃くなり行く先の尾根が見えなくなる。そんな中、「あ、どーも。」カモシカと目が合った。雷鳥ルンゼの懸垂は2ピッチあり2ピッチ目では雪で濡れたロープが動かなくなり登り返す。この後から藪があっても薄くて気にならなくなる。硫黄岳南峰のコルで3日目終了。赤井さんのアルコールも終了。

5月3日
天気は晴れて風無し
赤岳前衛峰P1~P8とあるが正直判然としない。また本と地形図で中山沢のコルの位置が違っていて、実際は赤岳超えてから中山沢のコルがある。とにかくピークが沢山あって、脆い。また、ルートファインディングが面白いところ。懸垂も何度かありP7辺りの懸垂で下には硫黄沢が見える。そこでもロープを回収できずに登り返した。中山沢のコル(赤岳超えたコル)でテントを張っていると赤岳斜面から時折、大きな落石があった。

5月4日
夜中から土砂降りと強風
シングルウォールのテント内は浸水しシュラフも濡れた。しばらく雨が止むまで待機し昼前に出発。赤岳P2~P5もルートファインディングが面白い。そのあとの白樺台地は滑らかに白く広い台地で走り回りたいくらい素敵なところだが数歩ごとに踏み抜くのでしない。台地からもう一つピークを越えると西鎌尾根に合流した。その日はシュラフやテントもびっしょり濡れていたので槍平の冬季小屋を利用させてもらった。槍平小屋周辺には春スキーヤーでテント村が出来ていた。

5月5日
晴れ
新穂高温泉まで下山。ここからバス、電車、タクシーで七倉へ移動し車の回収に半日使う。移動の間にやっと完登の乾杯が出来た!そのあとは七倉温泉で汗を流して帰路についた。

 

城ヶ崎シーサイド コロッサス記録

河合(記)

注:暫くトップロープの悪口ばかり書いているので、老害の囀りと思ってスルーして下さい。

唐突だが、私はトップロープが好きではない。
登山からクライミングに入った私にとって、クライミングは登山の延長線上であり下から登るもの、何で予め上から吊るされているのか。
もちろん、トップロープしないわけではない。
特にアイスクライミングを始めた頃はトップロープでたくさん練習した。
でも、フリークライミングがメインとなっている現在は、なるべくトップロープを避けている。
チョンボ棒も、そんな格好悪いものを持つ位ならクライマーを引退しようと思っている。
そのくせプレクリのルートで木の枝が落ちてなかったら、他人から借りているけど…

トップロープに多くの有用性があるのは疑うべくもない。
・ルートにボルトを打って傷つけないで登ることができる
・リードと比べ圧倒的に危険が少ない
・ムーブ練習やプロテクションセット場所探索に集中でき、効率が良い
・時間がかからないので多くの本数を登ることができる
などなど。
一方、トップロープを多用している場合の弊害もある。
・落ち方が上達しない
・プロテクションの評価が上達しない
トップロープで安全を求めるが故に、逆にリードする際の危険が増している場合もあるように感じる。
ありきたりな結論だが、トップロープは、各自の許容できるスタイルの範囲内で、よく考えながら「うまく」使うことが大事なんだろう。

ついでにもう少し毒を吐いておく。
トラッドルート(特にボールドなルート)で、手段を問わず何でもありで(チッピングは当然除かれる)、最終的にルートを完登するスタイルをヘッドポイントと言うらしい。
岩にボルトを打たずクリーンに登るという潔さの点から、このスタイルは理解できる。
しかし、トップロープで徹底的にリハーサルした後で、最終的にリードして完登するのが本当に「トラッド」なのか疑問に感じる。
ハイボルダーのトップロープリハーサルも同様だ。
理想論だが、トラッドなら当然グラウンドアップじゃないの?と思うのだ。

秀峰に入れてもらった時に、故向畑代表に色々な岩場に連れていってもらった。
向畑さんもトップロープは嫌い(?)で、氷結の不十分なアイスの一度を除き、トップロープをさせてもらった記憶がない。
ノー・トップロープを通じて進むか退くかの判断等、鍛えてもらったように思い、おかげさまで今に至るまで骨折せずに済んでいる。
今回、コロッサスを登るに当たり、トップロープを含め色々妥協してしまい、お世辞にも良いスタイル・プロセスとは言えない完登となった。
向畑さん、安全という盾に隠れ、禁断の果実を口にしてしまった弱い私を、天国で笑ってやってください。

さて、前置きが非常に長くなってしまったが、コロッサスについて。
故杉野保氏初登の、時代を超越したルートだ。
実質的にシーサイド初の5.13と考えられており、5.12cと発表されたが、現在は5.13aまたは5.13bとされている。
有名さとは裏腹に、近年は1シーズンに数名程度しかトライしていない模様だ。
理由は明快で、下部がR指定のトラッドで危険だからだ。
この敷居の高さのため、シーサイドの高難度をトライする猛者達も大体素通りしていく。
R部分は易しめの5.11b程度で、(コロッサスをトライしようと思う人には)問題になる難易度ではないが、プロテクションのセットできる箇所が限られ、1箇所でも抜ければ多分地面まで戻ってくるので、不用意な墜落は絶対にできない。
実際にグラウンドフォールして、ヘリのお世話になった人もいたらしい。
後半の核心はボルトに守られているものの、そこは杉野ルート、ロングフォールの恐怖と闘いながらムーブを探ることになる。
核心は突き詰めれば一手。
ハイステップからの右手ランジ、下足からの右手デッド(リーチある人限定で足が残る)、ヒールからの左手デッドの3種類のムーブがあると思われるが、いずれも激しい。
初登者は右手ランジだったらしい。
ランジに入る前の左手カチへのデッドも悪く、左手カチへのデッドで始まる一連の核心4手で初段、その手前のリップに到達するまでで、悪めの5.12b位はある。
なお、リップでレストしている暇はなく、5.12bからの間髪入れずの初段ムーブである。
どう考えても5.12cではない。
私のサイズ(身長165cm、リーチ169cm)では核心までのムーブが随所でパッツパツ、私は難し目の5.13bか、易しめの5.13cあってもおかしくないように感じた。
杉野ルートの常で、ボルダー力が一定の水準に達している者はすぐ登れるらしく、オンサイトも記録されているそうで、1~2日で終わる人も結構いるらしい。
一方、できない人にはどうやってもできないルートのため投げ出す人も多く、グレーディングは難しい。

ランジ、左から撮影

 

ランジ 右から撮影

 

初めてトライしたのは2023年1月。
スプラッシュのトライで左膝が痛くなった時、Sさんがトライしていたので、ボルトにクリップしたトップロープ状態で触らせてもらった。
今思えば安易な発想であった。
1度だけランジ体勢に入るも、発射できず終わった。

本格的に取り組み始めたのは2023~2024冬シーズン。
2023年の春~秋シーズンは全くクライミングできずすっかり弱っていて、コロッサスでリハビリ。
ワンシーズン捧げれば終わるだろうと、舐めていた。
トライされている形跡がなくホールドに潮が乗ってそうだったので、プレッシャーダイレクト経由で上からホールドの掃除を行い(意地で核心のホールドは触らず。しっかり見てしまったが…)、R部分のムーブのリハーサルをした後、プロテクションをプリセットしてリードした。
R部分で少し落ちそうになり、肝を冷やした。
最初の頃は毎日朝の1便のみリードし、後は他にトライする人もいなかったのでロープを引き抜かずにトライした。
怖くて何度もR部分をトライしたくなかったが、ムーブが自動化されてからは大分恐怖感はましになった。
結局、冷やかしでトライしてくれた友人以外は、ほとんどセッションすることなく孤独な闘いとなった。
ランジ発射の左手ホールドが極悪、ランジはベストの取り先がよくわからず、大フォールを繰り返した。
年末のトライではランジ後体勢を崩して片足着壁し右足踵を打撲、2週間戦線離脱。
ビレイはしっかり流してもらうと良いことに気づいた。
後で、ランジで体勢崩して逆さま落ちもやらかしたが、この時の反省を元にしっかり流してもらっていたので事なきを得た。
年明け怪我からの復帰戦トライでは、コロッサスにトライしていたSさんが3つ目のボルトから蜘蛛の糸(スリング)を垂らしていた。
踵がまだ痛くて大フォールするとヤバいことを言い訳に、思わずクリップしてしまった。
せめてもの矜持として、ランジホールドとランジ起点となる左手カチはハングドックして触らない(探らない)、ランジが止まるまで次のセクションに行かないことで妥協し、引き続き右手ペシペシ叩きを繰り返した。
中々思うようなトライができない中、やっと計7便目(色々あって既に計5日目…)の16ランジ目、偶然右手が狙いから外れたら、ランジが止まった。
しかし、その瞬間指皮が宙を舞った。
べろんちょである。
ランジ発射体勢までの下部も繋がり、実質後1手まで来た。
しかし、この1手が果てしなく遠く、天気と予定も全く合わない。
結局このシーズンは12日間トライするも詰め切れず、4月頭にヌンチャクを回収した。
最後はヌメヌメで勝負にならなかった。

2024-2025シーズンは、生涯目標ルートであるEquinoxのトライの前に怪我するわけにいかず、帰国した2025年1月から再開した。
前シーズンの後半は、朝イチの1便目以外はピンクポイントトライだったが、今シーズンからはヌンチャクをプリセット、カムは毎回回収のレッドポイントトライ(?)で臨んだ。
プロテクションは2箇所とも2つ固め取りしていたので、少しだけ疲労度アップだ。
ワンテン地獄が変わらず続いたが、一日毎に少しずつ進展があり、いよいよ射程圏内に入ってきた。
4日目の朝イチに、ついにランジが止まった。
と思ったら左手がすっぽ抜けて壁に衝突、親指から大流血。
なんとか回復させて、5日目の朝イチ、ランジが止まった時にそのまま登りきることができた。

結局18日49便もかかった。
リップに到達してから30回、うちランジ体勢に入ってからも18回落ち、シンデレラボーイ以上のワンテン地獄だった。
少しでもヨレているとランジが止まらなかった。
実力不足で完登までのプロセスとしては、少々不満の残るものになってしまったので、今後はもっと良いスタイルでトライできるよう精進したいと思う。
しんどいビレイなど付き合ってくださった皆様、ありがとうございました。
時々上に抜けられなくなってティック消せなかったり、消し忘れたりしました、すみません。

Old But Gold、硬派な1本、腕に覚えのある方は、是非!

 

秀峰登高会の1年

船戸(記)
ここ最近、まるで記録を上げていない弊会ですが、活動は活発に行っています。生存報告を兼ねて、秀峰で一番アイスアックスを持っている(なんと10本)私の活動を通して、秀峰登高会をご紹介したいと思います

 

冬(12-3月)
私の冬はアイスクライミングがメインになりますが、錫杖などにも遠征しています

先日登った龍神(米子不動)

 

ウメコバ沢F3(足尾)

 

北東ルンゼ(錫杖)

 

中央ルンゼ(宝剣岳)

 

春(3ー6月)
この時期はフリークライミング中心。晴れ間を狙って雪山やマルチにも出かけています

エレクトリックレディランド(小川山)

 

薔薇色のエアメール(青葉)

 

農鳥岳

 

夏(7-9月)
この時期は山に行くことが多くなります。基本、合宿等はやらない会ですが長期休暇中は、皆で出かけることも・・・

滝谷合宿

 

源次郎尾根 & 名古屋大ルート(剱岳)

 

 

秋(9-11月)
ひたすらクライミング。岩に触ってないと死んじゃう病気にかかった人ばかりなので、雨が降ろうが風が吹こうが常にどこかの岩場に誰かがいる気がします

雷神(小豆島)

 

漁師の娘(瑞牆)

 

左方カンテ ジェードルルート(錫杖岳)

 

こんな感じで1年を通して、秀峰登高会は活動していますが、沢に行く人もいれば、年中ワイドクラックに挟まることに快感を覚える変な人も居たり。各自が自分に心の赴くままに活動しています。
普通?の会のように、講習やら合宿といったものは正直あまりありませんが、俺は(私は)歩いて登って、山に打ち込みたいんだ!という人にはきっと刺激のある良い環境になると思います。

この記事を読んで少しでも当会に興味が湧いた方は、一度連絡の上集会にお越しください
皆様からのご連絡をお待ちしています

 

※秀峰登高会では、集会を原則毎月1回、JR新宿駅周辺で行っています。
 入会をご検討されている方は、一度集会に来ていただくようお願いしています。
 こちらから事前にご連絡を頂けましたら、開催日と開催場所をご案内いたします。

 

アメリカ合衆国 Joshua Tree国立公園 クライミング

日程:2024/12/26 ~ 2025/1/6
メンバー:河合(一部記)、小林、小森(記)、T夫妻 (会外、12/28,29と1/3,4合流)

海外クライミング遠征で、年末年始Joshua Treeへ行ってきました。

見渡す限り岩だらけ、どのルートを触っても面白いJoshua Treeでのクライミング。
満天の星空でのキャンプ、映画で憧れたアメリカでのロードトリップに新年のホームパーティー。
クライミングもそれ以外も、何もかもとにかく楽しい夢のような日々でした。

今回の海外遠征のきっかけをくれた河合さん、遠征中毎日一緒に登ってくれた小林さん。
現地で合流して一緒に登ってくれて、新年ホームパーティまでお招きいただいたT夫妻、皆さん本当にありがとうございました!

※現地のお役立ち情報は最下部にまとめています、情報が必要な方はそちらを参照ください。

 

日誌

■0日目 12/26
(小森)
各自移動してロスの空港に昼頃集合、レンタカーを借りて出発。
道中、片側6車線道路や周りのバカでかいアメ車にウキウキ。
小林さん、右側通行で見事に逆車線に突っ込む、恐怖。

Joshua Tree国立公園近くの29 Palmsの街へ移動して終了、Motel泊。

(小林)
2回目の海外遠征、期待と不安の中で出発。
いくつか目標に設定したルートはあるけれど、自分の中で納得できるクライミングをして帰ってこようと決める。

車線の多い道路や巨大トレーラーを見て、アメリカに来た!と実感。テンションアゲアゲ⤴︎
でも、右側通行の道路は慣れるまで頭が追いつかない。。

■1日目 12/27
(小森)
いよいよこの日からクライミング。
公園内に入ると、朝焼けの絶景に圧倒される。

魔法の時間、息を呑む景色

日が昇り見通しが効くようになると、今度は膨大な岩の量に見惚れることに。
車中からでも、見える岩見える岩に綺麗なクラックがいくらでも見つかる。
日本にあれば大人気ルートになりそうなクラックが、道路脇から徒歩3分程度の位置にゴロゴロしていて、人もいない。
改めて日本との違いに驚く、天国かな?

見渡す限り岩だらけ、日本から来た身にはちょっと信じられない光景

今回の遠征、河合さんは生涯目標課題のEquinoxに全振りするとのこと、まずはEquinoxへ向かう。
園内の主要道路を外れてダートを走ること15分、路肩に駐車。
そこからさらに歩くこと25分、砂漠の中の絶好のロケーションに鎮座しているスパッと割れた綺麗なスプリッターが目に入る、これはかっこいい。
スコーミッシュからの4人パーティの先客がいてEquinoxトライ中、河合さんはさっそくお友達に、なんというコミュ力。
ビレイもしてくれるとのこと、先客パーティのトライを見届けて小森、小林さんは移動することに。

この日以降、毎朝河合さんをEquinoxへ送迎して残置 (河合さんはビレイヤー現地調達 or トップロープソロ)。
小森・小林さん組は日中別のエリアで登ることになった。
河合さんのコミュ力あればこその作戦。

奥に見えるのがEquinoxのあるJerry’s Quarry、これから毎日ここに河合さんを残置

別エリアで登るために車に戻って出発しようとするも、ドアが開かない。
痛恨の鍵閉じ込め。
電波がないのでヒッチハイク連発、色々あって結局街に移動してロードサービスを依頼することに、500 USDなり。
途中助けを求めたレンジャーさんの車に乗せてもらう際、真顔で「銃はもっているか?」と聞かれ吹き出しそうになった、持ってません。
鈍器 (#6カム) ならありますが。。。

結局この日はクライミング出来ず、小林さん本当にすいませんでした。
助けてくれた皆さん、この場を借りて御礼申し上げます。

この日も29 Palmsの街でMotel泊。
Motelで現地在住のT夫妻と合流、現地のことを色々と教えていただく。

レンタルしたスマートカー、実は賢すぎて鍵を勝手に閉めちゃうドジっ子

(小林)
この日からいよいよジョシュアツリー国立公園へ!

入ってすぐに朝焼けの絶景!見たことのない色の空で、日本の朝焼けとはまた違う不思議な空の色だった。

公園内はまさに岩だらけで、本当に異世界に来てしまったように感じる。スターウォーズに出てくる惑星の一つみたい。
(ラピュタとかBack to the Futureは見たことないですけど、スターウォーズは知ってます!)
クラックもそこら中に見え、まさに天国!ルートになっていないところも沢山あり、日本とのスケールの違いを実感した。

観光客の人も意外と多い。確かに、ロスから3時間ほどでこのような大自然がある訳で、人がやってくるのも納得。

この日は車のカギのトラブルで登れず。まあ、そういう日もあります。
小森さんがレンジャーの車に乗る際、背中の後ろで手を組むように言われて身体検査を受けていた。笑ったら何をされるか分からないから大人しくしていたけど、映画でしか見たことのないやり方で思わずジロジロ見てしまった。
街まで乗せてくれた別のレンジャーはすごく親切で、仕事が休みの日にはジョシュアでクライミングをすることもあるそう。カッコいい仕事だし、休みの日にはすぐクライミングにも行ける環境、いいなぁ。

■2日目 12/28
(小森)
いよいよこの日からクライミング (2日連続2度目)。
朝一で園内に移動、まずはHidden Valley Camp Groundに宿泊場所を確保。
駐車場の眼の前の岩場ではフリーソロが一人、しかも他のクライマーも観光客も野球観戦のような気軽さで応援中、度肝を抜かれる。

Hidden Valley Camp Groundは岩に囲まれた素敵なキャンプ場

河合さんをEquinoxに残置後、念願のクライミング開始。
岩が多すぎてどこから手を付ければいいのか迷うも、手始めにキャンプ場から徒歩圏で、T夫妻に教えてもらったおすすめルートに取り付く。
・Toe Jam 5.7
・Dog Leg 5.8
・Double Cross 5.7
・North Overhang 5.9

低グレードでもいずれもスケールがあって内容も面白い、何よりジャミングし放題、ニヤケが止まらない。
昨日の分も合わせて、存分にクライミングを楽しむ。

四ツ星のDouble Cross、低グレードでも面白い

河合さんをピックアップ (また別パーティがいて仲良くなったとのこと)、一度街に出て買い出しの後、キャンプ。
アメリカといえば肉、スーパーで肉を買い込んで星空の下で盛大に焼いて楽しんだ。

ああ楽しい
ああ楽しい

(小林)
ようやくクライミングスタート。
この日はメインのHidden Valley Campground のエリアで、体をほぐしながらエンクラ。

駐車場の脇にいきなり岩があり、しかもそこをフリーソロしているという状況に遭遇。初めはびっくりしたけれど、これから日常的にフリーソロしている人を見ることになる。これは国民性の違いなのか。

Double Crossは5.7の四つ星。
低グレードでも長さのある楽しいルートがあるから、色々な人がクライミングを楽しむという地盤が根付くのかとも思う。
待ちに待ったクライミング、最高!!

この日からキャンプ開始。
想定していたより気温が高く、快適にキャンプができた。
ビールと肉のフルコンボを決め、綺麗な夜空の下で焚火をするという幸せな時間だった。

肉、肉!!!

■3日目 12/29
(小森)
朝は河合さんをEquinoxに残置 (この日から指の痛さを訴え始める)。

小林さんがツアー一番の目標ルート Leave It to Beaver 12a にトライするとのことでお付き合い。
下部核心超えても上部も悪いとのこと、盛大にボコボコにされていた。

遠征前に首を故障して1ヶ月間ほど登れていなかった小森は、この日もエンクラに徹しようと Sphincte Quites 5.9 に取り付く。
下から見てやけに細いクラックに嫌な予感がして、慣れないながらもナッツを持参。
案の定ナッツ必須、足元マイクロナッツ連発したところで心が折れてテンション、情けなくて凹む。
日本ではカムに頼りきりでした、練習してきます。

二人共傷心で今度こそはエンクラと Sail Away 5.8 へ、こちらはちゃんと5.8で癒やされる。
後続で登ってきたアメリカ人が爆速だったので「ガイドさんですか?」と聞くと「I’m not a guide, just a guy」と答えてニヤリ。
本場のアメリカンジョークが聞けて満足、nice guyでした。

T夫妻とはここで一旦解散。

(小林)
そろそろ本気でトライをしようと思い、予め目標にしていたLeave it to Beaver(5.12a)へ向かう。メインのトレイルのそばにあり、一目で分かる。壁の弱点を繋いでいくカッコいいラインで、見栄えもGood!

出だしから結構ヒヤヒヤし、核心に入ったところでテンション。。リーチがあれば良いところまで届きそうだが、僅かに届かず。足の使い方で上手く距離を出せそうだったけど、分からなかった。上部のフェイス部分もホールドがそれぞれ遠く、打ちのめされてボロボロになりながらとりあえず上まで抜けた。
カッコいいラインだったけれど、力不足を感じて凹んだ。明日からどうしようか、迷う。しばらくクラックばかりやっていたことでフェイス力が結構落ちていたこともあり、ムーブを起こして最後まで繋げていくイメージが湧かなかった。

Leave It to Beaver

その後は、小森さんと近くの岩塔にあったSail Away(5.8)へ。トップアウトして見えた夕焼けに染まる岩と果てしなく広がる景色に、少し心が軽くなった気がする。

■4日目 12/30
(小森)
河合さん今日はレスト日、ビレイヤーとしてこちらに同行してくれるとのこと。

小森は少しずつ調子が戻ってきたので、目をつけていたIllusion Dweller 10bにトライ。
綺麗なクラックが30m一直線に斜上する大迫力のルート、Joshuaの膨大なルートの中でも迫力が際立っていた。
こんなクラック見たこと無いとテンションだだ上がりで取り付くも、変なところでレイバックして行き詰まりテンション、凹む。
グレードは確かに10b、しっかりとムーブのある下部と上部、爽快にグイグイ高度をあげられる中間部とメリハリもある素晴らしいルート、おすすめです。

Illusion Dweller、30m以上延々と斜上クラックが続く迫力のルート

小林さんはHidden Arch 11dにトライ。
日本ではなかなかお目にかかれない長いDiheadralに苦戦、回収時のカムスタックにロープスタックとフルコンボをくらい、またも盛大にボコボコにされていた。
取り付きに降りてくるなりシャツをたくし上げて〇〇ドリルのネタをシャウト、元ネタを知らなかった小森、河合さんはドン引き。
普段は物静かな小林さんがこの有り様、よほど辛かったのだろう。
この時の写真を撮り逃したことが、この遠征唯一の心残りとなった。

Hidden Arch、小林さんをcrushした元凶

またも傷心の二人でThe Eye 5.6でエンクラ。
こちらのルートはフリーソロが順番待ちで列を作っていた。
フリーソロクライマーは頭のネジが飛んで、もっと眉間にシワを寄せた気難しい人の集まりと思っていたが、話してみると気さくでとってもいい人ばかり。
「君の登りを見ていたけど絶対に落ちないだろ、you can do it」とのこと。問題はそこじゃないと思う。

笑顔のフリーソロクライマー、絵になるなぁ

(小林)
どのルートをやろうか決まらず、とりあえず昨日同様にLeave it to Beaverへ行ってみる。リードでムーブが固められる自信がなく、やるならトップロープかと迷う。。結局トップロープでやるくらいならやめようと思い、もう一つ気になっていたHidden Arch(5.11d)が同じエリアにあったのでそちらをトライしてみることにした。
こちらはメインのエリアから少し離れたところにあり、人の気配がない。あー、こういうのを求めていたんだと気づく。砂漠の中で、静かなクライミングをしたかったのです。
取り付きまでのアプローチも、大きな岩をくぐったり越えたりする必要があり悪い。その先に狭っ苦しそうなコーナークラックがあり、まさに「隠れた」ルートである。

出だしはボルト2本のボルダームーブだが、1本目のボルトがかなり高い。ノープロでバランシーなムーブを求められかなり痺れるが、何とか突破。
ただその先のコーナークラックは、クラックも閉じており、明確なスタンスもなく大苦戦。上から岩が被さっていて非常に窮屈で、動きにくい。今までに経験のないタイプで、突破方法がさっぱり分からずボコボコにされた。。引き出しの少なさを痛感し、また凹む。
その後もカムのスタックで時間を費やし、ロープを抜いた際にも謎の突起にロープがクルクルっと絡まってスタックするというトラブル続き。。河合さん、長ビレイになってしまってすみませんでした。。
その後取り付きに戻り、この2日間で色々溜まったものが砂漠の開放的な空気も相まって溢れてしまった。

その後は、小森さんが見つけたThe Eye(5.6)をフォロー。僕たちの次が何とフリーソロのクライマーで、僕がフォローで出る際に「お前は登るの早いか?」と聞かれビビる。とにかくサクサク登り、上でそのフリーソロクライマーとおしゃべり。フリーソロする人はさぞおっかない人だろうと思ったけど、話してみるとすごく気さくなイケメン。棚に腰掛けて一服してる様は超クールで、カッコよかった!フリーソロの入門ルートなのか、その後もどんどんフリーソロで登っていく人が続いていた。フリーソロなんて気が狂ってると思ってたけど、こんな広大な大地の中で登るなら、ロープに囚われず自由に登りたいと思うのも理解できる気がした。
この日も、綺麗な夕焼けの景色が胸に沁みた。

■5日目 12/31
(小森)
河合さんをEquinoxに残置 (レストで回復したと嬉しそうだが、傷心の小林さんからは反応が消えてきた)。

小林さんは Heart of Darkness 11a をトライして見事OS、おめでとう!

小森もトライするつもりだったが体が全く動かずレスト日に変更、四ツ星 11bの Coase of Buggy を偵察して終了。

夜はT夫妻の家にご招待いただき、年越しホームパーティー。
クライミングやアメリカ生活の話を色々と聞きながら、とっても楽しく、無事に年を超すことが出来ました。
年末の忙しい時期にも関わらずお招きいただき、ありがとうございました。

(小林)
この日は小森さんと意見が一致し、Heart of Darkness(5.11a)へ。
Hidden Valleyから車で少し移動したエリアで、アプローチも分かりづらかった。トレイルを辿っていくまではいいが、ルートが壁と壁の隙間にあるため見つけづらい。

隠れた場所にあるけれど、本当にすっぱり割れたクラックで綺麗。パッと見では、サイズ感もそこまで悪くなさそう。これならオンサイトできる可能性もありそうだと思い、真剣にオブザベしてトライ。
手の薄い自分にはやはりドンピシャのサイズ感で、しっかりオンサイト!手の大きいアメリカ人には窮屈なサイズと思われ、当然といえば当然だけど、グレーディングにも反映されるということを実感した。
何となく腑に落ちない部分もあったけど、こういうルートを確実に登れるようになったのは確かに成長。暗い壁と壁の隙間から登っていき、登りきって視界がパーっと開けるのは爽快で気持ちがよかった!

大晦日ということで早めに切り上げ、T夫妻と年越しホームパーティー!
ピザとチキンとビールでカロリー補給。作っていただいたお餅と鰻ご飯も大変おいしく、またお二人のアメリカ暮らしの話もすごくそそられた。素敵な時間をありがとうございました!

■6日目 1/1
(小森)
買い出しをしながら公園に戻り、河合さんをEquinoxに残置 (知り合いから「Joshuaまで来て他のルート触らずに1つのルート、しかも指の猛烈に痛いルートを休みなく毎日トライするなんてCrazy…」と言われたそうな、さもありなん)。

小森はIllusion Dwellerを回収、なんとはなしに登れて胸を撫で下ろす、それにしても素晴らしいルートでした。
やっと調子が戻ってきたので、明日からは目標ルートに手をつけることに。

小林さんは Left Ski Track 11a をトライ。
パワフルな出だし、明らかに効きの悪そうなプロテクションセットと見るからに難しそう。

(小林)
全くお正月感はないが、2025年の元旦。ロスの街から公園に戻ってクライミング再開。

移動と買い出しで登れる時間も短いため、Hidden Valley周辺で登ることにする。三つ星のLeft Ski Track(5.11a)をやってみる。ここを登れ!と言わんばかりの左上するラインで、初めにHidden Valleyに来たときに目にしてからずっと気になっていた。
穴がポコポコ開いている独特の形状で、カムが決めにくい。パワフルな出だしで少し迷うが、これなら出来そう。帰るまでに登って帰りたいと、目標に設定した。

■7日目 ½
(小森)
河合さんはレスト日、レンジャーがサイト代の徴収に来るまでキャンプ場でお留守番、のち散歩へ。Asteroid Crack 5.12dやPersian Room 5.13a辺りの偵察に行っていた模様。

小森と小林さんはツアー目標の一つWanger Banger 11cを触りにRusty Wallへ。
遠目からでも一目でわかる綺麗なスプリッター。
近寄ってみると、核心はアメリカ人のシンハンド = 日本人のタイトハンド系の、小さな手には有利なルートに見える。
OS狙いで離陸するも、核心一手甘いジャムがあり耐えきれずにフォール、2便目でRP。
Japanese Small Hand Magicが存分に効いてました。

小林さんもきっちりRP。

ここでは別の日本人パーティともお会いしました、楽しい一日をありがとうございました。

左がWanger Banger、遠目からでも分かる綺麗なスプリッター
抜群のロケーションでスプリッターを満喫

この日、小森さんの食器がリスに齧られた(河合は立ち去る犯人を目撃)。
食器はテントにしまっておくのが無難。

(小林)
小森さんも調子が出てきたようで、残り日数も少なくなってきたので共通の目標だったWangerbanger(5.11c)へ。

綺麗なクラックで、しかも少し高台にあって眺めの良い抜群のロケーション!僕が大好きな小川山のゴジラ岩のテラスを彷彿とさせ、すごく居心地がいい。
辛めのグレード感で言わされてきたので不安もあったけれど、Wangerbangerは実際に見るとサイズ感は悪くないように見える。
実際に登ってみると、案の定サイズは悪くない!シンハンドや上部のワイドなど苦手なところもあったけれど、無事に完登。
Heart of Darkness同様に腑に落ちない部分もない訳ではないけど、目標の一つでもあったし、素晴らしいロケーションの中で気持ちよく登れたのは何より最高だった!

隣のO’Kelley’s Crack(5.10c)も面白そうだった。出だしがかなり高くリーチが必要と思われるが、現地の女性クライマーが果敢にトライしていた。すごく大変そうだったけど、でもすごく楽しそうに何度もトライしている姿が印象的だった。

綺麗なクラックが2本、シンプルで美しい。

■8日目 ⅓
(小森)
朝キャンプ場を歩いていると、知らないアメリカ人から「Good luck Equinox !」とまばゆい笑顔で声をかけられた。違うそれ私じゃない。
Crazyな日本人が毎日Equinoxと激闘してると噂になってるようだ。

河合さんをEquinoxに残置 (ガンバ!!)。

小林さん狙いの Hot Rocks 11c へ。
大きな岩のど真ん中をクラックが一直線に走る徹頭徹尾かっこいいルート、しばし見惚れる。
オブザベするも、閉じたクラックでレイバックをするようにしか見えない中間部でプロテクションを取れるように見えず、二人して断念。
本当に11c? と首をひねる。
今回Joshuaで見た中でもぶっちぎりの迫力と綺麗さで心底登りたくなったルート、強くなって再訪したい。

その後は小森の希望でPoodles Are People Too 10bへ。
出だしからクラックが細く、先日の5.9トライがフラッシュバック。
マイクロカムでランナウトした核心部分、よっぽどテンションかけたかったがそこは先日の悔しさでなんとか我慢して登る。
終わってみれば、35m、#0.2カムやマイクロナッツでランナウトした状態でバランシーな10b核心ムーブが数回出て来る10bルート。
横のアメリカ人に感想を聞くと「Spicy」の一言。
緊張感が続きとても充実する素晴らしいルート、個人的には間違いなく4ツ星 (トポだと3ツ星、なぜ?)、おすすめ。

再合流したT夫妻はScary Poodleをトライ、Scaryだが良いルートとのこと、次回はそちらもトライしたい。
トポに ”Poodle in Shining Armor” というルートもあった。何を食べたらそんなルート名を思いつくのか、初登者の頭の中が見てみたい。

横のOver Seers 5.9でエンクラして終了、爽快な35mルートでこちらもおすすめです。

真ん中、クライマーが登っているラインが Poodles Are People Too、Spicy

(小林)
残り2日、日本に帰ることが信じられない。

これも気になっていたルート、Hot Rocks(5.11c)へ行ってみる。Hidden Valley のキャンプ場から数分、すごく近い。
一目見て、度肝を抜かれた。大きな壁に走るクラックは本当に綺麗。
下部の細いクラックが核心に見えるけど、プロテクションの取り方に自信が持てない。傾斜は緩いから、意外と立てるのか。。でも上まで抜けられるイメージも付かない。これまでのロングトライも脳裏をよぎり、今回は見送ることにした。
ジョシュアのこれまでの滞在中に色々なルートを見てきたけど、これが圧倒的にNo.1。いや、クライミングを始めてから見てきたルートの中でも、ここまで揺さぶられるものはなかった。でも取り付く勇気すら出せず、それが一番悔しい。僕はあまり一つのルートに固執しないタイプだけど、これはいつか登りに行きたいと思う。

Hot Rocks

もう残り一日、段々と帰国が近づいてくる。あー、帰りたくない。

■9日目 ¼
(小森)
遂に最終日、後ろ髪を惹かれながらキャンプを撤収。

河合さんをEquinoxに残置 (本当に最後までEquinoxしか触らなかった、流石です)。

AMは小林さん狙いの Left Ski Track へ。
寒い日陰、悲壮な表情でシリアストライする小林さんを尻目に、何やら横の岩で盛り上がっている。
よく見るとアメリカ紳士たちが温かい日向でスッポンポンクライミング、それを見たクライマーと観光客のグループが黄色い? 歓声を送っていた。
これが国民性の違いか。

生まれたままの姿でクライミングを楽しむアメリカ紳士達 (写真ではギリギリ隠れているので、安心してください)

PMは小森のツアー目標の一つ、日本では滅多にないルーフ課題のMore Monkey Than Funky 11cへ。
1便目、ハンドをしっかり効かせて離陸、足が離れると経験したことがない方向に重力を感じて緊張。
カムを1つ決めて進むが、次のカムを決める余力がなくフォール、緊張して力を入れすぎてしまった。
2便目、ルーフのコツが掴めてカムは問題なくセット、リラックスして抜け口まで進む。
ルーフ抜け口でまごつくが耐え、なんとか上のシンハンドに手をねじ込んでルーフの外に体を出すが、耐えられずフォール。
その後はムーブをバラすも、フォール時に足がスカってルーフの庇でスネを強打、ロープスタック、カムスタックとルーフの洗礼をフルコースで受け、真っ暗になってからやっと取り付きに戻った。
お待たせした皆さん、何よりも真っ暗な砂漠の中で待ってくれた河合さん、最後の最後まですいませんでした。。。
おかげさまでルーフを満喫できました、これにて遠征のトライ終了。

More Monkey Than Funky、これがしたかった!

(小林)
遂に迎えてしまった最終日。
明日には飛行機に乗っているなんて、信じられない。いや、信じたくないのかもしれない。

目標にしていたLeft Ski Trackに最後のトライ。核心は越えたが、その後に足が抜けて痛恨のフォール。。かなり疲労感は溜まっていたし、これが現在地だということ。でも、いつも足がすっぽ抜けるのは何なんだろうなぁ。。

午後は小森さんのMore Monkey Than Funkyへ。ヨレた体にはルーフはキツく、フォロー回収すらロクにできず。。ルーフとか強傾斜も、普段から嫌がらずにやります。

ヘッデンで駐車場に戻り、真っ暗な中で待つ河合さんをピックアップ。今までの色々なことを思い出して寂しい気持ちと、またいつか来ようという思いが混ざり合い、充実した気持ちでジョシュアツリーを離れた。

■10日目 ⅕
(小森)
帰国の日。
Motelを出て一路ロス、日本へ。
道中仕事のメールを確認しているワーカホリックな河合さん、日本が近づくにつれ顔がどんどん暗くなる小林さんに「また来たいね」と声をかけ合い、空港で解散。

「Joshuaに行くけど、来る?」と声を掛けてもらったのが昨年の春先。
当時はまだクレイジージャムが登れたばかりで尻込みをするも、憧れの遠征のチャンスを逃すまいと勢いで同行をお願いした。
それからはワイドの誘惑にも負けずに普通のクラックを登りこみ、やっとの思いで実現した今回の遠征。
そんな経緯も含めて、初めての海外遠征はただただ楽しく、充実したものになりました。

日本で登り込んで、また次の遠征を楽しみたい。

(小林)
遂に帰国の日。
到着した日に見た景色と同じ景色、帰るんだということを実感して寂しさが募る。日本で仕事が待ってるなんて。。
でも、また強くなってから来ようと心に決めた。

最終日を終えての夕食にて、皆さんありがとうございました!!

(小林 総括)
今はもう2月。帰国翌日から仕事で体は一気に現実世界に引き戻されたものの、気持ちは未だ夢の中。。ジョシュアツリーの広い大地やその中の朝焼け・夕焼けの景色は今でも目に浮かぶし、楽しかったことや悔しかったこともまだ鮮明に覚えている。あー、ジョシュア…!!

ジョシュアでのクライミングで特によかったのは、どのルートもトップアウトして岩の上に立てるということ!
独立した巨大な岩にルートが引かれており、ルートを登った先は岩の頂上に行き着く。壁の途中で終わらず、頂上に立てるのは何より気持ちがいい。特に夕方、心身ともに疲れた中で岩の上から見た夕焼けの景色は絶景だった。

日本での準備段階から一緒にお世話になった河合さんと小森さん、素晴らしい機会をありがとうございます!そして現地で合流したT夫妻のお二人、たくさんのおもてなしをありがとうございました!

やっぱり、アメリカの自由な空気感はいいなぁと改めて実感。ヨセミテ も行ってみたいし、またジョシュアにもリベンジに行かないと。スミスロックのChain Reactionも宿題のまま。他の岩場も行ってみたい。
またアメリカでチャレンジできるように、日本で鍛え直します!

 

Equinox奮闘記 (河合、記)

Equinox。
この名前を聞いて反応をするのは、競馬ファンとコアな割れ目クライマーくらいだろう。
ヨセミテのSeparate Realityと並び、クラックを始めた頃から目標にしてきたクラックだ。
世界で一番美しいフィンガークラックだと勝手に思っている。
グレードは初登時5.13a、現在は辛めの5.12cとされている。

Equinox全景。フレークに立ってスタート、実質20mくらい

昨年は忙しく、夏~秋は半年くらいまともにクライミングできなかったが、遠征前の2ヶ月は尻に火が付き、クラックをそこそこ登りこんだ。
カーテンコール5.12aをアルツハイマーフラッシュ(以前トライしたのは忘却の彼方)、サキシマハブ5.12aやカサンドラクロス5.12bをワンデイ、苦手な持久系のHeaven5.12cも4日かかったが登れ、調子は戻ってきた気がした。
遠征直前には既登の「SSK Equinox」センチュリーフォーカラーズ5.12bを繰り返し登り、「9日間もあるし、グレードも5.13ないし、何とかなるだろう」と思っていた。
甘かった。
Joshua Treeのグレードが辛いのは噂に聞いていた。
しかし、RP体勢にすら辿り着けないなんて…
コンディションは最終日の爆風低温を除き概ね良かったので、言い訳できない。
Mountain Projectによれば、昨シーズンに後半のガバフレークが崩壊したそうで、現地でお会いしたYさんも、「後半は全くの別物になってしまった」と話していた。
でも、それを差し引いても、今の私には難し過ぎた。

取付下のたまり場。「ここで寝泊りしているのか」と聞かれた。違うから!

スコーミッシュからの長期遠征部隊の人にビレイしてもらった初日の1便目で、「今回のツアーで登りきるのは無理」と悟った。
諦めて出直して残りの日程でエンクラか、今回可能な限り進めて、チャンスがいつあるかわからない次回に賭けるか、少し悩んだ。
でも、今の自分が求めているクライミングは、手に入るとわかっているものにはない。
すぐに悩みは消し飛んだ。
その後は小森さん小林さんに毎日駐車場に残置してもらい、一人でEquinoxに通う日々。
幸い、私のようなソロ含め、ほぼ毎日他のパーティがトライしに来ており、楽しい日々が過ごせた。
憧れのルートとじっくり対峙できた日々は、幸せ以外何物でもなかった。
結局、9日間の滞在日程中、レストを2回挟んで7日間トライした。
最初から最後まで思いっきりフィンガークラックなので指がとても痛く、結構混んでいたのもあって最初は1日で2トライが限界。
5日目頃からトライが形になり始め、6日目のトップロープソロでのワンテンが、今回の最高到達点となった。

EquinoxをRPするバーガーコックコスプレのスコーミッシュクライマー。強かった!

ルートはキャメロット0.3サイズで始まり、広目の0.4サイズが長く続き、最後は0.5サイズで終わる。
極小カムもオフセットカムもナッツも不要、シンハンドジャム以上できる幅は皆無なので手の甲のテーピングも要らない。
広目の0.4サイズは指がしっかりクラックに入るため、大体全部ガバだ。
しかし、難しい。
それはクラック周辺のフットホールドがシビアなためだ。
核心はハングしていて足は極小3mmエッジ、ジャムも甘い。
その後も垂直にひたすら続く小悪いジャムとパワフルなレイバック、ストレニュアスだ。
ダメ押しはフレーク崩壊で新たに誕生した後半の核心。
私のムーブではテクニカルなジャミングを要求され、クラックルートとしての質は崩壊前より上がったのではと思わされる。
体感は5.13aぴったり。
一緒にトライしたクライマーは、少なからず「5.12dか5.13a」と話しており、とあるローカルの女性は「私にはAsteroid Crack 5.12dより難しい。ルートのタイプは違うけどねー。」とコメント。
日本で内容の似ているルートは、残念ながら知らない。
少なくとも、似ていると期待していたセンチュリーフォーカラーズとは、クラックの向きだけでなく、傾斜、指への負担、フットホールドの悪さ、グレード(アルファベットではなく数字1つ近く違う)等レベルが異なり、似ているのはサイズ感位だった。
蛇足ながら、センチュリーフォーカラーズの写真を見せて「Japanese Equinox!」と宣伝したら結構ウケて、「綺麗なフィンガー」との評価を勝ち取れた。

エイドで登っている人もいた。多分トップロープ張りに行っていると思われる。左上のシルエットは河合のFix

なお、後半のフレーク崩壊箇所はまだ少し岩がザラザラしているが、登るのに支障はない。
ただし、後半パートのフットホールドの多くは剥がれやすいフレークから構成され、私がトライした時も、レストで使う左足のガバフレークが突如5cm程欠けてしまったのでご注意を(ごめんなさい…)。
フレークの剥がれた縁がフットホールドになっており、他にも過去に剥がれた痕跡は結構あったので、初登時とフットホールドの状況は結構変わっているのかもしれない。
ホールドが極小なことには変わってないと思うけれど…
また、花崗岩の結晶が粗いので、替えの靴をお忘れなく。
私のそこそこソールの残っていたミウラーは4日で昇天し、やむを得ず急遽現地のNomad Venturesで調達した新品TCプロ(この靴、分厚いのに意外とフィンガーもいけることにびっくり。さすがトミーデザインの靴だ)も、3日間で、ゴミホールドを踏み続けた左足はソールの2/3が消失した。

とにかく絵になるシチュエーション。傾斜が中々きつい

Equinoxは結構な人気ルートで、ビレイヤーを現地調達できることがわかったので(今冬は例年より暖かいようだったので、賑わったのは今回だけかも?)、今年の年末年始も、たとえ単独でもリベンジに行こうと思う。
でも、今年の年末年始で行く方がもしいらっしゃれば、声かけてもらえると嬉しいです。

これを書いている今も、まだ指が痛い。
最後はロキソニンまで飲んで、頑張ったんだがなぁ…
あぁ、楽しかったけど、悔しいなぁ…

敗退した最終日、取付で見送った夕日は、鮮烈だった
また次回!

 

お役立ち情報

■トポ
下のトポを使用、主要なルートは写真付きでほぼ網羅、アクセスも詳細でわかりやすい。
日本では入手困難? な様子、Joshua Treeの街のギアショップ、ツーリストインフォに在庫があった。

■気候
今回の遠征では3日間のみ曇り、他の日は全て快晴。
ローカルの話では冬でも雪が降るのは年に数度程度、積もることはかなり稀、積もってもすぐ溶けることが多いとのこと。
昼の日向は半袖でも快適、日差しはジリジリと強く感じる。一方で日陰はダウンが必要な程寒い。
夜は冬用シュラフだと快適な気温。
日によっても気温の差が大きい、かなりの強風が吹く日もありその場合は体感気温が一気に下がる。
今回の遠征では最終日のみトライに若干の支障あり (曇りと強風が重なり、日陰ルートでは寒すぎて指が弾かれる、かじかむ)。他の日はベストコンディションだった。

■宿泊
国立公園の周りで主な街は”Joshua Tree”, “Twentynine Palms”, “Yucca Valley”の3箇所。
上記3つの街のMotel、または園内でのキャンプが主な宿泊の選択肢の様子。

園内のキャンプ場はエリアにより予約の要否が異なるので、最新情報を要確認。
今回宿泊したHidden Valleyのキャンプ場は先着順で宿泊 (予約不可)。連日満員だったが、朝一であればどこかしら場所は確保できた。毎朝9時頃レンジャーさんが見回りをしているのでその際に支払い、25 USD group/day。水場なし、トイレとゴミ箱あり、焚き火可 (園内で薪調達不可、街で要購入) で宿泊は非常に快適。主なクライミングエリアはこのHidden Valley周辺が多いので便利だった。

Joshua Treeの街のCoyoteという土産物屋に有料シャワーがあるとローカルから聞いたが、未確認。

■買い物
Joshua Treeの街に何でも売ってるギアショップ(Nomad Ventures)があり、アメリカンエイドまで、クライミング道具やトポは大抵何でも揃いそう。ロスのREIよりよっぽど品揃えが良い。靴だけはアメリカンな大きいサイズしかないことが多いが…日本では中々手に入らないYatesのギアも買うならここ!生鮮食品は“Twentynine Palms”と”Yucca Valley”には大きめのスーパーがあり入手可、”Joshua Tree”の街にはスーパーが見つからず入手困難。

■移動
園内の主要道路 (地図赤線) は全て舗装路。主要エリアはこの舗装路脇に車を止めて、そこから徒歩 (5分~10分程度) でアクセス可、2WD車でも問題なし。河合さんトライのEquinoxは4マイル位未舗装路を経由するため、路面はそこそこきれいだが4WD車が無難。雪降ったらアプローチヤバそう。

国立公園からから各街への出入り口はWest EntranceとNorth Entranceの2箇所。車移動でHidden Valley~Joshua Treeの街が30分、Hidden Valley~29 Palmsの街が40分程度かかる。朝10時~昼3時くらいまではどちらのEntranceも公園に入る方向で渋滞あり。加えてWest Entranceは日没直後結構な長さの渋滞が発生し、公園から出る際に時間がかかるので注意 (North Entrance側は渋滞少ない様子)。

■その他
Joshuaのルートは終了点が無いことが多く、登り終わると「カムで支点構築→フォロー回収→別の場所からクライムダウン or 懸垂」となるパターンが多い(Equinoxにはちゃんと終了点があって、裏にFixロープもあって回り込んで終了点に行けたが、恐らく例外的)。トライの際はカム・スリング類を少し残し、ATCの持参を推奨。フォロー回収用にアッセンダーがあると便利 (特に遠征後半は体力、指皮温存に効果大)。取り付きへの移動・クライムダウンで岩の上での行動が多く、そこそこのクライミングになることも多いので、アプローチシューズ推奨、日本でよく見るトレランシューズは避けたほうが無難。

以上

 

小川山 「むささびルート」(烏帽子岩、裏烏帽子右岩壁)

山行日:23年9月10日(日)
メンバー:船戸、野澤、薄田(記)

今回、当初は9/9~/10で錫杖の計画であったが台風13号の影響を考慮して9日は壁が濡れいて登れないと判断。急遽変更した。
朝、某道の駅から移動して廻り目平の駐車場に車を駐めてアプローチ40分位で取り付き到着。
1p目野澤リードでスタート(7:00くらい)したが朝一で体が硬いのか5.10bのトポ表示だが1時間位掛かってやっとフォローがスタート(薄田~船戸)触ってみると時間の消費が納得体感 10bとは思えない難しさ。浅い凹角と右側のカンテを使ってジワジワ体を上げていく。
左のハング気味のカンテは触らないで凹角沿いに行くのが正解。30m程度で終了。

1P目
1P終了点

 

2p~3pはスラブ&ガバハンド(バチ効き)5.9位で易しい。

2p終了点

4P目が見た目ワイドも混じる「いたちクラック」。初見なれど触ってみるとハンド~フィスト「バチ効き」で快適そのもの。本ルート上一番楽しいピッチとなる。ワイド部は手足を外に置けば難しく無い。10aは納得。3人で時間掛かったのでそこで終了して懸垂3回で取り付き迄下降する。

3p
4pいたちクラック
4P目終了点

取り付き着が13時00分位。時間が余ったので「ロケットマンルート」1pのみ登ろうと移動。見上げると下部がこけこけでモチベーションだだ落ち。
近くに有る「登攀のすべてPart3」10cを3人で触るが誰もRP出来ず。
フレークが終わる迄はカムを効かして登れるが最初のボルトクリップ後の一手が難しく
取れない。スラブも練習が必要。18:00迄やって暗くなって来たのでお終いとした。
楽しい1日でした。

城ヶ崎 スプラッシュの記録

河合(記)

久々に心と体を削って登った1本の記録を残しておく。
スプラッシュ。
有名なルートだと思う。
故杉野保氏の作品で、城ケ崎シーサイドエリア黎明期からかなりの間を空け、1998年に初登された。
現在、城ケ崎シーサイドの最難ルートだ(登れなくなったクランチャーを除けば)。
グレードは5.13cか5.13d、トポによって異なる。
シーサイドの最奥にあり、潮が引いた時でないと全貌が見えない。
杉野氏初登の城ケ崎ルートの多くに共通するのは、「ある程度ムーブを起こす力がないと、何もさせてもらえない」ことだと思う。
てるてる坊主5.12d、サーカスライト5.12d、コロッサス5.13aか5.13b、秘奥義5.13b辺りをトライした人ならわかってもらえるだろうか。
「ある程度」の力があればムーブをこなせるけど、その「ある程度」の水準が随分と高い。
そのため、杉野ルートの多くは、登れる人はあっさり登り、登れない人は封印するか、私のように歯を食いしばる努力をすることになる。
スプラッシュも、ご多分に漏れず、その類のルートだ。
核心のムーブは激しく、厳しい。
そして、さらにこのルートを厳しくしているのは、そのボルト位置だ。
下部核心のランジを止め損ねると、岩角に叩きつけられるリスクが高い。
下部を余裕でこなせない人には「やっても意味ないよ」というメッセージか。
中間部の核心垂壁は、ハングドッグでは探れず、一連のムーブを終えてさらに登ってからでないとクリップできず、大抵はボルト足下でバンジージャンプすることになる。
最後のサーカスライト共通部分の核心も同様で、ムーブを起こし終えない限り最後のガバを触ることすらできない。
ボルトに守られたルートだからこそ、少しでも未知の部分を緊張感の中で探る、本来のクライミングらしい部分を感じて欲しい、という初登者のメッセージのように思う。
本ルートの構成は以下のとおり。
(以降、ムーブの記載オンパレードなので、オンサイト狙う人は読まないで下さい。)

【出だし】
・スタートはサーカス5.12cと共通の地ジャンまたはデッド、初っ端から激しい。
・その後、ルーフ下のガバを繋ぎ、ランジ体勢に入ってランジを止める所が最初の核心、意外とテクニカルで、ここで落ちると危ない。
・なお、このセクションは、サーカスのフットホールドを使ってハンドトラバースすると簡単にこなせるけど、スプラッシュ感が感じられないので、私は不採用。岩の強点を攻めてこそスプラッシュ!
・その後遠いガバをデッドで繋ぐとハング下のレストガバに到達する。クリップが遠い。
・ここまでで、5.12bはあるだろうか。

【核心】
・ルーフからの抜け出し方には2通りある。初登者ムーブは見えないガバへの強烈なデッドで、リーチがないと不可能。私は辛うじてガバに届いたもののマージンがなく、その後動けなかった。
・小柄な人はリップのゴミカチを握りしめ、ルーフ下にヒールする通称「スプライトムーブ」一択だ。このムーブはリーチの不足分を足位置でカバー可能。ルーフ下ヒールは非常に膝に悪い。人によっては簡単というこのムーブ、私にとっては最大核心で、このムーブをやり過ぎて左膝側副靭帯を痛めた。
・ルーフ抜け出しの最後は、遠いガバへのデッドから、垂壁へ乗りあがって左カンテへの横移動で、このセクションが最大核心という人が多い。ガバマッチからのクロスと、左足乗り込みの2通りムーブがある。左足への乗り込みは股関節の柔軟性が鍵で、大柄の人には狭くて辛いらしい。クロスムーブは試していないのでわからない。
・一連の核心ムーブは私の場合10手で、V8位の強度はあると思う。
・ここまでで既に5.13b以上ある気がする。

垂壁の核心ムーブ

【サーカスライト核心】
・カンテのレストポイントはサーカスと共通のドガバでかなり休める。
・その後サーカスライトの核心だが、このムーブもかなり悪く、右手でゴミカチを押さえながらヒールで体を引き上げていく。カチ力と体幹の残量が鍵で、パンプが取れていてもなぜか落ちる。このセクションだけでもV6はありそう。リーチがないと最後ヒールを残したまま穴ガバが取れないので、足を切ってから余計な強度のあるワンムーブが増え、辛い。
・最後は5.10b位のスラブで、ホールドは初見ではわかりづらいけれど、ここまで到達した人が落ちることはないだろう。
前置きが長くなった。
シーサイドの最終課題といった雰囲気の、このルートの敷居は高かった。
初トライは2020年3月に遡る。
このシーズンは首尾よく虎の穴5.13aが登れ、その勢いで試しに1日トライした。
2便目でハング下まで繋がるも、核心は全く歯が立たず、あっさり諦めた。
翌2021年3月、シンデレラマン5.13bをシーズンぎりぎりで間に合わせた後、パートナーのシンデレラボーイのビレイついでに1日トライするも、同様に核心は歯が立たなかった。カンテまで10cm以上左手が足りない。
本腰を入れてトライを開始したのは2021年12月。
シーズンを捧げる覚悟で、12月上旬からトライを開始した。
考えられる足位置を全て検討した結果、計7日目にカンテに到達した。
RPしたのではないかって位嬉しかった。
この日はヌメヌメのサーカスライトセクションが抜けられず、計8日目にトップアウト。
トップアウトがこんなに嬉しいルートは中々ない気がする。
しかし下部のランジを取り損ねて頭を壁に強打し流血、髪の毛が少し減った。情けない。
さらに、4日目頃にできたルーフ下ヒールムーブが全く再現しない。
意地になってトライし続けた結果、年の明けた1月、靭帯を痛めて左膝裏に激痛が走るようになり、計11日目で登攀不能となった。
このシーズン、左膝は回復せず、スカラップ5.12d/13aで関節技極めたり、秘奥義5.13bに通い詰めて絶望したり、シーズン末期にヌメヌメのブリザード5.12dにトライしたり迷走。

極めて膝に悪いヒール

2022年12月、今度はムーブを変えて初登者ムーブで再挑戦。
ルーフ下のヒールが不要で、膝への負担が少ないからだ。
しかし、ルーフ上へのデッドは辛うじて止まるも、その後全く動けず。
これはどうしようもなく、2日間トライした結果諦め、ムーブを元に戻した。
当然、また膝裏が痛くなった。
しかもワークアウトでトライしたドラゴンフライ5.11cでどか落ちし、左踵をしこたまぶつけてしまい、早々に2週間ほど戦線離脱。その間に何とか膝を回復させた。
ワントライ3回、1日9回まで、週1のトライに制限して、こつこつトライを続けたが、滅多にムーブができない。
繋げると、まずできず、膝も痛い。
できる時とできない時の違いがわからない。
同じ場所で何十回も落ちて、心が折れかけた。
後はもう、道具を変える位しか、できることがない。
完登者に使った靴を教えてもらい、新たに2足買って試した。
鍵となったのはヒールの形状だった(行き詰まったら研究してみて下さい)。
1足目は結構感触が良く、暫く履き続けるも結局ヒールは下からでは繋がらず。
2足目はぴったりフィットしたが、ムーブを起こす際の激痛に耐えられず、一度は投げ出した。
その後、1足目ではどうしてもムーブが繋がらないので、2足目を再導入。
不思議なことに、今度はムーブが不思議な位スムーズに起こせた。
どうやら膝周りに謎の筋肉が付いて靭帯への負担が減ったらしい。
こうして迷走すること計23日目、遂にルーフを抜け出してカンテに出て、ワンテンとなった。
時既に2月中旬。
後は時間と持久力との闘いだ。
しかし、サーカスライト核心もとても悪い。
本当に5.12dのルートの核心なのか。
カンテに出る確率も5割を下回り、バンジージャンプを繰り返した。
最後、散々練習したムーブを変更したところ、計27日目となる2023年3月4日、初めて触ってから足かけ3年、73便をかけて完登した。

終わった。

とにかく、長かった。
正直、ルーフ下ヒールを安定してこなせるようになった計22日目まで、このルートを登れるか全くわからなかった。
いつ膝が爆発するかわからない恐怖。
リップにデッドし過ぎて右肩も痛くなり、週末に体をベストコンディションに持ってくるため、ジムに行けなくなった。
ひたすらスプラッシュだけトライし、落ちる日々。
体を壊してまで、そこまでして登る価値はあるのか?
「膝痛むのに続けるなんて、バカじゃないの?」友人クライマーに言われた。
バカだと思う。
でも、何と言われようが、かっこよすぎるんだよ、このルート。
最後にグレードについて。

5.12b+V8+V6+5.10b、計48手。
それぞれの間に大レストを挟んで、どのグレードとなるか。
身長166cmの私でも随所にパツパツ、最後にダメ押しのきついムーブが入って辛く、途中狭い部分があるにせよ、トータルでは大柄な人に有利なルートのように思えた。
持久系ではないので、ボルダー力が一定以上の水準に達している人は易しく感じるかもしれない。
私は5.13c以上はこのルート以外登ったことがないのでよくわからない。
今まで登った5.13bより明らかに難しかったので、5.13c以上の何かだと思う。
5.13dあったら嬉しい。
蛇足だが、サーカスライトは5.13aある気がする。スプラッシュ登った翌日についでにRPできたけれど、虎の穴5.13aより難しいと思う。
シーサイドの5.13-が大体片付いたら、是非トライしてみてください。
昨シーズン、結構な頻度でマーキング消すの忘れて、また最初から最後までヌンチャク残置してすみませんでした。
また、様々なアドバイス下さった皆様、現地で一緒にトライやビレイして下さった皆様、特にワンシーズン丸々付き合ってくれたK林君、ありがとうございました。

オワタ\(^o^)/

大井川水系 大根沢

南アルプスに大根沢山という山がある。「ダイコンたくさん」ではなく「おおねさわやま」と言う。この山を源流にする沢はいくつかあるが不勉強な自分は明神谷くらいしか遡行していない。そんな訳で、山名の由来となった大根沢に行くことにした。


中和(単独、記)

概要:
2022/11/03~11/06
信濃俣河内支流の西河内から大根沢にアプローチ。
大根沢支流のブナ沢から寸又川まで下降後、杓子沢を遡行して大根沢山。

11/3 快晴
赤石温泉付近に車を停めて自転車で畑薙ダムに移動。林道をしばし歩いて信濃俣河内に入渓する。渇水期なので信濃俣河内に水の重さはなく、紅葉を眺めながら歩くだけで西河内の出合に到着。

畑薙は紅葉シーズン

アプローチに使った西河内は「何もない」の一言で表現できる沢だ。小滝とミニゴルジュが散見される程度の下降向きの沢で、登って面白いと感じたなら感性が豊かな人だと思う。水源も低くH1400くらいで枯れる。稜線に上がると焚火ができないのでH1600あたりの傾斜地をそれっぽく整地して宿泊。ぞんざいな整地だったので、傾斜でズリ落ちては起きるを繰り返す嫌な夜になった。

11/4 快晴
夜明けと同時にガレた沢を登ってコルを目指す。不安定なガレを登らず、横着して右手の尾根に逃げるとあっけなくコルに出た。
コルから水の少ない沢を下降していくと40分ほどでブナ沢の源流部に出る。ここから杓子沢(地図に名前がないが大根沢山の南西に詰める沢)出合まで3時間で下降できると予想していたが、滝が多く2倍ほどの時間がかかった。
途中、木の根を支点に懸垂したらロープを引けずに登り返したり、大高巻きしてのルートミスもやらかしている。適正な判断ができる人ならもっとスピーディに下降できるとは思う。

H1600付近の12m滝
大滝はないが10mくらいまでの滝が点在

滝やゴルジュで薄暗いブナ沢から一転し、杓子沢の出合は薪も豊富な明るい河原で宿泊好適地。ここより下流の大根沢の中下流部はゴルジュはあるものの小滝と釜が続くきれいな渓が寸又川本流まで続く。この日は大根沢橋よりやや下流に泊まった。

サクラ沢出合の二俣

11/5 快晴
この日は寸又川まで下降した後、杓子沢出合まで登り返して同沢を遡行するのが目的。泊地を出て大根沢を下降していくが、渓相は相変わらず穏やかだ。にしても林業のゴミが非常に多い。大根沢には森林鉄道の支線や営林小屋があったので何となく予想していたが、ブルドーザー、ワイヤー、吊り橋、小屋、森林鉄道など林業ゴミの展覧会となっている。

コマツ製ブルドーザー

左岸の大根沢事業所跡を見送るとすぐに寸又川との出合だが、ここはゴルジュ内に全水量が1mほどの幅で圧縮されて落ち込みとなっている。高さは2mほどなのでトラバースして釜に飛び込めば下降できるが、すぐ横に森林軌道があるので歩いて寸又川に出合う。

上から見た落ち込み

大根沢出合からは左岸林道に上がって時間短縮しようとしたが、この林道は相変わらず崩落地だらけで極悪だった。釣り師によると思われるトラロープが残置されているが、落ちたら良くて大怪我の崩落地にロープの強度も固定方法も不明なゴミで突っ込めるのが信じられない。豆腐メンタルの自分はトラロープに命を預ける気にならず、適当な場所で懸垂して大根沢に降りて杓子沢の出合まで戻った。

画像だと何が何だかわからないが、崩落地にトラロープがフィックスされている

ここからは大根沢の南西に詰めあげる杓子沢の遡行だが、基本的に上に行くほど難しいしヌメる。下流は小規模なゴルジュと小滝のみだが、中流は5m前後のヌメる滝が連続し、上流部はV字谷からの崩落壁という品揃え。
中流部の終わりであるH1580で三俣状になって沢が東に屈曲するが、本流と思われる沢の水は伏流し、地図にない支流からは大量の水が流れこんでいる。地図と現実の不一致にひどく困惑させられたが、一番風格のある本流と思われる涸れ沢を遡行したら正解だったようで、すぐに水は復活した。と同時に左右の壁が立って来てルンゼ状になってくる。快適な幕場は諦めざるを得ない雰囲気だが、H1750付近に奇跡的に平坦な場所をゲットし快適な夜を過ごした。

最上流部。同じような滝が3つ続いて崩落地に出る

11/6 快晴
この沢は詰めが崩落壁なので、どこで逃げるかの判断が核心になる。なまりきった今の体とメンタルで崩落地を登る気になれないので、遡行中も脱渓ポイントのチェックばかりしていた。途中5m滝を高巻きするためロープを使って一段上がると、5m滝が3つ連続する上は崩落地となっているのが見えた。頑張って登ってもすぐに遡行終了になるのがわかったので、懸垂して一段降りて滝下の右岸から脱渓。あとは藪を漕いで大根沢山に到達。この先はほぼ登山道なので、14時前には赤石温泉にたどり着いた。

コースタイム:
11/3:赤石温泉(10:30)-信濃俣林道終点(11:02)-西河内(12:49)-西河内H1600(15:29)
11/4:西河内H1600(5:39)-コル(6:11)-杓子沢出合(14:27)-大根沢橋(15:50)-泊地(16:10)
11/5:泊地(6:40)-寸又川(8:13)-大根沢橋(10:50)-杓子沢出合(11:57)-杓子沢H1750(15:27)
11/6:杓子沢H1750(6:37)-大根沢山(9:35)-赤石温泉(13:50)

装備:
60mロープ、荷揚げ用補助ロープ、トライカム#2まで(未使用)、ハーケン数枚(未使用)、アブミ(未使用)、沢靴(ラバーソール)、軍手、シュラフ


アルパインの岩場における残置やラッペルボルトの是非を語るクライマーは多いが、登山者もペンキと赤札の設置について少しは思いを巡らせても良いのではないか。
もちろん百名山や丹沢・奥多摩あたりの登山道ならば、立派な道標があろうが等間隔で刺々しい色のペンキマークがあろうが何か言うつもりはない。そういう場所だと承知しているからだ。
また、赤札をゼロにしろなどと言う気もない。バリエーションにおいて、ルートの取付きや尾根の下降点に確信が持てないとき、無造作につけられた赤札で一安心したことも一度や二度ではないからだ。
ただ、未整備であることが魅力の深南部において、ペンキや赤札で過剰にルート整備するのは、山域の特性を無視した身勝手な行為だと思えてならない。例えるなら谷川岳や剱岳の岩場をラッペルボルトで整備するのと同レベルの暴挙なのではなかろうか。

過剰なペンキの典型、この後も赤札が連打されている

 

 

笠間 ターゲット

笠間 ターゲット
河合(記)

この冬トライして最も印象に残った1本は?
問われると、それはスプラッシュでも秋雨でも、スカラップでもない。「ターゲット」。この1本に尽きる。
パートナーがおらずひっそり出かけたある日、アプローチで迷いに迷い、何故か鎖場にぶち当たり、ペットボトル転げ落としながら辿り着いた笠間ボルダーで、出会ってしまった。
このルートはひっそりと口を開けていた。ボルダーで3級、リードで5.10cという、よくわからないグレードが付いている。
綺麗に割れた弓状の前傾ハンドクラックで、出だしはフィンガーだ。
笠間で一番美しいのでは、と思う。
高さは取付から7~8m。下地は最悪、斜めの岩盤か木の根が飛び出た急斜面。リードならカムを2~3個決めるだろうか。
チョーク跡は、やはりついていない。
当初、見た目に圧倒され、トライするつもりはなかった。
しかし、石器人スラブの鬼トライを重ねるうち、ソールも心も擦り切れ、あまりに美しい割れっぷりに気が少々触れて「やってみるか」となった。
トライするにはそれなりに葛藤があった。
「万が一にも落ちないか」
「Point of no returnはどこか」
「クラック内のコンディションは?」
「落ちたら大怪我確実・・・でも頭から落ちなければ死なないよな・・・」
最終的にグラウンドアップは諦め、トライ前に抜け口に回り込んだ。
マントル位置に葉がヤバイ量乗っていないか確認(多少乗ってたが無視)。登攀に使わない部分のクラックに手を入れ、湿気と幅に問題がないことを確認。申し訳程度にマット1枚とサーマレストを敷き、やにわにトライを開始。マットの上に落ちられる気がしない。
出だしのフィンガーからシンハンド部分が少しテクニカルだったが問題なく、タイトハンドに手を捻じ込んだ。
「これならクライムダウンできる。行こう」
心は決まった。
後は絶対の自信のあるハンドジャム。
しかし、安全圏から飛び立つあの感覚。
久々に、アルパインをやっていた時の感覚を思い出した。
最後はワイドハンド気味、ジャムの決まりは甘くなったが、予想通りの容易さ。
多分15秒位であっさり片付いた。
リップ部分は、やはり少し枯葉が乗っていた。
妥協して掃除しときゃ良かった。
最後まで手はジャムのみに拘り、丁寧にマントルを返して抜けた。
周りに誰もいない中、一人、小さく「やった」と呟いて、足早に取付に戻った。
こうして無事に抜けられたので、とりとめもない記事を書いている。
この割れ目に触れ合った時間は多分1分に満たないけど、凝縮された時間だった。

そもそも、私はメンタルが弱い。
クライマーのくせに、安全圏から離れることが嫌いだ。
当然ランナウトが苦手、RやXの付くルートは基本、興味の外だ。
今回、自分の興味とは真逆のルートに触れて体感したのは何か。
それは、精神的な、目に見えない部分での「クライミング」だった。
この手のクライミングの、安全圏に抜けた時の、全身から迸る充実感は、筆舌に尽くし難いものがあることもわかった。
でも、登ってみて思う。
こういうクライミングは、苦手だ。
私の芸風ではないし、適性もないことも何となくわかった。
どっと疲れを感じつつ、再び石器人スラブでソールと心を磨く作業に戻った。
【蛇足】
・体感グレードは、多分リードしたら5.10b位。5.10cはかなり甘いと思う。
・ボルダーグレードの3級は、オンサイトトライでの葛藤を加味していると思われる。
・間違っても、ハンドジャムのできない人や、やったことない人が、グラウンドアップ・
ロープなしで取りついてはいけない。
・もう二度とやりたくないと今は思っているけど、また気が向いたら登ってしまう可能性
もゼロではない。
・ボルダートライは全くお勧めできないけど、クラッカーが自らを試す一本にはなると思
う。(リードすれば楽しいと思います!)