2025冬 Joshua Tree記録

「I’ll be back.」
夕暮れのJerry’s Quarryで一人呟いたあの日から1年、再び彼の地に戻ってきた。
奴は変わることなく静かに佇んでいた。
さぁ、1年ぶりの再会を楽しもうではないか。
今冬のJoshua Tree遠征が始まった。

1年前、一人でEquinoxだけ執拗にトライし続け、同行者には幼稚園児扱い、岩場で会った人からもクレイジー認定、いつしかHidden Valleyキャンプ場に巣食うイカれた日本人として微妙に有名になってしまった昨冬、結局Equinoxは登れる気配もなく敗退を喫した。
クラックを始めるきっかけとなった憧れのルート、このままでは終われない。
当初は一人でリトライするつもりで、改めて準備を行うことにした。

そんな折、救世主は職場に現れた。
噂に聞いていた職場最強クライマー、ボルダラーTさんが転勤で東京に姿を現したのだ。
何でも、四段を登ったことがあるとか。
早速ホームジムの秋パンで雑談していると、ボルダラーと聞いていたのに、「ロングナイト5.12bを登った」だの、香ばしいワードがポンポンと出てくる。
もしや、「こちら側」では?
ということで、Equinoxの話を切り出してみると、「いいね!」の反応。
よしっ、じゃあ年末行くか!
その場のノリで2年連続のジョシュア行きの同行者が決まったのであった。

その後は、神奈川県絶滅危惧種調査ボランティアの終わった8月から、本格的な準備を開始。
Tさん始め、皆さんに付き合ってもらいながら、小川山で指に悪そうなルートを登った。
天まで上がれ5.12bはフィンガージャムしないことを愚痴り、故吉田和正さん遺産の厩戸皇子5.12bの名ルートっぷりを堪能、甲府39℃の中ローリングストーン5.12dを蜘蛛の巣払って登り、ヌメる流れ星5.12dでぶっ飛んで流れ星になりかかったりしながら夏シーズンを過ごした。
フィンガージャムの練習にはあまりならなかった気がするけれど、(私にとっては)高難度トラッドをきっちり登り切るトレーニングにはなった気がした。
そんなこんなで8~9月に少し貯めたマイルも、10月の26連勤110時間残業海外出張付きという前時代的労働環境でクライミングしている場合ではなくなり、ほぼ無に帰してしまった。
11月に入って漸く仕事が落ち着いたのでクライミングを再開、スーパーイムジン5.12bでリハビリ、体が戻ってきたところで花崗岩シーズンは終了。
名張ツアーで1年ぶりのいかさま師5.12bをギリギリ仕留め損なう(無念!)位まで持久力を戻し、城ケ崎シーズンに入ってブリザード5.12dに少し遊んでもらったところで、準備期間が終わった。
いよいよ出国となったが、やはり10月のロスは大きく、不安が残った。

12月24日 雨
前日夜に、サンタクロースからの嫌がらせで地雷級の仕事が飛んできたが、爆発前に処理して、今年何回目か、もはやよくわからない出国。
米国を通るのは2回目か。
フライト10時間を「短いなぁ」と思う位には感覚が麻痺してきている。
あっという間にロサンゼルス空港に着くと、Hertzレンタカーの前は水浸しだ。
「雨降ってんじゃん…」
「西海岸って冬は雨少ないんじゃないの!?」
と思ったが、気を取り直して陽気なHertzのおねーさんとやりとり。
荷物を見て「中くらいのSUVにアップグレードしたら?」と営業をかけられた。
Equinoxまでのアプローチはダート道で、深い水たまりができそうだった記憶があり、不安に駆られて思わずアップグレードしてしまった。
結果的にはこれが大正解、アップグレードしなかったらボルダーマット2枚が載らなかった。
Equinoxまでの路面自体は雨にもかかわらず、2駆でも全く問題ないレベルだったが…
その後は、Tさんと眠気に耐えて運転を交代しながら4時間半位かけてJoshua Treeの街まで。
クリスマスの帰省ラッシュで鬼のように道が混んでいた。
途中Denny’sに入り夕食、日本との、あまりのメニューの違いに戸惑った。
到着したJoshua Treeの街は思ったより雨が降っていないようだった。
この日はHigh Desert Motel泊。
駐車場横ではサバクトビネズミ(多分)が爆走していた。

12月25日 晴れ 風少し強め
まずはキャンプサイトを押さえに行かないといけない。
朝早くHidden Valleyキャンプ場へ行き、既に現地入りしていた松本のTさんKさんOさんパーティからサイト情報はいただいていたが、他に首尾よく空いていた平らで広めなテントサイトを運よくゲットできた。

駐車場の広くて平らなサイト24

入口に支払いに行って、すぐにEquinoxに向かった。
路面は全く問題なかったが、アプローチ道が昨年より青々としている気がした。
これはどうやら気のせいではなく、今年は雨が多くて植物が元気なようだ。
花も昨年ほとんど見なかったが、今年は真冬にも関わらず結構咲いていた。
前日の雨にも関わらずEquinoxは当然のように乾いていた。

早速テンション爆上がりのTさんがトライ、指をぼっこぼこに痛めつけて下りてきた。
やはりムズいらしい。
河合は、まずはトップロープでトライ。
記憶を頼りにジャムとスメアを繰り出す。
1年のブランクを経て、ジャムの場所は結構忘れていたが、思いのほかすいすいと中間部核心を抜けたところで、手順がわからなくなりテンション。
想定より感触が良く、次の2便目で1テンとなった。
しかし、昨年の最高高度までは辿り着けず。
この日のEquinoxは貸し切りだった。
帰り道に、やたら耳のデカいウサギと遭遇。
昨年は1頭も見かけなかったぞ。
その後、買い出ししようと思ったらスーパーはクリスマスで全部休み、空いていたJack in the Box(ハンバーガーチェーン店)でジャンキーな食事。
この日から、屁とげっぷが止まらず、Tさんドン引き。
米国のジャンキーな食事は私のやつれた胃腸には合わないようだ。
我々のテントサイトは駐車し易い場所にあって、1台分丸々空いていたので、ほぼ毎日、車中泊クライマーの溜まり場となっていた。
Bishopのレンジャーや幼少時代を沖縄で過ごした人など、色々な人が声かけてくれて、入れ替わり泊まっていくので、中々楽しかった。

12月26日 晴れ 凪
Equinox2日目。
アプローチの入口がわかりにくくて荒れていたので、Tさんと小石を置いて整備を始めた。植生を踏圧から守るためにも、帰り道迷わないようにするためにも大事な作業だ。
この日は凪いでいて気温も11℃前後と非常に登りやすい。
湿度は60%位と昨日に続き少々高めだったが、乾き手の河合は気にならない。
この日はトップロープで3回トライし、中間部の核心に手こずるも、3回目で遂にノーテンとなった。
これは行けそうだ。
Tさんも、昨日よりは大分感触が良くなったようだ。
流石に強い。
「明日からリードだねー」と話す。
この日は漸く行きつけのスーパーStater Brosが開いていて念願の牛肉が買え、昨年に続きステーキ+パン+スープの日々が始まった。

12月27日 晴れ 爆風
さあ、今日からRPトライだ!
と気合入れつつ、爆風予報なのでまったりアプローチ整備しながら向かった。
小石しか目に入らなくなったら、うっかりサボテンの棘が指に刺さった、いてぇ。
何やってるんだ…
このルートに通っている人なら知っている。
「爆風の日はグレードが上がる」
それでも覚悟を決めて1便目からリード。
前半の核心を辛うじて超えたが、クラック左面のゴミスタンスに乗せた足が、風でバランス崩れると簡単に抜ける。
クラックに刺したカムも、カラビナが揺れてクリップできない。
「ヤバイ、ぶっ飛ぶ、クリップできた!」
という感じで中間部の核心は超えたが、後半の幅広フィンガーゾーンをこなすパワーは残っておらず、呆気なく落ちた。
あまりに怖かったので、次の便はトップロープに戻すも、普通にテンションが入った。
だめだこりゃ。
Tさんも強風の洗礼を受け、ロングフォールでぶっ飛んできた。
この日は他に1パーティ。
なお、多分この日から(もっと前からだったか?)、Equinoxをトライする面々の残飯を漁るサバクトビネズミが出現するようになったが、この日は顔見せのみ。
まだ警戒されているようだ。

夕方が近づくと影が伸びる
夕闇シルエットのJerry’s Quarry

この日はロス在住で、昨年もお世話になった日本人のTさんと、クライミングギアの充実っぷりに定評のあるNomad Venturesで待ち合わせ。
ボルダリングマットや電源等の支援物資を貸していただいた。
海より深く感謝だ。
時間も遅くなったので、この日はPanda Expressで夕食。
安い、量多い、味濃い。

12月28日 晴れ 爆風
この日も爆風予報だったのと、3日間のEquinoxトライで指がいい感じに腫れてきていたのでレスト日とし、スティングレイ5.13d見学ツアーへ。

逆Slashfaceを見つけた

1本手前の谷に入って迷うも、無事辿り着いた。
あまりの傾斜に、登っていないのに指が疼いた。
Fixが張ってあり、誰かトライしているようだ。

圧倒的な傾斜が中々伝わらないStingray 5.13d
アプローチに咲いていた小さなデイジーEriophyllum wallecei

デイジーの花畑もあり、マクロレンズを持ってきて良かった!
その後、More Monkey than Funkey5.11cを見に行くも、トポの誤った矢印に惑わされ、また迷った。
Tさん曰く「瑞牆のアルカイックスマイル5.12a位」のルーフで、Separate Realityを知っている身としては、あまり食指が湧かなかった。

かわいいウチワサボテンを撮っていたら背景に不審者が混じった
トライ中の人がいたMore Monkey than Funky 5.11c

そもそもエンクラ(米国ではfun climbと言うらしい)する余裕が今後あるのか。
この日は29 Fitnessでシャワーを浴びた(5ドル)。
クライマーが来ることをよくわかっていて、スムーズに使わせてもらえた。

お世話になった29 Fitness

この日も牛肉ステーキで、Stater Brosで買った肉が、かつてない大当たりだったが、どの部位の名前だったか忘れた。
Eye何とか、だったような。

当たりの肉の写真はこれだったか?

12月29日 晴れ 爆風
この日も爆風予報だったが、めげずにEquinoxへ。
気温6.5度、爆風、めげた。
めげないTさんは1本トライするも、出落ちして、めげてエイドダウンしてきた。
だよねぇ。
河合は結局トライせず。
Tさんがパーフェクトな無風レストポイントを発見して、そそくさと避難。
この日はクリスチャン氏パーティとご一緒した。
インディアンクリークの0.4を8つ使う狂ったフィンガールートをお勧めされた。
5.13b/c位らしいのだが、ルート名を忘れてしまった。
クリスチャン氏は5.12・5.13クラックを登りこんでいるらしく、ヨセミテやインディアンクリークの色々なルートの情報を教えていただき、感謝。
なお、経験豊富なクリスチャン氏曰く、「俺の指は結構太いけど、Equinoxは5.13aに感じるぜ」とのこと。
かなり惜しいところまで行っていたが、これからスペインにクライミングトリップとのことで、「Good luck!」との言葉を遺して去っていった。
蛇足ながら、このクリスチャン氏、名に偽りあり。
爆風の中トライして落ちて「〇uck’in 〇uck!」と叫んでいた。
おいおい、その名前でそれ言うか?
Tさんはツボにはまったようで、その後、もはや間投詞のように「〇uck’in 〇uck!」と口ずさんでいた。
この頃からTさん(英語話せない、本人談)の英語かぶれ率が上昇。
日本語で話しかけると謎のアヤしい英語が返ってくるようになってきた。
頻出ワードは「You can do it!」「Come on!」とやたら前向き。

クリスチャンらしくないクリスチャン

その後はJerry’s Quarry周辺のボルダーエリアを見学して遊んだ。
気持ちの良さそうなランジルートV6があってそそられたが、ぐっと我慢。
Equinox登るまでは他は触らないぞ。
と思ったら、アプローチシューズで簡単なV0位の岩を登ってしまった。
クライミングシューズを履いていないのでノーカウントだ。

ランジのV6課題

「頼む、登らせてくれ」の図
チムニー遊び
葉緑体を持たない寄生植物のPholisma arenarium

この日は、East Gateのビジターセンターを見学してから、肉を焼いた。

12月30日 晴れ 微風
この日は待ちに待った微風の日だ。
落とす気満々でEquinoxへ。
1便目で後半核心を超え、最後のレストポイントへ入れるも、途中足が切れてキャンパになって大幅に力をロス、最後の核心で落とされた。
でも、ノーミスなら行ける確信を得た。
2便目は、同じくキャンパになってしまったが、最後の核心を超えて、「行った!」と思った。
しかし、最後の最後で完全に余力がなくなり後3手のところでぶっ飛んだ。
ロープに足が入らざるを得ないので逆さま落ち…
Tさんは、この日2便目で修正してきて、きっちりと完登!
が、しかし、小指の感覚が戻らないらしい。
大丈夫か?
この日はこの後が受難だった。
地元の3人パーティが来て、おねーさんがトップロープを懸垂下降しながら張っていた。
その後3人でトライしていたので3便目を出すタイミングを待ったが、なんか皆ずっとコンコンやっている。
聞いてみると、紫トーテムをスタックさせたとのこと。
「まじかっ!」
なんで0.4サイズのクラックに0.5なんて入れてるんだ、というか入ったんだ…
曰く、「テンパって入れちゃったわ」とのこと。
緩やかに屈曲しているルートなので、普通に下からビレイしてもらってロアーダウンでセットすれば、テンパることもあるまいに…
別のお兄さんにチェンジするも、あまりにずっとコンコンやっているので痺れを切らせ、
「回収得意なんで、代わりにやってあげるから1便出させてくれ」と頼んで、日没直前に泣きの1便。
しかし、残置カムが気になって集中できず、落ちなくなっていた中間部の核心で、残置カムが視界に入ったら普通に落ちた。
しかも、落ちた際にチョークバックに手が当たって、ブラシが岩の間に消えていって回収不能に…
なお、この岩の割れ目は靴を落とした人もいるらしく、昨年もブラシ1本飲み込まれたので、物を落とさないよう、要注意。
運よく残置カムは手では使わないところだったが、足置きには邪魔だった。
その後ヘッドライトを上げてもらい、意地になって1時間位格闘したが、結局残置カムは回収できず。
寒さと苛立ちで、思わず「くそっ!」と夜空に吠えて、下で待っている面々の空気を凍らせてしまった。
すんません…

寒空の下、意地になって回収作業

やらかしたパーティも、真っ暗な寒空の下、ハンマーとナッツキーを振り回す姿にいたたまれなくなったらしく、「俺たちのテントサイトに来てくれたら暖かいもの出すよ~」と言って去っていった。
スタックパーティが先に帰ったので、その後ダラダラ片付けしていると、奴が出た。サバクトビネズミだ。
日が落ちたら極めて図々しくなり、サーマレストの上に落ちたパンくずを、目の前で漁り始めた。
ついにTさんのギア袋の中にまで勝手に侵入し、勝手に出られなった。
「オラオラオラー、どうしたー」
「〇uck’in Stupid Mouse!」
「〇uck’in 〇uck!」
「お前はバカだー」
「袋のネズミとはまさにこのことだなー」
「とらわれすぎぃー」
「う〇こするなよ、絶対う〇こするなよ」
「やべぇ、かわいい…」
「う〇こしそう、こいつ…大丈夫か?」
「完全に今こいつ途方に暮れてるよ」
「動きはぇぇ」
「人間のエサに頼り切った結果がこの有様だぞ、君たちっ!」
「簡単に袋に入ってきましたもん、なんにも考えずに袋にはいってきましたよ、こいつ」
「あぁ、出たっ」
「(すぐにサーマレストにこぼれたパンくずを漁り始め)お前ちょっとは逃げろよ…」
という謎会話がネズミ動画に録音されていた(どれが誰の発言かは黙秘)。
私は認識できなかったが、Tさんの話ではもう1匹いるらしく、どうやら、つがいでEquinoxをトライする面々の残飯を漁る特等席を縄張りとしているらしい。
岩の下に結構新鮮なう〇こが散見されたわけだ。
丸くて恰幅の良いネズミだったが、岩の上での動きはとんでもなく俊敏だった。
沈んだ心が癒された。

夕方に撮ったサバクトビネズミの一種(Grasshopper Mouse)。足は長くない

この日は回収で遅くなったので2回目のPanda Express。
せっかくのTさんのRP祝いなのに、河合は珍しく凹み切っていて申し訳なかった。
なお、Tさんは河合がカムを叩き続けている間に、地元パーティとの英会話を楽しんだらしく、次にトライするルートとして、Leave it to Beaver5.12aをお勧めされたとのこと。
おっ、Tさんの英語力が進化しているぞ!

12月31日 曇りのち雨 無風
一晩寝たら、どん底に沈んだメンタルは不思議と戻っていた。
最近、歳のせいで物忘れが激しく、Tさんも呆れる程なのだが、今回は幸いしたようだ。
「せっかくの美しいルートを残置無しで登れないのは悲しいけど、The Noseも残置だらけだった。細かいことは気にせず登ろう。残置トーテムは足置きに邪魔で難しくなったので、よりChallengingだ!」と前向きに捉えることにした。
アプローチのJoshua treeの花房が膨らんできているのを発見、癒された。

花は2月に咲くらしいJoshua Tree。ポリネーターは1種類の蛾だけとか

この日は雨予報だったが、午前中は持ちそうな気配だった。
チャンスは1便のみと読み、入念にアップして準備し、離陸した。
11℃、湿度30%、無風、最高のコンディションだ。
やはりそこには憎き残置カムがあったが、もはや何も感じず、踏みかけたが淡々と避けて足置きをこなした。
指が腫れていて思ったより指が入らなかったり、逆にスタックして抜かなくなったりもしたけど、やはり何も感じない。
淡々と、「指抜けねーなー」「腕戻ってこねーなー」「足切れないようしっかりゴミ踏むぞー」「ここで落ちたくねーなー」など、緊張半分であれこれ考えながら登っていたら、ほぼノーミスで最後のレストポイントまで辿り着いていた。
前日の2便よりは明らかに余裕がある。
「これは、ミスらなければ行ける。」
最後の核心は力が入ったが、慎重にこなしてビクトリーガバスタンスへ。
「あー、しんどっ。」
思わず、ぽつっと一言呟いていた。
念入りに休んでから、全力で保持り倒して超慎重にマントルを返し、てっぺんに到達、終了点を手繰り寄せてクリップ。
「終わった。」
呟いてから、叫んだ。
終わってしまった。
このルートを登りたくてクラックを始めた。
10年位は経ったかもしれない。
登れてしまった。
最初にこみ上げてきたのは、いつものように芯から湧き上がる完登の喜びというよりは、一抹の寂しさだった。
「終わった。」
これ以外言葉にならなかった。
気が付いたら、涙が流れていた。
とっても嬉しいはずなのだけど、何か一つの長い旅路が終わったような気がした。
暫くしゃがみこんで、動けなかった。

終わった…

ふと、遠くから声が聞こえると思ったら、今日から合流のロスのTさんMちゃん夫妻だ。
めそめそしている姿をしっかり激写されてしまった、恥ずかしい。
その後記念撮影もしてもらえて、感謝。

記念撮影

足掛け2年、12日30便をかけてEquinox5.12cが登れた。
ローリングストーン5.12dや流れ星5.12dは、決して良い時期とは言えない夏にトライしたが、Equinoxよりずっと易しかった。
今まで登った他の5.12dトラッド(タランピオン、タランチュラ、スカラップ、ブリザード)と比べても日数、便数ともほぼ倍以上の労力がかかっていて、瑞牆か小川山にあったら5.13aはついていると思う。
Tさんも同じ感想で、少なくとも小川山の2本とブリザードよりは難しいとのこと。
だがしかし、ここは激辛サンドバッグの地、Joshua Tree。
昨日カムをスタックさせたパーティの青年は、「他にこれより難しい5.13をいくつも登っているけど、5.12台だと思う」と話していた。
また、Tさん曰く、河合はどうやら昨年作った難しいムーブに固執していたようで、もっと易しい登り方もあるらしい。
極端に難しいムーブはないので、持久力があって、この手のフィンガーに慣れている人はあまり難しく感じないのかもしれない。
それでも上部のガバ(だったらしい)フレークがぶっ壊れて綺麗さっぱりなくなっている現在、5.12cということはないだろうと思う。
圧倒的な存在感とかっこよさ、最初から最後までフィンガークラックという素晴らしくも恐ろしい内容がこのルートの全て。
グレードはあくまでも、人により付け足された特性の1つに過ぎない。
「目いっぱいのフィンガークラック」
これを体験したい人に、このルートは良いターゲットとなるだろう。

さて、無事終わったので次は残置トーテム破壊ミッションだ。
「ぶっ壊して回収するぞー」と意気込んでいたら別のパーティがやってきて、「えっ、カムスタック?紫トーテム?何それ、俺、丁ちょうど欲しいサイズなんだよね。俺が頑張るからいいよ!あ、ティックは参考にしたいから残しておいてねー」と陽気な兄ちゃんが言うので、回収とティック消しは任せることにしたが、残置カムの回収に成功したか、ティックをちゃんと消してくれたかはわからない。
ロスのTさんがフォローでEquinoxを初トライ、静かに闘志に火が付いた模様。
これでJerry’s Quarryとはお別れだ。
名残惜しく、何度か振り返った。

さて、残った時間で何をやろうか。
残りの日程は、散々付き合ってくれたTさんの専属ビレイヤーだ。
まずはTさんがSlashface V3がやりたいとのことなので、マットを取りに戻ったが、雨が降ってきてしまった。
それでもTさんは華麗にオンサイト。
曰く、「Equinoxの方が、よっぽど怖い」

Slashface V3をオンサイトするTさん
別角度から。高い!

続いてロスのTさん、Mちゃんととともに河合もトライしたけど既に普通に雨、核心で2回右足がスリップしたところで敗退。
さすがに靴が濡れてると無理か。
マントルもあまり良くないらしく、リップがびしょ濡れの状態だったので、核心を抜けられなくて良かったのかもしれない。

雨が本降りになってきたのでキャンプ場に戻ってくると、朝、Spider Line5.11dを登るかもと話していた松本からの3人パーティが、まだ取りついているではないか。

Spider Line 5.11dを登る松本のTさん

「これは雨でも登れる!」ということで、いそいそと雨の中Spider Line5.11dに向かう。
オンサイトトライをTさんに譲ってもらうも、普通に出だしでテンション。
カムを入れたいスロットを指でも使うパターンで、突っ込めなかった。
その後各駅停車で上に抜けたが、コーナーのステミングが中々日本にない感じで面白かった。
しかし、Tさん曰く「瑞牆のアルカイックスマイルっすよ、これ。」とのこと。
このコメント、遠征中、別の場所で聞いた気がする。
Tさんも河合と同じところでテンション、びしゃびしゃの上部をこなしたところで、日が暮れたので撤収。
この日はロスTさん夫妻のテントで、松本の3人組を交えて大宴会。
Tさん夫妻プレゼンツのおでんやチャーシュー、松本組プレゼンツの白米に酒で幸せな大晦日を過ごせた。
ありがとうございました。
RP後の飯や酒は、やはり格別に旨い。

1月1日 雨のち曇り
新年明けましてびしょ濡れ。
朝は一時的に雨が止んでいたが、すぐにまた降りだした。
松本組がBig Bob’s Big Wedge V5はルーフクラックだから登れると話していたのを思い出したので、ゆっくり支度して行ってみることにした。
場所は例によって最初迷いかけたが、岩の間からうなり声がしたのですぐ見つけられた。
松本組のTさんが渾身のトライで吠えていた。

Big Bob’s Big WedgeをトライするKさん

抜け口から手前に向けて結構濡れていて滴ってきたり、下地に小川が突然鉄砲水のように爆誕したりしていたが、とりあえず1便出させてもらう。
サイズは外人には多分快適であろうが、手が薄い私にはフィスト気味。狭まっているところを丁寧に選んでワイドハンドを決めていく。
Separate Realityのルーフ出だしを思い出すサイズ感だ。
後半はさらに拡がってきて、手をクラック奥に突っ込んで、びっちょりであまり感じることのできないフリクションに頼ることに。
ジャムが抜けそうで怖い。
袖に容赦なく水が入ってきたところでギブアップしたが、濡れていても大体こなせたので、ルーフ部分は問題なさそうだった。
しかし、抜け口のびちゃびちゃフィスト部分を少しだけ練習したところで、あまりの濡れっぷりに心が折れた。
アラスカのアンカレッジから来たパーティも、頑張っていた。
雨の日に考えることは、皆同じだな。
「やっぱこの時期、アラスカじゃ登れないの?」
「うん、無理。」
そりゃそうか。
その後は、クライミングしていたらまず行かないであろうCotton Wood方面へドライブ。
最初はガスに覆われてどうしようもない感じだったが、Cotton Wood Springに辿り着いた頃には雨が止んだので、軽くハイキング。

これが砂漠のオアシスか。水は湧いてなかったけど

その後はCotton Woodのビジターセンターへ。
自然史の展示が充実していて、とても興味深く、また面白かった。
欲しかった花の図鑑も手に入った。
文化的な側面に重点を置いているEast Gateのビジターセンターよりは、こちらのビジターセンターの方が私にはずっと楽しく、思わず長居。
その後は、天気が回復してきたので、路端にあるガイド説明板に片っ端から止まって、記念撮影を繰り返した。

謎のサボテン群落

大平原の景色は壮観で、日本ではまず見られない素晴らしい景色だった。
この辺りはMojave Desert(Joshua Tree側)とColorado Desertの境界線になっていて、山を境に大きく景観が異なる。
多分クライマーはMojave Desert側にしか用がないと思うけど、Colorado Desertの大平原は一見の価値があるので、是非レスト日に見に行ってみることをお勧めしたい。

Colorado Desertの大平原

その後シャワーを浴びに29 Fitnessに向かったら、駐車場にどっかで見たことのあるような、ないような兄ちゃんが、しきりにこちらを見てくる。
「Are you trying Equinox last year?」
「Yes! Exactly!!」
思わぬところでの再会、無事完登したことを報告できたが、名前を聞くのを忘れた。
後日聞いたところでは、この日、松本組は雨上がりにHot Rock5.11cを登ったとのこと。
腑抜けた我々とは違うなぁ。
モチベーションの高さに頭が下がった。
この日は、Black Bear Dinerで豪華なハンバーガー。
夜は歯磨きしながら岩を下見するというTさんのルーティーンに同行、月明かりに浮き上がる名ルートの数々は、幻想的だった。
コヨーテにも出会った。

1月2日 晴れのち霧
ようやく晴れた。
ここは本当に砂漠なのか、小一時間問い詰めたくなる(多分Tさんが河合に)。
この日はTさんセレクトのWangerbanger5.11cだ。
にもかかわらずオンサイトトライをもらってしまった、ありがとう。
駐車場に着いたら、ちょっと遠くにはっきりと見えて、とてもかっこいい。
近くで見ると、どう見てもシンハンド-オフフィンガー核心のスプリッターだ。

左がWangerbanger 5.11c、右がO’Kellkey’s Crack 5.11a

これは、いかさま師に鍛えてもらった、にわかなばらーもどきとしては、落ちられない。
車に鍵閉じ込めをやりかけたことが気がかりなTさんの駐車場全力疾走往復というハプニングがあったものの、無事離陸。
何事もなく核心を通過するも、足が滑って片手キャンパとなってしまった。
気合で耐えてワイドに入り込むも、奥がしっとり濡れている。
これまた気合で終わりかけた腕を回復させ、危なげありながらオンサイト。
やらかしかけてしまったので5.11b易し目位に感じたが、乾いていたら5.11a位なのかもしれない。
Joshua Treeのグレードにしてマイルドだなと思ったが、Japanese Thin-hand Magicだろう。
その後、終了点をリップから続いているクラックに作ってしまい、ロープがスタックしかけて、泣きを見た。
何とか可能な範囲でクリーニングし、ロープを解いて、隣の易しいパーティの道案内で壁に向かって左側から下降(実は右側下降の方が楽との噂が…)、残りはもう1回途中まで登ってエイドダウンで回収した。
Tさんは危なげなくフラッシュ、隣のO’Kellkey’s Crack のパーティから終了点を借りて下降してきた。
O’Kellkey’s Crack 5.11aの出だしは非常に高くて悪く、プロテクションも決められず、私のリーチでは、できる気がしなかった。
トライしていたおねーさんは、パートナーのショルダーを踏んで出だしを突破していたらしい。

Wangerbangerの取り付きは絶景

スプリッターハンターのTさん河合は、すぐに次なるターゲット、Heart of Darkness 5.11aに移動。

王蟲が見える…

駐車場のOyster Barは満杯で停められず、隣の駐車場から歩いた。
そして、また迷った。
空身で捜索して何とか発見、中々凄いところにあった。
これを見つけた人は、きっと心に闇があったに違いない。

岩の間にあるHeart of Darkness 5.11a

Tさんが何事もなくオンサイト。
河合も下部でカムの選択ミスって外すのが核心で、後はどこが核心かわからないうちに終了点に着いていてフラッシュ。
日本にあったら5.10cの易し目か5.10b位だろう。タイトハンドからシンハンドの短い綺麗なルートだった。

さて、時間が余ったので次なる課題をTさんに「どうする?Big Bob?、Spider Line?、他行く?」聞くと、Big Bob’s Big Wedge を終わらしたいとのことで、さらに移動。
途中から猛烈な霧の中に入った。
Big Bob’s Big Wedge V5は、前回雨でトライできなかった抜け口からトライ。
4番タイトサイズのスカスカフィストで、極めて悪い。
湿度もついに95%から100%に進化してしまった。

繋げに備えてルーフ部分をワークするTさん。しかし抜けが…

途中、Equinoxでカムをスタックさせた地元クライマー一行が来た。
スタックしたカムと闘っていた兄ちゃんは、めちゃくちゃルーフクラックが上手い。
抜けのムーブを教えてもらうも、フィストのサイズが違い過ぎて再現しない。
結局、最後、「これならいけそう」というムーブを見つけるも、湿度100%とランディングの悪さに日和って突っ込めず。
1時間半位頑張ったが、Tさんとともにトップアウトできないまま終わった。
悔しい。
JoshuaのV5、恐るべし。
瑞牆か小川山にあったら、間違いなく初段以上はついているであろう。
なお、最後はがっつりハイボルダーのため、ロープ付けてカム刺してインバージョンするのが正解かもしれない。

極悪の抜け。フィストの厚みが欲しい。フェイスムーブもだめだった

締めは我々のキャンプサイトにあるStem Gem V4でナイターだ。
このルート、マットなしでスタートするのはどうやっても不可能。
私もTさんも、マット3枚積んで、ようやく離陸できた。
途中で別のナイターパーティが合流してマットが増加。
父親が海兵で子供時代は沖縄にいたらしく、日本を懐かしんでいた。
女性の方は非常に上手く、ささっとRPしていた。
Tさんは粘りのトライでRP、河合は離陸が精一杯、右膝がぶっ壊れそうになったのでトライを中止したが、右膝の芯が暫く痛かった。
特に遠征では、体に悪いルートにムキになってはいけない。
なお、このルート、下降も結構怖い模様。

Stem Gemでナイターに勤しむTさん

この日も遅くなったので夕食はPanda Express。
今回はよくPandaのお世話になっている。

1月3日 曇り
朝起きたら、サイトの端を靴だけ持った人が通り過ぎて行ったと思ったら、やにわにクラックをフリーソロ始めた。

フリーソロしている…

朝っぱら、岩峰に大体人がいるのだけど、どうやらフリーソロ朝活している人が結構いるようだ。
この日は再びロスのTさんMちゃん夫妻と、さらにロス在住Kさんが合流。
Tさんが自らのプロジェクトになっているLeave it to Beaver 5.12aをやるとのことなので、合流させてもらうことにした。
Mちゃんは隣のClean and Jerk 5.10cがプロジェクトとのこと。
Leave it to Beaver 5.12aは見た目、出だしと中間部のプロテクションが悪そうだった。
松本組がロングフォールで怪我してしまったと聞いていたのもあり、後半戦でヨレているのも言い訳に、下から攻める気力が湧かず、最初からトップロープで遊ばせてもらうことにした。
2便目で、テラスから上は左回りでノーテンとなったが、プロテクションがヤバそうだったので右回りに変更。
この日、ロスのTさんはRPしてプロジェクトに終止符を打った。
気持ちの入った素晴らしいトライだった。

BeaverをRPするロスのTさん

感化されたTさんは4便目で気合のRPをしていた。
直前にはBeaver取り付きのV6もオンサイトしていたし、流石だ。
瑞牆Tシャツが光るぜ!

BeaverをRPするTさん

私は、一瞬RPトライが頭をかすめるも、ムーブとカムを丁寧に決めつつ結局、4便まったりトップロープで登った。
トップロープは好きではないけど、こういう時に頭空っぽにして楽しめるのはありがたい。
夕食は皆で鍋と、Walmartで仕入れたサーロインステーキで大宴会。
肉が旨い、鍋が旨い、幸せだ。

1月4日 曇り
クライミング最終日だ。
日程後半の日々の過ぎ去るスピードは、とても早く感じた。
Tさんにお願いして、朝イチでLeave it to Beaver 5.12aに1便付き合ってもらった。
今回必須品だったマグマカイロを忘れて車に取りに戻ったら、ハヤブサが岩峰に止まっていた。
今回も上空を舞っているのを数回見ている。
Beaverは最後うっかり足が切れたりしたけど、余力を持って登れた。

BeaverをRPする河合

日和らずに、1日で詰め切るべきだったかもしれない。
でも、ロスTさんのベータもあったし、5.12aにしては少々悪いように感じ、体感5.12b易し目といったところ。
TさんはBeaver取り付きのV5のトラバース課題を完登した後、Beaver左横のClean and Jerk 5.10cを華麗にオンサイト。
下部の岩が冷たいらしい。
Mちゃんも冷たいと言っていて、嫌な予感…
出だしがどう見ても悪そう…

Clean and JerkをトライするMちゃん。5.10cとは思えない迫力!

結局河合も出だしの冷たさと悪さに苦しめられ、思わず悪態ついたけど、後半は口笛吹きつつフラッシュ。
体感5.10d.
Joshuaのグレードは出だしを考慮していないのか。
次にトライを開始したおねーさんは出だしをこなせず何度も飛び降り、辛うじてセットしたカムは見事に花が咲いていた。
「まずくね?」と思っていたら、敗退していた。

壁に咲いた一輪のカムの花

最後はTさんとイリュージョンの世界に旅立つため、Illusion Dweller 5.10bへ移動。
Tさんオンサイト、河合フラッシュ。
まさにイリュージョンの住人になるかのような、今回登った中で一番楽しい、素晴らしいルートだった。
70mロープ必携!
体感5.10c。

Illusionへの旅を約束するIllusion Dweller

その後は、日本では非合法の葉っぱをキメているおじーさんのアツいBeaverトライを見たりしながら最後の夕方をまったりと過ごした。
Tさんは、「Equinox? ITAI-ITAI!!」などという謎の会話をおじーさんとしてそうで、ちゃんと伝わったそう。
締めは昨年同様、Joshua Tree Saloonで宴会!
相変わらず旨い。
実は今回、夕食で何度もトライしていたがいつも混んでいて5連敗、6度目の正直で入れた。
Equinoxより難しいんでは?
昨年と同じウェイトレスさんが担当で驚いた。
この日はHigh Desert Motel泊。
「荷物が入らない!」と、何度も首をかしげるTさんが印象的だった。

荷物入らん…

1月5日 晴れ
名残惜しくも、ロスまで運転、今度は3時間位で到着。
入国審査は空いていて一瞬だった。
あぁ、帰りたくない。

1月6日 曇り
夕方帰国。
うっかり、今回使ってない方のパスポート番号(仕事上、パスポート2枚持ち…)でVisit Japan Webに登録してしまい、「パスポートと番号が合いません」表示が…
最後に、またやっちまった。

そんなこんなで、2回目のジョシュア遠征が終わった。
地獄の26連勤を耐え抜いた甲斐があって、働き始めて初めて14連休が取れ、中11日をJoshua Treeで過ごすという贅沢な日々を過ごすことができた。
何より、Equinoxを完登できたことが嬉しい。
Equinoxはオンサイトもたくさんされているようで、高レベルの人々には特に難しくないルートだと思うけれど、私のような、働き始めてから(実質的に)クライミングを始め、際立つ才能もなく、仕事に多大な悪影響を受けながらも辛うじて細々と続けているような凡人クライマーにとっては、特別かつチャレンジングな1本だった。
再び魂を注ぎ込めるような1本に出会える日を楽しみに、まだまだ登り続けたいと思う。
最後に、Equinoxへの長い道のりを付き合ってくれたTさん、また今回も大変お世話になったロスのTさんMちゃん夫妻、ご一緒したKさんと松本組のみなさま、そして昨年同行してくれたK君コンビ、その他お世話になったみなさま、どうもありがとうございました。

成果
Equinox 5.12c RP
Leave it to Beaver 5.12a RP
Wanger Banger 5.11c OS
Heart of Darkness 5.11a FL
Clean and Jerk 5.10c FL
Illusion Dweller 5.10b FL

宿題
Spider Line 5.11d
Big Bob’s Big Wedge V5
Stem Gem V4
Slashface V3