河合(記)
注:暫くトップロープの悪口ばかり書いているので、老害の囀りと思ってスルーして下さい。
唐突だが、私はトップロープが好きではない。
登山からクライミングに入った私にとって、クライミングは登山の延長線上であり下から登るもの、何で予め上から吊るされているのか。
もちろん、トップロープしないわけではない。
特にアイスクライミングを始めた頃はトップロープでたくさん練習した。
でも、フリークライミングがメインとなっている現在は、なるべくトップロープを避けている。
チョンボ棒も、そんな格好悪いものを持つ位ならクライマーを引退しようと思っている。
そのくせプレクリのルートで木の枝が落ちてなかったら、他人から借りているけど…
トップロープに多くの有用性があるのは疑うべくもない。
・ルートにボルトを打って傷つけないで登ることができる
・リードと比べ圧倒的に危険が少ない
・ムーブ練習やプロテクションセット場所探索に集中でき、効率が良い
・時間がかからないので多くの本数を登ることができる
などなど。
一方、トップロープを多用している場合の弊害もある。
・落ち方が上達しない
・プロテクションの評価が上達しない
トップロープで安全を求めるが故に、逆にリードする際の危険が増している場合もあるように感じる。
ありきたりな結論だが、トップロープは、各自の許容できるスタイルの範囲内で、よく考えながら「うまく」使うことが大事なんだろう。
ついでにもう少し毒を吐いておく。
トラッドルート(特にボールドなルート)で、手段を問わず何でもありで(チッピングは当然除かれる)、最終的にルートを完登するスタイルをヘッドポイントと言うらしい。
岩にボルトを打たずクリーンに登るという潔さの点から、このスタイルは理解できる。
しかし、トップロープで徹底的にリハーサルした後で、最終的にリードして完登するのが本当に「トラッド」なのか疑問に感じる。
ハイボルダーのトップロープリハーサルも同様だ。
理想論だが、トラッドなら当然グラウンドアップじゃないの?と思うのだ。
秀峰に入れてもらった時に、故向畑代表に色々な岩場に連れていってもらった。
向畑さんもトップロープは嫌い(?)で、氷結の不十分なアイスの一度を除き、トップロープをさせてもらった記憶がない。
ノー・トップロープを通じて進むか退くかの判断等、鍛えてもらったように思い、おかげさまで今に至るまで骨折せずに済んでいる。
今回、コロッサスを登るに当たり、トップロープを含め色々妥協してしまい、お世辞にも良いスタイル・プロセスとは言えない完登となった。
向畑さん、安全という盾に隠れ、禁断の果実を口にしてしまった弱い私を、天国で笑ってやってください。
さて、前置きが非常に長くなってしまったが、コロッサスについて。
故杉野保氏初登の、時代を超越したルートだ。
実質的にシーサイド初の5.13と考えられており、5.12cと発表されたが、現在は5.13aまたは5.13bとされている。
有名さとは裏腹に、近年は1シーズンに数名程度しかトライしていない模様だ。
理由は明快で、下部がR指定のトラッドで危険だからだ。
この敷居の高さのため、シーサイドの高難度をトライする猛者達も大体素通りしていく。
R部分は易しめの5.11b程度で、(コロッサスをトライしようと思う人には)問題になる難易度ではないが、プロテクションのセットできる箇所が限られ、1箇所でも抜ければ多分地面まで戻ってくるので、不用意な墜落は絶対にできない。
実際にグラウンドフォールして、ヘリのお世話になった人もいたらしい。
後半の核心はボルトに守られているものの、そこは杉野ルート、ロングフォールの恐怖と闘いながらムーブを探ることになる。
核心は突き詰めれば一手。
ハイステップからの右手ランジ、下足からの右手デッド(リーチある人限定で足が残る)、ヒールからの左手デッドの3種類のムーブがあると思われるが、いずれも激しい。
初登者は右手ランジだったらしい。
ランジに入る前の左手カチへのデッドも悪く、左手カチへのデッドで始まる一連の核心4手で初段、その手前のリップに到達するまでで、悪めの5.12b位はある。
なお、リップでレストしている暇はなく、5.12bからの間髪入れずの初段ムーブである。
どう考えても5.12cではない。
私のサイズ(身長165cm、リーチ169cm)では核心までのムーブが随所でパッツパツ、私は難し目の5.13bか、易しめの5.13cあってもおかしくないように感じた。
杉野ルートの常で、ボルダー力が一定の水準に達している者はすぐ登れるらしく、オンサイトも記録されているそうで、1~2日で終わる人も結構いるらしい。
一方、できない人にはどうやってもできないルートのため投げ出す人も多く、グレーディングは難しい。


初めてトライしたのは2023年1月。
スプラッシュのトライで左膝が痛くなった時、Sさんがトライしていたので、ボルトにクリップしたトップロープ状態で触らせてもらった。
今思えば安易な発想であった。
1度だけランジ体勢に入るも、発射できず終わった。
本格的に取り組み始めたのは2023~2024冬シーズン。
2023年の春~秋シーズンは全くクライミングできずすっかり弱っていて、コロッサスでリハビリ。
ワンシーズン捧げれば終わるだろうと、舐めていた。
トライされている形跡がなくホールドに潮が乗ってそうだったので、プレッシャーダイレクト経由で上からホールドの掃除を行い(意地で核心のホールドは触らず。しっかり見てしまったが…)、R部分のムーブのリハーサルをした後、プロテクションをプリセットしてリードした。
R部分で少し落ちそうになり、肝を冷やした。
最初の頃は毎日朝の1便のみリードし、後は他にトライする人もいなかったのでロープを引き抜かずにトライした。
怖くて何度もR部分をトライしたくなかったが、ムーブが自動化されてからは大分恐怖感はましになった。
結局、冷やかしでトライしてくれた友人以外は、ほとんどセッションすることなく孤独な闘いとなった。
ランジ発射の左手ホールドが極悪、ランジはベストの取り先がよくわからず、大フォールを繰り返した。
年末のトライではランジ後体勢を崩して片足着壁し右足踵を打撲、2週間戦線離脱。
ビレイはしっかり流してもらうと良いことに気づいた。
後で、ランジで体勢崩して逆さま落ちもやらかしたが、この時の反省を元にしっかり流してもらっていたので事なきを得た。
年明け怪我からの復帰戦トライでは、コロッサスにトライしていたSさんが3つ目のボルトから蜘蛛の糸(スリング)を垂らしていた。
踵がまだ痛くて大フォールするとヤバいことを言い訳に、思わずクリップしてしまった。
せめてもの矜持として、ランジホールドとランジ起点となる左手カチはハングドックして触らない(探らない)、ランジが止まるまで次のセクションに行かないことで妥協し、引き続き右手ペシペシ叩きを繰り返した。
中々思うようなトライができない中、やっと計7便目(色々あって既に計5日目…)の16ランジ目、偶然右手が狙いから外れたら、ランジが止まった。
しかし、その瞬間指皮が宙を舞った。
べろんちょである。
ランジ発射体勢までの下部も繋がり、実質後1手まで来た。
しかし、この1手が果てしなく遠く、天気と予定も全く合わない。
結局このシーズンは12日間トライするも詰め切れず、4月頭にヌンチャクを回収した。
最後はヌメヌメで勝負にならなかった。
2024-2025シーズンは、生涯目標ルートであるEquinoxのトライの前に怪我するわけにいかず、帰国した2025年1月から再開した。
前シーズンの後半は、朝イチの1便目以外はピンクポイントトライだったが、今シーズンからはヌンチャクをプリセット、カムは毎回回収のレッドポイントトライ(?)で臨んだ。
プロテクションは2箇所とも2つ固め取りしていたので、少しだけ疲労度アップだ。
ワンテン地獄が変わらず続いたが、一日毎に少しずつ進展があり、いよいよ射程圏内に入ってきた。
4日目の朝イチに、ついにランジが止まった。
と思ったら左手がすっぽ抜けて壁に衝突、親指から大流血。
なんとか回復させて、5日目の朝イチ、ランジが止まった時にそのまま登りきることができた。
結局18日49便もかかった。
リップに到達してから30回、うちランジ体勢に入ってからも18回落ち、シンデレラボーイ以上のワンテン地獄だった。
少しでもヨレているとランジが止まらなかった。
実力不足で完登までのプロセスとしては、少々不満の残るものになってしまったので、今後はもっと良いスタイルでトライできるよう精進したいと思う。
しんどいビレイなど付き合ってくださった皆様、ありがとうございました。
時々上に抜けられなくなってティック消せなかったり、消し忘れたりしました、すみません。
Old But Gold、硬派な1本、腕に覚えのある方は、是非!