2003年10月16日から2日間
森広、大滝(記)
幾度も計画してようやく登れた。
数年前、一度取り付きまで行ったが、取り付きが崩壊していた。
右隣の明峰ルートも判然としなかったので、更に右の雲峰ルートから合流しようとした。
しかし、2P目の2段ハングを越えようとして頭上のボルトを見たら、真っ黒に錆びた逆さボルトだったので、どうしてもアブミでぶら下がる気になれず退却した。
10月16日
7:20七倉登山補導所。
快晴12℃ 紅葉が綺麗。
8:10高瀬ダム6℃。
快晴による冷え込みで寒い。
沢沿いのアプローチは夏の大雨のせいか、荒れていた。
10:40大町の宿。
10℃ ツェルトを張る。
快晴だったのに、曇り初めて来た。
降雨が心配になってきたが、とりあえず大凹角に向かう。
いつものように右稜のコルで左に進むが、踏み跡が崩れていて、行けない。
引き返し、コルを4m程登って左を見ると何となく道っぽい。
草付に出ると取り付きの少し上に居る事が分かったので草を掴んで下ったら、ぽつりぽつりと来た。
秋の氷雨に打たれて悲惨な思いをしたくは無いので、中断し、大町の宿で長く寝た。
10月17日
4:30起床。
半月と星の空。
期待出来る。
S字初登ルートから取付く。
(出発前日、廣川健太郎さんに会えたので話を聞いたら、初登ルートが良いとアドバイスを受けた。)
B沢を詰めて行くと最後に巨大なチョックストーンが出て来た。
右から越えるか、左を登るか思案した。
ロープを結んで、初め左を少し登って見たが、ボロボロなので止めた。
右に行って見たが、恐いが、しっかりしていたので大丈夫だった。
越えたそこが取り付きの草付だった。
ロープを仕舞って運動靴のままバンド状を20m程右上する。
後はブッシュを掴みながら、適当にどんどん右上する。
垂壁の辺りの笹には氷がびっしりと着いていた。
ギアを身に着ける。
大滝、少し下って広いルンゼに出る。
図にはA0とあるがそれは無かった。
広いルンゼの何処を行ったら良いのか悩む。
登り過ぎず、下り過ぎずトラバースしてブッシュで切る。
森広、少し登りぎみに行くと、A0を使う所が有った。
雲峰のビレイ点が下に見えた。
2番目のルンゼを越えたブッシュの中でビレイ。
大滝、ルート図のとおり右上するが、右過ぎたので、一旦下って左気味に行ったら、太い枯れ木が横たわっていて、リングボルトがある所に出た。
左前方には、雲峰のルンゼとビレイ点が見える。
森広、ブッシュをカンテ基部まで登り、下り気味にトラバースするが、濡れていて悪い。
ビレイ点は雲峰のルンゼの真中だが、びしょびしょなので更に進み、スラブにあったビレイ点で切る。
大滝、広いスラブで何処を登ったら良いのか迷う。
残置ピンは見えない。
右上して左にトラバース可能か覗いてみたが、到る所濡れていて、滑りそうだ。
一旦、クライムダウンして 直上してみる。
こちらも滑りそうなので慎重に行く。
右足が一瞬滑り、ひやりとする。
バンドに出ると、ビレイ点が有った。
このまま進むとロープが足り無くなりそうだし、しっかりしたビレイ点なので切った。
森広、出だしのスラブが難しい。
小川山の5.9位の感じだ。
1本目のハーケンに足を乗せ越えて行った。
僕が後続した時、森広がアンダーホールドに使用したフレークの更に右の隙間に手を入れたらフレークが剥がれフォールした。
後は緩い溝状のスラブを進むと大岩テラスに着いた。
次の凹状スラブは到る所氷が貼り着いていてとても危ない。
即座に明峰のボルトラダーを登る事にする。
大滝、快適に乾いたA1をぐいぐい登る。
次もA1。
森広、出だし逆さハーケンなので慎重に乗ってみて越えて行く。
僕の番になった時、逆さハーケンが抜けてフォール。
幸い、アブミを掴んでいたので無くさなかった。
ハーケンを打ってあった位置よりも右のリスに打ち直して越えた。
大滝、クラックと言うよりも、狭い凹角と言う感じのピッチだが、全部濡れて居る。
見ているだけで恐ろしい。
残置もたまにしか見えない。
しかも1本目のハーケンは浅打ちでひびも入っている。
絶対に落ちられない。
昔の人がよく言った「本番では絶対に落ちてはいけない。」
と言う言葉が思い出された。
少し登るとホールドに氷が張り付いているので、ハンマーで壊しながら手を置き、足を乗せる。
息詰まる恐さだ。
時々現れる残置が非常に待ち遠しい。
空は快晴なのに、染み出しで濡れて居る。
冬に氷壁になるというのが理解出来る。
やっとの思いでハング下に着く。
物凄く長く感じたピッチだった。
ブッシュでビレイ。
落ちないで良かった。
左下にS字の振り子トラバースの支点が見える。
カラビナがセットされている。
この後が良く分からない。
図には左上クラックとあるが、そう言う物は無く左側に垂直フェースがある。
そこには1本しっかりしたハーケンがあるがその後どう登れるのか分からない。
真上は泥のハングだ。
右にブッシュをトラバースして行くのか。
森広の番だが、ビレイ点が狭くて交代し難いので大滝が行く。
右に行って見ることにする。
不安な草付きを渡り、強引にしっかりしたブッシュに抱きつく。
ブッシュにシュリンゲを巻き一安心。
すると快適なA1フェースが登場。
楽しくこなし、緩傾斜帯に出た。
そのままぐいぐいブッシュを登り、左の平らな所で切る。
登攀は実質終わった。
左上にもう1ピッチ伸ばしてから、ロープを解いた。
明峰交じりになったが、登れた。
あー、良かった。
時計を見ると、14:30遅い。
12時位なら良かったが、初めてだし、濡れていたので時間を食ってしまった。
さあ、下降だ。
岩場だけは明るい内に抜けなくてはいけない。
はやる心を抑えながら右へ右へと行く。
はっきりした踏み跡は無い。
やがてルンゼに行き当たる。
西壁ルンゼの上部ルンゼだ。
右に左に迷いながら下るが、最後に赤いテープに導かれてルンゼ自体を下ると右に見慣れた右稜下降点に着いた。
16:00。
大町の宿17:20そそくさとツェルトを畳む。
B沢と合わさる辺りからヘッドランプを点ける。
慣れた道なので特に不安は無かったが、金時の滝の高巻き道に入る所が分からず戻って探した。
高巻きルンゼの下降では懸垂ロープが残置ロープに絡まり解くのに何分も掛かってしまった。
壊れたアルミ梯子上の高巻き入り口も分からなかったが、虎ロープが目に入ったので助かった。
高瀬ダム21:20大町で下山連絡をしたのは11時。
家に着いたのは朝4時。
約24時間営業だった。
(感想と反省)
感想:ルートファインディング、濡れた岩、氷が付着した岩、長いランナウト、悪い残置ハーケン。
草付き、本番の岩登りだった。
とても充実した。
反省:セカンドとは言え、大岩テラスのピッチで確認しないで採ったアンダーホールドが剥がれて落ちた。
確認しよう。
明峰ルートの人工ピッチで逆さハーケンを森広さんが抜けなかったから大丈夫だと思いハンマーで確認しないで使用し、抜けて落ちた。
確認しよう。