明星山 マニフェストルート

2019年11月2日~3日
薄田、山崎(記)

11月1日(金)
21時50分、某集合場所を出発。

11月2日(土)
ヒスイ峡奥の駐車場に2日の午前2時00分頃到着。来る途中、路面が濡れており嫌な予感が。

到着が遅かったので、のんびり8時頃に起床すると、天気は快晴。壁の様子を見に行くと、濡れておらず、すでに左岩稜ルート、フリースピリッツ付近、マニュフェスト付近にそれぞれ数パーティが取り付いている。特に左岩稜は大変な賑わい。
時間も遅いので、初日に予定していた西壁の竜ルートは取りやめ、明日予定しているマニュフェストの下部城壁付近まで様子を見に行くことにする。
先行パーティはすでに2パーティいる模様で、落石が弾丸のようにビュンビュン飛んでくる。渡河前の早い段階からヘルメット被ったほうが良い。その渡河だが、水量は少なく、心配された台風19号の影響もなく石伝いに余裕で渡れた。

1P目 40m 10a リード山崎 スタート午前10時頃。
取りつきは狭くて傾斜がある。出だしにリングボルトが2つ。そこから左上部に見えるハングを目指して優しい草付き斜面を左上していくが、所々脆いし、時々上から落石があるので、ホールドをよく確かめながら上に注意して進む。残置が全く無いので、草付にスリングでランナーを取っていく。カムは効かせられるところはほとんどない。難しくはないが落ちられない。クラックが走る被ったハングに突き当たったところにハーケンが一つ。クラックにカムでランナーを取りながら乗り越す。ここのあたりに10aがついているのか。一足一手を決めて思いっきり体を上げていく。その後、ハング下のスラブを右上していく。スラブは乾いていたため突破出来たが、濡れていると困難だろう。まっすぐハングを登っていくのが「クィーンズウェイ」のようだ。
20mほどトラバースしていくとハンガーボルトが2つの終了点。トポ通りに1P分、くの字にロープを伸ばしたが、流れはそれほど悪くなかった。

取り付きから上方をみたところ

2P目 40m 10b リード薄田
マニュフェスト最初の核心部。出だしから被ったハング越え。ルートが途中までJADEと共通なので、ハンガーボルトが打ってあり安心だが、それにつられて行くとJADEライン(11a)に入って行ってしまう。マニュフェストは3つ目のハングを越えず、左に大きく巻いていくらしいが、薄田さんはそのままJADEライン(11a)に突入。3つ目のハング越えのところで少し躊躇した後、意を決して見事に突破。その上のスラブもすらすら直上。さすがお見事。さらに
10mくらいフェースを登ったところにあった2つのハンガーボルトでビレイとした。
なお、トポ本などではここは10bとなっているが、夜、明星山に来ていた滝口氏に薄田さんがお話を聞くと、ここ10dはあるとのこと。
フォローで登ってみると、最初の2つのハングは、大きくはないがある程度かかりの良いホールドと足があったが、3つ目のハングを越えるところは、ホールドは甘く小さくて悪く、足も良いのがない。フォローなので何とかノーテンで越えるも、そのあとのスラブもあまりよろしくない。リードだと緊張する(楽しめる)ことだろう。

2P目ビレイ点から下を見る

3P目 40m 5.7 リード山崎
真上にJADEラインのハンガーボルトがあるが、それには乗らず、左にトラバース後、左上方の凹角を目指していく。出だしのトラバースはゼロピンのみなので怖い。10mくらいトラバースしたところにカムを決め一安心して左上。少し被ったフェースを乗り越し、凹角内に入っていく。凹角内は立っているが、クラックが走っておりカムを決められるので安心。そのまま上昇していき、ハンガーボルト2つの終了点(JADEラインの3P目終了点?)でビレイした。
ちなみに翌日分かったのだが、この時はすぐ隣のクイーンズウェイの5P目に入り込んでいたようだ。マニュフェストのラインは凹角に入らず、すぐ右のやや前傾したところを登るようだ。
ついついクラックの方に行ってしまった。

3P目ビレイ点から下。マニュフェストは、右に見える凹角に入らず、中央の草のあるところの辺りを登って行く。

4P目 45m 4級 リード薄田
傾斜がなく優しいが、浮き石・浮き砂の乗った残置物一切なしの斜面を慎重に登って行く。優しい4級斜面だが、この日もそうだったが、フリースピリッツやクィーンズウェイを登る先行パーティがいると結構落石が飛んでくるので、草付きなどにスリングでランナーをとっていったほうが良い。カムを決められるところはない。30mくらい登っていくと、フリースピリッツラインと合流する辺り(トポ本で切っているところ)から、さらにハング下のスラブをコーナー沿いにカムでランナー取りながら登って行く。途中ボルトなどもあった。やがて前を壁に阻まれたところにハンガーボルトが2つ(JADEラインの4P目終了点か)あり、そこでビレイ。ロープの流れはそんなに悪くなかった。

4P目

ここで時間も14時を回ってきたので様子見はおしまいとし、同ルートを下降することとする。見ると、先行パーティが、本来のマニュフェストライン(10a)で上部城塞の突破を試みていたが、脆くて悪いのかこちらに戻ってきていた。
懸垂は取りつきまで4回。懸垂支点は、これまで使ってきたビレイ点を使用して降りた。

11月3日(日)2019
6時テント出発。7時取り付き。
天気…晴れ
前日、様子見で登ったが、壁がとても脆く、先行パーティがいると落石が頻繁に飛んでくるので、一番に取り付けるよう早く行くことにする。先行パーティが1パーティ居たが、1ピッチ目の途中までルートが被るクィーンズウェイのパーティだった。前のパーティのフォロー離陸を待ってこちらもスタート。午前7時40分頃。

1P目 リード薄田。
前日とは順序変わって今度は薄田さんのリードからスタートする。ピッチの様子やムーブは、前日の様子見で分かっていたが、1ピッチ目のルートが同じクィーンズウェイを行く先行パーティがハング乗り越しで苦戦していたため少し時間がかかった。2人ともクライミング自体は、特に問題なく終了。

2P目 リード山崎
問題の下部核心の3つのハング越え。前日の薄田さんと同じく、ハンガーボルトにつられ直上ラインに突入する。1つ目2つ目のハング越えは無難にこなすが、やはり3つ目のハング越えが難しい。前日のフォローの時はノーテンで越えられたが、リードとなると様子が違う。色々粘った挙句、テンションは掛けなかったが、恥ずかしながらハンガーボルトにセルフ取ってムーブやホールドを探るというフリーの岩場みたいなことやってしまいますが、この先まだまだ長いし、後続パーティもおり時間かけるのもヒンシュクなので、しかたなく本来のラインである3つ目のハングを越えず、ハング下を左トラバースして迂回することにする。が、これがまたあまり良くない。トラバースした先にプアなハーケン1つだけ。ハング上に上がるとリングボルトが打たれたスラブが上に続いている。右にはJADEライン11aのハンガーボルトが見える。JADEラインの方に徐々に合流してフェース直上し、昨日のビレイ点へなんとか到着。昨日は、リードでJADEライン11aをあっさりОSした薄田さんは、フォローだと気合が入らないみたいだ。

3P目 5.7 リード薄田
昨日、クラックがあったため、ついつい入り込んでしまったクィーンズウェイラインの凹角には入らず、そのすぐ右の草付き薄被りフェースを左上していく。カムと少々のハーケン残置物でランナー取っていく。岩が脆いのでカムの効きも心配。凹角内の方が面白かったな。ひとまずこれで下部城塞を無事に通過。

4P目 4級 リード山崎
前日と同じく。特に問題ない斜面だが、浮き石・浮き砂の乗った斜面なので慎重に行く。左上方面のハング帯あたりのフリースピリッツルートに先行パーティがいるのか、昨日ほどではないが時々落石が飛んでくる。昨日と同じビレイ点でビレイしたが、フリースピリッツ、中央バンド方面からの落石が、時折弾丸のように飛んできて怖い。先行パーティがいる状況で、ビレイするならハング下をトラバースして登って行かずに、トポ通りにハング下の終了点(フリースピリッツ6P目終了点?と共用)でビレイした方が良いのかもしれない。

4P目終了点

5P目 20mくらい 10c? リード薄田
さて、ここから未知の区間に入る。現在、上部城塞の基部。マニュフェストは右トラバースしてやや被ったクラックを直上して行くようだが、トポなどでは崩壊中危険と書いてある。見ても脆そうで、昨日も先行パーティが戻ってきていたし、ヤバそうだということで迂回路を探す。トポを見るとクワトロの3級ラインとJADEの10cラインだが、3級ラインでは物足りないし、脆そうで落石の通り道でもあるので、今や一般的となっているらしいJADEラインの10cに入る。上部城塞越えの中間部核心となる。すぐ上にペツルが見えるが、登りやすそうなところから登っていくとクリップが遠くなった。その上にも悪いところが1手あったが、2P目ほどではなく、特に問題なく上部城塞を突破。上部城塞上のテラスに出て、少し右に行くとハンガーボルトが2つ(JADEラインの5P目終了点か)。
時間はよく覚えていないが、確か12時前後だったような。残り4ピッチ。ここで少し休憩を取る。

4P目終了点から上部城塞(前日の写真)

6P目 15m、3級くらい リード山崎
ピナクルまでの20mくらいの簡単なピッチ。ピナクルてっぺんにロープが巻いてあり、残置ビナが一つ。上の方を見ると、鷹ノ巣ハングがぽっかり口を開けている。下を見ると、小滝川、ヒスイ峡の展望台ははるか下。マニュフェストの後発パーティの姿は見えなかった。隣のクィーンズウェイの先行パーティは9P目を登り始めている。

7P目 ほぼ50m 5級 リード薄田
鷹ノ巣ハング下方の小ハング辺りまでルートファインディングしながら登っていくが、脆い部分もあり、カムやハーケンなどの残置物でランナーを取りながら薄田さん慎重にロープを伸ばす。JADEラインと合流するところのハンガーボルト2つでビレイ。特に問題なし。

7P目、ピナクルてっぺんから上をみたところ

8P目 30m 10b リード山崎
いよいよ鷹ノ巣ハングに入っていくこのルート3か所目の核心ピッチ。鷹ノ巣ハングは近くで見ると迫力がある。トポ通り小ハングを左から越えるべく左へ少しトラバース。ハーケンが1つ。それで小ハングを乗り越して鷹ノ巣ハングに入っていくフェースを、ハンガーボルト沿いに直上していく。右の方にはリングボルトが打ってある。おそらくこれが初登ラインか。ハンガーボルト沿いに上るが、ボルトの間隔が遠く、ホールドもカチホールドで、最後の最後のこんな高所で緊張するピッチが待っていたとは。足を地道に少しずつ上げて遠いカチホールドを経由し、体を上げていく。リーチがないと厳しいかな。ビレイ点前の立木を右から巻き、ハンガーボルト2つにスリングが巻きついた終了点でビレイ。鷹ノ巣ハング内は、広くてなんか落ち着く場所だった。雨も凌げ、ビバークもできそう。フォローの薄田さん問題なく終了点に到着。

9P目 25m 5.8 リード薄田
ハング内を出ていくのだが、最初出方が分からず悩む。屋根に走るクラックに1つ古いハーケンが見える。出だしに念のためのハーケンを打ち、クラックにジャムを効かせ、頭、背中を天井に押さえつけながらハングから出ていくのだが、高度感もあり、なんだか怖い。ハングを出ると右上するクラック沿いにカムを決めながら登っていくが、ここも意外とバランスが悪い。右のほうを見るとキャプチュードの何ピッチ目かの終了点なのだろうか古い支点が見えた。右上しきったところに古いハーケンの支点があり、薄田さんはロープの流れを考えここで一旦ピッチを切る。最終終了点はここから左の方にあるはずだが。

鷹ノ巣ハングから出ていくところ

10P目 10m 3級くらい リード山崎
さて、最終終了点を探しに鷹ノ巣ハングの真上辺りを目指して、残置物のない斜面をゆるやかに左上していくが、終了点がなかなか見つからない。カムで取りながらしばらくあたりをウロウロ探しても見つからない。残り時間を考えると、仕方なくこのままコンテで左岩稜方面に逃げようということになり、歩き出したら9P目終了点から15m?くらい左、そんなに上の方でないところにハンガーボルト2つを発見。9P目終了点から左にトラバースしていくと、岩陰となり分かりづらいところにあった。位置的には確かに鷹ノ巣ハングの真上。ここで全
10ピッチ終了。時間は14時頃だった。

下降は、最終終了点も見つかったし、後続1パーティも撤収したようなので、一番早いJADEラインのビレイ点を使いながらの同ルート下降としました。全部で8回。最初の鷹ノ巣ハング下の小ハングまでの下降(7P目終了点のところ)は、空中懸垂で高度感もありとても気持ちよく迫力ありましたが、ロープ引きがとても重く、スタックするんじゃないかと少し焦りました。ここは2番目に下降する人は、ロープをスタックするような位置にこさせないよう注意が必要です。
鷹ノ巣ハング下まで降りてくると、フリースピリッツ?の3人パーティが、先ほどのビレイ点でフォローを迎え入れているところでした。
その後の懸垂は順調で、取り付きに16時少し前に到着した。

今回、登ってみて、想像以上に脆い壁でしたが、これほど長くて取り付き至近なルートはないと思います。素晴らしいルートでした。今回は、常に落石を警戒して上ばかり見ていてあまり景色を楽しめず、写真も大して取れなかったので、今度は完全フリーでまた行ってみたいと思った。

装備
ロープ 50mダブル、Aヌンチャク×4、ヌンチャク×5、カラビナ・スリング×3、
カム ドラゴンカム№00(キャメ#0.3)~№05(キャメ#3)1セット、ハーケン
その他