2026年3月8日(日)
山崎(記)小池
3年前、天候条件で敗退したフリーウェイに、再び挑戦してきました。
屋久島南東部・モッチョム岳(本富岳)南壁にある全12ピッチのマルチルートで、スラブ主体の長大なラインです。
「ひと月に35日雨が降る」とも言われるほど雨の多い島。今回も初日は雨に降られ、3年前と同じく「敗退」の二文字が頭をよぎりました。まさに天候が核心となるルートです。

◆◆◆行動記録◆◆◆
前々日(移動日)
昼前、鹿児島経由で屋久島空港に到着。路線バスで拠点となる安房へ移動。
島内観光を兼ねて壁の偵察へ向かう。車で約20分ほどの距離。
3年ぶりにモッチョム岳と対面。非常に印象的な山で、特に南面、フリーウェイのある標高差約400mの岩壁は素晴らしい。
双眼鏡で壁を観察すると、所々に黒い模様が見える。予報では午後から雨。寒冷前線の通過によるもので長雨ではないが、一時的に強く降る見込み。できるだけ濡れないことを願いつつ、壁のコンディションが気がかりだった。
16時頃からまとまった雨。あとは早く止むことを祈るのみ。
前日(予備日)
移動日に雨が降ったため、この日は登らず様子見とする。
朝から晴れ、風も強く乾きは期待できる状況。日中は島内観光をし、夕方に再度壁を偵察。
前日と同様に黒い模様は見えるものの、岩はテカっておらず、上部は乾いている様子。
偵察の結果、翌日の決行を決めた。
3月8日
5時15分頃、車2台ほど停められる駐車スペースに到着。まだ真っ暗な中、フリーウェイの取り付きへ向けて歩き出す。
取り付きまではヤブの中を、3年前に記録したログを頼りに進む。途中にはテープもあり、ルートは概ね分かりやすい。
三角岩の取り付きには6時40分頃到着。すでに明るくなっており、壁の状態を確認すると濡れていない。前日の偵察で見えた黒い模様は、水の流れる部分がコケ状に黒くなっているためで、濡れると滑りやすくなると考えられる。
準備を整え、7時20分頃に登攀開始。
1ピッチ(25m、5.7)小池
三角岩左側の草付き凹角を登る。草が生い茂っているが、スムーズに抜け、三角岩上の安定したテラス(ボルト2)に到着。

ブッシュをホールドにして登る。
2ピッチ(30m、5.10d)山崎
三角岩の左端から、ボルトに沿って左上へ。いったん右のフェイスに戻り、再び左へ凹角をたどり、ビレイポイント(ボルト2)へ。
岩は乾いていてコンディションは良好。細かいカチを拾っていく、バランスの要求されるやや強傾斜のスラブ。途中、小カンテに乗り込む箇所がやや悪く、少し厳しい。

途中屈曲するところがとくに悪い。
前回はここが濡れていたので敗退を余儀なくされた。
ボルト間が近いのでパニック等があれば
エイドで突破できたかもしれない。
3ピッチ(30〜32m、5.10b)小池
出だしは凹角。決め手となるホールドが乏しく、やや緊張する。登っていくと右壁にクラックが現れる。
オーバーハングに上を抑えられるところで左へ出て、少し登るとビレイポイント(ボルト2)。さらに左上にもビレイ点はあるが、手前でピッチを切った。

右:終了点 ここでいいの?奥にもビレイ点あり
4ピッチ(40〜43m、5.8)山崎
左へ出て小テラスに乗り、緩傾斜のスラブを進むと、草に埋まったクラックが現れる。草をつかみながらクラック沿いに登り、大きなヤブ帯へ。
壁に突き当たった位置の立木でビレイ。シューズは泥だらけになる。

傾斜のあるヤブ、ホールドもヤブ
5ピッチ(25m、5.10a)小池
ヤブの中を右壁に沿って少し進み、デルタハング直下の短いクラックへ。抜け口にボルト1。
クラックではC2・C3を使用。やや湿っており緊張感がある。
抜けると快適な黒稜テラスに出て、ビレイポイント(ボルト2)。展望が良い。

5mほど登る。下部に3番、上部に2番が決まる。
濡れていて怖い。
左:クラックの上部左に進みすぐ快適なテラス
デルタハング下、5P終了点の先のカンテを越えれば、
6Pのトラバース開始
6ピッチ(30m、5.9)山崎
ここからトラバースに入るが、敗退設定時刻前のため登攀を続行。
黒稜テラス左端からカンテを回り込み、デルタハング直下をバンド沿いに左へトラバース。バンドが消えたあたりから草付き混じりのスラブを直上し、その後ヤブに突入。しばらくヤブを漕ぐと、開けたテラス(ボルト2)に到着。
トラバース中、下方にボルトが見え、別ルートと交差している様子。

左:6P終了点から7Pを見る。
特徴的な大きめのツブに立つ。
フレークのホールドは時にもげるし、
草つきのスタンスは滑るので注意が必要
7ピッチ(40m、5.10c)山崎
出だしはボルトに沿って左上し、その後スラブを直上。バランシーだが、礫が大きく凹凸があるため、慎重に行けば問題ない。
終了点手前の最後のボルトは破断している。その先をしばらく登ると、安定したビレイポイント(ボルト2)に到着

藪漕ぎ途中で間違えて立木で切ってしまった。
強烈なヤブを突破するまでが8P
右:9P スタート地点 ほどよい傾斜にホールドも
スタンスもある快適ピッチだった。
8ピッチ(45m、5.10a)小池
正面の岩を左に回り込み、ヤブの凹角をやや右上。その後、小バンドを左へトラバースし、小さな段差を越えてスラブを登る。
スラブを直上すると、ルート中間部の大ヤブ帯へ。大岩の左側を通り、10mほど左上の開けた場所へ向かって薮を漕ぎながら進むとビレイポイント。ただしボルトは1本のみで、付近に立木あり。
9ピッチ(25m、5.10a)小池
凹凸のある緩傾斜スラブを登る。快適で楽しいピッチだが、
ここまで累積した足への負担で、緩めのシューズでも痛みが出てくる。
安定したビレイポイント(ボルト2)に到着。
10ピッチ(35m、5.10c)山崎
左へ出てからボルト沿いに急なスラブを直上。下部はバランシーだがホールドは極端に悪くはなく、慎重に進めば問題ない。
途中からフレークが現れるが、叩くと不安定な音がして脆そうなため慎重に扱う。
上部は傾斜がやや緩むが、ホールドが極小かほぼなく、足場も悪く難しい。ただしボルト間隔は近く安心感はある。
ボルトに沿って右上し、小テラス(ボルト2)へ。トポではボルト25本とあるが、実際にはそこまで使用しなかった。

右:10P スタート 豊富なボルト
ピン間は近いものの、傾斜が強くホールドが乏しい。
11ピッチ(30m、5.7)小池
右上のヤブをたどると最初のピン。その後、正面のヤブを越えると次のボルトが見える。途中には朽ちたリングボルトもあり。
傾斜は緩いが、ボルト間隔が非常に遠く油断できない。
右上気味に登ると、安定したテラス(ボルト2)に到着。ここからの展望は素晴らしい。

草をホールドに登っていく。
傾斜は緩いもののランナウトが怖い。

12ピッチ(30m、5.9)山崎
目の前の緩いスラブを直上。よく見ると、はるか上に最初のボルトがある。
ホールドはほとんどなく、完全なフリクション主体。落ちられない状況の中、足指の痛みに耐えながら丁寧に一歩ずつ荷重して登る。
途中、小段差を越えてヤブ帯に入り、適当な立木でビレイ。

最後にこんな怖いランナウトが待っているとは
13ピッチ?(ヤブ)山崎
ルート終了点から祠まで。
最終ピッチ終了後、山頂まではすぐと思いきや、強烈なヤブ漕ぎとなる。
立木から左へ微かな踏み跡をたどるが、非常に濃いヤブ。ロープを解きたくても脱げる状況ではなく、ロープを伸ばしたまま進む。
約20分のヤブ漕ぎの末、16時頃、祠のあるモッチョム岳山頂に到着。後で調べると右側を進む方が良かったようだ。

右に回ると登山道に直接出る(らしい?)が
祠でお参りしておきたい。祠後ろの岩にFIXロープあり。
登ると山頂反対側のFIXをおりると登山道に出る。
下山(約3時間)
山頂からは南岸と太平洋を一望できる絶景。内陸側には低い雲が立ち込め、神秘的な雰囲気。宮之浦岳は見えなかった。

一度コルへ急降下し、その後モッチョム岳より高い隣のピークへ登り返す必要がある。以降は登山道をひたすら下降するが、歩きにくく負担が大きい。
途中、モッチョム太郎や万代杉といった巨木を見ながら慎重に下り、19時30分頃に千尋の滝登山口に到着。
◆◆◆総括◆◆◆
スラブ主体のロングルートで、トラバース、クラック、ヤブ漕ぎと変化に富んだ楽しいルート。何よりロケーションが素晴らしい。
一方で行程・下山ともに長く、体力的な負担は大きい。時間管理は特に重要。
また、回転するボルト(カットアンカー)が多く見られた。
岩質は花崗岩だが、小川山とはやや異なるタイプ。フリクションは概ね良好。

登攀のあとに反省会
ビューポイントからルート観察できる。
小型双眼鏡は持っていきたい。
コースタイム
・取付きまでのアプローチ:約1時間20分
・1P〜5P終了点(敗退判断地点):3時間15分
・6P〜12P終了点(ルート終了):5時間13分
・山頂まで:約20分
・下山(登山道):約2時間50分
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共同装備
・クイックドロー/アルパインヌンチャク:計25本
・カム:C3・C2 各1(5Pのクラックで使用)
・ダブルロープ:50m×2本
・捨てビナ/捨て縄:各2
・ナッツ数本(破断アンカーのバックアップ用)
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個人装備
・基本的な登攀装備一式
・行動食適宜
・水:各自1.5L(半分ほど残った)
シューズ
アルパインサイズのミウラを使用。
普段のマルチではTCプロを使うが、このルートは花崗岩スラブ特有の「ツブ立ち」が主体。終盤はかなり痛かったが、柔らかいシューズでは対応できなかったと思う。
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◆◆◆その他情報◆◆◆
シーズン
多雨のエリアのため、岩が乾かないと登れない。1月の記録も多いが、行動時間が長いため今回は日照時間を優先。
前日が晴れ+強風でコンディションは非常に良かった。
暗くなってからの下山はかなり厳しい。
ヒルはすでに出ており(荷物に付着)、ヤブも多いので春先でも対策必須。
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温泉
・尾之間温泉(300円)
7:00〜21:00/月曜休
源泉が浴槽下から自噴する極上の湯。
石鹸・シャンプー・ドライヤーなし(要持参)
・平内海中温泉(300円)
干潮前後約2時間のみ入浴可
野趣あふれる混浴温泉(湯あみ着OK/水着不可)
PayPay可だが電波不安定
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食料・買い出し
コンビニなし。
安房ベース利用の場合はAコープのみ(19時閉店)。
空港付近まで行けば22時まで営業の店舗あり。