2019年12月28日~2020年1月2日
赤井、野澤、中和(記)
年末年始は休みを全部ぶつける山行をやりたい。一人なら日高か会越での縦走と考えていたが、赤井さん達が剣岳の小窓尾根を狙っていると聞き、ご一緒させていただくことにした。
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山行概要:
2019/12/28~2020/01/02(5泊6日)
剣岳・小窓尾根/早月尾根
行動記録:
※時間は記録していなかったのでザックリ。
12/27(金)
前日夜行。練馬IC近くの駅に集合。伊折集落に着いたのは午前3時過ぎ。車中で各々仮眠。
12/28(土) 快晴 伊折(07:30)-馬場島(09:00-09:30)-池ノ谷出合(11:00)-H1500(16:00)
伊折集落からの道に雪は殆どなく舗装路を歩くだけ。馬場島でヤマタンを受け取った際、県警の方が「15年間で最も雪が少ない」と仰っていたのが印象的だった。
小窓尾根の取付までは、高巻き無しで沢筋をラッセルで進む。渡渉は4回くらいで、全てワカンでの飛び石。沢に落ちても危険は無いが、靴の中を濡らすと敗退になるので、お気楽ではない。
池ノ谷出合にて、2012年の遭難事故の犠牲者に黙祷した後、取り付きポイントを探る。赤井さん達は、過去(GW)にはルンゼから取り付いたとのことだが、よくわからない。結局、本流を少し進んだ小尾根から強引に取り付いた。標高1500m辺りの小コルにてテント泊。
12/29(日) 快晴 H1500(05:30)-ドーム(16:00)
天気予報は明日以降の悪天を告げているが、今日は冬剣とは思えない快晴。テン場から少し登ると、本峰や三ノ窓も近くに見え、頑張れば日没までに三ノ窓に行けとさえ思えた。この時は。
実際には、サラサラ雪、重い荷物での苦しいラッセル。全然進まない。固有名詞の付いた岩は同定できなかったが、ニードルと思われる岩峰は、右側から登って左側に回り込むと容易に通過できた。ドーム(標高2400m)への最後の登りは、池ノ谷側に切れた急雪壁となっているので、念の為ロープを出してもらった。ドーム頂上で時間切れとなりテント泊。
この日、暑がりの私は900mlあったテルモスでも足りず、テント場の整地などで肉労をしていたら脱水症状になってしまった。本気で救助要請するか2人に心配されたが、1リットル以上がぶ飲みして、一晩寝たら回復した。
12/30(月) 雪のち吹雪 ドーム(06:30)-主稜線(12:00)-小窓ノ頭コル(15:00)
ドームからは先もラッセルがきついので、面倒だがワカンを脱着しながらの進行。ペースは上がらない。マッチ箱手前で3mほどの露岩に行き詰りロープを出す。野澤さんが率先してリードするが、見かけより難しいようだ。隠れたホールドを丁寧に掘り出してから、小さく吠えて難なく突破。さすがである。後は北方稜線に合流するまで、問題となる場所はなかった。
無雪期ならば、三ノ窓まで2時間足らずだが、吹雪とラッセルのため、小窓ノ王は果てしなく遠い。小窓ノ頭のあたりで1回懸垂したが、ロープが引けなくなり、流れを変えたり試行錯誤した結果、1時間近くロス。おまけに下から見るとクライムダウンできる傾斜だった・・・視界が悪いとトラブルが絶えない。
この懸垂地点を過ぎると、富山側からの吹き上げが激しい。叩きつけてくる雪に耐えている時間の方が長くなったので、赤井さんの判断で行動中止。コルの吹き溜まりでテント泊。
12/31(火) 吹雪 小窓ノ頭コル(06:30)-三ノ窓(11:30)-長次郎ノ頭あたり(15:00)
朝から吹雪いている。停滞したい天気だが、まとまった降雪があると池ノ谷ガリーの通過は絶望的となる。行くしか無い。
小窓ノ王は、すぐ近くのはずだが全く視認できない。まだか、まだか、と思いながら交代でラッセルしていくと、ぼんやりと黒々とした壁が見えた。小窓ノ王だ。右側をトラバースして三の窓に辿り着くが、ここも強風で視界も悪い。池ノ谷ガリーに突っ込む事に不安を感じるが、降雪量が少ない今を逃す訳にはいかない。
チンネの基部で一休みし、覚悟を決めて突っ込む。雪崩の恐怖から、ガリーの端っこを交代で全力ラッセル。普段は息が軽く弾む程度でラッセルするのだが、こんな場所はとっとと脱出したい。息切れもお構いなしで突破した。
この先はトラバースでワンポイントだけロープを出したが、それ以外は普通の岩雪稜。頑張れば本峰まで行ける時間だったが、あえて山頂に泊まる理由はないので、適当な吹き溜まりにテントを張った。ラジオからは、明日からの冬型に加え、早月尾根で別パーティ滑落のニュースを告げている・・・。気の抜けない下山になりそうだ。
1/1(水) 明け方晴れのち吹雪 長次郎ノ頭あたり(08:30)-剣岳本峰(10:30)-早月小屋(17:00)
4時起きの予定であったが、揃って寝過ごす痛恨のミス。テントを出た際には、低気圧通過後の疑似好天だったが、すぐに冬型による悪天候となった。
長治郎の頭から1回懸垂してコルに降りると、本峰への最後の登りだ。視界が無いので、終わりが見えないラッセルにメンタルを削られるが、唐突に黒いものが見えた。それが山頂にある祠の屋根だった。
下山路の早月尾根は、正月だし他パーティのトレースでの高速下山を期待していた。が、トレースは殆ど消えていた。視界が非常に悪いので、頻繁にコンパスを見ては、吹雪のわずかな間隙を狙って、じわじわ標高を下げる。何度もルートミスと補正を繰り返したが、日没直前に早月小屋のテント場に到着することができた。小屋に詰めていた県警の方も心配していたようで、色々と良くしていただいた。
1/2(木) 雪 早月小屋(09:30)-馬場島(13:00-14:00)-伊折(15:30)
下山するだけなので、9時過ぎに出発。標高2000mくらいまでトレースがほぼ消えていたが、下に行くほど明瞭なトレースが残っていた。14時前には全員が馬場島に下山し、県警に下山報告となった。
馬場島で赤井さんを待っていると、(たぶん)早月小屋の主人と思われる方がやってきた。「冬の剣は担げない人間には登れない」といった趣旨の事を言っておられたが、その通りだと思った。小窓尾根は冬の剣ではアプローチが良い方ではあるが、それでも重荷に耐えての行動が続く重厚なルートだった。今年は雪が少ないのもあるが、ほぼ予定通りに抜けられたのは、この山域での経験が豊富な赤井さん、クライミング能力もさることながら、ラッセルなど共同作業も率先してくれる野澤さんという、強力メンバーあってのことだったに違いない。
反省点:
細かい反省点は沢山あるが、大きな問題点としては以下2点。
・ライターの不良
3人ともライターを持参していたが、いずれも着火が極端に悪かった。私は北海道で愛用していた防水ライターを持参したのだが、湿度の関係なのか殆ど使えず閉口させられた。1個くらいは防水マッチがあった方が良かったと思う。
・ロープの凍結
自分のロープを枕にしていたのだが、染み込んだ雪が凍結して冷凍パスタみたいになってしまった。2年以上使っているダブルロープを持参したので、コーティングが終わっていたようだ。新品寄りのロープを使うか、(ドカ落ちしない前提で)フローティングロープを使うのが良さそうだ。