剱岳 小窓尾根

2019年12月28日~2020年1月2日
赤井、野澤、中和(記)

年末年始は休みを全部ぶつける山行をやりたい。一人なら日高か会越での縦走と考えていたが、赤井さん達が剣岳の小窓尾根を狙っていると聞き、ご一緒させていただくことにした。

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山行概要:
2019/12/28~2020/01/02(5泊6日)
剣岳・小窓尾根/早月尾根

行動記録:
※時間は記録していなかったのでザックリ。

12/27(金)
前日夜行。練馬IC近くの駅に集合。伊折集落に着いたのは午前3時過ぎ。車中で各々仮眠。

12/28(土) 快晴 伊折(07:30)-馬場島(09:00-09:30)-池ノ谷出合(11:00)-H1500(16:00)
伊折集落からの道に雪は殆どなく舗装路を歩くだけ。馬場島でヤマタンを受け取った際、県警の方が「15年間で最も雪が少ない」と仰っていたのが印象的だった。
小窓尾根の取付までは、高巻き無しで沢筋をラッセルで進む。渡渉は4回くらいで、全てワカンでの飛び石。沢に落ちても危険は無いが、靴の中を濡らすと敗退になるので、お気楽ではない。
池ノ谷出合にて、2012年の遭難事故の犠牲者に黙祷した後、取り付きポイントを探る。赤井さん達は、過去(GW)にはルンゼから取り付いたとのことだが、よくわからない。結局、本流を少し進んだ小尾根から強引に取り付いた。標高1500m辺りの小コルにてテント泊。

尾根取付

12/29(日) 快晴 H1500(05:30)-ドーム(16:00)
天気予報は明日以降の悪天を告げているが、今日は冬剣とは思えない快晴。テン場から少し登ると、本峰や三ノ窓も近くに見え、頑張れば日没までに三ノ窓に行けとさえ思えた。この時は。
実際には、サラサラ雪、重い荷物での苦しいラッセル。全然進まない。固有名詞の付いた岩は同定できなかったが、ニードルと思われる岩峰は、右側から登って左側に回り込むと容易に通過できた。ドーム(標高2400m)への最後の登りは、池ノ谷側に切れた急雪壁となっているので、念の為ロープを出してもらった。ドーム頂上で時間切れとなりテント泊。
この日、暑がりの私は900mlあったテルモスでも足りず、テント場の整地などで肉労をしていたら脱水症状になってしまった。本気で救助要請するか2人に心配されたが、1リットル以上がぶ飲みして、一晩寝たら回復した。

ドームへの登り

12/30(月) 雪のち吹雪 ドーム(06:30)-主稜線(12:00)-小窓ノ頭コル(15:00)
ドームからは先もラッセルがきついので、面倒だがワカンを脱着しながらの進行。ペースは上がらない。マッチ箱手前で3mほどの露岩に行き詰りロープを出す。野澤さんが率先してリードするが、見かけより難しいようだ。隠れたホールドを丁寧に掘り出してから、小さく吠えて難なく突破。さすがである。後は北方稜線に合流するまで、問題となる場所はなかった。
無雪期ならば、三ノ窓まで2時間足らずだが、吹雪とラッセルのため、小窓ノ王は果てしなく遠い。小窓ノ頭のあたりで1回懸垂したが、ロープが引けなくなり、流れを変えたり試行錯誤した結果、1時間近くロス。おまけに下から見るとクライムダウンできる傾斜だった・・・視界が悪いとトラブルが絶えない。
この懸垂地点を過ぎると、富山側からの吹き上げが激しい。叩きつけてくる雪に耐えている時間の方が長くなったので、赤井さんの判断で行動中止。コルの吹き溜まりでテント泊。

露岩

12/31(火) 吹雪 小窓ノ頭コル(06:30)-三ノ窓(11:30)-長次郎ノ頭あたり(15:00)
朝から吹雪いている。停滞したい天気だが、まとまった降雪があると池ノ谷ガリーの通過は絶望的となる。行くしか無い。
小窓ノ王は、すぐ近くのはずだが全く視認できない。まだか、まだか、と思いながら交代でラッセルしていくと、ぼんやりと黒々とした壁が見えた。小窓ノ王だ。右側をトラバースして三の窓に辿り着くが、ここも強風で視界も悪い。池ノ谷ガリーに突っ込む事に不安を感じるが、降雪量が少ない今を逃す訳にはいかない。
チンネの基部で一休みし、覚悟を決めて突っ込む。雪崩の恐怖から、ガリーの端っこを交代で全力ラッセル。普段は息が軽く弾む程度でラッセルするのだが、こんな場所はとっとと脱出したい。息切れもお構いなしで突破した。
この先はトラバースでワンポイントだけロープを出したが、それ以外は普通の岩雪稜。頑張れば本峰まで行ける時間だったが、あえて山頂に泊まる理由はないので、適当な吹き溜まりにテントを張った。ラジオからは、明日からの冬型に加え、早月尾根で別パーティ滑落のニュースを告げている・・・。気の抜けない下山になりそうだ。

1/1(水) 明け方晴れのち吹雪 長次郎ノ頭あたり(08:30)-剣岳本峰(10:30)-早月小屋(17:00)
4時起きの予定であったが、揃って寝過ごす痛恨のミス。テントを出た際には、低気圧通過後の疑似好天だったが、すぐに冬型による悪天候となった。
長治郎の頭から1回懸垂してコルに降りると、本峰への最後の登りだ。視界が無いので、終わりが見えないラッセルにメンタルを削られるが、唐突に黒いものが見えた。それが山頂にある祠の屋根だった。
下山路の早月尾根は、正月だし他パーティのトレースでの高速下山を期待していた。が、トレースは殆ど消えていた。視界が非常に悪いので、頻繁にコンパスを見ては、吹雪のわずかな間隙を狙って、じわじわ標高を下げる。何度もルートミスと補正を繰り返したが、日没直前に早月小屋のテント場に到着することができた。小屋に詰めていた県警の方も心配していたようで、色々と良くしていただいた。

剣本峰 (祠はほぼ埋没)

1/2(木) 雪 早月小屋(09:30)-馬場島(13:00-14:00)-伊折(15:30)
下山するだけなので、9時過ぎに出発。標高2000mくらいまでトレースがほぼ消えていたが、下に行くほど明瞭なトレースが残っていた。14時前には全員が馬場島に下山し、県警に下山報告となった。

馬場島で赤井さんを待っていると、(たぶん)早月小屋の主人と思われる方がやってきた。「冬の剣は担げない人間には登れない」といった趣旨の事を言っておられたが、その通りだと思った。小窓尾根は冬の剣ではアプローチが良い方ではあるが、それでも重荷に耐えての行動が続く重厚なルートだった。今年は雪が少ないのもあるが、ほぼ予定通りに抜けられたのは、この山域での経験が豊富な赤井さん、クライミング能力もさることながら、ラッセルなど共同作業も率先してくれる野澤さんという、強力メンバーあってのことだったに違いない。

反省点:
細かい反省点は沢山あるが、大きな問題点としては以下2点。

・ライターの不良
3人ともライターを持参していたが、いずれも着火が極端に悪かった。私は北海道で愛用していた防水ライターを持参したのだが、湿度の関係なのか殆ど使えず閉口させられた。1個くらいは防水マッチがあった方が良かったと思う。

・ロープの凍結
自分のロープを枕にしていたのだが、染み込んだ雪が凍結して冷凍パスタみたいになってしまった。2年以上使っているダブルロープを持参したので、コーティングが終わっていたようだ。新品寄りのロープを使うか、(ドカ落ちしない前提で)フローティングロープを使うのが良さそうだ。

剱岳八ッ峰

2019年4月28日~30日
赤井、田中、柴田、谷水(記)

去年は劒沢であえなく撤退した、劒岳八峰にリベンジした。今年はどこまで行けるのか?
GW前半4.27-5.1で計画していたが、27日まで天気が悪いということで出発を1日遅らせることに。また、晴天は2日しか続かないということで、黒部ダムからでなく、室堂から早く八峰に取り付けるようルート変更となった。

コースタイム
4.28(日) 扇沢(0630)=室堂(0825)-雷鳥沢キャンプ場(0915)-(1035)別山乗越(1115)-(1255)長次郎谷出合い(1315)-1・2のコル(1625)
4.29(月) 1・2のコル(0510)-4峰(1035)-5・6のコル下(1230)-(1340)長次郎谷出合い(1350)-劒沢キャンプ場(1630)
4.30(火) 劒沢キャンプ場(0640)-(0910)室堂(0945)=扇沢(1130)

行動記録
4.28(日) 晴れ
前日の夜に扇沢まで移動し、トイレ近くでビバーク。明け方前から人通りが多く0500に目が覚める。そのままテント撤収し、室堂へ行くため乗り物の行列に並ぶ。0630の始発というのに観光客も多い。前日までの雪のためか、扇沢も黒部ダムも去年より雪が多い。これはトレースがないとラッセルが大変そうだ・・・。
室堂は快晴で既に多くの登山者が先を行っていた。トレースばっちりの中、別山乗越までノーアイゼンで行けた。田中さんと柴田さんの足は速く、あっという間にみえなくなってしまった。別山乗越で集合し、アイゼンをつけてここから長次郎沢出合いまで800mの標高差を下る。乗越までトレースばっちりだったので、剣沢にも何パーティが入っているだろうと思っていたがスキーヤーしか入っておらず、しかも最近降った雪がやわらかく膝ラッセルで、単調な下りだが全然楽でない。アイゼンは靴につく団子を大きくするだけではく必要はなかった・・・。

1/2のコルへの登り返し

長次郎沢から今日の目的地1/2のコルまでは700mを登り返す。今日はアップダウンがいちいち激しくていいかげん嫌気がしてくる。この剣沢の下りもだったが、登り返しでも田中さんと柴田さんのパワーが発揮された。途中からデブリの上に積もった雪にさらに足をとられてしまう。天気がいいことだけが救いであるが、風もないでの暑いことこの上ない。300mほど登った2200m付近から右手の八峰にとりついた。傾斜を見ながら右手よりに高度を上げる。途中ダブルアックスになりながら、日没前にコルに着くことができた。
しっかりとした風よけつきのテントサイトができて、中に入るころには日没になっていた。
4.29(月) 晴れのちくもり
いよいよ八峰縦走がスタートする。自分達のパーティだけの貸し切り贅沢旅である。アルパイン装備を整えて出発する。
2峰
赤井さんがロープをつけて下り始める。尾根通しには進めず北面側のブッシュまで少し下り尾根に登り返した。中2人はロープにカラビナを通し、3人目はビレイされ通過。
3峰

八峰全貌

柴田さんトップで進み、下りでロープを出す。落ちはしなさそうだが、もし落ちたらと思うとアックスを握る手に力が入る。懸垂支点見つからず、這松から支点をとる。そこから40mほど懸垂し、3/4のコルへおりたつ。
4峰
4峰へ登り返すと細いリッヂに出る。足を滑らせれば一気に谷底に落ちるため慎重に進む。自分がリッヂに乗ろうとしたところで50㎝位真下に沈んだ。運よくそれだけで止まったが、怖さで全身に鳥肌がたって頭の先から抜けていった。後続の田中さん、柴田さんにも見られ2人ともドキッとしたそうだ。なんとかリッヂをこえ一安心。少し下ると枯れ木にスリングがかかっている。4/5のコルはすぐ右下に見えていたが、岩が露出しており微妙に悪いので30mほどロープをのばし懸垂。
5峰
5峰を登り切った時既に12時近く、今日中に稜線へは抜けられそうもない。明日の天気は崩れる予報で、裏付けるように遠くに怪しい雲が立ち込めている。残念だが今回の縦走はここで打ち切り、長次郎谷へ降りることが決定される。5峰の頭から向かいに懸垂支点が見えた。残地スリングに赤井さんのスリングを足して30mほど懸垂して次の懸垂支点へ移動。60m一杯伸ばして懸垂。少しくだってもう一回60m懸垂して長次郎谷に戻った。

5峰を見上げる

振り返り八峰を見上げると、稜線までもうちょっとのように見える。そのもうちょっとが遠いのが残念だ。次来る時は5/6のコルからでもいいかな、とか話しながらたっぷり休憩をとり、デブリの長次郎谷を下りきった。下ったら剣沢まキャンプ場まで登り返す。昨日とは逆の行程を行く。沢には小規模だが新たなデブリが発生していた。劒沢につくころには暗雲に追いつかれていた。
剣沢でキャンプするときはトイレが整備されているので、その周辺でと県警の方からご指導いただきました。最初そこからかなり下の小屋の近くで準備していたら、雪融け後のトイレ処理の関係で場所の移動をお願いされました。

4.30(火)
夜から雪が降っており、朝も天気は悪かったが視界は比較的良好の中室堂まで移動した。別山乗越近くは風が強く吹き飛ばされるかと思ったが、雷鳥沢まで行けば穏やかになり雷鳥沢から雷鳥荘までこの山行最後の登り返しを終えた。

リベンジ山行ということで、前回より先に進めたのは良かったです。天気もよく他パーティもいず、広い劒を独占できたかのような気持ちのいいものでした。ラッセルを男性陣に頼ってしまったので自分もできるように成長していきたいです。ありがとうございました。

剱岳 八峰(敗退)

2018年5月4日~5日
赤井、谷水(記)

5月4-5日で剱岳八峰を目指し入山しました。入山前から天気は悪い予報でしたが、5日は晴れることを期待して。4日朝は扇沢でも雪だったため内蔵助平経由の入山は止め、室堂から剣沢に行きました。室堂にて「長次郎谷に巨大な雪ブロックが落ちているため危険」と張り紙があり、八峰は断念し源次郎尾根に行くことに。ホワイトアウトの中赤旗を目印に進み、別山乗越に到着。剣沢に降りるとがぜん風が強くなりました。既に3張のテントがトイレ回りにあり、自分達もそこに設営しました。雪はスキーするには気持ち良さそうなパウダースノーだったためブロックは切り出せず、なんとなく雪を積んで壁がわりにしました。設営中一瞬ですが剱岳が見えました。今回山頂まで見れたのはその時だけでした。テント内で風が弱まるのを期待しながら就寝しました。
翌5日2時、風が強すぎるため源次郎尾根も諦め再度就寝。結局風が弱まることなく日の出。剱登頂は断念し下山決定。夜のうちにトイレの入口は雪で埋まっていました。別山乗越を少し下ると太陽光が暖かく、風もほぼ吹いていない別世界がありました。そのあとは観光客で賑わう立山を扇沢まで引き返しました。
強風が痛かったですが、風は冷たくなく春山暖かさは感じる山行でした。

剱岳 小窓尾根

2016年5月1日~3日
赤井、薄田、野澤、河合(記)

5月1日(曇り)
新人の河合です。
まだまだヨチヨチ歩きのクライマーですが、小窓尾根登ってきましたので記録しておきます。
前日は深夜まで友人の結婚式で出発が遅くなりました。メンバーには日程・時間合わせて頂き感謝。
午前0時に東京某所に集合後、馬場島へ。
確か5時頃着。
仮眠の後、9:30に出発。
堰堤手前で川の左岸に渡り(飛び石で渡渉せずに済みました)、堰堤を越えたところで、今度は右岸に渡渉。
小窓20160501_写真1
渡渉は膝程度で問題ありませんでしたが、冷たいを通り越して痛い・・・
その後、沢を少し下ってガレ沢を詰め、明瞭な踏み跡に合流、登って降りて池ノ谷出合へ。
左俣を高巻きながら少し詰めて、雷岩へ。
小窓20160501_写真3
雪が少なく迷わず左の尾根に取付きました。明瞭な踏み跡あり。
尾根に着いてからはひたすら急登。
雪が少なく藪漕ぎも多く、体力が吸い取られるし、ペース出ない・・
1600m台地付近からは雪も多少出てきました。
小窓20160501_写真5
1990mピークでいい時間になったので幕営しました。

 

9:30馬場島→11:40/50雷岩→15:15 1990mピーク

 

5月2日(晴れ)
まずは2,120mピークを目指します。
ニードルが見えてきました。
小窓20160501_写真6
藪漕ぎは昨日で終了と思いきや笹藪は健在、さらに今度は針葉樹林帯(コメツガ)のジャングルジムで、これまた荷物が引っかかって面倒。
途中雪壁の乗越があり、ロープを出しました。
対面の早月尾根では、ヘリが2台旋回、その後尾根上部でホバリング。どうやら救助活動中だったようです(下の写真の黒い点)。
小窓20160501_写真8
帰宅したら無事救助されたというニュースが出てて、ほっとしました。
前日も池ノ谷方面にヘリが飛んでおり、心配していました。
道も痩せてきて、やっとクライミングっぽくなってきました。
一箇所、2回に分けて懸垂下降してから、ドームに向けて登り返します。
小窓20160501_写真9
ここからが小窓尾根のハイライトではないでしょうか?
マッチ箱目指して登ります。手前のピークは雪がついている所の辺り、右から回り込んで裏側を登ると楽でした。
小窓20160501_写真10
取付はワンポイントで少し悪い所がありました。
手前のピーク頂上付近で、直登してきた3人パーティーを追い抜き、核心部へ。
小窓20160501_写真12
心地良い高度感の中、岩にまたがったりしながらの登攀です。
一箇所、ロープを出しました。急な雪壁もあり、ダブルアックスで通過。
小窓20160501_写真13
マッチ箱から先は雪稜の部分が多くなってきました。
気温は上昇しグサグサの腐れ雪で、小窓ノ頭過ぎた辺りからは部分的に膝上のきついラッセル。
早月尾根の池ノ谷側では、先ほどからどっかんどっかんと、雪崩が頻発。
小窓ノ王が見えてきました。
小窓20160501_写真15
剱岳本峰方面もよく見えます。
小窓20160501_写真16
小窓ノ王は基部を右に回り込み、懸垂下降2回と雪面トラバース1回で三ノ窓でした。
1回目懸垂の終了点は気温上昇のため大雨状態でずぶ濡れ。落石も頻発。
小窓20160501_写真17

 

小窓20160501_写真18三ノ窓は快適なテン場でした。

 

5:35 1990mピーク→6:20 2120mピーク→ 8:20/9:10 2340m地点(懸垂下降)→9:30/50 ドーム→ 12:20 小窓ノ頭→13:55小窓ノ王基部→ 15:10 三ノ窓

 

5月3日(晴れ)
早起きしてさっさと池ノ谷ガリーを通過。雪がしまっていて昨日と比べ大分歩きやすく快適でした。
その後は北方稜線を一路剱岳本峰へ。これまでの苦労のご褒美か、素晴らしい雪稜です。
小窓20160501_写真22

 

小窓20160501_写真23
ところどころ悪いトラバースや下降もあり、長次郎のコルからはダブルアックスの急な雪壁登りありで気は抜けませんが、噛みしめながら進みます。
山頂に着きました。祠はほぼ埋まっていました。剱沢方面は少し霞んで見えました。
小窓20160501_写真26
後は早月尾根を、早月小屋目指して下降です。
山頂直下と途中に2箇所、氷結しかかったガリーと急な雪壁があり、懸垂下降した痕跡がありましたが、ロープは出しませんでした。
振り返ると剱岳がドーン。
小窓20160501_写真27
早月小屋からは各自のペースで馬場島へ。私はペースが遅くて(みんな速い!)、木の根本の残雪穴にでもはまったかと心配されてしまいました。
尾根下部は春まっさかり。
新緑の中、林床にはイワウチワの花畑、カタクリやショウジョウバカマ、タムシバやマンサクなどが咲きほこる中ギフチョウが舞い、癒しのハイキングでした。
小窓20160501_写真29
あっさりと昼に下山できたので、まったりと温泉に浸かってから帰りました。

 

予想されたことではありましたが残雪が少なく、下部は藪漕ぎに苦労しましたが、上部は素晴らしい岩稜、雪稜でした。

 

4:15三ノ窓→4:55/5:10 池ノ谷乗越→5:55 長次郎のコル→6:25/6:40 剱岳山頂→ 8:50/9:10 早月小屋 → 12:00馬場島(河合。速いメンバーは11:00過ぎには馬場島に着いていた模様)

 

北ア 剱岳 チンネ左稜線

2015年8月13日~16日
赤井(記)、野澤

8月13日 曇り時々雨

始発のトローリバスに乗り扇沢から黒四ダムへ。
今日、明日と予報は雨である。
降られる前にできるだけ進みたいと7時に出発する。
途中、小雨と曇りの繰り返しの鬱陶しい天気だが思ったほどは降られなかった。
真砂沢の小屋に14時着。ここで今日、明日の分のビールを買い込む。
長次郎の雪渓はアイゼンをつけ登るがスピードがあがらない。
野澤君から「ビール担ぎましょうか」との声がかかり誘惑に駆られるが「酒を軽量化してください」と次回言われかねないのでグッとこらえて登り続ける。
熊の岩に近づいているのだが、霧で視界が悪く見えない。
目の前に見える岩を回り込んで上がるとテントがいくつか見えた。
17時、熊の岩着。

8月14日 雨時々曇り

朝から雨のためゆっくり起床し、この日は停滞。
14時過ぎから雨が上がってきた。
八ツ峰がバッチリ視界に入ってくる。
八ツ峰
景色が素晴らしく、水場も近くいい天場である。
Aフェースに取付いたパーティがいるが、こちらは明日に備え、ビールに夕飯を早めにとり就寝とする。

8月15日 晴れのち曇り

2時半起床、3時50分出発。
アイゼンをつけバイルを持つ。
途中、左と右に雪渓が分かれるが、右へ行くと目の前のギザギザの稜線の方に行くため、左を選択する。
そのうち雪渓がきれ、がら場をあがり始めると明るくなってきた。
北方稜線に到着。
しばらく稜線をチンネに向かい歩いていると、目の前のコルに雪渓から人があがってくる。
どうやら雪渓の分岐は右へ行くのが正解だったらしい。
そこが池ノ谷乗越であった。
三の窓からアイゼンを再度つけ、チンネの取付きまで行く。
先行は2パーティ。
私は15年前に来ているが、野澤君は初めてのため、野澤君トップで登攀開始。
野澤君トップ
最初は岩も湿りぎみであったが、2ピッチ目からは三の窓雪渓を見ながらの快適なクライミングであった。
核心のピッチは本人の希望通り野澤君にまわる。
少々戸惑い気味であったが、無事乗越していった。
が、このあとが長い。ロープいっぱいでやっと「ビレイ解除のコール」がかかり ホットする。
その後はロープの流れの悪いピッチをこなし、チンネの頭に到着。13時。
少し休んで頂上を目指す。
剣岳頂上着。15時。
剱岳山頂
視界が悪く見えないが、池の谷と思われるほうに向かって黙祷した。
熊の岩目指して下山開始。
軽アイゼンでの雪渓下降が悪く難渋するが、無事テン場着。
すぐにテントを撤収し、真砂沢のテント場へ18時半到着。

8月16日 晴れ

ひたすら下山。

感想:剣はやっぱりいい山でした。また来ます。

北アルプス 剱岳 剱尾根

2004年5月6日から4日間
大滝(記)、森広


5月6日 快晴

上市駅よりタクシーで馬場島に7:40到着。

白萩川までの道は殆ど雪が無い。取水口を過ぎ、川が左に屈曲する地点で流れが出ていて対岸に渡れない。仕方ないので夏道を目指して左の急な斜面を大高巻きする。部分的にⅣ+位あって恐い。

奮闘して鞍部に着くとはっきりした道があった。9:55。

白萩川に向かって降りて行く。池ノ谷出合は雪で埋まっていた。そのまま詰めたくなるが、馬場島で池ノ谷は沢が出ていて通過不能と言われたので諦める。

10:55小窓尾根に取付く。

雷岩の地点だがここで良いのか少し不安だ。

本流に大岩が有って登り口の左にも大岩がある。赤谷尾根側を見ると急な沢があって十字峡の様に見える。

アイゼンを着けて登って行くが、途中で落雪が有り危険だなと思っていたら左に夏道が見えたのでアイゼンを外してそこを歩く。12:00小窓尾根上に出る。1614m地点に13:50。

展望が開け、剣尾根が凄い迫力で聳えている。そこから池ノ谷に降りて行く。途中雪が切れて居る所もあったが問題は無い。

池ノ谷に降り立つと、自分があの『池ノ谷』に居る歓びに満ちて来る。『剣尾根』と対峙する。やっと来たこの場所に。

延々と歩き始める。快晴で気温が高い。頭がぼーっとして来る。夢を見ながら足だけは前に出して行く。途中、右岸の岩と雪の段差があり雫が落ちていたので冷たい水を補給出来た。

16:00剣尾根末端。

大高巻きをした為に時間が遅くなった。ここは安定しているので泊まる事にした。

水は雪と岩の隙間に雫が沢山落ちていたので溢れるほど取れた。寝る前にコッフェルを置いて居たら、朝には一杯になっていた。

5月7日 晴、午後暫くガス

3:30起床4:50出発 4℃ 2本目に現れたルンゼR10を詰める。初め確信が持てなかったが、その先は壁になっていたので戻って取付いた。

コルEからは藪、急な雪面、恐い土壁、色々な要素が出て来る。ルートを見つける力が要る。Ⅲ峰8:20。

Ⅱ峰の岩場でロープを出す。荷物が重いので結構難しい。いきなりA0してしまう。20mランニング6箇所位。

殆ど休み無く岩場、藪を越えて行く。天気は良いが日が当たらず風が気持ち良いので行動が捗る。

コルCに着く。いよいよ核心部だ。ガスが周りを覆い始め岩場が陰惨に見える。畏怖すべき壁だ。緊張感が高まる。風が出てきて寒いので雨具の上を着て薄い手袋に取り替える。

恐い思いを押さえ込み大滝がリードする。少しだけフリーで登り、後はアブミの架け替えだ。荷が重く疲れる。右にカンテを廻り込むとフリーになる。後半のフェースをフリーで行こうとするが、恐くて一旦まとめたアブミをまた用意して結局ずっと人工で登ってしまった。ルートが曲がるので後半はロープが流れ難くなる。ランニング12箇所位。

森広さんはハーケンに手が届かず苦労した。

這松の尾根を進んで行くとあの高名な「門」が登場した。
多くのクライマーが称えて止まない「門」。
本当に素晴らしい岩塊だ。

R6のコルを越え取付きのバンドで休憩し中央のクラックを観察する。出だしが被っていてシュリンゲが風に揺れている。いきなり疲れそうだ。覚悟を決めて大滝がリード。クラック内に手を噛ませて身体を上げ、シュリンゲにアブミをセット。

アブミの上段に移るとしっかり掴めるガバホールドがあった。

ハングを乗り越し、左にあったハーケンにシュリンゲを通して確認したら簡単に抜けた。落着いて右上を見たらしっかりしたハーケンがあって助かった。

その後は、クラックと言うよりもバンドの左上トラバースと言う感じだ。ハーケンも適宜あり、とても楽しく途中から歌が出て来る。名にしおう名ルートだ。16:40。

ここでロープを外すが最後のスラブが結構恐かった。ぐずぐずのガレを通過すると間もなくドームの頭。時間が遅いのでここで泊まる事にした。17:00。

テント3~4張可能。

5月8日 快晴

3:30起床 5:10出発 -2℃ 念の為ハーネスを着けて行く。

アイゼンを着けたり外したり忙しい。

コルAもテント3~4張張れそうだ。岩場を左に巻く所で1ヶ所恐い所があった。右に望見出来るドーム稜のルートを考えながら目で追う。

中央ルンゼは氷化している部分もあった。登ってみたい。小窓ノ王、池ノ谷、小窓尾根、赤谷尾根、毛勝山方面、後立山方面、展望は360度だ。

剣尾根の頭は、岩場は行けそうだが恐かったので、左の雪壁をダブルアックスで行く。

長次郎の頭7:30。

剣岳山頂8:20。

槍ヶ岳も見えた。早月尾根の下降は、降り初めて間もなくと暫く行ったいつもの雪壁とニヶ所懸垂した。伝蔵小屋11:07。18℃。

馬場島15:00。

天気も気分も良かったので馬場島で泊まって帰京した。

 

剱岳 八ツ峰主稜上半

2002年5月7日から4日間
石田、森廣、大滝(記)


扇沢~黒部ダム~内蔵助平~ハシゴ谷乗越~真砂沢~長次郎谷Ⅴ・Ⅵのコル~八ツ峰の頭~剣岳~前剣岳~武蔵谷~真砂沢~ハシゴ谷乗越~黒部ダム~扇沢

7日、未明より扇沢は小雨に煙っていた。

桜がまだ咲いていて小さく喜んだ。

7:30のトロリーバスで黒部ダムに行き、雨具を着て8:00出発。

外に出て観ると、今年は本当に雪が少ない。

五月下旬のようだ。

別山南尾根は全然雪が無い。

黒部川沿いの道も夏道を行ったり、雪の上を進んだり、大岩の間を縫ったりと目まぐるしい。

平年なら河原をとことこ歩けるのに苦労する。

丸山東壁を石田君に説明しながら登っていくと、岩壁を過ぎた辺りに大きく前傾している岩があったので、雨宿りをした。

夏には見たことの無い場所だ。

この先、雨の中、真砂沢まで頑張るのも辛いし、翌日に真砂沢に入っても日程としては、大丈夫なので、早いけれどこの快適な場所で泊まる事にした。

雪を整地したら立派なテント場になった。

すぐ下に水流もあったし、ハングからの雫でもあっと言う間に水が汲めた。

11:30たっぷりと昼寝をした。

 

8日、9:00起床。

朝まで降っていたのでゆっくりと起きた。

11:00出発。

いい天気になった。

森広さんが「雨の後だから今日は八ツ峰の上に上がるのは止めましょう」と言う。

雪崩を考慮した堅実な考えに感嘆する。

少ない雪で出た藪に苦労しつつ内蔵助平に着く。

雪のあるここは初めてだ。

やはり、スキーにうってつけの地形だ。いつかスキーで来たい。

ハシゴ谷乗越からは、尾根ではなく谷を下る。

Ⅰ峰3稜が目標だったが、見事に雪が少ない。

やはり、そこは登れない。

谷は剣沢まで雪が繋がっていて快適。

剣沢の流れは真砂沢近くまで出ていた。

13:50真砂沢。

他にはスノーボードの人が一人居た。

風を避けるため斜面を切り崩して幕営した。

 

9日、3:00起床。

満天の星が素晴らしい一日を約束してくれる。

4:30出発。5℃。

初めからアイゼンを着けて歩く。

事前に聞いていた長次郎の雪崩跡は、その舌端は別山沢出合まで達していた。

沢幅一杯に想像を絶する土砂と岩と雪のデブリ。

後で上部から見て分かったが、これは雪の崩壊ではなくⅠ・Ⅱ峰間ルンゼより一本下側ルンゼ上部の土の斜面が4日の大雨で緩んで崩れ落ち、雪を巻き込んで流れて行ったものだった。

歩き難いデブリを登り、Ⅰ・Ⅱ峰間ルンゼ下に着く。

上部に1ヶ所雪が切れている所があるため、協議の結果Ⅴ・Ⅵのコルから登ることにした。

6:55、Ⅴ・Ⅵのコル。

二人組の先行パーティーが居たが、ここで追い着く。

Ⅵ峰は夏の懸垂支点まで雪が無い。

石田君に「ロープ要る?」と聞くと、即座に首を横に振った。

大滝、石田、森広、の順で、ロープ無しで登り始める。先行はガイドさんらしい。

彼のトレースを有り難く追う。

白馬岳、鹿島槍ケ岳、爺ケ岳、針ノ木岳、蓮華岳、槍ケ岳、見える筈の山は全て見える。

雪は、ぐしゃぐしゃ。

切れ目も良く出てくる。

懸垂下降3回、どれもロープ1本。

一ヶ所、懸垂しようとしてロープをエイト環にセットして、一段降り、最終チェックをしたらロープが一本しかエイト環に入っていなかった。

自分がこんな事になるとは何と言う事。皆さん、チェックは入念に。

快適に登り、9:55八ツ峰の頭。

所要3時間の八ツ峰主稜上半。

登る為にロープは結ばなかった。

頭からは北方稜線の山々。どっしりとして重々しい。

いつか行ってみたい。

小窓尾根は雪がほとんど無い。

先行のガイドさんの言うには、R4には氷瀑は無いようだ。

11:35剣岳山頂。

富山平野は雲海の中だ。

そこからは雪が所々消えていてアイゼンでは歩き難い道を下って行く。

前剣を過ぎた地点では、急な雪面を体を山側に向けて長い距離を下った。

武蔵谷が下まで綺麗に雪が着いているようなので下りた。

雪は適度に締まり、快適だった。

スキーで滑りたい。

15:20真砂沢。

石田君が上げた缶ビール1本を三人で分けて乾杯した。

 

10日、3:00起床。

5℃。曇り。

5:00出発。

6:20ハシゴ谷乗越7:00内蔵助平10:30黒部ダム

今春の奥山参りは終わった。

所々、咲いている桜を愛でながら帰京した。

 

剱岳 剱尾根

2002年5月3日から4日間
浅野、柴田(記)


<概要>

日程は4日間あるので剣尾根のトレース後に三ノ窓に移動してチンネも登れるかと思っていたが実際には降雨の為1日半近く停滞を余儀なくされ剣尾根のみで終わった。

・ 雪は非常に少なく核心の門のピッチはアイゼンを脱いで登った。

・ 雪が少なかったせいもあるかもしれないが幕営適地は聞いていたほど多くなかった。

我々は2-3人用テントを担いでいったがこの寡雪状態でもコルE手前、コルD、ドーム付近、コルA手前の雪渓上であれば比較的安心して張れると思われた。

ツェルトビバークならもう少し範囲は広がるだろう。

コルA、B、Cはナイフリッジになっていて幕営には向かなかった。

・ テント・食糧・燃料をしっかり担いで登った為停滞中は快適だったが登攀中は荷の重さでⅢ級程度でも傾斜が立った所は後ろに体が引かれるようで所々恐い思いをした。

<行動の記録>

池ノ谷にそびえる気品に満ちたリッジ剣尾根と昨年門前払いになったR4を組み合わせて登ろうという計画を4月中旬くらいで浅野さんと固めた。

お互いGWの全てを山に投入すると単身または独身に舞戻る可能性があるため前半は家族と楽しい休みを過ごし、後半の4日間で「すいませんがちょっと山に行ってきます」と言う予定を組んだ。

尚、オリジナルの計画では下半を登ったらテントはコルBあたりに残しサブでR2を下り、R4を登ってテントを撤収して上半につなげるといううまい話だったが行ってみてそんなにうまくは行かない事がよく分かりました。

今年は雪少なく春早く予想通りR4は氷無くカラカラ状態と言う情報が入り、念のために持っていったスクリュー類も結局馬場島で車に残置することになった。

ちっとも寒くない5月3日朝警備隊にご挨拶を済ませて池ノ谷に向けて出発。

 

5月3日

晴れ

白萩川の取入口は堰堤脇の雪渓を歩きタカノスワタリあたりで1度へつりをまじえたのみで渡渉する事もなく池ノ谷出合に着。

池ノ谷ゴルジュは中を覗くとそのまま通過出来そうだったのでヤバかったら引き返す事として入ってみる。

雪渓はしばらくはしっかりしていたが最初に右に曲がるあたりで大穴があいており、轟音と迫力ある飛沫が迸っている。

右岸の露岩沿いにトラバースできそうだったのでちょっと登って見る。

Ⅱ位だが滑って落ちれば大穴にストライクで当分遺体は上がってこないだろうと思うと慎重になる。

幸い上部にボルトとピンで作った下降点がありそこからは懸垂で大穴を越えた雪渓上に降り立つ事が出来た。

念のためにその先もチェックしたが大丈夫なようだ。

浅野さんにOKサインを出し後続してもらいロープをたたみスタスタとゴルジュを進む。

早月尾根からの枝沢が入り三俣になったところを回り込むと谷が開け向こうに二俣と剣尾根が姿を現した。

「割と近くに見えるけどここからが長いんですよ」

と言う浅野さんの言葉どおり1時間半くらいかかってようやく二俣に達し、そのまま進んでR10とおぼしき所で休む。

トポにはR10から容易にコルEに達せられるとあり、その割には草付と岩盤があらわになり渋そうだ。

たぶん例年は雪が付いていて簡単なんだろうと勝手に納得し取り付くが、実はR10はもっと先でここは無名の急斜面だったのでした。

最初ロープなしで取り付き途中結構恐い思いをして露岩を越え、アンザイレンし草付きから雪壁をつなげてコルに出た。

コルには古いトレースが残っていた。

ここからしばらくヤブ、雪稜、岩稜のミックスが続く。

途中浅野さんが左俣側の急斜面に滑り落ちかけたが雪が腐っていたおかげですぐに停止した。

ダンゴになったアイゼンを不用意に置いたとの事だったが浅野さんが滑落した瞬間は心臓が止まりそうになった。

しばらく進み格好のテントサイトの雪面を見送ると眼下にやさしいルンゼとコルが現れ、これが本当のR10とコルEという事がわかる。

コルEから上はヤブの急斜面になっている。

いい加減疲れてきたので先ほどのサイトで幕としたい気もしたが天気はよくまだ2時間程度は明るいので頑張ってコルDまで延ばす事にした。

ヤブ、草付、潅木登りのミックスを我慢しながら進むと10mあまりⅢ級くらいのフェースが現れその手前左側の雪面が整地すれば張れそう。

トポから判断してここがコルDに間違いない。

今日はここまでとした上で浅野さんがフェースにフィックスを張る。

 

5月4日

午前中は曇りで行動できると思っていたが終日雨で停滞。

新品のゴアライトを担いできたおかげで特に濡れる事もなく割と快適に惰眠をむさぼり過ごした。

明日は未明から行動してその日のうちに三ノ窓に移動できれば最終日に午前中チンネを登れるかも、等と取らぬ狸の皮算用をしていた。

なお、山岳しりとりは二人だとつまらなそうなのでやらなかった。

 

5月5日

雨のち晴れ

予報では朝から晴れるということだったので3時起きでスタンバッていたが7時になっても8時になってもジャージャー降っている。

話が違うよと天気予報を聞き直すと微妙に前日から表現を変えている。

午前中一杯降るようだと剣尾根下半部だけで撤退の可能性もあるか、などと悲観的な方向に思いを巡らせていたらテントの外で人の声がする。

ベンチレーターから覗くと3人パーティが我々が2日前にフィックスした壁に取り付こうとしているところだった。

我等も続けと急いで荷物をまとめてテントをたたみ9時30分頃から行動を開始するが、先行する3人パーティはⅢ級程度のフェースに結構時間がかかっておりラストは「ゴボーしまーす」

といっている。

もしかしたら「順番待ち→時間切れ→敗退」

というイヤな予感が脳裏をかすめる。

フェースを抜けるとハイマツ交じりの斜面となりその上の岩稜で先ほどの3人パーティがロープを出していたので「ノーロープで先行させて頂いても良いですか」

とお願いし了解を得て急いで抜ける。

そこからすぐコルCで目の前には垂壁、上部には門の巨大な岩塔が聳えていた。

壁の状況から見てアイゼンは不要と判断し二人とも外す。

コルCのナイフリッジ上の雪を慎重に進み壁に取り付く

1P目(浅野)最初数手フリーのあと人工で右上し右のカンテまで登る。

ここでアブミをたたみカンテ右のフェースをフリーで登りレッジまで。

人工部分はどうということ無いがそのあとのフリーのフェース部分が3泊4日幕営装備入りザックを背負った身には体が後ろに引かれそうで緊張した。

後ろを見ると例の3人パーティのあとにもう一つ別の3人パーティが後続している。

2P目 ロープをたたみハイマツ交じりの岩稜を100Mくらい登ると目の前に門がジャーンと言う感じで現れる。

3P目(浅野)核心のピッチ。

5M位上で2手ほど人工を交えたあとはフリーでバンドを左上し、途中からクラックを直上。

ここでもどうということ無いⅢ級程度のフリーで体が後ろに引かれやけに恐かった。

途中から現れたクラックはバックアンドフットやレイバックなどいろいろ使えてナイスなピッチだった。

クラックの奥にキャメロット1番の新しいのが残置されていた。

山でモノを拾うと必ずそれより高価なモノをなくすというジンクスのある柴田は見向きもしなかったが浅野さんはかなり頑張って頂戴しようとしたようである。

4P目(柴田) ゆるいフェースを登り一旦リッジを下って崩れそうなルンゼを登る。

Ⅲ程度でどうということはないのだがとにかくボロい。

ここで一旦ロープをたたみハイマツ、雪稜、岩稜のミックスを少々歩きドームの頭を通過、R2とアルファルンゼがコルBに突き上げているのが見下ろせる。

コルBは狭くリッジも立っていて幕営には不向き。

R2とアルファルンゼは割と容易に下れそうに見えた。

コルBを越えてやっと上半部の始まりである。

今日中にどこまで行けるのか分からないがまあ進めるだけ進むことにする。

最初のピッチは大まかなフェースを直上し上部のピナクル状まで柴田がリード。

次にリッジの左斜面の雪壁を登り途中からリッジに移りコルまで浅野さんリード。

このあたりでようやく後続パーティがドームの頭に現れる。

ずいぶんと時間がかかっているようだ。

最後の3人パーティはザックの大きさから見てサブ行動のようだったので彼らは今日中にベースまで戻れるのかな、とちょっと心配になる。

3ピッチ目は容易な階段状を登り岩稜に出てロープをたたむ。

時刻も5時近くなり大分日が傾いてきた。

テントを張れるスペースを探しながら岩稜を進むとコルA手前で割と平坦な雪渓が現われ整地すれば張れそうだったので今日はここまでとする。

水作りの後夕食を終えたらいつのまにか9時をまわっていた。

疲れてすぐ眠りに落ちる。

 

5月6日

快晴

休みも今日までで明日からは仕事である。

テントを起き出すと右手にドーム稜から剣尾根の頭が澄んだ空に硬質な姿でたたずんでいた。

テントを撤収して一応アイゼンは着けてコルAに下り、ここから容易な雪壁と岩稜を剣尾根の頭まで登る。

下から鋭鋒に見えた剣尾根の頭も登ってみるとハイマツ混じりの広いピークだった。

すぐ隣の長次郎の頭までも一足投だ。

振り返ると登ってきた剣尾根が自分の足元までつながっていて向こうには毛勝猫又の山並が美しい。

長治郎の頭で無事登攀終了お疲れさんと浅野さんと握手。

いったん長治郎のコルへ下りバケツになったステップを階段のように登り本峰頂上に7時15分に着。

今年は雪が少ないのか頂上の祠もかなり姿を見せている。

八ツ峰を見ると雪稜と言うよりは岩稜に見え、雪の少なさに驚く。

10分程度休んで下降開始。

早月尾根も昨年に比べると雪がとても少なく暑い中途中からシャツ一枚になりスタコラと下る。

伝蔵小屋を少し過ぎた小ピークでの大休止を含め4時間ほどで馬場島に着いた。

途中松尾平を過ぎたあたりでカタクリの群落が現れその横を小さなアゲハチョウが飛んでいるのでもしやと思ったらやはりギフチョウだった。

知らない人のために書くとギフチョウは日本の固有種で春の女神とも呼ばれ天然記念物に指定されている。(ですよね、森広さん。)

登山道沿いに軽やかに舞うギフチョウが4日間お疲れさん、と言ってくれているようで心がなごんだ。

馬場島に着くと緑は濃く既に初夏の陽気。

装備を乾かし、警備隊に下山報告を済ませ、12時過ぎに心の中で剣岳にお礼を言って馬場島を後にした。

<タイム>
5月3日
馬場島(5:30)→池ノ谷出合(6:45)→池ノ谷ゴルジュ終わり(7:45)→コルE(15:40)→コルD(16:30)

5月4日
停滞

5月5日
コルD(9:30)→コルC(11:15)→門取付(12:45)→ドームの頭 (15:30)→コルB(16:00)→コルA手前テン場(18:20)

5月6日
テン場(5:55)→長次郎の頭(6:30)→剣岳頂上(7:15)→馬場島 (11:25)

 

<おまけ…観光編>

上市のアルプスの湯でゆっくりと汗を流すはずだったが折り悪く5月6日に限り休みとの事。

仕方ないので糸魚川方面に国道8号線を走れば風呂なんてすぐ見つかるよ、とお気楽に走り始めたのは良いが一向に現れない。

剣の方を見ると早月尾根、池ノ谷、小窓などが一望のままでそれはそれで素晴らしい景色だったが、温泉が現れない。

たまに高級旅館っぽいのや風呂付きビジネスホテルの看板は現れるが求めているものと異なるので見送る。

既にフロ、メシとプログラムが入力されているのでフロが終わらない事にはメシにもありつけない。

滑川、魚津、黒部、入善と過ぎたところで右側に「ふれあいの湯 →」の看板を発見し大喜びで右折すると「11km先」との表示。

遠いとは思ったがここで見送ると今度現れるか分からないので我慢して車を走らせる。

宇奈月温泉の方に向かっているようだった。

20分くらいでやっと現れた。

建物はちょっと古いがこの際さっぱりできればいい。

料金400円を払い湯殿に入る。

私はいつも最初軽く湯船につかってから体を洗う習慣で、湯船につかりながら鏡の前に座った浅野さんを見ると何故か固まって動かないでいる。

数秒で固まった理由が分かった。

つまりないのである。

シャンプーも石鹸も。

良く見るとおじいさんもおっさんも少年も皆マイシャンプーにマイセッケンを使っている。

洗い場で取り付き敗退を喫した浅野さんが湯船に帰ってくる。

じゃんけんで負けた方が受付にシャンプー石鹸を買いに行く事にしてじゃんけんすると柴田が負けたが浅野さんは「自分が行ってきますよ」と買いに行ってくれた。

すまんのう。

でも10分ほどして帰ってきた浅野さんの手にはシャンプーとリンスしか無かった。

石鹸は売っていないと言われたとの事。

置かないなら売らんかい、と二人して悪態をつくがどうしようもない。

浅野さんは「自分は頭を洗うだけで良いです」

と早々に諦めたが何とかさっぱりしたい柴田は諦めきない。

洗髪を終え隣のおっさんに石鹸を貸して欲しい旨乞うたが「この石鹸、オレのじゃないよ」

と言うつれない返事。

いい加減ツキの無さに嫌気が差してきたが負けるもんか、と離れた所に座っているじいさんの所まで歩いてゆき石鹸を貸して欲しいのですが、とすがると左卜全(知っている人も少ないか)のような笑顔で貸してくれ、何とかツキの無さもろとも洗い流しさっぱりする事が出来た。

糸魚川まで8号線を走ったがフロのあとメシも済ませて柴田は仮眠状態でウトウトしていたら突然車が停止。

外を見ると魚屋の前で浅野さんはダッシュで魚屋に入っていった。

後を追った柴田が事情を聞くと「ますの寿司」を買わなくてはならないという。

こんな魚屋にはないだろなと思いつつ一緒に探すがやっぱりなかった。

「どうしよう、あれを買って帰らないと。。。」と浅野さんは蒼ざめている。

どうやら家族に山行のお土産として約束手形を発行済みのようだった。

きっと高速のサービスエリアにキットあるよ、と根拠レスの慰めをして再出発。

その後柴田は慰めの言葉も忘れてグーグー寝ていたが後から話を聞くと無事高速のサービスエリアで買えたとのことだった。

めでたしめでたし。

北陸道、上信越道、関越とつなぎ9時過ぎに無事帰京。

 

剱岳 八ツ峰Ⅵ峰、チンネ

2001年8月13日から5日間
櫻井、高橋、大滝(記)


8月13日

内蔵ノ助平経由で真砂沢へ。

テント場は混んでいたが、平らな所に張ることが出来た。

テント場の端がすぐ雪渓だ。

悪い事に、櫻井さんが真砂沢のすぐ手前で足を挫いてしまった。

8月14日

5時起床6時出発かな。

他のテントは3時、4時に起きている。

なんて偉いのだろう。

櫻井さんも「行ってみる。」というので3人でⅥ峰CフェースRCCルートに向かい長次郎雪渓を登る。

テント場からずっと雪だ。

途中で6本爪アイゼンを着ける。

櫻井、高橋は12本爪を着ける。

剱沢から歩いてきたクラックスの本郷パーテイに会う。

岩場に着くと混んでいた。

A、B、C各フェースとも順番待ち。

特にCフェース剣稜会ルートは数珠繋ぎだ。

目当てのRCCルートには誰も居なかったが、到着直前にワンパーテイに入られてしまった。

遅い先行で嫌だったが、お盆だから仕方ない。

明るく快適な岩を楽しんだ。

(全ピッチ大滝リード)2本目も登りたかったが、時間的に駄目だった。

まあ、いいや、降りてビール飲もう。

8月15日

櫻井さんは、足が腫れたので休養。

この日はDフェースなので4時起床5時発

Dフェースは、A、B、C、とは格が違う。

怖い。

取付きも雪が阻んでいる。

雪渓を左から回り込み、苦労して到達する。

取付きは暗く、じめじめしている。

思った通り誰も居ない。

以前、富山大ルートを登ったので、久留米大ルートを選んだ。

(全ピッチ大滝リード)

1P目 直上は怖いので、左から巻いて行く。

明るいフェースに出ると楽しくなる。

小川山物語を簡単にしたような、わくわくするピッチだ。

2P目 右に行くのか、左に行くのか迷ったが、左に進んだ。

それで良かったみたいだ。

3P目 出だしの4-5mのスラブはフリークライミングの様で楽しい。

ハング下からアブミトラバースし、ハングの切れ目をA0でぐいぐい登っていく。

残置はしっかりしている。

アルパイン的興奮に満ちてくる。

核心部が終わっても、頭までロープは着けたままだ。

取付き9:20Dフェースの頭12:30 2本目は、やはり無しにして真砂に降りた。

8月16日

櫻井さんは下山。

この日はチンネ左稜線なので、3時起床4時発。

何と真面目な。

長次郎右俣は上部雪が繋がっていない部分があった。

左稜線の取付きに、ほいほいと向かった。

壁には誰もいない。

15日、16日で結構下山したようだ。

ところがここで大失敗。

取付きを通り越し、その先のルンゼを、変だ。変だ。と思いながら登った。

でも難しくて、2P目が登れない。

散々悩んでいると三ノ窓側に人が来た。

大声で、「すいませーん。左稜線の取付きはそっちですか。」

とても恥ずかしかった。

いそいそと戻り、正しい取付きに着いた。

本来8:30には取り付けたのに、11:00になってしまった。

随分昔に来ただけなのに、慢心でしっかりと取り付きを確認しなかった。

大いに反省しました。

先行は4人で2パーテイ。

待たされることなくさっさか登る。

ガイドされているが如くだ。

ただ、ハング越えのピッチでは待たされた。

ここは右のフレークがぐいぐい掴めるので右寄りに登ると楽だ。

先行のトップが登っている時、ガスが出て幻想的でとても格好良かった。

寒くなったので長袖を着た。

上部のナイフエッジから下の雪渓を見下ろすと眩暈を覚える。

時間がとても気に掛かったが15:20に終了。

ほっとした。

(全ピッチ大滝リード)

真砂沢17:30着。

8月17日

良く晴れたなか下山した。

 

 

剱岳 小窓尾根~剱尾根R4~早月尾根

2001年5月3日から4日間
森広、大滝(記)


R4に昔から憧れていた。

ガイドブックで見るその姿は、急峻で陰惨な印象だ。

幾ら「実際に取り付いてみると見た目ほどの傾斜はなく、、、、」

と書かれていても怖い写真を見せられては、恐怖心は拭えない。

去年、登ったことのある人から話を聞く機会があり、技術的には難しい所はないとの事。

これでR4が一気に射程距離に入った。

2日 23:54 急行能登

3日 上市駅よりタクシー(6,790円) 7:40 馬場島 曇り 9:30小窓尾根取り付き 尾根に上がる最後の草付が怖かった。

のそのそ歩いて11:45 1614m台地 昼前からテントを張っているパーティがいた。

ここからは池ノ谷と剱尾根方面が一望の元に見渡す事が出来る。

初めてなので興奮する。

12時のトランシ-バ-交信で、櫻井、柴田組が1日、2日で八峰を登って、今日は天気が悪い為、雪洞の中で休養するとの事。

登り続けていたら、雨が降り出し、身体を濡らし始めた。

暫く我慢していたが、1900m辺りの台地に他のパ-ティが幾つもテントを張っていたので、ここに泊まることにした。

13:40 台地の奥に窪みがあったので、そこに張ったら風も当たらず快適だった。

水も雪の雫で取れた。

小雨降り続く。

4日 6:05出発 無風 快晴

森広さんはここが二度目なので、「アイゼンは必要ですか。」

と聞くと「要りません。直ぐに雪が腐るでしょう。」

トレースもしっかりしているし、そのまま登って行く。

高度が上がるに従い、赤谷尾根の向こうから猫又山がその威容を現して来る。

どっしり落ち着いた大いなる山塊だ。

やがて岩場になって先行パーティがロープを出しているが、森広さんが「ロープを出した覚えはない。」

と言うので、隙間を行かせてもらう。

岩の痩せ尾根だが落ちる気はしない。

渡り終えると7、8m懸垂し、一旦コルに降りる。

正面の雪の無いブッシュ壁を何人もロープを使って登っているが、前のパーティが左の雪壁を巻いて行った。

のこのこついて行ったら、問題なく尾根に出られた。

ラッキー。

暫くすると、また、雪なし壁に何人も張り付いている。

しかも動きが遅い。

右を観察すると雪線どうしで行ける気がしてきた。

前のパーティも同じ事を考え、右から行ったのでついていく。

急なブッシュ壁を15m程ぐいぐい登ると雪上に出た。

後は容易な露岩とハイマツ帯を行く。

他のパーティはロープを使っている。

マッチ箱と言う所に来たらしい。

らしい、と言うのは、今山行はR4の事ばかり調べていて、小窓尾根については、森広さんが経験者なのでほとんど調べていない。

多くの人がロープとアイゼンで越えていくが、我々は何も無し。問題もない。

マッチ箱を終えた地点で12時の交信。

櫻井PはR4に行くべく谷を降りたが、その谷は池ノ谷ではなく、行きづまってしまって、下山することにし、早月尾根にいるそうだ。

向畑、倉田、浅野Pは4日入山し池ノ谷の二俣まで行くそうだ。

三好、木下、榎並Pは黒部横断、八峰、そして、今、早月を下山中。

一緒になった人から、「R4はびしょびしょと水が流れていると馬場島の掲示板に書かれていました。」と聞かされた。

そうだろうか、そうだとしても高い所だから、冷え込めばまた氷が出来るのじゃないか。

駄目でも取り付きまで行ってみよう、と考えた。

疲れた体に鞭打って歩き、R4と正対する所でじっくり観察する。

確かに薄いが氷は着いているように見える。

取り付きにロープを巻いている人が見える。

三人位だ。

と言う事は途中まで行けると言うことだ。

少し、希望が出てきた。

小窓ノ王の岩場の下から、雫が沢山落ちていた。

4リッターも汲んでしまった。

長い時間、順番待ちをしたので、三ノ窓には、15:15着 テントは10張位。

5日 4:17 起床 薄曇り いよいよ本番だ。

アイゼンを着け5:30出発 良く締まった池ノ谷をとことこ降る。

5:45取り付き 上がハングでバンド状になっているので直ぐ判る。

天気は快晴になった。

取り付きにハーケンが一本だけだったので、森広さんが一本打ち足し、 6:00登攀開始。

大滝が行く。

森広さんが調子悪かったので、結果的には、大滝が殆どリード。

右にトラバースして行くと、ボルト、すぐ近くにハーケンがある。

4級位のせり出した岩を、よいしょっと乗り越し更にトラバース、ベルグラが張り、バンド幅が狭くなり微妙な動きを強いられる。

ハーケン2本にランニングを採り、氷壁に突入。

最中氷と言う感じで表面は堅いが中は雪だ。

ピッケルのピックが岩に当たらないか気になる。

1P目終了点に3人Pがいた。

信州大の人達。

ボルト一本で確保。

先行はがんがん行く。

2P目 氷をトラバースし狭まった滝の下の残置ハーケンで採る。

シュリンゲが束になっているので、下降点になっているらしい。

1P目をここまで伸ばしてもいい。

もう一回残置ハーケンから出ているシュリンゲで採る。

入口は容易だが5mほど立っている氷が出てくる。

でも、でこぼこしているし、両側の岩に足を突っ張れば、疲れずに登れる。

傾斜が落ちどんどん登る。

ロープが一杯になったので、少しでも厚い場所を探してスクリュー2本とピッケルでビレー点を作る。

心許ないが森広さんなら落ちないだろう。

3P目 森広さんがハング下まで伸ばす。

傾斜は緩い。

4P目 右開きのチムニー。

氷は薄いが、有る。

先行はスクリュー2本で「楽しい、面白い」と叫びながら登っている。

傾斜が緩いので、落ちる感じがしない。

先行が穿った窪みに弱い力でアックスを打ち込み、幸せに登っていく。

チムニーを抜けると広くなる。

途中、左にあるボルトで採り、ロープ一杯でボルトとスクリューで切る。

5P目 広く、浅いルンゼを行く。

氷と言うより堅雪。

陽光を浴びて幸せだ。

また右開きチムニーがある。

スクリュー2本で楽しく登る。

このチムニーもさっきのチムニーも3級程度に感じる。

楽しいだけだ。

雪面に出てぐいぐい歩いて、スタンディングアックスビレーで切る。

6P目 森広さんが行くが、先行Pが草付壁で難渋している。

時間が掛かりそうだ。

昨日、小窓尾根から観察していたら、右巻きの雪ラインで行ける気がした。

トップ交替し大滝が行く。

ドーム裏を回り込んで適度な間隔のブッシュでランニングを採りながら、6P、7P、8Pで終了。

11:30先行と一緒になる。

コルB 12:00 一回懸垂した後、壁向きで歩いて降りる。

池ノ谷を気だるく登り返して、2時前、三ノ窓。

時間があるので早月尾根の途中まで行くことにした。

16:40 誰も居ない夕前の剱岳山頂。

何と贅沢な時間。

荒井さんの冥福を祈った。

2800m辺りで泊まり、6日 無事に下山。

(装備)

スクリューハーケンを5本持参したが、3本しか使用しなかった。

5本以上は要らない気がした。

(今回のポイント)

ルートを直ぐに諦めない。

最後の泊まり場で、テント設営の為に繋いだポールを不用意に雪面に置いたら、急な斜面を滑って行った。

運良く5 – 6m下で見つかった。

気をつけましょう。

R4 長く夢見てやって来た 此処には氷が有ーる ほう