荒沢山東面 風穴沢マイナーリッジ(3Pまで)

2001年3月12日
三好、他1名(記)


ある人が言った。

「マイナーリッジには行ってみたい」。

マイナーリッジ、マイナーリッジ、その言葉は何故か私の頭の中に刻みこまれ、そして、いつしか、行かなくてはならないと思うようになっていた。

その後、年報わらじにマイナーリッジが載った。

やはり、マイナーリッジは、グレードがどうのこうの言って取付くルートではなく、思い入れを持って挑むところなのだと再認識した。

思い入れがある分、一緒に行くのは誰でもいいというものではない。

やはり、行きたいと思っている人と行くのがいい。

実は、NくんとYさんはマイナーリッジ経由で知り合ったと言っても過言ではなく、なんとか運良く?強引に?知り合うことも出来たので、NくんかYさんとマイナーリッジに向かおうと、私の頭の中では固まり始めていた。

3月第一週。

とりあえず、マイナーリッジを見てこようとクロガネノ頭北尾根を計画する。

Nくんに来週はクロガネノ頭に行く予定とメールを出したら、返信が着ていた。

「ラッセル頑張って下さい。僕は、トレースをあてに平日にマイナーリッジに向かいます。」

そりゃまずい。

「ちょっと待った。」

と即刻メールを返すと、「実はまだ誰も誘っていないんです。」との返答。

決まった。

後日、Yさんと電話していたら、「マイナーリッジに行くそうですね。いいなぁ。僕も休みとろうかな…」ラッセルには3人居た方がいいが、マイナーリッジのビレイ点は狭くて貧弱そうなので、2人がいい。

思わず、聞こえなかったフリをしてしまう。

Yさん、ごめんなさい。

3月11日(日)

土日の行きも帰りもラッセルの充実した刃物ヶ崎山のあと、上毛高原駅にたどりついたのはすでに登りの電車がなくなった時間だったが、ここでIさんとYさんを捨て、Nくんを拾う。

少ない時間でもぐっすり眠ろうと、K大ワンゲルの山荘に移動し、眠ったのは0:00近くになっていた。

3月12日(月)

快晴

4:00 旭原 ~ 7:30 林道終点 7:45 ~ 9:30 風穴沢出合 ~ 11:00 マイナーリッジ取付 ~
14:20 3P終了点 ~ 15:15 風穴沢出合 ~ 17:30 旭原

朝2:00過ぎに起床。

天気の読みは当たって快晴だが、土日にこんなに積もるとは…先週のトレースはものの見事に消えており、股下ラッセルがいきなり始まる。

林道終点まで2km、そこから取付まで1.5km。

土日の積雪を考えれば、取付まで行くのも、かなり非現実的に思えた。

しかし、先週は先行のトレースに甘え、満足行くラッセルが出来なかったのは確かだ。

せめて、危険のない林道終点までは行きたい。

歩き始めて30分、Nくんが「どこまで行って判断するんですか?」と聞く。

もちろん、「林道終点まで」と答える。

呆れた顔をしながらも、やめようとは言わないNくんが有り難い。

でも、自分では根性なしでと冗談ぽく言うが、本当にやばい時には突っ走った私を止めてくれるだろう。

8:00に林道終点だったら、マイナーリッジは諦めようと言っていたので、頑張って頑張ってラッセルしていたら7:30に林道終点に到着できた。

40kg近い体重差があるので、私のラッセルはあまり役立たないのに、Nくんはまだ元気だ。

そして9:30にマイナーリッジのある風穴沢出合。

沢の上部に不安定な雪がひっかかっているのが見えたので、急ごうと言いながら急傾斜の谷を詰めるが、雪が腐っているので、ずっと胸ラッセルなってしまい、スピードが全く上がらない。

その間にも小さい雪崩は頻発している。

目と鼻の先の取付まで1時間半もかかってしまった。

結局、取付まで7時間もかかってしまったのだ。

N君が前回敗退したときは5時間、昨年成功したわらじの仲間パーティーは4時間ちょっとなので、私たちはかなり馬鹿すぎる。

1P 三好 15m
取り付こうとして、いきなりシュルントに落ちてあせる。

リスの少ないカンテ40mのはずが雪壁となり、下部は雪で埋まって20mほどもない。

左足は不安定そうな雪に足を乗せて雪が崩れないようにと祈り、右足は蹴り込むとすぐ岩に当たるので雪を掻きスタンスを探して足を置く。

ランナーは、小指ほどのブッシュ2本を精神安定剤として取るだけ。

ビレイ点となる潅木にたどり着いたらぐったりしてしまうくらい、しびれるピッチだった。

取付でビレイしている間に、Nくんは上からのチリ雪崩でどんどん埋まり、体の半分が埋まってしまったそうだ。

2P N 40m
出だしの小ハング左側の垂直に近い雪壁を越える。

が、ちょっと削り取ると、そこはステキなスラブ。

頼りなさ過ぎの雪壁に自分の体重が支えられるかなぁと思いながら、冷や汗カキカキ。

支えるのがやっとという感じ。

7m登って、掘り返して出てきたやっと小指以下のブッシュ1本。

その後、大雪庇のくっついた急傾斜のリッジを登る。

結局、取った支点はブッシュ1本、決まってるのか?かなり怪しいスノーバー1本のみ。

2P目ビレイ点に達しようかというときに、左側の沢から強烈な爆風雪崩。

空気が揺れた。

目が点になる。

ここも中指ほどの太さのブッシュ3本で支点を造るが、ユマーリングすると、ビレイ点がぎしぎしきしむ。

超おっかない。

(N(記))

3P 三好 20m
目の前に広がるのは、カーテンのようなひだのある雪の壁。

直上はハング気味で掻いても掻いてもどんどん雪が落ちてゆく。

どうにか不安定な雪を削りながら、トラバースするが、7~8mに40分かかった。

その後数m直上し、あと10mほど左上すれば太めの木があるのは見えるのだが、その下の雪はさらにグサグサで、その上に硬い雪が前傾してキノコ状に付いているので、とても怖くて左上できずに右上してしまった。

ここも中指ほどのブッシュ3本で切る。

さらにしびれまくりのピッチであった。

ここまでで時間は14:20になっていた。

あと10ピッチもあるのだから絶対上まで抜けられないし、例えもう一日あったとしても、この雪の悪さではP4もきっと下れないだろう。

また、ここを越えると、次は6P目まで支点がなく戻ることもできなくなる。

Nくんが登ってきたので、「もう帰ろう。」と声をかける。

ほっとしたような顔で、Nくんも頷く。

懸垂50mで右側の急傾斜のルンゼに降り立つ。

Nくんはビレイ点でシュルントに落ちそうになり、実はビレイ点の足場に使っていたのが単なる雪塊(高さ10m・幅3m)だとわかって、やばいやばいと叫んでいる。

ついでに私が懸垂した時に根元に大きなひびが入ったそうだ。

安全地帯まで尻セード&走って逃げる。

こんなの直撃されたら、本当にやばい。

帰りも帰りで行きのトレースが腐って、足が前に進まなくて、非常に苦しい思いをする。

もう、私はへにょへにょだ。

もっと持久力をつけんとなぁと思いながら、それでも、ほとんど休みをとらずに歩いて、旭原に17:30に到着した。

その後、定食屋でご飯を食べて、仮眠してから帰ろうと、ワンゲルの山荘に酒とつまみを持ち込んで、帰ってこれてよかったと祝杯をあげる。

日本酒にも手をつけて、久しぶりに全く記憶がなくなるほど飲んだ。

火曜は仕事で、朝4時にこっちを出なくてはいけないのに、案の定寝すごし、吹雪の中、車を飛ばして帰る。

相模原についた時には、まだ車の上に雪がのっている状態だった。

この後、Yさんはこれに触発されて、3月26日にマイナーリッジを登ったが、雪がほとんど落ちていて、不完全燃焼となってしまったそうだ。

雪は本当に難しいなぁ。

来年の雪はどんなかなぁ。

 

 

柄沢山~荒沢山~足拍子岳

2000年2月5~6日
板橋、三好(記)

ラッセルしたい気分になった。

足拍子には南尾根からラッセル訓練と称して4年ほど前に登ったが、雪庇が発達していて怖かったという印象が残っている。

しかも、その頃はへにょへにょで、結局ラッセルに〝ついて行く〟訓練になってしまったことだし、今度はきちんと歩いてみよう!と計画する。

2月5日(土)

晴れ

土樽駅で仮眠した後、越後中里スキー場に移動して車を置く(2日間置いて1,000円)。

7:20歩き出し。

ちょっと歩いてから、私はわかん、板橋さんはテストとしてスノーシューを装着する。

ちょうどリフトが動き始める時間となったので、あまり人の入っていないコースの端をこそこそ辿り、高速リフトの終点についてからはひたすら尾根上を行く。

雪も少なめでラッセルはきつくないが、ヤブが所々出てきて歩きにくいし、急傾斜で息が上がる。

板橋さんが元気にトップを行き、9:55には小さなプレートがある柄沢山に登り上げる。

暑くて、ヤッケなんて着ていられない。

その後は、「春山JOY、JOYですねぇ」とかなんとかしゃべりながらの、のんびりペースでのラッセルとなる。

体がすぽっとはまってしまう(私ははまらずに通過したが)ギャップと、ヤブが出たり、岩が出た急斜面となっているポイントで注意するだけ。

雪庇も発達していないので、それほど慎重にならなくてよい。

ただ、スノーシューはトラバースや下りに弱く、登りも傾斜が強くなると、蹴りこみがし難いので辛くなるとのこと。

岩が出てくるところでは、わかんだけよりは歯のついたスノーシューが登りやすそうではある。

1148m手前の尾根の方向が変わるあたりに11:00過ぎに到着。

荒沢山がきれいな三角錐となって見えるが、それからがひたすら登りとなるのだった。

昨日か一昨日かに降った雪を落として、雪を固め、足を一段一段上げて行く。

荒沢岳山頂に到着したら15:10になっていた。

山頂には今日、カドナミ尾根を往復したらしいトレースが残っている。

念入りに整地をしてブロックまで積んで、ツェルトを張る。

17:15くらいには4~5人のパーティが荒沢尾根から上ってきたが、1分も山頂に居ないで下って行ってしまった。

手足が少し汗で濡れてしまったが、寒くもないし全然大丈夫と思っていたら、板橋さんは足が少ししびれた感じがすると言い、寒そうにしている。

一度、凍傷になると弱くなってしまうというのは本当なのだなぁ。

気をつけねば。

2月6日(日)

高曇り

板橋さんと行くと朝飯はラーメンではなく、リゾットなどになる。

すると不思議なものでラーメンが食べたくなり、下りたらラーメンだぁと決意し、7:20、アイゼンをつけ出発する。

ホソドノコル手前には立った岩が現れるそうなので、潅木を支点に懸垂10mほどでコルに立つ。

今回は始め、足拍子から荒沢山へ逆方向で行こうと思っていたのだけど、岩は直上できないし、岩を避けてのヤブ泥アックス登りもしんどそうだ。

それから足拍子岳まで、ひたすらトレースをつけるのが楽しい。

しばらく行くと股まで潜ってしまうので、私はわかんをつけたが、まだ下りも所々あり、足拍子直下の登りは傾斜があるので板橋さんはスノーシューを履かずにつぼ足ラッセルだ。

ぜぇぜぇしながらも足拍子岳には10:30到着。

前回は天候も悪く冬山っぽくて、この先に高いところはもうないってことでやっと山頂だとわかったくらいだったのだが、今日は高速の車の音も聞こえっぱなしで、高速道と平行して歩いて妙な気分だ。

足拍子からは少しトレースを戻って南尾根に取付き、もういいよって思うくらいに後ろ向きにずかずか下り続ける。

急斜面だが、雪の状態は悪くない。

というわけで、そのまま尾根を下る予定が、土樽駅の見える方向、栗ノ木沢を下ろうなんて悪い誘惑に負けてしまう。

しかし、大きな滝はないものの、案の定、雪にはまりまくり、ブッシュを掴みながらトラバースしまくりのバテバテコースで余計に時間がかかった。

土樽駅には13:30到着。

下り電車は13:48、その次は16:32だから、かなりきわどい時間だった。

今回はずーっとトレースを付けて行くことができたので満足満足ではあったけど、2週間後再び来たら雪がかなり増えていて、もっと楽しそうーと少し残念な気分になった。

その時はえせスノーボーダーになってしまったのだけど、また、この周辺を歩きに、登りに来てみようと思う。