阿弥陀岳北西稜

2018年12月30日~31日
川端(記)、小渕

12月30日
赤岳山荘駐車場に車を置き行者小屋へ。天気はいいが気温が低い。
行者小屋にテントを張りジョウゴ沢へ今季初アイスの計画でしたが、最近フリーばかりで久々の山ということもあり、深いラッセルがあるとキツいので、明日に備え北西稜の偵察へ。
行者小屋から少し下りたあたりで適当に尾根を目指しましたが、いつも間に北稜寄りになっていることに気づき、これまた適当なところをトラバースして北西稜の下部まで詰めて戻りました。トレースはありませんでしたが深いところでも膝までのラッセルで状態はまずまずでした。
12月31日
7:00出発
快晴。
前日付けたトレースを見失う間抜けなミスがあり時間をロス。
リッジでロープを出したこともあり行者小屋から岩壁の1Pまで4時間かかった。
11:00
1P 小渕
右のバンドを進み傾斜の落ちたところを登るとハンガーボルトがある。途中のランナーが取れず苦労していた。
2P 川端
ビレイ点からすぐ上の凹状を登る。ここもランナーが取りにくいが、よく見ると残置ハーケンが見つかる。かなりランナウトしましたがホールドもあるので落ち着いて登れた。3P 小渕
ビレイ点から左に回り込むが足元の雪が崩れそうで少々気持ち悪い。途中の木やハーケンでランナーが取れる。ハンガーボルトのあるところでピッチを切った。
4P 川端
出だしが少々悪い。一段上がったところから右へトラバースぎみに登る。ホールドもあり、お助け紐もある。スラブの下まで来たら手の届くところにハーケンがあるのでランナーをとり、細かいホールドを拾いジワジワ登る。凹角部分にハーケンが連打されているのでさほど恐怖を感じず登れたがハーケンが墜落に耐えるとは思えなかった。途中にスリングがあり助けてくれる。
最後の抜け口は雪がついている岩を持つ気になれずバイルをひっかけ一気に足を上げてリッジに出る。少し登ればハンガーボルトがあるのでピッチを切ってここで実質クライミングは終了。ここからコンテで御小屋尾根に出る。ロープをほどき阿弥陀頂上へ。15分くらい。阿弥陀岳 15:30
快晴に加え稜線にでてもほとんど風がなく、雪も締まっていたので最高のコンディションでした。

八ヶ岳 裏同心ルンゼ・南沢大滝アイスクライミング

2018年12月15、16日
中和、玉置 (記)

前週末の広河原沢は雪も氷もなく撤退、結局伊豆の城山でフリークライミングという残念すぎる結果に終わったので、今度こそということで氷結が良好だという情報があった裏同心ルンゼと南沢大滝へ行ってきました。

12月15日 裏同心ルンゼ
前夜に出発し、美濃戸口で車中泊して暗いうちに出発した。雪が薄く積もった林道を進んでいくが、ギアとテントの重さで足が前に進まない。中和さんにどんどん引き離されるが、仕方ないので黙々と歩き続けた。赤岳鉱泉についた頃にはだいぶ疲れてしまった。しかもザックを下ろした時に太ももが攣ってしまいしばらく足を引きずる羽目になった。中和さん、心配かけてすみません。足をかばいながらテントを設営し、アタック用の荷造りを済ませた頃には足の調子も回復してきたので、予定通り裏同心ルンゼへ向かった。

しばらく進んでF1に到着すると、すでに先行パーティーが取り付いていた。氷結は良好そうだ。我々もギアを準備し、腹ごしらえをして滝に取り付く。10mくらいの短く傾斜もそれほどない滝だったが、シーズン初&足の調子が万全ではなかったので少し緊張した。滝の抜け口にペツルボルトの支点があったのでそこで中和さんをビレイした。中和さんは人生初のアイスクライミングだが、ゆっくりながら落ちることもなく順調に登ってきた。F1の上部は60mほどの河原歩きとなりF2へ向かった。F2は3段に分かれており、下部と上部が70度から80度程度の傾斜だった。3段合わせて45mくらいだろうか。まとめて1ピッチで登ることにしたが3段目で疲れてしまいだいぶ時間がかかってしまった。残置支点が他のパーティーに使われているのでF3の氷にスクリューで支点を作り中和さんをビレイ。後続パーティーも続々登ってくるので先に進んでもらってから、F1と同じような長さ、難易度のF3をこなしさらに上へ進んだ。F4?は傾斜の緩い河原歩きの途中の40度程度のナメ滝だったのでフリーソロで突破。最後のF5に取り付く。ここは水が流れており少し鬱陶しかった。F5を抜けると前方には大同心が迫ってきた。右側に45度程度のルンゼがあり氷結も良さそうなので、ここで中和さんが初リードにトライ。難なく突破し、大同心の基部へ上がった。時間があれば大同心南稜を登りたかったが、午後2時を過ぎていたので取り付きだけ覗いて大同心稜を下山し、赤岳鉱泉で宿泊した。

12月16日 南沢大滝
テントを畳んで南沢大滝へ向かった。大滝は自分が見たことのある写真よりもまだ細かったが登ることは出来そうだった。小滝の方も十分氷結しているように見えたが、他のパーティーが取り付いていたので最初から大滝を登ることにした。大滝は全体的に湿っており、スクリューの刺さりが悪かった。特に上部の垂直部分は脆い氷の上を水が流れている状態だった。アックステンションをかけつつ1mおきにスクリューをセットしていたら弾切れになってしまったので一旦ロワーダウンで下部のスクリューを回収して再トライ。必死になってなんとかトップアウトして支点をセットした。服についた氷を払いながら、中和さんをビレイする。中和さんも結構苦労したようだ。さらに奥に別の滝があるという話を聞いたので、氷結した河床を歩いて進んだ。すると確かに50度程度のナメ滝が現れたが、あまりそそられなかったので懸垂下降で大滝下まで戻った。結構時間も押していたので、その後は二人ともトップロープで1トライずつ登って下山することにした。しかし、中和さんが支点を回収する際に凍結したロープがスタックしてしまい懸垂下降はできず、結局本来とは別の残置支点でロワーダウンすることになった。このトラブルでかなり時間をロスしてしまった。ロープの凍結を甘く見ていたことは反省。美濃戸口についた頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

シーズン初のアイスということで感覚を取り戻すのがメインだったが楽しめた。自分はアイスのリードはまだまだ修行中なのでもっと経験を積んで行きたい。中和さん、どうもありがとうございました。

南八ヶ岳西面 大同心大滝、摩利支天沢大滝

2017年12月30~31日
川端、河合(記)

当初、年末は黄蓮谷左俣に行くつもりだった。しかし件のぎっくり腰と峰ノ松目沢での様子からまだ無理そうだった。約束していた赤井さんには幸い野澤さんという強力なパートナーが見つかったので、私は黄蓮谷メンバーから離脱。でも担がなければ登れそうだったので城ヶ崎でも行こうと思っていたら、川端さんからどこか行かない?連絡。
担げない、でも泊まりでアイス行きたいとなると、赤岳鉱泉が真っ先に頭に浮かんだので、2年連続で年末は八ヶ岳に行くことに。腰に万全を期すため、初めての赤岳鉱泉小屋泊まり・・・

12/30
いつも通り夜行かけて、赤岳鉱泉経由大同心大滝へ。途中クリスタルタワーが完全氷結しているのが見えた。今年は何パーティか登っている模様。

クリスタルタワー遠望

大同心大滝まではトレースばっちり。大同心大滝も氷結ばっちり。着いたら先行パーティが左のラインを登っていたので、10時頃、右のラインから取り付いた。最後の垂直部の抜け口でスクリューねじ込もうと思ったら、レスト用のアックス上に打ち過ぎ、ドパンプ状態になってしまい、ごにょごにょしてたら落ちた。アックスの落下防止リーシュですぐ止まったけど、こういうのもアックステンションと言うのだろうか。滝自体はⅤ+程度で、大谷不動本流右側壁の方が難しい印象。

朝一の大同心大滝

その後、空いたのでトップロープを張って、川端さんと4本ずつ登って筋トレ。陽が当たると一気に簡単になった。終了点のカラビナが1つ破断していて1つだけになっていたので1つ寄贈。

午後は陽が当たる

赤岳鉱泉小屋は飯が旨くて暖かくて快適過ぎ、堕落の一途・・・

12/31
天気が崩れる予報なので、早起きしてさっさと摩利支天沢大滝へ。途中、阿弥陀岳西面にこんな氷柱が・・・正体どなたかご存知ありませんか?

謎の氷柱

摩利支天沢大滝の入口は灌木の生えるルンゼ。少し登るとF1出現。Ⅲ級位か。川端さんのビレーしてから、時間短縮でフリーソロ。表面の氷が脆い。

F1、奥に大滝

摩利支天沢大滝はしっかり氷結。どう見てもⅥ-~Ⅵ級はありそうで、出だし10mちょっとは、明らかにハングしている。登った痕跡のあった左側から取り付く。

蒼い所は氷質が良く、白濁している所は悪かった

1本目のスクリューをセットし、離陸。ガラス氷だけれど穴が開いていてフッキングで登れ、凹角で傾斜も殺せるので、登るだけなら快適。しかしスクリューがとてもセットし辛い。2本目をセットしようとした瞬間、フッキングしたアックスがすっぽ抜け、どか落ち。滝のスカートに膝と唇を強打してしまった。しっかり打ち込んでおけばよかった。すぐ仕切り直すも、フリーで行く気は完全に萎え、アックステンション音頭。中段部の傾斜が垂直になってからはましなると思ったら、表面の白っぽい氷はアックスを中々受け付けてくれないモロい氷で、ハング部より辛かった。これはⅥ級と言っていいのでは?

トップアウトして川端さんを迎えるも、川端さんの指の感覚は消失していたらしく、降りようとのこと。私も膝が痛いし、天気も下り坂だしこういう日は無理せずさっさと帰るに限るということで早々に撤収。右側のビレイ点を使ったら、特大ツララ(なるべく蹴落とした)と滴りシャワー(懸垂下降バックアップが凍りかけた)で懸垂下降が恐怖だった。
シーズン初めの垂直氷は、未発達で垂直以上になっていて難しいという当たり前のことを再認識した山行となった。2日連続で落ちたのは大反省。練習あるのみ。付き合ってくれた川端さんに感謝です。

 

南八ヶ岳西面 峰ノ松目沢

2017年12月24日
野澤、河合(記)

まずは愚痴から。
冬山シーズン終わってからの2017年は最悪だった。2年近くの昼夜を問わない地獄の仕事でボロボロになった体は限界を迎え、倒れたのが5月下旬。以降2ヶ月以上、気の滅入る療養生活が続いた。仕事に復帰した8月、体力はどん底。8月終盤、フリークライミングに復帰。クレイジージャムに挟まってみたものの、登れなかった。翌週からは無謀を承知で、狂ったようにトップガンに打ち込んだ。10月、最後のランジが止まったと思った瞬間、落ちた。その後雨に祟られチャンスは来なかった。12月頭、体力も戻ってきて、そろそろ山に行こうと思った矢先、腰に電流が走ってしまった。その後痛めた腰が回復してきたので、やっと7ヶ月ぶりの復帰戦が今回の山行。

12/23
よく組ませてもらっているKさんと城ケ崎のクラック巡り。タコを鑑賞して強傾斜シンハンドに絶望したり、ボクサーにジャブ繰り出したり、激烈にガバの痛いおとじろうハングで遊んだ後で、野澤さんと合流し、一路八ヶ岳へ。南から北へ移動距離が長くて疲れる。

12/24
6:45美濃戸出発。-4℃とこの時期の八ヶ岳にしては異常に暖かいけれど、城ケ崎に慣れ切った体にはやはり寒い。

8:05 登山道から外れる地点到着。何パーティか支度している。今日は混みそうだ。

8:45 F1登攀開始。ロープ不要。F2:Ⅳ級位で立っていたのでロープを出して野澤さんリード。以降、滑滝が続く。氷結は良好。F8までの間、一箇所確保した他はロープを引きずって同時登攀。

F2
簡単なナメ滝が続く
まだまだナメ滝が続く

核心のF8は氷結甘め。
一番簡単なラインでも若干ハングしており、短いながらⅤ級はありそうだ。渋滞しており、30分位待ったら順番が回ってきた。ここでリードしないと本日トップなしで終わりそうだったので、やらせてもらう。出だしのハング気味はステミングで傾斜を殺せた。スクリュー3本、久々の垂直で痺れた。F9もさらに短いながら立っており、まとめてリードも可能だったが、野澤さんに申し訳ないので滝の根本でピッチを切った。

F9は野澤さんがスクリュー1本でリード。適当にF10を超えて11:50登攀終了。12:30まで大休止した後、ルンゼの広い方を忠実に詰めたところ、13:00に峰ノ松目東のコル手前のトレースに出た。

この日はここからが大核心。トレースはあったものの、ダラダラな登りに猛烈な吐き気、頭痛、疲労感。風邪気味+睡眠不足+体力低下+昼飯食べ過ぎのコンボで、高山病になったようだ。ペースが落ち、ゲップが止まらない。頭の中を巡るのはMajiでGEROしちゃいそうな約束の5秒前~♪by広〇涼〇。やべぇまじで頭おかしくなってきた。

峰ノ松目方面を振り返る

14:10赤岩ノ頭に到着。14:20ダッシュで駆け下り、16:00美濃戸下山。標高を落としたら高山病が良くなったのか、カレーパンの消化が済んだのか体調が回復してきた。
そんなこんなで、山の復帰戦はゲ〇ゲ〇に終わった。腰の調子もいまいちで、大きなルートやるにはまだ体力不足なことを認識できたのが、今回の一番の成果か。

愚痴やゲ〇のことしか書いてない気がするので、ルートのことも少し書いておくと、F8以外は大体容易なナメ滝が続く快適なルートで、シーズン1本目の足慣らしに良い感じだった。ただ、思った以上に混雑しており、全ての滝で確保を行うと順番待ちもあるので時間がかかると思われる。F8はトポではⅣ+級となっているが、氷結が甘いともっと難しい。同ルート下降するか悩んだが、下降支点あまりよくなさそう、混みそう、詰めも悪くない、筋トレになる、ということでトップアウトがお勧め。ただ、赤岩ノ頭までトレースがない場合、多少ガッツが要るかもしれない。

八ヶ岳 広河原沢左俣

2017年12月16日~17日
加茂谷、小池、谷水、川端(記)

初アイスクライミングというメンバーを交えアプローチ短く手ごろなルートということで八ヶ岳の広河原沢左俣に行ってきました。トラブル続出の山行でしたが楽しめました。

12月16日(土)晴/曇
二俣は平らにするのには雪が少なく苦労しました。
テントを張って左俣偵察へ。
途中でアックスの振り方など軽くレクチャー。

簡単な小滝をいくつか越えて大滝手前の手ごろな滝でトップロープによる練習。このあたりは氷がやわらかくアックスが良く決まります。

テントに戻る途中「バイルが1本ない!」とメンバーの1人が・・・かなり下りてから気がついたので翌日、回収することにしました。
バイルが見つかることを祈りキムチ鍋と酒で宴会となりました。

12月17日(日)曇/晴
翌日、心配されたバイルは予想した場所にありました。
先行したパーティーさんが置いといてくれたのかも知れません、ありがとうございました。

大滝まで来ると氷は硬かった。
(写真で登っているのは単独の方)

この滝でトップをいたせていただきましたが墜ち口で左のアイゼンが外れ焦りました。

「そのまま、行け~」と声援を受け、何とか力技で一気に抜けられたから助かりました。下から見ていた方が肝を冷やしたかも知れません。その時の写真は残念ながらありません。

小滝を何個越え左の尾根を目指します。支尾根を越えて中央稜から戻ることにしました。

中央稜合流まで50分くらいかかりました。御小屋尾根に出た方が早かったかも知れませんが、これはこれで楽しかった。

無事、テント場まで戻れました。

この後、車まで帰るとスマートキーが反応せず、鍵が開かず、エンジンかからず・・・
ポケットに入れ暖めると電池が復活したのか反応するようになりホッとしました。
小さなトラブルが多発しましたが楽しい山行になりました。

八ヶ岳 小同心クラック

2017年3月11日(土)
加茂谷、薄田、川端(記)

最高の天気の中、小同心クラックに行ってきました。
急遽、薄田さん参戦で大先輩2名とご一緒できました。

赤岳山荘の駐車場から赤岳鉱泉に着いたのが9時少し前。


大同心稜はトレースばっちり。雪もそこそこ締まっていて歩きやすい方だった。


大同心南稜を登るという2人パーティーに先を行かせていただき大同心基部へ。
トレースを見る限り、それほど多く入ってなさそう。


大同心基部から小同心へトラバース。トレースがありません。
ココから少し下りたあたりに2人組の先行パーティーが・・・友達でした。


友達たちに追いつき先に行かせてもらう。一部、ラッセルで取付へ。

先輩2人

雪は乗っていますが掃えば簡単にホールドが出てきます。最高のコンディション。
友人たちは「お先にどうぞ」とのことで私たちが先行となりました。
小同心全景

「行くかい?」のお言葉でトップを任せてもらいました。「アイゼン引っかけてつまずかないように」のアドバイスを肝に銘じスタート。
取り付きにて

1P目(35m)
写真のあたりまでランナーが取れませんがホールド状態が良かったので怖さを感じることなく登れました。ハンガーがあったのでピッチを切りましたがもう少し先に足場のいいビレイポイントがありました。もう少し伸ばせばよかったかな。

2P目(40m)
1P目より傾斜はきつかった印象ですがガバホールド豊富で安心。
出っ張った岩を乗っ越すところが核心。夏に一度登っているので落ち着いて越えられました。途中は残置のハーケンなど幾つかありましたが全部とっていたらロープが流れそうにないので2、3ピンとばしました。
2P目

3P目(15m)
このピッチは簡単。15mほど登れば終了です。Ⅲくらいかな。
3P目

ビレイポイントから少し登れば小同心の頭。ここからロープをまとめコンテで横岳頂上直下まで歩きます。


横岳直下最終ピッチ(25m)
ここも難しいところはありませんでした。25mくらい登れば横岳頂上。この日は稜線に出ても風がなくポカポカでした。
横岳へのラストピッチ

大先輩のレアなツーショット。この二人が後ろから来たら私でも「お先にどうぞ」というと思う。


帰りは大同心ルンゼから大同心基部に戻り大同心稜を下山。


今回は晴天に恵まれ、しかもトップをいかせていただき大満足の一日でした。
大先輩方(歳はさほど変わりませんが)には物足りなかったでしょうし、慣れないフォローにまわっていただきましたが「いや~ フォローって楽だな」なんて言いながら鼻歌まじりで「楽しかった」と言っていただき安心しました。

コースタイム(写真の時間は1時間ほどずれているようです)
赤岳山荘7:30→赤岳鉱泉8:50/9:00→大同心基部10:40→小同心クラック取付11:00/11/30→横岳13:10/13:40→赤岳山荘16:00

2016年末 八ヶ岳 3日間

2016年12月29日~31日
山口、河合(記)

12月29日
前日にドタバタあったものの、なんとか29日朝5時頃八ヶ岳山荘発。どうせ赤岳鉱泉までだしなぁと思って、河合は荷物を詰めまくり25kgオーバー。誤算は美濃戸まで入ると思っていた車が、4駆じゃなかったので八ヶ岳山荘までだったこと。案の定重くてペース出なくて、途中山口さんに置いていかれました。
それでも8時前には赤岳鉱泉着。さっさとテントを立てて、赤井さんお勧めの裏同心ルンゼから小同心クラックの継続です。9時頃出発。裏同心ルンゼは4日ぶり。

F1

F1:20m位(Ⅲ位:河合リード)
河合リード スクリュー1本。フリーソロでも問題なかった。
F2:40m位(Ⅳ位:山口リード)
相変わらず綺麗じゃないけど露出しており、今回はロープ出しました。最後の5m位、少し立ってます。残置レーザースピードとヌンチャクのセットがあったので河合回収。
F3:10m位(Ⅳ位:河合リード)
スクリュー1本。抜け口が薄かった。以降ロープ出さず。
F4

F3を越えると膝上のラッセル。F4:10mはほぼ埋もれていた。F4を超えてから右手の沢に入る。
F4~F5間のラッセル

F5

またもや埋もれかけの雪壁みたいなF5 20mを越えると、クラストして快適な急なルンゼ状雪面。
ルンゼ上部

大同心雲稜ルートを登るパーティ

大迫力の大同心を眺めながら四つん這いで駆け上がると先行パーティに追いついたので、もしやと思い聞いてみたら先ほどの残置レーザーの持ち主でした。フォロワーの人、持ち主にキレられなくてよかったですね。
前半の歩荷は元気だった山口さんはF3を過ぎた辺りから大分遅れ気味。どうやら前日の睡眠不足が祟っている模様。しかも唯一のお湯(テルモス)を持った河合ははるか先の斜面を爆走中…すみませんでした。
最後の草付を登る山口さん

11時過ぎに大同心稜基部に到着。予定時間より遅れている。大休止し相談。天候は風強いけど安定、しかし山口さんの体調もあり、うっかりすると初日からヘッデン下山になりそうなので、河合は下山してアイスキャンディーのつもりでした。でも、山口さんの「行こうぜ」の一言でモチベーション復活し、アタックすることに決定。
小同心下部トラバース(下山時撮影)

小同心クラック取付までのアプローチは、最近のトレースがなく、どうやら数日は人が入っていない模様。慎重に大同心基部をトラバース、ルンゼ状を少し下降してから小同心に向け斜上トラバース。ロープ出すほどではないものの、そこそこ悪い。30分位で取付到着。
小同心クラック全景

おー白い。「ま、エビの尻尾払えば登れるでしょ」時間は12:00。
ベルグラ地獄の1ピッチ目

1ピッチ目前半(Ⅳ-位?:河合)
右側からスタートし、少しトラバースしてクラックという名のチムニーに入ると、やっとハーケン1つ目。ここからが、この日の本番。全てのホールドの上側(つまり使う側)に張り付く厚さ1~2cmのベルグラ。手袋で持つとツルッ。辺り一面全部それ。片手アックス片手手袋スタイル、ドライツーリングの経験なんてないぞ。真剣にハーケン打って敗退を考えましたが、「使うホールドのベルグラ全て叩き落とせば登れる」と、大掃除モードに切り替え。ホールドの表面を真面目にコツコツ叩き、払って掴んで一安心。また叩きまくって掴んで、アックスひっかけてを繰り返して、何とか40分位で正規(?)1ピッチ目の下の終了点に辿り着きました。とにかくツルツル過ぎて精神的に疲れた。山口さんは20分位でささっと上がってきました。
山口さん掃除後の1ピッチ目後半

1ピッチ目後半(Ⅳ-位?:山口)
次は山口さんがトライ。状況は変わらず厳しいベルグラ剥がしで、一向に前に進まない。25分位経って、8m位上の正規1ピッチ目に13:30到着。フォローの河合は山口さんの努力の成果で1分で抜け、2人で「こりゃダメだ」と潔く敗退決定。朝から来てまじめにベルグラ剥がしに勤しめば登れたかな。
1ピッチ目終了点にて

懸垂一発で下降

帰りは同ルート懸垂一発と、面倒なトラバース。大同心南稜を登っているパーティが見えました。何かスクリューがどうたらという声が聞こえたので取付下を注意していたら、斜面下にスクリュー。上のパーティに合図してトレース上に戻しておきました。八ヶ岳にはスクリューよく落ちてるなぁ。南稜自体は小同心クラックより条件が大分良さそうに見えたので、翌日の有力候補となりました。
南稜2ピッチ目を登るパーティ。翌日の我々と異なるライン取り

帰りも山口さんは体調が悪そうでした。15:50頃に赤岳鉱泉に戻り一服。今日はスクリュー2つも拾って持ち主に返したし、いいことあるかなと思ったら、荷物散らかしていたら目を離した隙にダウン盗まれました。あんまりだぁ。
赤岳鉱泉の入り口にはこんな張り紙が・・・


12月30日
八ヶ岳2日目。当初は中山尾根に行く予定だったけれど、前日の小同心クラックのベルグラが悪かったので、こんな状態だと中山尾根上部岩壁こなす自信ないなぁということで、前夜に山口さんと相談。前日の帰りがけに見た大同心南稜は日当たりか風当たりのせいかベルグラ少なそうだったので、転戦することに決定。アブミは持ってきてないので、最終ピッチ(雲稜ルート最終ピッチのⅣ、A1ピッチ)は省略。
4:30起床。6:30出発。昨日下った大同心稜を登るけれども、ガスってる。晴れないな~。

8:00、大同心南稜取付に到着。風強くて寒い。-20℃。これはシビレルなぁ。雲稜には2パーティ取付いていました。
大同心末端部から大同心基部を望む

昨日テン場で盗られてしまったため、ダウンなし。凍えた状態でビレイ開始。
8:25、1ピッチ目(山口)
凹角をテラスまで。Ⅲ級位で簡単だけどとにかく寒く、アックスを持つ手が凍える。
1ピッチ目を望む

2ピッチ目(河合)
いくつかライン取りがあるようだけれど、手元にある岳人に載ってたトポを参考に、右手大ピナクル越え→ハングをトラバースし小テラス→S字状凹角へ。ライン取りをミスると詰みそうなので慎重にルートを見定める。エビのシッポが明らかに昨日より分厚くなっていて、中間支点わかりにくい。クラックの雪を落としてリンクカム#1をねじ込んだり、頭だけ出てるペツルを掘り起こしたり。(ペツルなんてあるんだ~)ところどころ少し悪いが、多分Ⅳ~Ⅳ+級位なんだろう。後半の凹角は容易で快適。終了点にはペツルが2つ打ってあってありがたかったけれど、ルート途中みたいな所で落ち着かない。諸事情で2本のロープ長が異なり、フォロービレイ時に見事にゴチャらせてしまい、30分ロス。後続パーティーには大変ご迷惑をおかけしました。ロープほぐすのが今日の核心だった。やっと晴れてきたけど強風止まず寒い。
2ピッチ目後半部を見下ろす

3ピッチ目(山口)
引き続き凹角で旧終了点を過ぎ、大ピナクル右側の垂壁を直上してリッジ裏側に回り込むところに終了点。山口さんは垂壁直上部分のライン取りが左に寄りすぎ、シビレるクライミングとなっていた。私はフォローで垂壁の真ん中の正面突破を試みたが、ここも支点が取れず結構悪い(それでもⅣ~Ⅳ+程度)。後続パーティに聞いたところ、右から回り込めばリングボルトが結構あって快適だったとのこと。
3ピッチ目を見上げる

4ピッチ目(河合)
ご褒美のリッジトラバースピッチ。Ⅱ~Ⅲ-くらいか。ただし残置はないので、フォロー用にピナクルでちょこちょこ支点を取った。快適そのもの。辺りは絶景だ。赤岳方面も風強そう。11:30フォロー登攀終了。
4ピッチ目途中からバンド方面を見上げる

4ピッチ目を通過する後続パーティ

4ピッチ目終了点から

下りはバンドを下りると、明瞭な支点があり、50m懸垂一発で取付横のルンゼに降り立てた。
バンドの懸垂支点

ルンゼに降り立ったところ

大同心稜末端の安全圏に降りてきてまったり一服。上がってきたパーティに記念写真を撮っていただく。改めて見ると、明らかに昨日より大同心が白い。けれども、予想したとおりベルグラはあまり張っておらず、エビのシッポを払えばそこそこ快適なクライミングができたので良かった。でも、寒かったなぁ。

12:55大同心末端発、13:40 赤岳鉱泉着。早めに帰れたので、アイスキャンディーで練習。推定Ⅵ級のハング越えはできなかった。アックスの先端が若干丸くなっていたけど、ヤスリ持ってくるの忘れた。

12月31日
この日は、前日大同心稜末端部で会ったパーティの情報を元に、行者小屋経由で南沢大滝を目指しました。
まず小滝に行ってみると、既に賑わっていてスペースなし。
小滝。見えてないだけで混んでます

大滝行ってみると1パーティのみ。でも、雪が少なくぶっ立ってる。
大滝を登る先行パーティ

2人ともアイスは不慣れで1発目からこんなデカイの登る気力なく、とりあえず大滝左の沢へ行ってみました。15m位のナメ滝があったので河合がノーロープで試登。氷がモロい。初心者の練習用には使えるかも。その上に期待していた滝は高さ6~7m位しかなく、氷結も甘かったので右岸を高巻いて戻りました。山口さんは登らずに下でゴソゴソ。Vスレッドの練習していました。河合も超久々にトライ。何回か試して、コツ掴めた気がしました。
ナメ滝

少し時間空いたので小滝空いたかなと思ってもう一度行ってみたら、更に状況は悪化しており、唯一のリード可能ライン含め全く順番回ってくる気配なし。これはダメだと、再び大滝に転戦。大滝は先ほどの1パーティしかいなかったので、横に入れてもらいました。(後で聞けば、前日大同心稜で南沢大滝の情報下さったパーティでした。)
大滝最上段手前のテラスから

話によると、大滝上部はシャワークライムとなり、全身氷パックされるから覚悟とのこと。そんな状況でさくっとリードできる自信はなかったので最上段の垂直部はパスし、下部(それでも20m以上はある)左側をリードし、最後立ち木に逃げることにしました。
まず河合がリードしてみましたが、予想通り氷結甘い上にシャワークライム。固い所選んでスクリューを3本ねじ込みました。最後8m位は傾斜80°位で、そこそこいい練習になりました。降りてきたらヌンチャクのゲートが開かなくなる位には全身氷パックとなりました。ロープも針金状態。山口さんはこんな状況でもリードするというので交代。やはり全身氷まみれで降りてきました。今度はロープを抜かずトップロープで河合が登り、気合でチューブデバイスにロープをねじ込み、懸垂で戻りました。こんなときはエイト環の方がいいかも。13時頃に上がり、ささっと八ヶ岳山荘まで降り、鹿の湯温泉に浸かって東京に戻りました。

この年末、クリスマスやその前含めて12月は八ヶ岳で良いトレーニングできたかなと思います。ご同行頂いた皆さまありがとうございました。

八ヶ岳 ジョーゴ沢、裏同心ルンゼ

2016年12月24~25日
加茂谷、河合(記)

今シーズンは、昨シーズンほとんど登れなかったアイスをしっかりやりたいなぁ、でも、まだアイスのリードしたことない初心者だしなぁということで、加茂谷さんにアイスのイロハを教えて頂きました。

12月23日
早めに東京を出発して小淵沢まで。気温が異常に暖かく、氷結状態が心配。

12月24日
美濃戸口を出発して、赤岳鉱泉へ。赤岳鉱泉で情報収集した結果、前日は雨で、どの滝も氷結状態が悪いらしいということで、アイスキャンディーでみっちり練習することになりました。

アイスキャンディーは大賑わい

超久々の氷。氷を登る感覚忘れてる。私の醜態を見かねた加茂谷さんに、アックスの振り方、登り方、ギアラック方法などひとつひとつ指導して頂きました。どうも腕に頼って登ってしまっていて、すぐパンプしてしまうなぁ・・・振ったアックス決まらないなぁ。加茂谷さんのチェコ製アックスの決まりやすさにびっくり。でも加茂谷さんが私のアックス(クォーク)を振るとバチっと決まるので、私の打ち込みの問題だ。11本登って限界きたところでアイスキャンディー終了時間(16:00)。

12月25日
とりあえず天然の氷にも行ってみようということで、ジョーゴ沢へ。
F1は辛うじて氷結、F2も同様で加茂谷さんがスクリュー打たずにするする登っていきます。F3もまあ氷結はしてる、という感じ。

ジョーゴ沢、F2

次に上部の滝をひとつひとつ確認。ナイアガラの滝:辛うじてリード可能だけれど混雑(ナイアガラなんて言ったら本家に失礼なレベルの氷結)、大滝:同様に氷結悪くパス。乙女の滝:氷結悪く、特に抜け口が悪そう。2パーティ取付いていて、1パーティがロングフォールしていたけれどスクリューでちゃんと止まっていた。

ナイアガラの滝
大滝
乙女の滝

こんな状況だったので登る気が起きず、乙女の滝下のナメ滝で、リードでスクリューねじ込む練習して、同ルート下降。
時間がまだ早かったので、埋まったという噂の裏同心ルンゼに転戦。F1はちゃんと露出していたので、またリードの練習をさせてもらいました。

裏同心ルンゼ、F1

F2もあまりきれいではありませんでしたが露出していたので、各自フリーソロで登攀。

裏同心ルンゼ、F2

F3以降を見たところで、時間切れ。同ルート懸垂で下降しました。

暖冬のせいか氷結状態が悪く、まともに登れる氷が少なかったです。裏同心ルンゼの復活が救いでした(帰りに境川PAで偶然会った川端さんの話では、裏同心ルンゼ最後まで登ったとか)。こういう氷結状態悪い時は、特にアイスキャンディーの利用価値が高いなと思いました。加茂谷さんには物足りない山行となってしまったかと思いますが、私にとっては良い練習になりありがたかったです。加茂谷さん、ありがとうございました。

八ヶ岳 横岳西壁石尊稜・・・のつもりが無名峰南稜

2016年12月18日
薄田、山口、川上(記)

私は初めての冬山バリエーション。薄田さんから12月の集会時に石尊稜にしようという提案があった。山口さんも加わり、夜行をかけて、いざ出発。午前6時頃に美濃戸を歩き始めた。天気も良く雪のコンディションも良さそうだ。

赤岳鉱泉でアイゼンなど装着
赤岳鉱泉を出発
小同心が顔を出す

赤岳鉱泉には午前8時頃に到着し、アイゼン、ハーネスを装着。中山乗越方面へのトレースを辿り、小さな橋を渡る手前で、左に入る。しばらくすると、左側の尾根上に4人組の先行パーティーが見えた。50~60度(適当)の雪壁になっていて、ロープを出して登っている。我々も「ここから尾根上に出るか」という話になった。ロープは出さなかったが、薄田さんと山口さんは簡単そうに登っていた。ところが私は初めてのアイゼン、アックスワークにてこずり、「はーはー」言いながら登りきった。上で待っていた薄田さんは「どうだ、厳しいだろ」とニヤニヤ。全く否定できません。早くうまくなりたい。尾根の上は深い雪で、先行パーティーと交代で、ところどころ腰まで潜るラッセルを強いられた。

雪壁を登り、尾根上に出る

その後、高さ10メートル程度の岩稜があり、ここで初めてロープを出す。薄田さんがリード。先行パーティーが遅く、別のラインを登る。岩を巻いて右側から登っているようだ。すると、薄田さんの姿が消えた。そして、ビレイしている山口さんのデバイスにグッとテンションがかかる。後で聞くと、ホールドにした木の枝が折れたらしい。でも、ロープが別の木に引っ掛かってそんなに滑落しなかったそうだ。

最初の岩稜をセカンドで登る川上
最初の岩稜を越える

私はセカンドで登ったが、正直「よくこんなのがリードできるな」と思った。フカフカの新雪が岩に積もってアックスが効かないし、ブッシュもあまり信用できない。雪を払って岩や木にアックスを引っ掛けて足をハイステップにしたりして、ひやひやしながら登った。後ろから登ってきた山口さんはとても速くて、どんどん近づいてきた。私はフリーのムーブが癖になってしまっているようで、山口さんに「なんかエキストリームなムーブでしたね」と言われてしまった。よくないムーブだ。
そして、本格的な岩壁の取り付きと思われる場所に出る。このピッチは山口さんがリード。フカフカの新雪で、アックスが効きづらい急斜面を10メートルほど行ったところでハーケンを打った。

山口さんがリードしたピッチ

次に薄田さんがリード。右側から垂直に近いミックス壁を何メートルくらいか、無我夢中だったので記憶があいまいだが、結構登った。難しかった(コールが全く聞こえなかったことを考えると30メートル以上はあったかもしれない)。
雪稜に出て、これから後は、技術的に難しいところはなかったが、一応スタカットでフォローは2人同時に行動、先行パーティーはコンテのようだ。
午後2時頃か、だいぶ押している。そのため、次の岩峰は左から巻いて雪壁を登り、次の岩場も巻いてルンゼ状を登った。主稜線へもうすぐ抜けそうだという段階で、上部に難しそうな岩壁が見えた。この時点で午後3時半ごろだったと思う。薄田さんは、先行パーティーと「ここ石尊稜じゃないですよね」という話をしていた。岩場が難しすぎるし、何度も登った薄田さんを始め、先行パーティーのリーダーも記憶にないらしい。しかし、とにかく日没までには一般ルートに抜けるため、右へ巻こうという話になった。ルンゼをトラバースし、ガリーを直上、簡単な岩場を超えると、ようやく八ヶ岳の主稜線に出た。「一般ルートに入った」と思うと、いささか安心した。午後5時を回ったくらいか、空に星が瞬き始め、遠く下界の町並みには、明かりが灯っていた。
そこから結構な残業で、しかも地蔵尾根を下っている時に、私がヘッ電を落としてしまい、祈りも虚しく谷底へ消えていった(季節が巡り、雪が融けた沢筋でペツルのティッカを見かけた方がいらっしゃったら、供養してやって下さい)。薄田さんと山口さんに足元を照らしてもらいながら、尾根を下った(本当にすいませんでした)。行者小屋に着いたのは午後7時頃。安全圏に入ったことを喜び、薄田さん、山口さんと握手を交わし、アイゼンなどをはずした。

行者小屋に到着

しかし、何でもないはずのここからが、色んな意味でこの日の核心だった。疲れが出てきている上に、南沢は地面が凍結していて、何度も転ぶし、美濃戸を過ぎてからも林道がツルツルで、止まらない滑り台になっていた。異様に長く感じた。美濃戸口近くの車に着いたのは午後9時半。「やっと着いた」という感慨で、再び握手を交わした。とにかく疲れた。行動時間は15時間弱、初めてのバリエーションは鮮烈な洗礼を受けた。しかしながら、最高に楽しかった。また、行きたい。
新雪のラッセルを強いられたことや、他パーティーの待ちで時間を取られ、遅くなったということもあるかもしれないが、私自身、もっとテキパキと登れたのではないか、それから、ビレイでロープを引くのが遅かったりした場面もあり、もっと時間を短縮できたのではないかと反省している。今後の糧としたい。
ところで後日、一体我々はどのルートを登ったのか、と気になり、調べてみた。薄田さん曰く無名峰南稜ではないかとのこと。日本登山大系を読むと、確かにルートの特徴が一致していた。そして「上部岩壁、下部岩壁とも石尊稜より難しく、中級者でも腕に自信のあるパーティーにすすめたい」という記述もあった。こんなルートを初バリで行けて、私は本当に幸せ者だ、とほくそ笑んだ。ただ、上部岩壁は巻いてしまって登っていないかもしれない。今はリードできる気はしないけど、すぐにできるようになって戻ってきてやる、と強く決意した。

八ヶ岳 赤岳西壁主稜

2016年12月11日
赤井、河合(記)

熱中症でダウンしたフリスピ以来、仕事ですっかり本チャンから遠ざかり河又クライマーとなっていましたが、やっと一段落したので羽を伸ばしてきました。
冬山シーズン始めなので足慣らし的なルートがいいなぁということで、赤井さんに付き合って頂き、メジャーな赤岳西壁主稜を登ることにしました。

12/10
川端さんと河又 (4週連続。近くていい岩場!) フリーの後、赤井さんに中央道沿線で拾って頂き、一路八ヶ岳へ。赤井さんはお疲れ気味。談合坂SAで頼んだオムライスハンバーグの大盛(+100円)がどう見ても通常サイズの3倍以上あり、山に登る前に、メシの山にぶち当たってしまった。完登できず赤井さんに助けてもらう。

12/11
3:30起床。少し運転して5:15美濃戸出発。雪がないぞ~
7:25 行者小屋。
20161211赤岳主稜_02

まだ目が覚めず眠い。足も重い。大丈夫かな。天気は今のところいい感じ。行者小屋ってこんな遠かったっけ・・・ここで猛烈に腹が減り、パン2つ消費。昨日の超大盛オムライスは一体どこに消えた?その後もスローペースで主稜取付へ。
8:55 取付へのトラバース点着。おぉ、各ピッチ終了点に人、人、人。「冬季登攀って人気あるんですねぇ」と赤井さんに聞いたら、「八ヶ岳に人が集中しているだけ」とのこと。雪の斜面を横断して1p目取付へ。取付にソロと1パーティーがいて少し待ち。9:20登攀開始。
20161211赤岳主稜_03

1p目(リード:河合)
出だしのチョックストーンをステミングで越えていく。体感Ⅳ級くらい。抜け口の雪はフカフカでアックスが効かなかった。その後はルンゼ→右上でビレイ点。中間支点は出だしの1つのみだけれど、チョックストーン越えれば容易なので気にならない。
20161211赤岳主稜_04

2p目(リード:赤井)
先行パーティのリードが上で右往左往しているらしく、ロープいっぱいの手前で出たり戻ったり繰り返している。大丈夫かな。我々の後続パーティはしびれを切らし、左から回り込んで追い越しをかけていた。我々は30分位待ってやっとスタート。出だしの垂壁にはハーケンとペツルが一個ずつ確かあった。体感Ⅲ級くらい。その後はロープ不要なリッジ歩き。赤井さんは途中のピナクルでピッチを切っていた。
20161211赤岳主稜_06

?p目(コンテ)
2p目終了点から先、上部岩壁までコンテ。中間にルンゼ状の岩場があった。その後は雪のリッジを上部岩壁ビレイ点まで。
20161211赤岳主稜_07

上部岩壁の取付は人だらけ。セルフも取れずひたすら待ち。天候も悪化傾向で、下部では弱かった風が強くなり寒い。一向に進まない順番待ちの列。(結局45分待ち。)先ほど2p目を回り込んでいたパーティーは、今度は右から回り込んで追い越しをかけていた。岩場をよく知っている人はいいなぁと思いながら、只管我慢して待つ。敗退の2文字が頭をよぎった。
20161211赤岳主稜_08

上部1p目(リード:河合)
前で苦戦していたパーティーに譲ってもらい先行。出だしはⅣ級程度か。その後、少し登ってびっくり。
20161211赤岳主稜_09

これはカオスだ。支点の良さそうなラインは大体取られていて、しかも全然進まない。5分くらい待ってみたけれど埒があかないので、人のいない所を選んで登って追い越しをかける。おぉ…支点ないぞ、まぁいいや。雪稜ゾーンでうっかり他パーティのロープと交差してしまった。すみませんでした。さっさと抜けたいので、ロープいっぱい伸ばしてピッチを切ろうとするも、ピナクルは全て人で埋まっている。仕方ないのでハーケンでビレイ。このピッチ、2ピッチに分けて登ってるパーティも多かったです。
20161211赤岳主稜_10

上部2p目(リード:河合)
上部にルンゼが見えてラインは明瞭かつ簡単そう。念のため赤井さんに肩がらみで確保してもらう。
20161211赤岳主稜_11

ルンゼにはハーケンが1つあった。Ⅲ-くらいかな。今度は使われていないピナクルがちゃんとあって良かった。
ここまでで登攀は実質終了なのでロープを解く。歩いて3分程で、12:45に登山道合流点。3時間半の登攀のうち活動時間は半分ちょっと。空いていれば2時間位で抜けられるルートのようでした。
稜線は相変わらず風が強く、山頂で-17℃。うぉ~もう厳冬期ではないか。寒いのでさっさと美濃戸へ。久々の山歩きでもうクタクタ。体力、落ちてるなぁ。
20161211赤岳主稜_12

赤岳西壁主稜は急な稜線、時々ロープの欲しい岩場という感じで、岩登り成分は物足りない感じでした。足慣らしにいいルートと思いましたが、今回はあまりに混み過ぎていました。美濃戸発でスタートが遅くなったので(この日多分最後から2番目のパーティ)、次に行くなら朝一番で行って、ささっと抜けたいです。でも、シーズン始めの良いトレーニングになり、楽しめたので良かったです。

コースタイム
5:15美濃戸駐車場→7:25 /8:05行者小屋→8:55主稜トラバース点→(15分待ち)→9:20 1p目リード登攀開始→9:40 1p目フォロー終了→(30分待ち)→10:10 2p目リード登攀開始→10:30 2p目フォロー終了→10:35コンテ開始→10:50上部岩壁ビレイ点到着→(45分待ち)→13:35上部1p目リード登攀開始→(途中5分待ち)→12:15上部1p目フォロー終了/上部2p目リード登攀開始→12:35上部2p目フォロー終了→12:40歩き開始→12:45登山道合流点→12:50/13:00赤岳山頂→13:55/14:25行者小屋→15:55美濃戸駐車場