2016年末 八ヶ岳 3日間

2016年12月29日~31日
山口、河合(記)

12月29日
前日にドタバタあったものの、なんとか29日朝5時頃八ヶ岳山荘発。どうせ赤岳鉱泉までだしなぁと思って、河合は荷物を詰めまくり25kgオーバー。誤算は美濃戸まで入ると思っていた車が、4駆じゃなかったので八ヶ岳山荘までだったこと。案の定重くてペース出なくて、途中山口さんに置いていかれました。
それでも8時前には赤岳鉱泉着。さっさとテントを立てて、赤井さんお勧めの裏同心ルンゼから小同心クラックの継続です。9時頃出発。裏同心ルンゼは4日ぶり。

F1

F1:20m位(Ⅲ位:河合リード)
河合リード スクリュー1本。フリーソロでも問題なかった。
F2:40m位(Ⅳ位:山口リード)
相変わらず綺麗じゃないけど露出しており、今回はロープ出しました。最後の5m位、少し立ってます。残置レーザースピードとヌンチャクのセットがあったので河合回収。
F3:10m位(Ⅳ位:河合リード)
スクリュー1本。抜け口が薄かった。以降ロープ出さず。
F4

F3を越えると膝上のラッセル。F4:10mはほぼ埋もれていた。F4を超えてから右手の沢に入る。
F4~F5間のラッセル

F5

またもや埋もれかけの雪壁みたいなF5 20mを越えると、クラストして快適な急なルンゼ状雪面。
ルンゼ上部

大同心雲稜ルートを登るパーティ

大迫力の大同心を眺めながら四つん這いで駆け上がると先行パーティに追いついたので、もしやと思い聞いてみたら先ほどの残置レーザーの持ち主でした。フォロワーの人、持ち主にキレられなくてよかったですね。
前半の歩荷は元気だった山口さんはF3を過ぎた辺りから大分遅れ気味。どうやら前日の睡眠不足が祟っている模様。しかも唯一のお湯(テルモス)を持った河合ははるか先の斜面を爆走中…すみませんでした。
最後の草付を登る山口さん

11時過ぎに大同心稜基部に到着。予定時間より遅れている。大休止し相談。天候は風強いけど安定、しかし山口さんの体調もあり、うっかりすると初日からヘッデン下山になりそうなので、河合は下山してアイスキャンディーのつもりでした。でも、山口さんの「行こうぜ」の一言でモチベーション復活し、アタックすることに決定。
小同心下部トラバース(下山時撮影)

小同心クラック取付までのアプローチは、最近のトレースがなく、どうやら数日は人が入っていない模様。慎重に大同心基部をトラバース、ルンゼ状を少し下降してから小同心に向け斜上トラバース。ロープ出すほどではないものの、そこそこ悪い。30分位で取付到着。
小同心クラック全景

おー白い。「ま、エビの尻尾払えば登れるでしょ」時間は12:00。
ベルグラ地獄の1ピッチ目

1ピッチ目前半(Ⅳ-位?:河合)
右側からスタートし、少しトラバースしてクラックという名のチムニーに入ると、やっとハーケン1つ目。ここからが、この日の本番。全てのホールドの上側(つまり使う側)に張り付く厚さ1~2cmのベルグラ。手袋で持つとツルッ。辺り一面全部それ。片手アックス片手手袋スタイル、ドライツーリングの経験なんてないぞ。真剣にハーケン打って敗退を考えましたが、「使うホールドのベルグラ全て叩き落とせば登れる」と、大掃除モードに切り替え。ホールドの表面を真面目にコツコツ叩き、払って掴んで一安心。また叩きまくって掴んで、アックスひっかけてを繰り返して、何とか40分位で正規(?)1ピッチ目の下の終了点に辿り着きました。とにかくツルツル過ぎて精神的に疲れた。山口さんは20分位でささっと上がってきました。
山口さん掃除後の1ピッチ目後半

1ピッチ目後半(Ⅳ-位?:山口)
次は山口さんがトライ。状況は変わらず厳しいベルグラ剥がしで、一向に前に進まない。25分位経って、8m位上の正規1ピッチ目に13:30到着。フォローの河合は山口さんの努力の成果で1分で抜け、2人で「こりゃダメだ」と潔く敗退決定。朝から来てまじめにベルグラ剥がしに勤しめば登れたかな。
1ピッチ目終了点にて

懸垂一発で下降

帰りは同ルート懸垂一発と、面倒なトラバース。大同心南稜を登っているパーティが見えました。何かスクリューがどうたらという声が聞こえたので取付下を注意していたら、斜面下にスクリュー。上のパーティに合図してトレース上に戻しておきました。八ヶ岳にはスクリューよく落ちてるなぁ。南稜自体は小同心クラックより条件が大分良さそうに見えたので、翌日の有力候補となりました。
南稜2ピッチ目を登るパーティ。翌日の我々と異なるライン取り

帰りも山口さんは体調が悪そうでした。15:50頃に赤岳鉱泉に戻り一服。今日はスクリュー2つも拾って持ち主に返したし、いいことあるかなと思ったら、荷物散らかしていたら目を離した隙にダウン盗まれました。あんまりだぁ。
赤岳鉱泉の入り口にはこんな張り紙が・・・


12月30日
八ヶ岳2日目。当初は中山尾根に行く予定だったけれど、前日の小同心クラックのベルグラが悪かったので、こんな状態だと中山尾根上部岩壁こなす自信ないなぁということで、前夜に山口さんと相談。前日の帰りがけに見た大同心南稜は日当たりか風当たりのせいかベルグラ少なそうだったので、転戦することに決定。アブミは持ってきてないので、最終ピッチ(雲稜ルート最終ピッチのⅣ、A1ピッチ)は省略。
4:30起床。6:30出発。昨日下った大同心稜を登るけれども、ガスってる。晴れないな~。

8:00、大同心南稜取付に到着。風強くて寒い。-20℃。これはシビレルなぁ。雲稜には2パーティ取付いていました。
大同心末端部から大同心基部を望む

昨日テン場で盗られてしまったため、ダウンなし。凍えた状態でビレイ開始。
8:25、1ピッチ目(山口)
凹角をテラスまで。Ⅲ級位で簡単だけどとにかく寒く、アックスを持つ手が凍える。
1ピッチ目を望む

2ピッチ目(河合)
いくつかライン取りがあるようだけれど、手元にある岳人に載ってたトポを参考に、右手大ピナクル越え→ハングをトラバースし小テラス→S字状凹角へ。ライン取りをミスると詰みそうなので慎重にルートを見定める。エビのシッポが明らかに昨日より分厚くなっていて、中間支点わかりにくい。クラックの雪を落としてリンクカム#1をねじ込んだり、頭だけ出てるペツルを掘り起こしたり。(ペツルなんてあるんだ~)ところどころ少し悪いが、多分Ⅳ~Ⅳ+級位なんだろう。後半の凹角は容易で快適。終了点にはペツルが2つ打ってあってありがたかったけれど、ルート途中みたいな所で落ち着かない。諸事情で2本のロープ長が異なり、フォロービレイ時に見事にゴチャらせてしまい、30分ロス。後続パーティーには大変ご迷惑をおかけしました。ロープほぐすのが今日の核心だった。やっと晴れてきたけど強風止まず寒い。
2ピッチ目後半部を見下ろす

3ピッチ目(山口)
引き続き凹角で旧終了点を過ぎ、大ピナクル右側の垂壁を直上してリッジ裏側に回り込むところに終了点。山口さんは垂壁直上部分のライン取りが左に寄りすぎ、シビレるクライミングとなっていた。私はフォローで垂壁の真ん中の正面突破を試みたが、ここも支点が取れず結構悪い(それでもⅣ~Ⅳ+程度)。後続パーティに聞いたところ、右から回り込めばリングボルトが結構あって快適だったとのこと。
3ピッチ目を見上げる

4ピッチ目(河合)
ご褒美のリッジトラバースピッチ。Ⅱ~Ⅲ-くらいか。ただし残置はないので、フォロー用にピナクルでちょこちょこ支点を取った。快適そのもの。辺りは絶景だ。赤岳方面も風強そう。11:30フォロー登攀終了。
4ピッチ目途中からバンド方面を見上げる

4ピッチ目を通過する後続パーティ

4ピッチ目終了点から

下りはバンドを下りると、明瞭な支点があり、50m懸垂一発で取付横のルンゼに降り立てた。
バンドの懸垂支点

ルンゼに降り立ったところ

大同心稜末端の安全圏に降りてきてまったり一服。上がってきたパーティに記念写真を撮っていただく。改めて見ると、明らかに昨日より大同心が白い。けれども、予想したとおりベルグラはあまり張っておらず、エビのシッポを払えばそこそこ快適なクライミングができたので良かった。でも、寒かったなぁ。

12:55大同心末端発、13:40 赤岳鉱泉着。早めに帰れたので、アイスキャンディーで練習。推定Ⅵ級のハング越えはできなかった。アックスの先端が若干丸くなっていたけど、ヤスリ持ってくるの忘れた。

12月31日
この日は、前日大同心稜末端部で会ったパーティの情報を元に、行者小屋経由で南沢大滝を目指しました。
まず小滝に行ってみると、既に賑わっていてスペースなし。
小滝。見えてないだけで混んでます

大滝行ってみると1パーティのみ。でも、雪が少なくぶっ立ってる。
大滝を登る先行パーティ

2人ともアイスは不慣れで1発目からこんなデカイの登る気力なく、とりあえず大滝左の沢へ行ってみました。15m位のナメ滝があったので河合がノーロープで試登。氷がモロい。初心者の練習用には使えるかも。その上に期待していた滝は高さ6~7m位しかなく、氷結も甘かったので右岸を高巻いて戻りました。山口さんは登らずに下でゴソゴソ。Vスレッドの練習していました。河合も超久々にトライ。何回か試して、コツ掴めた気がしました。
ナメ滝

少し時間空いたので小滝空いたかなと思ってもう一度行ってみたら、更に状況は悪化しており、唯一のリード可能ライン含め全く順番回ってくる気配なし。これはダメだと、再び大滝に転戦。大滝は先ほどの1パーティしかいなかったので、横に入れてもらいました。(後で聞けば、前日大同心稜で南沢大滝の情報下さったパーティでした。)
大滝最上段手前のテラスから

話によると、大滝上部はシャワークライムとなり、全身氷パックされるから覚悟とのこと。そんな状況でさくっとリードできる自信はなかったので最上段の垂直部はパスし、下部(それでも20m以上はある)左側をリードし、最後立ち木に逃げることにしました。
まず河合がリードしてみましたが、予想通り氷結甘い上にシャワークライム。固い所選んでスクリューを3本ねじ込みました。最後8m位は傾斜80°位で、そこそこいい練習になりました。降りてきたらヌンチャクのゲートが開かなくなる位には全身氷パックとなりました。ロープも針金状態。山口さんはこんな状況でもリードするというので交代。やはり全身氷まみれで降りてきました。今度はロープを抜かずトップロープで河合が登り、気合でチューブデバイスにロープをねじ込み、懸垂で戻りました。こんなときはエイト環の方がいいかも。13時頃に上がり、ささっと八ヶ岳山荘まで降り、鹿の湯温泉に浸かって東京に戻りました。

この年末、クリスマスやその前含めて12月は八ヶ岳で良いトレーニングできたかなと思います。ご同行頂いた皆さまありがとうございました。