アメリカ合衆国 Joshua Tree国立公園 クライミング

日程:2024/12/26 ~ 2025/1/6
メンバー:河合(一部記)、小林、小森(記)、T夫妻 (会外、12/28,29と1/3,4合流)

海外クライミング遠征で、年末年始Joshua Treeへ行ってきました。

見渡す限り岩だらけ、どのルートを触っても面白いJoshua Treeでのクライミング。
満天の星空でのキャンプ、映画で憧れたアメリカでのロードトリップに新年のホームパーティー。
クライミングもそれ以外も、何もかもとにかく楽しい夢のような日々でした。

今回の海外遠征のきっかけをくれた河合さん、遠征中毎日一緒に登ってくれた小林さん。
現地で合流して一緒に登ってくれて、新年ホームパーティまでお招きいただいたT夫妻、皆さん本当にありがとうございました!

※現地のお役立ち情報は最下部にまとめています、情報が必要な方はそちらを参照ください。

 

日誌

■0日目 12/26
(小森)
各自移動してロスの空港に昼頃集合、レンタカーを借りて出発。
道中、片側6車線道路や周りのバカでかいアメ車にウキウキ。
小林さん、右側通行で見事に逆車線に突っ込む、恐怖。

Joshua Tree国立公園近くの29 Palmsの街へ移動して終了、Motel泊。

(小林)
2回目の海外遠征、期待と不安の中で出発。
いくつか目標に設定したルートはあるけれど、自分の中で納得できるクライミングをして帰ってこようと決める。

車線の多い道路や巨大トレーラーを見て、アメリカに来た!と実感。テンションアゲアゲ⤴︎
でも、右側通行の道路は慣れるまで頭が追いつかない。。

■1日目 12/27
(小森)
いよいよこの日からクライミング。
公園内に入ると、朝焼けの絶景に圧倒される。

魔法の時間、息を呑む景色

日が昇り見通しが効くようになると、今度は膨大な岩の量に見惚れることに。
車中からでも、見える岩見える岩に綺麗なクラックがいくらでも見つかる。
日本にあれば大人気ルートになりそうなクラックが、道路脇から徒歩3分程度の位置にゴロゴロしていて、人もいない。
改めて日本との違いに驚く、天国かな?

見渡す限り岩だらけ、日本から来た身にはちょっと信じられない光景

今回の遠征、河合さんは生涯目標課題のEquinoxに全振りするとのこと、まずはEquinoxへ向かう。
園内の主要道路を外れてダートを走ること15分、路肩に駐車。
そこからさらに歩くこと25分、砂漠の中の絶好のロケーションに鎮座しているスパッと割れた綺麗なスプリッターが目に入る、これはかっこいい。
スコーミッシュからの4人パーティの先客がいてEquinoxトライ中、河合さんはさっそくお友達に、なんというコミュ力。
ビレイもしてくれるとのこと、先客パーティのトライを見届けて小森、小林さんは移動することに。

この日以降、毎朝河合さんをEquinoxへ送迎して残置 (河合さんはビレイヤー現地調達 or トップロープソロ)。
小森・小林さん組は日中別のエリアで登ることになった。
河合さんのコミュ力あればこその作戦。

奥に見えるのがEquinoxのあるJerry’s Quarry、これから毎日ここに河合さんを残置

別エリアで登るために車に戻って出発しようとするも、ドアが開かない。
痛恨の鍵閉じ込め。
電波がないのでヒッチハイク連発、色々あって結局街に移動してロードサービスを依頼することに、500 USDなり。
途中助けを求めたレンジャーさんの車に乗せてもらう際、真顔で「銃はもっているか?」と聞かれ吹き出しそうになった、持ってません。
鈍器 (#6カム) ならありますが。。。

結局この日はクライミング出来ず、小林さん本当にすいませんでした。
助けてくれた皆さん、この場を借りて御礼申し上げます。

この日も29 Palmsの街でMotel泊。
Motelで現地在住のT夫妻と合流、現地のことを色々と教えていただく。

レンタルしたスマートカー、実は賢すぎて鍵を勝手に閉めちゃうドジっ子

(小林)
この日からいよいよジョシュアツリー国立公園へ!

入ってすぐに朝焼けの絶景!見たことのない色の空で、日本の朝焼けとはまた違う不思議な空の色だった。

公園内はまさに岩だらけで、本当に異世界に来てしまったように感じる。スターウォーズに出てくる惑星の一つみたい。
(ラピュタとかBack to the Futureは見たことないですけど、スターウォーズは知ってます!)
クラックもそこら中に見え、まさに天国!ルートになっていないところも沢山あり、日本とのスケールの違いを実感した。

観光客の人も意外と多い。確かに、ロスから3時間ほどでこのような大自然がある訳で、人がやってくるのも納得。

この日は車のカギのトラブルで登れず。まあ、そういう日もあります。
小森さんがレンジャーの車に乗る際、背中の後ろで手を組むように言われて身体検査を受けていた。笑ったら何をされるか分からないから大人しくしていたけど、映画でしか見たことのないやり方で思わずジロジロ見てしまった。
街まで乗せてくれた別のレンジャーはすごく親切で、仕事が休みの日にはジョシュアでクライミングをすることもあるそう。カッコいい仕事だし、休みの日にはすぐクライミングにも行ける環境、いいなぁ。

■2日目 12/28
(小森)
いよいよこの日からクライミング (2日連続2度目)。
朝一で園内に移動、まずはHidden Valley Camp Groundに宿泊場所を確保。
駐車場の眼の前の岩場ではフリーソロが一人、しかも他のクライマーも観光客も野球観戦のような気軽さで応援中、度肝を抜かれる。

Hidden Valley Camp Groundは岩に囲まれた素敵なキャンプ場

河合さんをEquinoxに残置後、念願のクライミング開始。
岩が多すぎてどこから手を付ければいいのか迷うも、手始めにキャンプ場から徒歩圏で、T夫妻に教えてもらったおすすめルートに取り付く。
・Toe Jam 5.7
・Dog Leg 5.8
・Double Cross 5.7
・North Overhang 5.9

低グレードでもいずれもスケールがあって内容も面白い、何よりジャミングし放題、ニヤケが止まらない。
昨日の分も合わせて、存分にクライミングを楽しむ。

四ツ星のDouble Cross、低グレードでも面白い

河合さんをピックアップ (また別パーティがいて仲良くなったとのこと)、一度街に出て買い出しの後、キャンプ。
アメリカといえば肉、スーパーで肉を買い込んで星空の下で盛大に焼いて楽しんだ。

ああ楽しい
ああ楽しい

(小林)
ようやくクライミングスタート。
この日はメインのHidden Valley Campground のエリアで、体をほぐしながらエンクラ。

駐車場の脇にいきなり岩があり、しかもそこをフリーソロしているという状況に遭遇。初めはびっくりしたけれど、これから日常的にフリーソロしている人を見ることになる。これは国民性の違いなのか。

Double Crossは5.7の四つ星。
低グレードでも長さのある楽しいルートがあるから、色々な人がクライミングを楽しむという地盤が根付くのかとも思う。
待ちに待ったクライミング、最高!!

この日からキャンプ開始。
想定していたより気温が高く、快適にキャンプができた。
ビールと肉のフルコンボを決め、綺麗な夜空の下で焚火をするという幸せな時間だった。

肉、肉!!!

■3日目 12/29
(小森)
朝は河合さんをEquinoxに残置 (この日から指の痛さを訴え始める)。

小林さんがツアー一番の目標ルート Leave It to Beaver 12a にトライするとのことでお付き合い。
下部核心超えても上部も悪いとのこと、盛大にボコボコにされていた。

遠征前に首を故障して1ヶ月間ほど登れていなかった小森は、この日もエンクラに徹しようと Sphincte Quites 5.9 に取り付く。
下から見てやけに細いクラックに嫌な予感がして、慣れないながらもナッツを持参。
案の定ナッツ必須、足元マイクロナッツ連発したところで心が折れてテンション、情けなくて凹む。
日本ではカムに頼りきりでした、練習してきます。

二人共傷心で今度こそはエンクラと Sail Away 5.8 へ、こちらはちゃんと5.8で癒やされる。
後続で登ってきたアメリカ人が爆速だったので「ガイドさんですか?」と聞くと「I’m not a guide, just a guy」と答えてニヤリ。
本場のアメリカンジョークが聞けて満足、nice guyでした。

T夫妻とはここで一旦解散。

(小林)
そろそろ本気でトライをしようと思い、予め目標にしていたLeave it to Beaver(5.12a)へ向かう。メインのトレイルのそばにあり、一目で分かる。壁の弱点を繋いでいくカッコいいラインで、見栄えもGood!

出だしから結構ヒヤヒヤし、核心に入ったところでテンション。。リーチがあれば良いところまで届きそうだが、僅かに届かず。足の使い方で上手く距離を出せそうだったけど、分からなかった。上部のフェイス部分もホールドがそれぞれ遠く、打ちのめされてボロボロになりながらとりあえず上まで抜けた。
カッコいいラインだったけれど、力不足を感じて凹んだ。明日からどうしようか、迷う。しばらくクラックばかりやっていたことでフェイス力が結構落ちていたこともあり、ムーブを起こして最後まで繋げていくイメージが湧かなかった。

Leave It to Beaver

その後は、小森さんと近くの岩塔にあったSail Away(5.8)へ。トップアウトして見えた夕焼けに染まる岩と果てしなく広がる景色に、少し心が軽くなった気がする。

■4日目 12/30
(小森)
河合さん今日はレスト日、ビレイヤーとしてこちらに同行してくれるとのこと。

小森は少しずつ調子が戻ってきたので、目をつけていたIllusion Dweller 10bにトライ。
綺麗なクラックが30m一直線に斜上する大迫力のルート、Joshuaの膨大なルートの中でも迫力が際立っていた。
こんなクラック見たこと無いとテンションだだ上がりで取り付くも、変なところでレイバックして行き詰まりテンション、凹む。
グレードは確かに10b、しっかりとムーブのある下部と上部、爽快にグイグイ高度をあげられる中間部とメリハリもある素晴らしいルート、おすすめです。

Illusion Dweller、30m以上延々と斜上クラックが続く迫力のルート

小林さんはHidden Arch 11dにトライ。
日本ではなかなかお目にかかれない長いDiheadralに苦戦、回収時のカムスタックにロープスタックとフルコンボをくらい、またも盛大にボコボコにされていた。
取り付きに降りてくるなりシャツをたくし上げて〇〇ドリルのネタをシャウト、元ネタを知らなかった小森、河合さんはドン引き。
普段は物静かな小林さんがこの有り様、よほど辛かったのだろう。
この時の写真を撮り逃したことが、この遠征唯一の心残りとなった。

Hidden Arch、小林さんをcrushした元凶

またも傷心の二人でThe Eye 5.6でエンクラ。
こちらのルートはフリーソロが順番待ちで列を作っていた。
フリーソロクライマーは頭のネジが飛んで、もっと眉間にシワを寄せた気難しい人の集まりと思っていたが、話してみると気さくでとってもいい人ばかり。
「君の登りを見ていたけど絶対に落ちないだろ、you can do it」とのこと。問題はそこじゃないと思う。

笑顔のフリーソロクライマー、絵になるなぁ

(小林)
どのルートをやろうか決まらず、とりあえず昨日同様にLeave it to Beaverへ行ってみる。リードでムーブが固められる自信がなく、やるならトップロープかと迷う。。結局トップロープでやるくらいならやめようと思い、もう一つ気になっていたHidden Arch(5.11d)が同じエリアにあったのでそちらをトライしてみることにした。
こちらはメインのエリアから少し離れたところにあり、人の気配がない。あー、こういうのを求めていたんだと気づく。砂漠の中で、静かなクライミングをしたかったのです。
取り付きまでのアプローチも、大きな岩をくぐったり越えたりする必要があり悪い。その先に狭っ苦しそうなコーナークラックがあり、まさに「隠れた」ルートである。

出だしはボルト2本のボルダームーブだが、1本目のボルトがかなり高い。ノープロでバランシーなムーブを求められかなり痺れるが、何とか突破。
ただその先のコーナークラックは、クラックも閉じており、明確なスタンスもなく大苦戦。上から岩が被さっていて非常に窮屈で、動きにくい。今までに経験のないタイプで、突破方法がさっぱり分からずボコボコにされた。。引き出しの少なさを痛感し、また凹む。
その後もカムのスタックで時間を費やし、ロープを抜いた際にも謎の突起にロープがクルクルっと絡まってスタックするというトラブル続き。。河合さん、長ビレイになってしまってすみませんでした。。
その後取り付きに戻り、この2日間で色々溜まったものが砂漠の開放的な空気も相まって溢れてしまった。

その後は、小森さんが見つけたThe Eye(5.6)をフォロー。僕たちの次が何とフリーソロのクライマーで、僕がフォローで出る際に「お前は登るの早いか?」と聞かれビビる。とにかくサクサク登り、上でそのフリーソロクライマーとおしゃべり。フリーソロする人はさぞおっかない人だろうと思ったけど、話してみるとすごく気さくなイケメン。棚に腰掛けて一服してる様は超クールで、カッコよかった!フリーソロの入門ルートなのか、その後もどんどんフリーソロで登っていく人が続いていた。フリーソロなんて気が狂ってると思ってたけど、こんな広大な大地の中で登るなら、ロープに囚われず自由に登りたいと思うのも理解できる気がした。
この日も、綺麗な夕焼けの景色が胸に沁みた。

■5日目 12/31
(小森)
河合さんをEquinoxに残置 (レストで回復したと嬉しそうだが、傷心の小林さんからは反応が消えてきた)。

小林さんは Heart of Darkness 11a をトライして見事OS、おめでとう!

小森もトライするつもりだったが体が全く動かずレスト日に変更、四ツ星 11bの Coase of Buggy を偵察して終了。

夜はT夫妻の家にご招待いただき、年越しホームパーティー。
クライミングやアメリカ生活の話を色々と聞きながら、とっても楽しく、無事に年を超すことが出来ました。
年末の忙しい時期にも関わらずお招きいただき、ありがとうございました。

(小林)
この日は小森さんと意見が一致し、Heart of Darkness(5.11a)へ。
Hidden Valleyから車で少し移動したエリアで、アプローチも分かりづらかった。トレイルを辿っていくまではいいが、ルートが壁と壁の隙間にあるため見つけづらい。

隠れた場所にあるけれど、本当にすっぱり割れたクラックで綺麗。パッと見では、サイズ感もそこまで悪くなさそう。これならオンサイトできる可能性もありそうだと思い、真剣にオブザベしてトライ。
手の薄い自分にはやはりドンピシャのサイズ感で、しっかりオンサイト!手の大きいアメリカ人には窮屈なサイズと思われ、当然といえば当然だけど、グレーディングにも反映されるということを実感した。
何となく腑に落ちない部分もあったけど、こういうルートを確実に登れるようになったのは確かに成長。暗い壁と壁の隙間から登っていき、登りきって視界がパーっと開けるのは爽快で気持ちがよかった!

大晦日ということで早めに切り上げ、T夫妻と年越しホームパーティー!
ピザとチキンとビールでカロリー補給。作っていただいたお餅と鰻ご飯も大変おいしく、またお二人のアメリカ暮らしの話もすごくそそられた。素敵な時間をありがとうございました!

■6日目 1/1
(小森)
買い出しをしながら公園に戻り、河合さんをEquinoxに残置 (知り合いから「Joshuaまで来て他のルート触らずに1つのルート、しかも指の猛烈に痛いルートを休みなく毎日トライするなんてCrazy…」と言われたそうな、さもありなん)。

小森はIllusion Dwellerを回収、なんとはなしに登れて胸を撫で下ろす、それにしても素晴らしいルートでした。
やっと調子が戻ってきたので、明日からは目標ルートに手をつけることに。

小林さんは Left Ski Track 11a をトライ。
パワフルな出だし、明らかに効きの悪そうなプロテクションセットと見るからに難しそう。

(小林)
全くお正月感はないが、2025年の元旦。ロスの街から公園に戻ってクライミング再開。

移動と買い出しで登れる時間も短いため、Hidden Valley周辺で登ることにする。三つ星のLeft Ski Track(5.11a)をやってみる。ここを登れ!と言わんばかりの左上するラインで、初めにHidden Valleyに来たときに目にしてからずっと気になっていた。
穴がポコポコ開いている独特の形状で、カムが決めにくい。パワフルな出だしで少し迷うが、これなら出来そう。帰るまでに登って帰りたいと、目標に設定した。

■7日目 ½
(小森)
河合さんはレスト日、レンジャーがサイト代の徴収に来るまでキャンプ場でお留守番、のち散歩へ。Asteroid Crack 5.12dやPersian Room 5.13a辺りの偵察に行っていた模様。

小森と小林さんはツアー目標の一つWanger Banger 11cを触りにRusty Wallへ。
遠目からでも一目でわかる綺麗なスプリッター。
近寄ってみると、核心はアメリカ人のシンハンド = 日本人のタイトハンド系の、小さな手には有利なルートに見える。
OS狙いで離陸するも、核心一手甘いジャムがあり耐えきれずにフォール、2便目でRP。
Japanese Small Hand Magicが存分に効いてました。

小林さんもきっちりRP。

ここでは別の日本人パーティともお会いしました、楽しい一日をありがとうございました。

左がWanger Banger、遠目からでも分かる綺麗なスプリッター
抜群のロケーションでスプリッターを満喫

この日、小森さんの食器がリスに齧られた(河合は立ち去る犯人を目撃)。
食器はテントにしまっておくのが無難。

(小林)
小森さんも調子が出てきたようで、残り日数も少なくなってきたので共通の目標だったWangerbanger(5.11c)へ。

綺麗なクラックで、しかも少し高台にあって眺めの良い抜群のロケーション!僕が大好きな小川山のゴジラ岩のテラスを彷彿とさせ、すごく居心地がいい。
辛めのグレード感で言わされてきたので不安もあったけれど、Wangerbangerは実際に見るとサイズ感は悪くないように見える。
実際に登ってみると、案の定サイズは悪くない!シンハンドや上部のワイドなど苦手なところもあったけれど、無事に完登。
Heart of Darkness同様に腑に落ちない部分もない訳ではないけど、目標の一つでもあったし、素晴らしいロケーションの中で気持ちよく登れたのは何より最高だった!

隣のO’Kelley’s Crack(5.10c)も面白そうだった。出だしがかなり高くリーチが必要と思われるが、現地の女性クライマーが果敢にトライしていた。すごく大変そうだったけど、でもすごく楽しそうに何度もトライしている姿が印象的だった。

綺麗なクラックが2本、シンプルで美しい。

■8日目 ⅓
(小森)
朝キャンプ場を歩いていると、知らないアメリカ人から「Good luck Equinox !」とまばゆい笑顔で声をかけられた。違うそれ私じゃない。
Crazyな日本人が毎日Equinoxと激闘してると噂になってるようだ。

河合さんをEquinoxに残置 (ガンバ!!)。

小林さん狙いの Hot Rocks 11c へ。
大きな岩のど真ん中をクラックが一直線に走る徹頭徹尾かっこいいルート、しばし見惚れる。
オブザベするも、閉じたクラックでレイバックをするようにしか見えない中間部でプロテクションを取れるように見えず、二人して断念。
本当に11c? と首をひねる。
今回Joshuaで見た中でもぶっちぎりの迫力と綺麗さで心底登りたくなったルート、強くなって再訪したい。

その後は小森の希望でPoodles Are People Too 10bへ。
出だしからクラックが細く、先日の5.9トライがフラッシュバック。
マイクロカムでランナウトした核心部分、よっぽどテンションかけたかったがそこは先日の悔しさでなんとか我慢して登る。
終わってみれば、35m、#0.2カムやマイクロナッツでランナウトした状態でバランシーな10b核心ムーブが数回出て来る10bルート。
横のアメリカ人に感想を聞くと「Spicy」の一言。
緊張感が続きとても充実する素晴らしいルート、個人的には間違いなく4ツ星 (トポだと3ツ星、なぜ?)、おすすめ。

再合流したT夫妻はScary Poodleをトライ、Scaryだが良いルートとのこと、次回はそちらもトライしたい。
トポに ”Poodle in Shining Armor” というルートもあった。何を食べたらそんなルート名を思いつくのか、初登者の頭の中が見てみたい。

横のOver Seers 5.9でエンクラして終了、爽快な35mルートでこちらもおすすめです。

真ん中、クライマーが登っているラインが Poodles Are People Too、Spicy

(小林)
残り2日、日本に帰ることが信じられない。

これも気になっていたルート、Hot Rocks(5.11c)へ行ってみる。Hidden Valley のキャンプ場から数分、すごく近い。
一目見て、度肝を抜かれた。大きな壁に走るクラックは本当に綺麗。
下部の細いクラックが核心に見えるけど、プロテクションの取り方に自信が持てない。傾斜は緩いから、意外と立てるのか。。でも上まで抜けられるイメージも付かない。これまでのロングトライも脳裏をよぎり、今回は見送ることにした。
ジョシュアのこれまでの滞在中に色々なルートを見てきたけど、これが圧倒的にNo.1。いや、クライミングを始めてから見てきたルートの中でも、ここまで揺さぶられるものはなかった。でも取り付く勇気すら出せず、それが一番悔しい。僕はあまり一つのルートに固執しないタイプだけど、これはいつか登りに行きたいと思う。

Hot Rocks

もう残り一日、段々と帰国が近づいてくる。あー、帰りたくない。

■9日目 ¼
(小森)
遂に最終日、後ろ髪を惹かれながらキャンプを撤収。

河合さんをEquinoxに残置 (本当に最後までEquinoxしか触らなかった、流石です)。

AMは小林さん狙いの Left Ski Track へ。
寒い日陰、悲壮な表情でシリアストライする小林さんを尻目に、何やら横の岩で盛り上がっている。
よく見るとアメリカ紳士たちが温かい日向でスッポンポンクライミング、それを見たクライマーと観光客のグループが黄色い? 歓声を送っていた。
これが国民性の違いか。

生まれたままの姿でクライミングを楽しむアメリカ紳士達 (写真ではギリギリ隠れているので、安心してください)

PMは小森のツアー目標の一つ、日本では滅多にないルーフ課題のMore Monkey Than Funky 11cへ。
1便目、ハンドをしっかり効かせて離陸、足が離れると経験したことがない方向に重力を感じて緊張。
カムを1つ決めて進むが、次のカムを決める余力がなくフォール、緊張して力を入れすぎてしまった。
2便目、ルーフのコツが掴めてカムは問題なくセット、リラックスして抜け口まで進む。
ルーフ抜け口でまごつくが耐え、なんとか上のシンハンドに手をねじ込んでルーフの外に体を出すが、耐えられずフォール。
その後はムーブをバラすも、フォール時に足がスカってルーフの庇でスネを強打、ロープスタック、カムスタックとルーフの洗礼をフルコースで受け、真っ暗になってからやっと取り付きに戻った。
お待たせした皆さん、何よりも真っ暗な砂漠の中で待ってくれた河合さん、最後の最後まですいませんでした。。。
おかげさまでルーフを満喫できました、これにて遠征のトライ終了。

More Monkey Than Funky、これがしたかった!

(小林)
遂に迎えてしまった最終日。
明日には飛行機に乗っているなんて、信じられない。いや、信じたくないのかもしれない。

目標にしていたLeft Ski Trackに最後のトライ。核心は越えたが、その後に足が抜けて痛恨のフォール。。かなり疲労感は溜まっていたし、これが現在地だということ。でも、いつも足がすっぽ抜けるのは何なんだろうなぁ。。

午後は小森さんのMore Monkey Than Funkyへ。ヨレた体にはルーフはキツく、フォロー回収すらロクにできず。。ルーフとか強傾斜も、普段から嫌がらずにやります。

ヘッデンで駐車場に戻り、真っ暗な中で待つ河合さんをピックアップ。今までの色々なことを思い出して寂しい気持ちと、またいつか来ようという思いが混ざり合い、充実した気持ちでジョシュアツリーを離れた。

■10日目 ⅕
(小森)
帰国の日。
Motelを出て一路ロス、日本へ。
道中仕事のメールを確認しているワーカホリックな河合さん、日本が近づくにつれ顔がどんどん暗くなる小林さんに「また来たいね」と声をかけ合い、空港で解散。

「Joshuaに行くけど、来る?」と声を掛けてもらったのが昨年の春先。
当時はまだクレイジージャムが登れたばかりで尻込みをするも、憧れの遠征のチャンスを逃すまいと勢いで同行をお願いした。
それからはワイドの誘惑にも負けずに普通のクラックを登りこみ、やっとの思いで実現した今回の遠征。
そんな経緯も含めて、初めての海外遠征はただただ楽しく、充実したものになりました。

日本で登り込んで、また次の遠征を楽しみたい。

(小林)
遂に帰国の日。
到着した日に見た景色と同じ景色、帰るんだということを実感して寂しさが募る。日本で仕事が待ってるなんて。。
でも、また強くなってから来ようと心に決めた。

最終日を終えての夕食にて、皆さんありがとうございました!!

(小林 総括)
今はもう2月。帰国翌日から仕事で体は一気に現実世界に引き戻されたものの、気持ちは未だ夢の中。。ジョシュアツリーの広い大地やその中の朝焼け・夕焼けの景色は今でも目に浮かぶし、楽しかったことや悔しかったこともまだ鮮明に覚えている。あー、ジョシュア…!!

ジョシュアでのクライミングで特によかったのは、どのルートもトップアウトして岩の上に立てるということ!
独立した巨大な岩にルートが引かれており、ルートを登った先は岩の頂上に行き着く。壁の途中で終わらず、頂上に立てるのは何より気持ちがいい。特に夕方、心身ともに疲れた中で岩の上から見た夕焼けの景色は絶景だった。

日本での準備段階から一緒にお世話になった河合さんと小森さん、素晴らしい機会をありがとうございます!そして現地で合流したT夫妻のお二人、たくさんのおもてなしをありがとうございました!

やっぱり、アメリカの自由な空気感はいいなぁと改めて実感。ヨセミテ も行ってみたいし、またジョシュアにもリベンジに行かないと。スミスロックのChain Reactionも宿題のまま。他の岩場も行ってみたい。
またアメリカでチャレンジできるように、日本で鍛え直します!

 

Equinox奮闘記 (河合、記)

Equinox。
この名前を聞いて反応をするのは、競馬ファンとコアな割れ目クライマーくらいだろう。
ヨセミテのSeparate Realityと並び、クラックを始めた頃から目標にしてきたクラックだ。
世界で一番美しいフィンガークラックだと勝手に思っている。
グレードは初登時5.13a、現在は辛めの5.12cとされている。

Equinox全景。フレークに立ってスタート、実質20mくらい

昨年は忙しく、夏~秋は半年くらいまともにクライミングできなかったが、遠征前の2ヶ月は尻に火が付き、クラックをそこそこ登りこんだ。
カーテンコール5.12aをアルツハイマーフラッシュ(以前トライしたのは忘却の彼方)、サキシマハブ5.12aやカサンドラクロス5.12bをワンデイ、苦手な持久系のHeaven5.12cも4日かかったが登れ、調子は戻ってきた気がした。
遠征直前には既登の「SSK Equinox」センチュリーフォーカラーズ5.12bを繰り返し登り、「9日間もあるし、グレードも5.13ないし、何とかなるだろう」と思っていた。
甘かった。
Joshua Treeのグレードが辛いのは噂に聞いていた。
しかし、RP体勢にすら辿り着けないなんて…
コンディションは最終日の爆風低温を除き概ね良かったので、言い訳できない。
Mountain Projectによれば、昨シーズンに後半のガバフレークが崩壊したそうで、現地でお会いしたYさんも、「後半は全くの別物になってしまった」と話していた。
でも、それを差し引いても、今の私には難し過ぎた。

取付下のたまり場。「ここで寝泊りしているのか」と聞かれた。違うから!

スコーミッシュからの長期遠征部隊の人にビレイしてもらった初日の1便目で、「今回のツアーで登りきるのは無理」と悟った。
諦めて出直して残りの日程でエンクラか、今回可能な限り進めて、チャンスがいつあるかわからない次回に賭けるか、少し悩んだ。
でも、今の自分が求めているクライミングは、手に入るとわかっているものにはない。
すぐに悩みは消し飛んだ。
その後は小森さん小林さんに毎日駐車場に残置してもらい、一人でEquinoxに通う日々。
幸い、私のようなソロ含め、ほぼ毎日他のパーティがトライしに来ており、楽しい日々が過ごせた。
憧れのルートとじっくり対峙できた日々は、幸せ以外何物でもなかった。
結局、9日間の滞在日程中、レストを2回挟んで7日間トライした。
最初から最後まで思いっきりフィンガークラックなので指がとても痛く、結構混んでいたのもあって最初は1日で2トライが限界。
5日目頃からトライが形になり始め、6日目のトップロープソロでのワンテンが、今回の最高到達点となった。

EquinoxをRPするバーガーコックコスプレのスコーミッシュクライマー。強かった!

ルートはキャメロット0.3サイズで始まり、広目の0.4サイズが長く続き、最後は0.5サイズで終わる。
極小カムもオフセットカムもナッツも不要、シンハンドジャム以上できる幅は皆無なので手の甲のテーピングも要らない。
広目の0.4サイズは指がしっかりクラックに入るため、大体全部ガバだ。
しかし、難しい。
それはクラック周辺のフットホールドがシビアなためだ。
核心はハングしていて足は極小3mmエッジ、ジャムも甘い。
その後も垂直にひたすら続く小悪いジャムとパワフルなレイバック、ストレニュアスだ。
ダメ押しはフレーク崩壊で新たに誕生した後半の核心。
私のムーブではテクニカルなジャミングを要求され、クラックルートとしての質は崩壊前より上がったのではと思わされる。
体感は5.13aぴったり。
一緒にトライしたクライマーは、少なからず「5.12dか5.13a」と話しており、とあるローカルの女性は「私にはAsteroid Crack 5.12dより難しい。ルートのタイプは違うけどねー。」とコメント。
日本で内容の似ているルートは、残念ながら知らない。
少なくとも、似ていると期待していたセンチュリーフォーカラーズとは、クラックの向きだけでなく、傾斜、指への負担、フットホールドの悪さ、グレード(アルファベットではなく数字1つ近く違う)等レベルが異なり、似ているのはサイズ感位だった。
蛇足ながら、センチュリーフォーカラーズの写真を見せて「Japanese Equinox!」と宣伝したら結構ウケて、「綺麗なフィンガー」との評価を勝ち取れた。

エイドで登っている人もいた。多分トップロープ張りに行っていると思われる。左上のシルエットは河合のFix

なお、後半のフレーク崩壊箇所はまだ少し岩がザラザラしているが、登るのに支障はない。
ただし、後半パートのフットホールドの多くは剥がれやすいフレークから構成され、私がトライした時も、レストで使う左足のガバフレークが突如5cm程欠けてしまったのでご注意を(ごめんなさい…)。
フレークの剥がれた縁がフットホールドになっており、他にも過去に剥がれた痕跡は結構あったので、初登時とフットホールドの状況は結構変わっているのかもしれない。
ホールドが極小なことには変わってないと思うけれど…
また、花崗岩の結晶が粗いので、替えの靴をお忘れなく。
私のそこそこソールの残っていたミウラーは4日で昇天し、やむを得ず急遽現地のNomad Venturesで調達した新品TCプロ(この靴、分厚いのに意外とフィンガーもいけることにびっくり。さすがトミーデザインの靴だ)も、3日間で、ゴミホールドを踏み続けた左足はソールの2/3が消失した。

とにかく絵になるシチュエーション。傾斜が中々きつい

Equinoxは結構な人気ルートで、ビレイヤーを現地調達できることがわかったので(今冬は例年より暖かいようだったので、賑わったのは今回だけかも?)、今年の年末年始も、たとえ単独でもリベンジに行こうと思う。
でも、今年の年末年始で行く方がもしいらっしゃれば、声かけてもらえると嬉しいです。

これを書いている今も、まだ指が痛い。
最後はロキソニンまで飲んで、頑張ったんだがなぁ…
あぁ、楽しかったけど、悔しいなぁ…

敗退した最終日、取付で見送った夕日は、鮮烈だった
また次回!

 

お役立ち情報

■トポ
下のトポを使用、主要なルートは写真付きでほぼ網羅、アクセスも詳細でわかりやすい。
日本では入手困難? な様子、Joshua Treeの街のギアショップ、ツーリストインフォに在庫があった。

■気候
今回の遠征では3日間のみ曇り、他の日は全て快晴。
ローカルの話では冬でも雪が降るのは年に数度程度、積もることはかなり稀、積もってもすぐ溶けることが多いとのこと。
昼の日向は半袖でも快適、日差しはジリジリと強く感じる。一方で日陰はダウンが必要な程寒い。
夜は冬用シュラフだと快適な気温。
日によっても気温の差が大きい、かなりの強風が吹く日もありその場合は体感気温が一気に下がる。
今回の遠征では最終日のみトライに若干の支障あり (曇りと強風が重なり、日陰ルートでは寒すぎて指が弾かれる、かじかむ)。他の日はベストコンディションだった。

■宿泊
国立公園の周りで主な街は”Joshua Tree”, “Twentynine Palms”, “Yucca Valley”の3箇所。
上記3つの街のMotel、または園内でのキャンプが主な宿泊の選択肢の様子。

園内のキャンプ場はエリアにより予約の要否が異なるので、最新情報を要確認。
今回宿泊したHidden Valleyのキャンプ場は先着順で宿泊 (予約不可)。連日満員だったが、朝一であればどこかしら場所は確保できた。毎朝9時頃レンジャーさんが見回りをしているのでその際に支払い、25 USD group/day。水場なし、トイレとゴミ箱あり、焚き火可 (園内で薪調達不可、街で要購入) で宿泊は非常に快適。主なクライミングエリアはこのHidden Valley周辺が多いので便利だった。

Joshua Treeの街のCoyoteという土産物屋に有料シャワーがあるとローカルから聞いたが、未確認。

■買い物
Joshua Treeの街に何でも売ってるギアショップ(Nomad Ventures)があり、アメリカンエイドまで、クライミング道具やトポは大抵何でも揃いそう。ロスのREIよりよっぽど品揃えが良い。靴だけはアメリカンな大きいサイズしかないことが多いが…日本では中々手に入らないYatesのギアも買うならここ!生鮮食品は“Twentynine Palms”と”Yucca Valley”には大きめのスーパーがあり入手可、”Joshua Tree”の街にはスーパーが見つからず入手困難。

■移動
園内の主要道路 (地図赤線) は全て舗装路。主要エリアはこの舗装路脇に車を止めて、そこから徒歩 (5分~10分程度) でアクセス可、2WD車でも問題なし。河合さんトライのEquinoxは4マイル位未舗装路を経由するため、路面はそこそこきれいだが4WD車が無難。雪降ったらアプローチヤバそう。

国立公園からから各街への出入り口はWest EntranceとNorth Entranceの2箇所。車移動でHidden Valley~Joshua Treeの街が30分、Hidden Valley~29 Palmsの街が40分程度かかる。朝10時~昼3時くらいまではどちらのEntranceも公園に入る方向で渋滞あり。加えてWest Entranceは日没直後結構な長さの渋滞が発生し、公園から出る際に時間がかかるので注意 (North Entrance側は渋滞少ない様子)。

■その他
Joshuaのルートは終了点が無いことが多く、登り終わると「カムで支点構築→フォロー回収→別の場所からクライムダウン or 懸垂」となるパターンが多い(Equinoxにはちゃんと終了点があって、裏にFixロープもあって回り込んで終了点に行けたが、恐らく例外的)。トライの際はカム・スリング類を少し残し、ATCの持参を推奨。フォロー回収用にアッセンダーがあると便利 (特に遠征後半は体力、指皮温存に効果大)。取り付きへの移動・クライムダウンで岩の上での行動が多く、そこそこのクライミングになることも多いので、アプローチシューズ推奨、日本でよく見るトレランシューズは避けたほうが無難。

以上