大源太山 コブ岩尾根、中央稜

2019年3月9日~10日
中和、玉置(記)

今シーズンは年内からなかなか冷え込まなかったが、駄目押しと言わんばかりに春の訪れも早かった。早くしないと標高の低い上越国境の雪山シーズンが終わってしまうので、雪が溶ける前にと慌てて大源太山のコブ岩尾根と中央稜に挑んだ。

3/9 土曜日 快晴
<行程>
清水集落5:45
丸の沢出合 8:03
丸の沢二俣 8:44
キャンプ地発 10:04
コブ岩基部 13:42
大源太山山頂 15:13
キャンプ地 16:59

前夜のうちに清水集落へ向けて出発。関越道で上越国境を超えた途端に思ったより雪があり、期待が高まる。清水集落に入ったあとは除雪終了点にて車中泊。1日前に降ったと思われる20cm程度の新雪があり、出発地点で積雪は1m程度だった。朝食をとって出発。最初からスノーシューを装着して歩き始めた。最初はなだらかな林道歩きでサクサク進めるかと思ったが、雪が深くなって来たのとトレースも山スキー以外なかったりでペースは遅れ気味。情けないことにほとんど中和さんに先頭をラッセルしてもらった。また、林道は法面からの雪崩でデブリがあったり、雪の斜面と化していてスノーシューには厳しいトラバースを強いられたりと緊張させられる場面が頻繁にあった。結局丸の沢出合まで2時間強かかった。丸の沢出合での渡渉は年によっては苦労するようだが今回はしっかりしたスノーブリッジがあり、特に難しいことはなく渡れた。丸の沢からはこれから登るコブ岩尾根の険しい山容がよく見えた。そう簡単に登らせてはくれなそうだ。しばらく進み、大畠の沢と丸の沢本流の間の小尾根を少し上がって、雪崩の心配のない平らな尾根上でテントを設営した。余分な荷物をデポし、出発の準備をした。この時点で午前10時ごろ。この先もラッセルが予想されるので、スノーシューを持っていくか迷ったが置いていくことにした。小尾根を下降し、大畠の沢を渡ってすぐ横のコブ岩尾根へ取り付いた。始めは急傾斜の樹林帯をひたすらラッセルで上がっていった。しばらくすると藪に覆われたナイフリッジが現れた。ナイフリッジをたどり、トサカ状のP2を過ぎると、藪の露出した60度程度の急な雪壁となった。藪をつかんで強引に登ってさらに進むとコブ岩が近くなってきた。コブ岩の手前は雪壁になっていたが、雪が深い上に所々クラックを踏み抜いてしまいなかなか進めない。なんとか突破しコブ岩基部にたどり着いた時点で時刻は13時42分となっていた。キャンプ地から標高差たったの500mを4時間近くかかった計算。コブ岩の正面は垂壁となっており、とても突破できるようには見えない。左側は急な藪となっており登れそうだ。近づいてみると傾斜は60度もなく、藪も豊富であまり難しいようには見えなかったので時間節約のためロープは出さずに行くことにした。取り付いてみると実際、先ほど越えた下部の藪壁よりも易しいように感じた。コブ岩を超えた後は恐ろしいナイフリッジと雪壁を越え、ひと登りで15:13に山頂着。下山は山頂から反対側へ2段降りて、大畠の沢源頭からバックステップを織り交ぜつつギャップを踏み抜きながらテント場まで下降した。

3/10 日曜日 晴れのち曇り
<行程>
キャンプ地 6:05
中央稜基部 7:55
大源太山山頂 13:16
清水集落 16:52

二日目は途中まで昨日の下山のトレースを辿り途中から分かれて中央稜基部へ向かった(写真2左側の尾根)。少しラッセルはあったものの、特に手こずることもなく順調に基部へ到達した。中央稜下部は傾斜50度程度のルンゼを挟んで2つの藪尾根があった。尾根上は藪が鬱陶しそうなのでルンゼの左端を登ることにした。取り付きで雪にクラックがあったのでスコップで雪を掘り集め足場を作って取り付いた。中和さんが最初先頭だったが、左の藪に入ろうとして手こずっていたので自分がルンゼを先行した。ルンゼ内はそこまで難しくはなかったが、相変わらず所々クラックがあり鬱陶しかった。幸いクラックが斜めに走っていたので乗り越しは難しくなかった。その後ルンゼの上部で左の藪へ入った。しかし、進むにつれて掴める木が少なくなり、さらに潅木の踏み抜きが酷くなかなか進めなくなった。自分がもがいているところに中和さんが追いつき交代してもらった。踏み抜き地獄で恐ろしいのでここからロープを出すことにした。もう一度自分が先頭でリードすることにして1ピッチ目。相変わらず藪の踏み抜き地獄とラッセルが続きゆっくり進んでいった。中間支点は豊富だが木を丸々一本掘り出したりといった土木作業で体力が吸い取られるピッチだった。ロープを50m以上伸ばし、傾斜が急になる場所でピッチを切った。次は中和さんリード。傾斜は60度弱でやや急になるが相変わらずの藪尾根。雪の踏み抜きは傾斜がきつい分少なかったようだ。気温がかなり高くなって来ているのを感じ、眼下で小さなちり雪崩が頻発している様子を見ていると轟音とともに左のルンゼでブロック雪崩が2回起きた。恐ろしい。こんなものを喰らったらひとたまりもないだろう。3ピッチ目は再び自分がリード。尾根を少し進んだ先に一箇所岩場があり、直登の可能性を探ったが直下の藪でとった中間支点からそれなりにランナウトしており、無茶はできなかったので大人しく左の藪から登って突破。その先の松の木でピッチを切った。最後の4ピッチ目は中和さん。最初は特に難しいことはない雪の斜面をトラバース気味に進み、小尾根に取り付いてまた藪登り。主稜線に抜けたところでピッチを切った。そこから山頂までは昨日のトレースを辿ってすぐ、下山もあっという間。あとはテントをたたんで、清水まで長いアプローチを戻った。中央稜は短いかと思っていたが、結果的にはコブ岩尾根より登攀要素は強く充実した藪クライミングとなった。帰りは途中まで河原を歩いたが、林道よりはるかに楽だった。堰堤に阻まれ途中から林道に戻ると、行きの時点で不安定そうに見えた斜面は軒並み雪崩れていた。

前回の戸隠P3尾根は敗退で悔しい思いをしたが、今回は無事に目標と敷いたルートを完登でき、充実した山行となった。しかし、中和さんにラッセルをほとんどお願いしてしまったので、まだまだ強くならなければいけないとも感じた。中和さん、ありがとうございました。

谷川岳 一ノ倉沢衝立岩中央稜、一ノ沢左方ルンゼ

2019年3月2日~3日
川上、山崎(記)

3月2日 谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜
当初、土曜日は一ノ沢左方ルンゼ、日曜日に中央稜の予定でしたが、前日夜から小雪が舞っていたので、土曜日は衝立岩中央稜に変更。当日の天気は朝のうち薄曇りのち晴れ。
センター発500。一ノ倉沢出合600。左に一ノ沢を分けた先から本谷のデブリが現れ始める。テールリッジには末端からではなく、衝立スラブ側から取り付く。中央稜取り付きに800頃。
なお、この日の朝、知っている限りでは東尾根に1パーティ2人、三スラに1パーティ3人、一ノ倉尾根に1パーティ3人が入っていました。

1P目 川上。雪のついたスラブを左上。40m。中間支点は灌木などで取る。雪の下にハーケン。2P目 山崎。1P終了点から左にトラバース後、ルンゼ状を直上。25m。3P目 川上。本来なら右にトラバースして衝立側正面フェースに出るところ、真っ直ぐ上に見える残置物に導かれ烏帽子側フェースを直進後左上。30m位だったか。
4P目 川上。とても難しそうなので難所大好きの川上リード。下部は左面に手足なし。右側にあるリス、カチ、棚などを使うが、難しく突破に時間を要す。中間支点はハーケンあり。さらに上部は被った凹角で、挑戦するも突破は困難となり、最終的にはあの手この手でずり上がる。終了点はボロいスリングが巻かれた立木。

ボロいスリングの巻かれた立木

5P目 山崎。本ルートが走る烏帽子側正面フェース目指してルート修正し、本来のルート4P目チムニーの上に出る。そこから凹状フェースを登り終了点。25m。
6P目 川上。ルンゼ状から烏帽子側の開放的な凹角状のフェースを登る。中間支点ハーケンあるが、クラックが走っているのでトライカムなども使う。40m。
この時点で14時を回っていたのと、メインピッチは終わったということで終了とし、同ルート下降する。途中ロープの引っ掛かりなどあったが、15時頃には取り付き着。
この日の中央稜は我々のパーティのみでした。

3月3日 谷川岳一ノ沢右壁左方ルンゼ
当日の天気は朝から曇り。天気は下り坂でしたが、日中は何とか持ちそうな状況。
センター発400。一ノ倉沢出合500頃。一ノ沢に入って急な登りの途中、最初の二俣が現れるが、左手が一ノ沢本谷で、左方ルンゼには左を行く。右手からはルートミスしたのか、一団が続々と下ってくる。
取り付き着630頃。この日左方ルンゼに入るパーティは我々を入れて5パーティの大盛況。
うち山頂に抜けたのは3パーティ。
1P目取り付き。ロープ無くても行けそうだが、先行パーティの落とす氷塊が時折飛んでくるのでロープを出す。出だしだけ傾斜の緩い氷で、あとは2P目の氷瀑の前まで緩い雪面。40m。
2P以降は、特に難しくない滝を交代で登って行く。確か4P目。左側は氷が薄く、中央を行き、右岸側の立木にある残置まで。25mくらい。4P目終了点から下を覗く。4P終了点からは緩雪面。5P目手前までロープを引き摺っていく。本ルート核心の5P目チムニー滝。川上リード。確保支点は左岸側の岩角へ巻き付けたスリングやハーケンを打ち確保支点とした。乗り越えた後40mほどロープ伸ばし左岸側でビレイ。
滝は、左面に薄い氷が張っており、チョックストーンの左側を登る。それほど苦労せず突破できた(写真は現地で偶然会った友人に取ってもらったもの)。
その後、中間稜までは先行者の階段状トレースがあり、雪も締まって容易。
中間稜核心のナイフリッジもトレースがあったため難なく突破。一応スタンディングアックスビレイで確保。ナイフリッジ後はロープをしまい、東尾根に向けのんびり登って行く。ガスで真っ白のオキの耳には1200頃到着。天神平経由で1500には下山。

谷川岳 一ノ倉沢 衝立岩中央稜

2017年2月26日
薄田(記)、野澤

楽しい(?)冬壁でした。
過去に何度もアプローチして(土合敗退含む)やっと取り付けました。天気は今一でしたが(水上は晴れ)条件はほぼベスト。壁には充分過ぎる程の雪と氷。これぞ冬壁。
2P目以外はルートの特性上風当たりもそれなりで冬期クライミング感バッチリです。

1P目野澤君リードスタート。厳しいのかなかなか終わらない。私はやせ我慢の鼻歌を歌いながら足踏みをして寒さを紛らす。1時間でビレーOFF。薄田は15分くらい。

1P目の野澤

2P目薄田リード、Ⅱ級なので15分くらいで終了。但し、1P目もそうだが充分過ぎる程雪と氷なのでホールドのお掃除に時間が掛かる。
2P目終了直前

3P目野澤リード、ここは2P目のルンゼからリッジに出るところは雪が少なく楽勝。但し、その後は雪&氷のお掃除作業が必要なので時間が掛かる。薄田は野澤君の落とす落下物を体(時折メット)に受けながらビレーするもメットは「カツン、カツン」で済むが肩に1発大きめの氷がヒット。ちょっと痛かった。ここもリード1時間、フォロー30分。

4P目薄田リード、Ⅳ級A0なるも写真でわかるとおり冬壁感充分でハーケン類が埋まっていて見つけるのに手間取る。シュリンゲが付いているとわかり易いがそこも氷化してるので叩き割らないと使えない。微妙なバランスで立っての作業は困難でテンションか下のハーケンにセルフを取っての作業になる。ホールドが細かいので右手はアックスのピックを引っ掛け左手はホールドを取ってのクライミング。と、クラックにアックスをねじ込んだ時に挟まっている氷が脱落。1+1m程墜落。怪我は無かった。アックスをねじ込むときは手を抜かず雪&氷を取り除かなければいけない(硬ければ別)と大反省。4P目の目の前4mほど上に見えるけどそこからも簡単では無くあの手この手でずり上がり(格好良く言うと微妙なクライミング)、最後は終了点の残置シュリンゲにアックスを引っ掛けて終了。ここは1時間まで掛からなかったと思うが時計を見ると11:40、結構時間が押してきた。
4P目終了3m手前

ロープを固定し野澤君に登って貰う。私が出だしを左に回り込んだせいで野澤君に手間を掛けさせた。しかし、フォローでも難しいのかテンションを掛けつつ登ってくる。最後はゴボウ混じりとなりようやく到着。野澤君の顔色を伺い相談すると降りたいとのこと。残すところⅢ級+30mが2Pだが怪我するといけないので本日は是にてお終い。2回のアップで夏の横断バンド(急な雪壁)まで降り立つ。取り付きまで戻って腹に少し入れて下山開始。

過去の記録を見ると壁の雪は少なめが多いが今回は本格的な冬壁コンディション(ルートは易しい部類)であり正直手強かったです。南稜組も2P目のチムニーは苦労しているように見えたし、結局時間切れか(?)3P目終了時でお終いにしたようである。
「大氷柱」組はおそらく完登してアップに入っていた。
写真だと解りにくいが近くで見る『大氷柱』は大きく格好良い!いつかは登りたい!
烏帽子大氷柱

写真のとおり滝沢下部は露出していて氷で繋がっているが二の沢&衝立スラブは雪が大きく脱落していて今後の気温等にも依るがテールリッジの雪も落ちるのに多くの時間を取られないと感じました。(夏のⅢ級トラバース脇は既に亀裂が入っていた。)
滝沢下部

二ノ沢

谷川岳 一ノ倉沢 衝立岩中央稜

 

2003年2月23日
浅野、柴田(記)


昨年4ピッチ目で敗退した中央稜のリターンマッチ。

いつもの通り上里で運転を交代し、天神平スキー場の立体駐車場まで。

身支度を整え3時頃出発。

やけに暖かく雪も昨年に比べると少な目。

1時間ほどで一ノ倉沢出合いに着きそのまま本谷から衝立スラブを途中まで登りテールリッジに移り中央稜取り付きの安定したビレーポイントまで。

天候は小雪だが風はたいしたことなくまずまずの日和。

午前6時頃準備を整え昨年同様浅野さんリードで登攀開始。

1P(浅野)取り付きの雪の段差を越すのに少々苦労する。

その上は傾斜も寝た感じで昨年より登り易い。

ビレーポイント手前の左にトラバースするところも無難にクリア。

2P(柴田)カンテを左に回りこんで緩いルンゼを登るがビレーポイント手前の一手は結構緊張。

トレーニングを積んでいないと何でもないところが恐く感じる。

3P(浅野)カンテを右に戻り第2フェースを登る。

昨年はアブミまで出したがことしはA0で何とか登れた。

4P(柴田)第2フェース上部。

毛の手袋を脱ぎ素手にミトンで登ったこともあり割と快調にすぐ上のビレーポイントまで。

その上部を登りかけた所で昨年苦労した記憶が蘇り、浅野さんにリードとしてもらうべくピッチを切る。

後続パーティが近くまで迫ってきた。

5P(浅野)フェース上部をA1で進み、途中から右のルンゼに入りダブルアックスで登り、最後は凍ったチムニーを突っ張りで持たせてダブルアックスで抜ける。

リードする浅野さんからは何度か「頼むねー」のコールが入る。

フォローでも緊張消耗するピッチだった。

リードした浅野さんを尊敬する。

ここで既に12時を回っていた。

隣の烏帽子奥壁には南稜フランケあたりに女性のコールがこだましている。

6P(浅野)最初は柴田がリードしたが、5mくらい登ったところにあるピトンで暫く休んでいるうちにピトンが抜けて墜落して浅野さんに体当たり。

幸いルンゼ状だったのですぐに停止し宙吊りになることもなかったが垂壁だったら危なかった。

これでモチベーションが急低下した柴田は選手交代でフォローに回る。

7P(浅野)ルンゼ状を詰めてピナクル状のアンカーポイントに這い上がりその上のすっきりとしたフェースを登る。

ピナクル状を登り切った所で午後2時15分だったので浅野さんにここまでとしないか話し、下ることにする。

懸垂50mダブルで3ピッチ。

安全環付ビナにロープを通すのが大儀なほど手指が疲れていた。

隣の烏帽子奥壁の大氷柱は中間部がバラバラになっている。

やはり昨年よりもだいぶ氷雪は少ない様だ。

ロープを仕舞い気がつけば腹ペコ。

中央稜取り付きでレーションを一気に食し、テールリッジを慎重に下り、何度も振り返りながら出合いに戻る。

何はともあれ無事に帰れてよかった。

まあピナクル状まで抜ければほぼ完登と思いたいが、トレーニング不足により随分浅野さんに迷惑をかけ申し訳なかった。

タイム
駐車場(3:00) → 一ノ倉沢出会い(4:07) → 中央稜取り付き(6:00) → ピナクル状テラス(2:15)→ 一ノ倉沢出合(16:35) → 駐車場(19:00)

 

北岳バットレス ピラミッドフェース~中央稜

2001年9月15日
柴田、浅野(記)


天 候 :晴れ

形 態 :岩登り(夜行日帰り)

メンバー:柴田、浅野

行 動  :広河原発(3:30)~大樺沢二股(6:00)~下部岩壁着(6:50)、登攀開始(7:15)

十字クラック~ピラミッドフェース(横断バンド)~4尾根~中央稜(ノーマルルート)~終了点(16:30)

北岳山頂(16:50-17:15)~八本歯のコル~大樺沢経由広河原着(20:15)

装 備 :個人用登攀用具一式(ライト、フラットソール等)、カム(エイリアン1セット+#1~#3?各1)、ピトン(厚×2、アングル×2)

ボルトキット、ロープ9ミリ×2、ツェルト

1.カムは下から4つあれば十分かな(エイリアン)。

2.同ルートの場合フリーで5・7?程度をこなせる人ならアブミはいらないと思う(無雪期、ライン取りによる)。

3.ボルト、ネイリングは使用しなかった。

BPにおいても補強等行わなかった。

十字クラック及びピラミッドフェース、四尾根はランニング、ビレイ点共にピンの状態は比較的良好。ただし中央稜は今後補強する等が必要になってくるかもしれない。

食 料 :行動食のみ(非常食含む)

その他 :

1.横断バンドは大変脆い為、バンド上に人がいる場合に下部の登攀は特に注意。

2.4尾根の懸垂ポイント(Dガリー奥壁側に下降する場合)は50mシングルで下降可能。

枯れ木テラスから中央稜取付までは50mダブル1回で下降可能。

但し途中に懸垂ポイントが有り、2回に分けることも可能。

行動概要:

北岳バットレスに柴田さんと行くことになった。

その何週か前にやはり柴田さんと甲斐駒の継続に行き敗退をしていたので今度はスッキリ繋げたいと思っていた。

金曜日の夜、八王子駅に集合する。

21時位に出発したので広河原につくのは、0時頃と読んでいたのだが、甲府昭和ICを降りてから道に迷ってしまい中々夜叉神峠に行く道が見つからない。

どっちに進んでも鰍沢の文字が出てくるのだ。

「んだよいったい・・・」とひょっとして甲府敗退かなどと本気で思えた頃ようやく道を発見。無事広河原に向かうことが出来た。

それにしてもICを降りてから、道は暗く誰もいないのに開いているコンビニが結構あるのには驚いた。

助かるけど。

1時過ぎに広河原に着く。

駐車場は結構空いていて問題なく駐車できた。

早々に就寝。

15日、朝3時に起床。

朝飯にサツマ芋を食べ用意をすませ出発する。

テケテケ歩く。

眠い他は特にどうとゆうことない道なので報告はここで一気に二股に飛んでしまうのです。

二股に着く頃にはライトがいらなくなって来た。

ここまで来ると紅葉が綺麗だ。

天気は快晴でバットレスに朝日があたると紅葉とあいまってなんだかすごい景色になる。

こんな瞬間には滅多に会えるものではない。

バットレス沢を詰めて下部取付に向かう。

飛び石を飛ぶ時、やけに滑るなと思ったら凍っていた。

ここはもうすぐ冬がくるんだね。

4尾根と言う超人気ルートを抱えているだけあってアプローチは登山道のように踏まれている。

十字クラック取付を確認し登攀用意をする。

この取付はガイド図によれば「顕著な・・・」

と表記されているがまさしくその通りである。

それにしても何でルート図というのは、この「顕著な・・」

を多用するのか? 顕著な凹角、顕著なカンテ、顕著なハング等など・・・。

自分はこの「顕著な・・」

と言う表現があまり好きではない。

例えば「顕著なハング」

を期待して上を見上げると、至る所が顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著・・・でえらい目にあったことは一度や二度ではない。

単にルートを見る目が無いとは思うのだが、どうしても「顕著な・・」

と書かれていると身構えてしまうのだ。

はたして十字クラックは顕著であった。

だがしかしもっと右上の方にチムニーサイズ?とおぼしきやはり十字の形状が見える。

そこが取付ではないことは位置的から言ってもすぐに解るのだが「顕著って言うならあっちの方が顕著だよな・・・」

と一人で文句を言いながら登攀を開始する。

おそるべし・・・顕著!

1P:浅野が受け持つことになる。

見上げる十字クラックに向かって浅い凹角~クラックが伸びており残置も確認出来る。

出だしは若干傾斜が強い。

計画段階では今回はオールフリーの予定であった。

(生意気にも柴田さんに力強く宣言した浅野でした)だが5~6mで「A0入りま~す。」

この部分、雪に磨かれているのか?ツルツルであまりフリクションはよろしくない。

御岳のボルダーを連想してしまう。

まあいつものことだが、家で考える行動は得てして壮大である。

(今の時代バットレスのオールフリーくらいなら壮大とは言えないけど)そして自分の実力と現実の厳しさを思い知らされた時いつも出てくる言い訳がある。

「まっ!今回は安全第一と言うことで・・・」

しかしこの日安全第一は随所に出てくることになるのであった・・・。

所々にカムを決めて十字クラック1ピッチ目終了点に着く。

十字の向かって左端になるのかな・・20M位か?狭いながらもスタンスがあるので安定している。

ビレイピンはベタ打ちである。

2P:柴田さんリード。

頭上のガリー状に入り直上。

ハング下でピッチを切る。

ちなみにフォローピッチはどうしても印象が薄くなってしまう。

(すみません柴田さん)だから文章が短くなってしまうが決して手抜きではないことを明示しておくこととする。(本当か?)

3P:出だしの小ハングを超える。

このハング見た目程ではないと思う。

ハングを越すとすぐに傾斜が無くなりルンゼ上のスラブとなる。

スラブ途中の残置を使ってビレイ。

頭の上はやはり大きめなハング形状になっている。

はっきりしていると思うハングだがやっぱり「顕著」

は使わないのである。

ピレイはここで良かったと思うのは、4ピッチ目を柴田さんが登り始めてからだった。

4P:ハングを避ける為に2~3m左にトラバースして傾斜がない所を直上。

柴田さんの姿がハングの上に出た為見えなくなる。

しばらくして音が聞こえてくる。

「落石だな・・」と思っていると後から後から落ちてくる。

しかしハング下の為、石は全て自分の背中のずっと後ろを落下するだけだった。

良かった。

自分も登ってみるとハング上から横断バンド入り口までガレ状の箇所が多い。

今後登る人はご注意下さい。

横断バンドを左にトラバース。

ここはコンテで進むことが可能。

踏み跡も明瞭。

継続ということでピラミッドフェースは5P目からということにさせて頂きます。

5P:ピラミッドフェース横断バンドからを柴田さんがリードする。

出だしブッシュで登り15m位上のテラスでビレイ。

6P:スラブ状のフェースを直上。

逆層気味で岩の構成が見た目ゴチャゴチャしておりラインは不明確に見えるが、実際登るとスッキリしていて中々楽しめる。

要所要所でランニングも取れるし結構いい感じ。

7P:柴田さんリード。

6P目とよく似たピッチ。

8P:スラブ状にクラックが走っている。

カムが良く決まるので#2~#3があれば心強い。

クラック出口がこのピッチの核心かな。

大変安定したテラスでビレイ。

9P:柴田さんリード。

やはり6、7Pと似た感じ。

途中一箇所フリクションが良くないスラブから一段上がったところが「ムム!なんの、なんの・・」と感じさせる。

この表記で「ぜんぜん解んないよ」と言う方は是非バットレスに行ってみて下さい。

10P:ピラミッドフェース核心の一つ手前。

9Pより10mも進んでいないが、そのまま伸ばすとロープが屈曲するのでめんどくさいけどピッチを切る。

ビレイにはハイ松が使える。

すぐ右上が4尾根のようで登っている人がいる。

11P:柴田さんリード。

ピラミッドフェースの核心ピッチ。

すっきりした白いスラブ状フェースが5m程の短いジェードルに続いている。

ジェードル終了地点がビレイ点のようだ。

左上して柴田さんが登りだす。

グレードからみれば残地の数もこんなもんかな。

ここを登らずに右に行けば4尾根に出ることも可能と思われる。

でも見れば登りたくなるよ。きっと。

12P:右にトラバース約10mで4尾根に合流。

自分は合流後も直上してビレイしたが、トラバースが終わった所でビレイをした方が良い(ハイ松が使える)。

その後の直上距離にもよるが残地(リングボルト)までロープを伸ばすと風もないのにコールが全然聞こえなくなる。

13P~15P:言わずと知れた4尾根の為、記載省略。

Dガリー側への懸垂ポイントまで。

(マッチ箱のコルって言うのかな?)

16P:ここで4尾根の先行パーティー含め、フランケからDガリー奥壁からとわらわらと人が集中した。

人気あるね。バットレスって。

17P:浅野リード。

やさしいスラブを枯れ木テラスまで。

中央稜に行く懸垂ポイントにロープをセットして下降。

二回に分けて懸垂出来るが、途中で区切ると上に人がいた場合、落石が危険。

ロープが濡れている等回収が困難な場合で無い限り一回でおりた方が良いと思う。

見た目「本当に一回で降りられるの?」と思う高さだが、50mロープなら問題無い。

18P:ノーマルルート取付を確認。

浅野リードで中央稜1Pを登攀開始。

ルート数が少ないから取付はすぐに確認出来た。

(残置有り)中央稜はそれまでのルートと比較すると脆そうだし、なにより谷底の為、暗い感じがする。

初対面の印象は良くないって感じだ。

ルートは傾斜の強いフェースを強引に5~6m直上。

トラバースしてリンネに入る。

このトラバース、ハング状箇所をのけぞるように足を送る箇所がある。

ここはしゃがみこんで姿勢を低くして超えることをお勧めする。

少し下を探せばその為のスタンスはいっぱいある。

残置でビレイ。

19P:柴田さんリード。

ルート図によればリンネを抜けて1P。

右にトラバース1Pで中央稜3P目終了点になるようだが、リンネを抜けた箇所よりフェイスを右上。

1P終了点より直接3P目終了点に抜けられた。

この間残置も取れるのでその方が時間が短縮出来る。

最近は皆そうしているのかもしれない。

20P:浅野リード。

フェースを右上しハング帯に突き当たる。

そこかしこに残置があるがどれも続いていない(ように見えた)。

「さてさてどちらに行こう」と考えた挙句、ハングの切れ目を右上するラインを辿った。

少し被っていてしかも高度感があり、大変気分の良いフリーピッチ。

2~3個ランニングも取れた。

ハングを抜けるとガクンと傾斜が落ち、広々として視界が広がった。

北岳の頂上がもう少しだ。

残置まで直上してロープを伸ばし柴田さんをビレイする。

しかしここで失敗が発覚。フォローで上がってきた柴田さんによるとノーマルルートのラインはもっと右じゃないかとのことだ。

3P終了点より思っていた程右に登っておらず直上気味だったのが原因らしい。

残置がある所を見ると何がしかのラインだとは思うのだが、たまたまそこが現状で登れるラインだから良かったのであって予定していたラインを外したのは大変危険だと思う。

大失敗だ。

21P:柴田さんリード。

Ⅱ~Ⅲ級の露岩を登る。

ここに来て明るい内に壁を抜けることが出来ることを確信し少し嬉しい。

22P:ガレた狭いルンゼ状を直上。

ロープは要らないかもしれないが念の為、スタカットで登る。

約30m程で終了。

残置で柴田さんを迎え入れルートを抜けた。

ここでロープを外し頂上へ向かう。

頂上までは15分位。ルート図通りだ。

北岳頂上の風はもう冷たかった。

日が暮れ始めていてなんだか朝同様すごい風景が広がっていた。

一日に2回もこんな風景を経験できたのは大変幸運だったと思う。

中央稜は直接頂上に抜けられると聞いていたがまさしくそんな感じだ。

下部の暗いイメージからは全然想像出来ないルートだった。

甲斐駒で天気に泣いた分今回は天気に恵まれたとも思った。

柴田さんと握手を交わして記念写真をとる。

ガチャを整理、行動食を食べて明るいうちに下山を開始する。

しかしまー八本歯のコルより大樺沢までよくこんだけ梯子を作ったものだ。

大変だったろうなと思いながらスタコラ下山。

夜20時過ぎに無事駐車場に戻りました。

柴田さん有難うございました。

次は下部~上部フランケ~Dガリー奥壁、んでもってもう一回中央稜ですね。