2001年9月15日
柴田、浅野(記)
天 候 :晴れ
形 態 :岩登り(夜行日帰り)
メンバー:柴田、浅野
行 動 :広河原発(3:30)~大樺沢二股(6:00)~下部岩壁着(6:50)、登攀開始(7:15)
十字クラック~ピラミッドフェース(横断バンド)~4尾根~中央稜(ノーマルルート)~終了点(16:30)
北岳山頂(16:50-17:15)~八本歯のコル~大樺沢経由広河原着(20:15)
装 備 :個人用登攀用具一式(ライト、フラットソール等)、カム(エイリアン1セット+#1~#3?各1)、ピトン(厚×2、アングル×2)
ボルトキット、ロープ9ミリ×2、ツェルト
1.カムは下から4つあれば十分かな(エイリアン)。
2.同ルートの場合フリーで5・7?程度をこなせる人ならアブミはいらないと思う(無雪期、ライン取りによる)。
3.ボルト、ネイリングは使用しなかった。
BPにおいても補強等行わなかった。
十字クラック及びピラミッドフェース、四尾根はランニング、ビレイ点共にピンの状態は比較的良好。ただし中央稜は今後補強する等が必要になってくるかもしれない。
食 料 :行動食のみ(非常食含む)
その他 :
1.横断バンドは大変脆い為、バンド上に人がいる場合に下部の登攀は特に注意。
2.4尾根の懸垂ポイント(Dガリー奥壁側に下降する場合)は50mシングルで下降可能。
枯れ木テラスから中央稜取付までは50mダブル1回で下降可能。
但し途中に懸垂ポイントが有り、2回に分けることも可能。
行動概要:
北岳バットレスに柴田さんと行くことになった。
その何週か前にやはり柴田さんと甲斐駒の継続に行き敗退をしていたので今度はスッキリ繋げたいと思っていた。
金曜日の夜、八王子駅に集合する。
21時位に出発したので広河原につくのは、0時頃と読んでいたのだが、甲府昭和ICを降りてから道に迷ってしまい中々夜叉神峠に行く道が見つからない。
どっちに進んでも鰍沢の文字が出てくるのだ。
「んだよいったい・・・」とひょっとして甲府敗退かなどと本気で思えた頃ようやく道を発見。無事広河原に向かうことが出来た。
それにしてもICを降りてから、道は暗く誰もいないのに開いているコンビニが結構あるのには驚いた。
助かるけど。
1時過ぎに広河原に着く。
駐車場は結構空いていて問題なく駐車できた。
早々に就寝。
15日、朝3時に起床。
朝飯にサツマ芋を食べ用意をすませ出発する。
テケテケ歩く。
眠い他は特にどうとゆうことない道なので報告はここで一気に二股に飛んでしまうのです。
二股に着く頃にはライトがいらなくなって来た。
ここまで来ると紅葉が綺麗だ。
天気は快晴でバットレスに朝日があたると紅葉とあいまってなんだかすごい景色になる。
こんな瞬間には滅多に会えるものではない。
バットレス沢を詰めて下部取付に向かう。
飛び石を飛ぶ時、やけに滑るなと思ったら凍っていた。
ここはもうすぐ冬がくるんだね。
4尾根と言う超人気ルートを抱えているだけあってアプローチは登山道のように踏まれている。
十字クラック取付を確認し登攀用意をする。
この取付はガイド図によれば「顕著な・・・」
と表記されているがまさしくその通りである。
それにしても何でルート図というのは、この「顕著な・・」
を多用するのか? 顕著な凹角、顕著なカンテ、顕著なハング等など・・・。
自分はこの「顕著な・・」
と言う表現があまり好きではない。
例えば「顕著なハング」
を期待して上を見上げると、至る所が顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著・・・でえらい目にあったことは一度や二度ではない。
単にルートを見る目が無いとは思うのだが、どうしても「顕著な・・」
と書かれていると身構えてしまうのだ。
はたして十字クラックは顕著であった。
だがしかしもっと右上の方にチムニーサイズ?とおぼしきやはり十字の形状が見える。
そこが取付ではないことは位置的から言ってもすぐに解るのだが「顕著って言うならあっちの方が顕著だよな・・・」
と一人で文句を言いながら登攀を開始する。
おそるべし・・・顕著!
1P:浅野が受け持つことになる。
見上げる十字クラックに向かって浅い凹角~クラックが伸びており残置も確認出来る。
出だしは若干傾斜が強い。
計画段階では今回はオールフリーの予定であった。
(生意気にも柴田さんに力強く宣言した浅野でした)だが5~6mで「A0入りま~す。」
この部分、雪に磨かれているのか?ツルツルであまりフリクションはよろしくない。
御岳のボルダーを連想してしまう。
まあいつものことだが、家で考える行動は得てして壮大である。
(今の時代バットレスのオールフリーくらいなら壮大とは言えないけど)そして自分の実力と現実の厳しさを思い知らされた時いつも出てくる言い訳がある。
「まっ!今回は安全第一と言うことで・・・」
しかしこの日安全第一は随所に出てくることになるのであった・・・。
所々にカムを決めて十字クラック1ピッチ目終了点に着く。
十字の向かって左端になるのかな・・20M位か?狭いながらもスタンスがあるので安定している。
ビレイピンはベタ打ちである。
2P:柴田さんリード。
頭上のガリー状に入り直上。
ハング下でピッチを切る。
ちなみにフォローピッチはどうしても印象が薄くなってしまう。
(すみません柴田さん)だから文章が短くなってしまうが決して手抜きではないことを明示しておくこととする。(本当か?)
3P:出だしの小ハングを超える。
このハング見た目程ではないと思う。
ハングを越すとすぐに傾斜が無くなりルンゼ上のスラブとなる。
スラブ途中の残置を使ってビレイ。
頭の上はやはり大きめなハング形状になっている。
はっきりしていると思うハングだがやっぱり「顕著」
は使わないのである。
ピレイはここで良かったと思うのは、4ピッチ目を柴田さんが登り始めてからだった。
4P:ハングを避ける為に2~3m左にトラバースして傾斜がない所を直上。
柴田さんの姿がハングの上に出た為見えなくなる。
しばらくして音が聞こえてくる。
「落石だな・・」と思っていると後から後から落ちてくる。
しかしハング下の為、石は全て自分の背中のずっと後ろを落下するだけだった。
良かった。
自分も登ってみるとハング上から横断バンド入り口までガレ状の箇所が多い。
今後登る人はご注意下さい。
横断バンドを左にトラバース。
ここはコンテで進むことが可能。
踏み跡も明瞭。
継続ということでピラミッドフェースは5P目からということにさせて頂きます。
5P:ピラミッドフェース横断バンドからを柴田さんがリードする。
出だしブッシュで登り15m位上のテラスでビレイ。
6P:スラブ状のフェースを直上。
逆層気味で岩の構成が見た目ゴチャゴチャしておりラインは不明確に見えるが、実際登るとスッキリしていて中々楽しめる。
要所要所でランニングも取れるし結構いい感じ。
7P:柴田さんリード。
6P目とよく似たピッチ。
8P:スラブ状にクラックが走っている。
カムが良く決まるので#2~#3があれば心強い。
クラック出口がこのピッチの核心かな。
大変安定したテラスでビレイ。
9P:柴田さんリード。
やはり6、7Pと似た感じ。
途中一箇所フリクションが良くないスラブから一段上がったところが「ムム!なんの、なんの・・」と感じさせる。
この表記で「ぜんぜん解んないよ」と言う方は是非バットレスに行ってみて下さい。
10P:ピラミッドフェース核心の一つ手前。
9Pより10mも進んでいないが、そのまま伸ばすとロープが屈曲するのでめんどくさいけどピッチを切る。
ビレイにはハイ松が使える。
すぐ右上が4尾根のようで登っている人がいる。
11P:柴田さんリード。
ピラミッドフェースの核心ピッチ。
すっきりした白いスラブ状フェースが5m程の短いジェードルに続いている。
ジェードル終了地点がビレイ点のようだ。
左上して柴田さんが登りだす。
グレードからみれば残地の数もこんなもんかな。
ここを登らずに右に行けば4尾根に出ることも可能と思われる。
でも見れば登りたくなるよ。きっと。
12P:右にトラバース約10mで4尾根に合流。
自分は合流後も直上してビレイしたが、トラバースが終わった所でビレイをした方が良い(ハイ松が使える)。
その後の直上距離にもよるが残地(リングボルト)までロープを伸ばすと風もないのにコールが全然聞こえなくなる。
13P~15P:言わずと知れた4尾根の為、記載省略。
Dガリー側への懸垂ポイントまで。
(マッチ箱のコルって言うのかな?)
16P:ここで4尾根の先行パーティー含め、フランケからDガリー奥壁からとわらわらと人が集中した。
人気あるね。バットレスって。
17P:浅野リード。
やさしいスラブを枯れ木テラスまで。
中央稜に行く懸垂ポイントにロープをセットして下降。
二回に分けて懸垂出来るが、途中で区切ると上に人がいた場合、落石が危険。
ロープが濡れている等回収が困難な場合で無い限り一回でおりた方が良いと思う。
見た目「本当に一回で降りられるの?」と思う高さだが、50mロープなら問題無い。
18P:ノーマルルート取付を確認。
浅野リードで中央稜1Pを登攀開始。
ルート数が少ないから取付はすぐに確認出来た。
(残置有り)中央稜はそれまでのルートと比較すると脆そうだし、なにより谷底の為、暗い感じがする。
初対面の印象は良くないって感じだ。
ルートは傾斜の強いフェースを強引に5~6m直上。
トラバースしてリンネに入る。
このトラバース、ハング状箇所をのけぞるように足を送る箇所がある。
ここはしゃがみこんで姿勢を低くして超えることをお勧めする。
少し下を探せばその為のスタンスはいっぱいある。
残置でビレイ。
19P:柴田さんリード。
ルート図によればリンネを抜けて1P。
右にトラバース1Pで中央稜3P目終了点になるようだが、リンネを抜けた箇所よりフェイスを右上。
1P終了点より直接3P目終了点に抜けられた。
この間残置も取れるのでその方が時間が短縮出来る。
最近は皆そうしているのかもしれない。
20P:浅野リード。
フェースを右上しハング帯に突き当たる。
そこかしこに残置があるがどれも続いていない(ように見えた)。
「さてさてどちらに行こう」と考えた挙句、ハングの切れ目を右上するラインを辿った。
少し被っていてしかも高度感があり、大変気分の良いフリーピッチ。
2~3個ランニングも取れた。
ハングを抜けるとガクンと傾斜が落ち、広々として視界が広がった。
北岳の頂上がもう少しだ。
残置まで直上してロープを伸ばし柴田さんをビレイする。
しかしここで失敗が発覚。フォローで上がってきた柴田さんによるとノーマルルートのラインはもっと右じゃないかとのことだ。
3P終了点より思っていた程右に登っておらず直上気味だったのが原因らしい。
残置がある所を見ると何がしかのラインだとは思うのだが、たまたまそこが現状で登れるラインだから良かったのであって予定していたラインを外したのは大変危険だと思う。
大失敗だ。
21P:柴田さんリード。
Ⅱ~Ⅲ級の露岩を登る。
ここに来て明るい内に壁を抜けることが出来ることを確信し少し嬉しい。
22P:ガレた狭いルンゼ状を直上。
ロープは要らないかもしれないが念の為、スタカットで登る。
約30m程で終了。
残置で柴田さんを迎え入れルートを抜けた。
ここでロープを外し頂上へ向かう。
頂上までは15分位。ルート図通りだ。
北岳頂上の風はもう冷たかった。
日が暮れ始めていてなんだか朝同様すごい風景が広がっていた。
一日に2回もこんな風景を経験できたのは大変幸運だったと思う。
中央稜は直接頂上に抜けられると聞いていたがまさしくそんな感じだ。
下部の暗いイメージからは全然想像出来ないルートだった。
甲斐駒で天気に泣いた分今回は天気に恵まれたとも思った。
柴田さんと握手を交わして記念写真をとる。
ガチャを整理、行動食を食べて明るいうちに下山を開始する。
しかしまー八本歯のコルより大樺沢までよくこんだけ梯子を作ったものだ。
大変だったろうなと思いながらスタコラ下山。
夜20時過ぎに無事駐車場に戻りました。
柴田さん有難うございました。
次は下部~上部フランケ~Dガリー奥壁、んでもってもう一回中央稜ですね。