ハーフドーム北西壁レギュラールート
2026 9/18-28
河合記(+会外1名)

GWのヨセミテ行、カリービレッジに向かう車内にて今回のパートナーのTさんとの会話。
「今年はシルバーウィーク、連休長いけど、どーする?」
その時、ふと目に留まったのはハーフドーム。
「あっ、そういえばハーフドームまだ登っていないなぁ。」
「北面だから、9月でも涼しいんじゃない?」
「やるか!!」
こんなノリで、8年ぶりのビッグウォール、9月のハーフドーム行きが決まった。
その後は、瑞牆などで継続登攀や荷重ユマール、ロアーアウトを思い出しながら準備したけれど、風邪引いたり天気が悪かったりで、十分な準備はできなかった。
今回のハーフドーム、どのようなスタイルでトライするかは悩んだ。
トライするならもちろんレギュラールートだが、残念ながら2015年の崩壊で、オールフリーは不可能となっている。
でも、易しいピッチが多いようなので、なるべくフリークライミングしたい。
トラバースが多いこともあり、荷上げはしたくないが、10kg位の荷物を背負っての荷重クライミングはかなり辛い。
先行パーティが遅いとその後の行程に多大な影響が出るので、Fix+ユマールでスタートダッシュしたい。
ということで、基本的にライト&ファストスタイル、リード&ユマールで荷上げなし、ユマールの厳しいピッチはリード&フォロー、初日に3p目までFixし2日目にGo upしてビッグサンディレッジでビバーク、3日目の明るいうちにトップアウト、という予定を組んだ。
9/18(金)
仕事が壊滅的に終わらず前日はタクシー帰りで半徹、当日夕方まで気合で働いた後、21:30発の飛行機に向け成田に走った。
死ぬほど眠く体調は最悪、飛行機の中ではかつてないほど爆睡。
まずは体力回復させなければ。
サンフランシスコ国際空港に到着、マーセドまで移動。
以前来た時より大分涼しい、どういうことだ!
9/19(土)
キャンプ4入り。
準備して翌日からハーフドームアタックと意気込んでいたが、予報が思いのほか良くないので様子を見ることにした。
まずは翌日のロストラムのアプローチ下見に行ったら、クライマーが上がってきた。
早速場所を聞こうと近づいてみたところ、Joshua Treeで会ったKさんと、Kさんのコンビ!
レスト日で下見とのこと、こんな場所で再会するとは驚いた。
次はグレイシャーポイントにあるHeaven 5.12dを触りに行った。
グレイシャーポイントへの左折ポイントを見落としたり、駐車場渋滞に遭ったり、アプローチも少し迷ったけど、無事懸垂下降の木を見つけ出した。
このルート、トポに出ていないのでアプローチの要点を書いておく。
① グレイシャーポイントの、皆が写真を撮っている突端まで行く
② 右に下りて、明瞭な踏み跡に入る
③ 左に崖、右に谷を見ながら、左の崖に近づきすぎないようにクライムダウン
④ 4本並んでいる木(写真)を探して、左端の木にFix
⑤ 懸垂下降すると、1本だけ、根本の分かれた木があるのでさらにFix
⑥ 4本並んでいる木の左端から、 70mロープ1本で斜めの取付に下りられる(帰りは空中ユマール)

早速トライ。
凄まじく被っていて、体感はルーフに近い。
ムーブは中間部のフィンガーから広がるところが大核心でかなり悪い。
他の部分も強度強いけれども何とかなりそう。
抑え気味に1便出して微妙に核心ができなかったが、城ヶ崎のブリザード5.12dの方が難しく感じた。
Tさんは1便でムーブをバラし、「ピンクポイントならすぐできそう」とのこと。

しかし本命のハーフドームが控えているので、お互い1便のみの記念受験で止めておいた。
このルートのビレイ地点は、今まで登ったどのルートよりも素晴らしい景色だった。

いつか完登しに戻ってこよう。

確かこの日、ギアショップに行ったけど、カムフックの狭い奴は売っていなくて、全般に品薄だった。
スーパーの肉も品薄で、ツアーを通じて悩まされた。
9/20(日)
この日は肩慣らしに、GWはハヤブサ営巣時期で登れないロストラム北壁を登りに行った。
アプローチは明瞭だけど、最後懸垂下降支点まで行くところが怖い。

懸垂下降は70mロープ1本で3回だった。
60mロープ1本なら4回になるだろう。
見上げるロストラムは凄い迫力だ。
日が昇った後の7:00アプローチ開始、8:00には取付に着いたが既にKさん・Kさんコンビがトライ中、流石早い!
後続パーティも来た。
流石人気ルート、週末は混む。
3p目からの横入りパーティまで来た。
待ちが長くて暇だったので、後続の地元サンフランシスコから来たパーティと、お勧めマルチや推しクライマー、なぜか日本の漫画の話など雑談。
曰く、「ハーフドームレギュラーはロストラムより易しい。」
そんなことはなかった。
なお、私の推しクライマーは、英国のSteve McClure。
北壁で日は当たらないのに、標高が低いせいか異様に暑くて完全な水不足、後半は全身攣りかけて2人揃ってボッコボコ、後半は5.10aですら久々に落ちてしまった。
後半Tさんの水は早々に尽き、河合の水が供出される事態に。
水を飲まないとパフォーマンスが出ないのを痛感。
行動食に、水を飲まないと喉を通らないバームクーヘンを持っていたのも大失敗。
8:35登攀開始
1p目 5.9 TさんOS、河合フォロー〇 地味にチムニー
2p目5.11a 河合OS、Tさんフォロー〇 出だしはダウンクライム、次フィンガー、後は散歩
3p目5.10b TさんOS、河合フォロー〇 長い。フォローの荷重クライミングは地獄
4p目前半5.11c 河合×、Tさんフォロー× ギシっと来るフィンガー、ムーブミスってやられた。ビレイ点で小さいカム使い過ぎて詰みかけた。ナッツ有効
4p目後半5.9 TさんOS、河合フォロー〇 ハンド
5p目 5.10d 河合OS、Tさんフォロー× 出だしはハヤブサのう〇こが凄い。10dとか嘘でしょ?気合のコーナークラック
6p目5.10a TさんOS、河合フォロー× 核心はワイドと見せかけて出だしのフェイスで、うっかり落ちた
7p目 5.11b 河合×、Tさんフォロー× これまた出だしはハヤブサのう〇こが凄い。被ったフィスト~4番サイズ、薄手には辛い
8p目5.10a 河合×、Tさんフォロー〇 ワイド出だしがトリッキーでハマってしまった
17:45登攀終了

最後めちゃぶっとんでいた
帰りも、1回懸垂下降からの4thセクションは怖く、ロープを出した。
何とか日没前の18:50に車に帰ってきた。
とりあえずジュースをガブ飲みして、なぜか車のすぐ横に結婚式を終えてきたと思われるタキシードとブライダルベールの2人組がいたので祝福!
久々に水バテかつシャリバテを起こして、しんどかった。
明らかに準備不足、作戦ミスで、大反省。
次は空いてそうな平日か、一番乗りしよう。
内容は、渋滞と、はやぶさのう〇こが凄まじいことを除けば、素晴らしかった。
キャンプ場に帰って、速攻で服を着替えた。
9/21(月)
この日はレスト。
朝、Aさんと久々にキャンプ4で再会、Aさんの知人が登ったハーフドームの情報を教えていただく。
その後はアタックの荷造りとビジターセンター観光。
キャンプ場の机にギアを一杯拡げると、色々な人が声かけてくれる。


この日まで天気予報が怪しかったので、後半4日間にアタックをかけることにし、午前中はアプローチのDeath Slabを下見。
トレイルには魅力的なボルダーがたくさんあったが、登られている形跡はほとんどない。
アプローチは、出だしは分かりやすかった、出だしは…
午後はハイシエラ観光。

雷が鳴って、この時期にしては珍しく雨も降っていた。
夕方、クレジットカードをキャンプ4でパクられたことが判明し、慌ててロック手続き。
治安悪いなぁ。
不用心だったことを反省。
9/23(水)
今回のヨセミテ行もあっという間に後半戦、漸くハーフドームにアタックだ。
8:10アプローチ開始
水は2人で11.7リットル(ゼリー飲料含む)、登攀道具もあるので普通に重い。
道もところどころわかりづらく、ケルンを頼りにルートファインディング。
ところどころロープを出すほどではない3rdから4thクライミングがあり、Fixロープをユマールする箇所も4箇所あって、トポに書いてあるのに見つからなかったり、その逆もあったり。

途中、怪しい袋が岩の間に残置されていた。
思わず開けると、袋は二重になっていて、中には蟻の蟻の死骸とともに、なんかふにゃりとしたもの(ブツ)が…
見なかったことにして、そっと袋を閉じた。
Tさん「だから絶対そうだと思ったんすよ。何でそんな分かり切っているもの開けるんすか?」
河合「いや、好奇心には逆らえなくてさぁ…フ〇ーレンがミミック開けちゃう気持ちって凄いわかる気がするよっ!」(なお、帰りにこのブツは回収されていた。)
そんなしょうもないやりとりをしつつ、まったり進むが、落ちたらヤバいところも結構あって、既にアルパインな様相。
それにしても、間近で見るハーフドームは、ほんとかっこいい!

傾斜が下部からある分、エルキャピタンよりも迫力がある。
クレセントクラックから続くダイレクトルートが一目で分かって、惹かれた。
しかし、最後の灌木帯が非常に歩きづらく、いくら歩いてもハーフドーム取付が遠い。
上から突然、バルーンが落ちてきた。

13:30 レギュラールート取付着
標高差900m位、荷物重いのと、慎重にルートファインディングしたのでかなり時間がかかった。
貸し切りかと思ったら、外人(ベンさん)が1人来た。
Triple Crown(El Capitan, Half Dome, Mount Watkinsのヨセミテ三大岩壁を継続すること)の準備で荷物をデポ、前日までノーズを3日間登っていて、疲れたから2日間レストしてからトライするとのこと。
アプローチで拾ったヘルメットを取付近くに置いておいたら、「今からこれは俺のだっ!」と嬉しそうだった。
しかし、「水がないっ!!」と叫んで帰っていった。
取付には泉があるけれども、この時期は飲めるほど湧いておらずただの水たまり、何で日本人の我々すら知っているのに、ジモティっぽいのに知らないのだろうか…
この日は出だしの3ピッチをFix予定。
なお、これから先、時間は全て几帳面なTさんがメモっていたもの。
私はスタートと終了時刻以外覚えていない。
14:40 1p目5.8+5.10c TさんOS、河合フォロー〇
早速1p目に取り付く。
見た目より長い。
悪いフィンガーは数手で、問題なかった。

15:30 2p目5.9+5.5 河合OS、Tさんフォロー〇
グレードを見て油断したが、普通に出だしのハング超えが悪く、5.9の強度ではなかった。
ムーブを間違えたのか?
しかもこの時間は日が当たってヌメる…
危なげあったがOS。
最後は右に巻くのだが、Tさんは普通に直上してきた。

16:30 3p目 5.8 TさんOS、河合フォロー〇
なんか浮石の少ないジャルパインといったテイストの易しいピッチ。

17:10
登攀終了、一部荷物を3p目終了点に残置、60mシングルロープで1p目まで下り(かなりギリギリ)、60mハーフロープをルート上にカムでケーブルしながら、取付まで下降した。

取付は壁から少し離れたところにある、平らな場所で泊まった。
壁の近くは落石やギアが降ってきて危ないそうなので注意。

取付から見る夕焼けは、本当に美しかった。

せっかくアタックのために持ってきたタイツをキャンプ場に忘れ、ダウンとダウンパンツ、サーマレストとツェルトで寒い1夜を過ごした。
最初は暑かったんだがなぁ、冷え込みがなぁ…
9/24(木)
いよいよGo upだ!
ビッグサンディレッジで夕焼け見ながら黄昏ることを夢見てスタート。
水はロストラムでの反省を元に少し多めとし、2人で5.7リットル。
先行パーティも後続パーティもおらず、落ち着いて登っていれば、いつかはレッジに着くだろうということで、焦らず楽しんで登ることを意識した。
結局、最後まで壁は貸し切りだった。
5:45ユマール開始
7:00 4p目 5.11b/c+A1+5.10a 河合×RP、Tさんユマール
出だしのジグザグフィンガークラック乗越しが悪く、見事にはまって早速落ちてしまった。
すぐにやり直して突破。
翌日気付いたのだが、朝イチはなんかヌメる気がする、というのは言い訳で、悔しい。
ボルトラダーも一応フリーを試みるも絶望的なツルツルフェイス、すぐさまエイドに切り替えて突破。
その後の5.10aのフレーク状クラックは快適だった。

7:50 5p目5.9 河合OS、Tさんユマール
このピッチは快適だった気がするけれども、急いでいたのでよく覚えていない。
確か途中で少しフィンガーしたはずだ。
さっさと突破して時間を稼いだ。
どんどん行こう。

8:30 6p目 5.9 河合OS、Tさんユマール
このピッチも快適だったけど、長くて時間食ってしまった。

9:30 7p目 5.5+5.8+5.8 TさんOS、河合ユマール
Tさんにリードスイッチ。
最初の木の手前で右に入るところは、ルートファインディング要注意。
ジャルパインテイスト。

10:10 8p目 4th+5.7 TさんOS、河合フォロー〇
トラバースからルンゼを登り、また少しトラバースして側壁から本体の垂壁に入っていく。
またまたジャルパイン感あり。
Tさんは斜上してルンゼに入っていったが、下降気味に右トラバースしてから入った方が易しそうだった。
終了点ははっきりせず、カムで作っていた。
トラバースがきついのと易しいので、ユマールではなくフォローした。

10:50 9p目 4th TさんOS、河合フォロー〇
右にトラバースしてからガバでマントルを返していく。
易しいのと思いっきりトラバースなので、ここもフォロー。

11:20/11:30 10p目A1 河合〇、Tさんユマール
ボルトエイドが本格的に始まったので、リーチ有利な河合にスイッチ。
エイドの間隔が近くて楽だ。
最後の振り子は、振らずにスメアで行けた。
ユマールは懸垂下降からの振り子。


12:10 11p目 5.10a 河合OS、Tさんユマール
短いけど、今回1番緊張したピッチ。
ロビンストラバース。
エイドだとC2と書いてある通り、手で使うとプロテクションをセットできないピトンスカーで、渾身のトラバース、吠えた。
ユマールのロープの流れを考えるとバッククリーンすることになり、かなり怖い。
日本ならPD位はつくだろう。

13:05 12p目前半 A1+5.5 河合OS、Tさんユマール
崩壊区間の新しいエイドラインと思われる。
今度のエイドは間隔が遠くてトラバースなのでバランスも悪く、厄介。
ヌンチャクをビレイループに着けて、あぶみのトップステップに久々に乗った。
振り子も短いけれども角度が急で、ちゃんと振らないと届かなかった。
振り子の後のマントルは、外れのガバを引くと取れそう。
ユマールが大変そうなので、コーナークラック基部でピッチを切った。

14:20 12p目後半 5.11c+A1 河合OS、Tさんユマール
本日のメインディッシュ、惚れ惚れするほど美しい20m位の弓状コーナークラック。
ハンド、シンハンド、フィンガーと満遍ない。
今度こそ落ちられないので、休めるところは徹底的にレストして、気合で耐えてオンサイト。
C2となっているけれども、後半のフィンガーは残置があり、それ以外のプロテクションは良好なので、現在はC1かC2Fだろう。
その後は真横のボルトラダーでチムニー基部に入る。
ここは、リボルト前はロープトスをしていたところのようだ。
フリーで行くのは無理だな、これは。
崩壊後ライン、どこかフリーで行けるところがないか探したが、厳しそうだった。


15:40 13p目5.7+14p目5.9 TさんOS、河合ユマール
Tさんがチムニーに突撃。
「スリング落とした!」
「奥にカム決めたからユマールやばいかも?」
といった不穏なワードが上から飛んできた。
スリングは無事回収するも、荷物を背負ってスクイズチムニー奥のカム回収は不可能で、途中でバックロープを投げてもらい、荷上げしてもらった。
チムニーで狭苦しい空中ユマール50mは、かなりしんどかった。
ビレイ点でTさんのグローブが2つとも宙を舞い、思わず手を出したが1つしか回収できず。
このピッチでTさんはカムフックもロストした模様で、鬼門のピッチとなった。
カムフック落ちてきた記憶ないんだがなぁ。


17:30 15p目 5.9 TさんOS、河合ユマール
相変わらず幅の広そうなクラックをTさんが頑張っていた。
日没が迫ってきて、さっさとユマール。
さすがに急ぎモードに入って、このピッチのみ写真撮るのを忘れた。
18:25 16p目 5.9 河合OS、Tさんユマール
Tさんが「行っていいすよ」とのことだったので、再びスイッチ。
登りは特に問題なかったが、トポに出ているLoose Flakeは左の巨大フレークと見せかけて、ライン上の小さな奴だった、分かり辛い。
最後のSling Hornの後はダウンクライムになるので、ちゃんとスリング巻いておこう。


19:05 17p目 5.9 河合OS、Tさんユマール
あぁ、ビッグサンディで迎えるはずの夕日が沈んでしまった…
久々のヘッデン登攀。
ダウンクライム、トラバースしてからクラックを登るので、ロープの流れを考えると最初の10m弱のクラックではプロテクションがセットできない。
でも、この頃にはランナウトへの感覚が麻痺してきて、特に難しくもないので、もはや気持ちいい。
ダブルクラックはフィストサイズだけど、中にガバがあって快適。
突然5番サイズになるので、その場所で右にトラバースすれば、ようやくビッグサンディレッジに到着だ!

20:10 Tさんビッグサンディ到着、登攀終了。
到着してから余ったロープをいそいそと張り巡らして住環境を整えた。
一段下は使わなかったが、そちらの方が平らで寝心地良さそうだった。
Tさんにあてがったテラスは思いのほか段差があって寝づらかったようで、申し訳なかった。

岩の隙間に怪しい銀紙に包まれたブツが挟まっていた。
今度はTさんが思わず開けに行って、またそっと戻していた。
河合「それ、絶対そうだと思ったんだよね…何で開けちゃうかな?」
Tさん「いや、何か気になっちゃいましてね…」
物凄いデジャブ。
今回は逆だけど。
ビッグウォールは、人の好奇心を刺激するのかもしれない。
夜は寒くて、ツェルトを張ったけどよく眠れず、Tさんに至っては、夢の壁泊だったのに一睡もできなかったそう。
深夜には、山火事の煙で辺りが真っ白になったらしい。
まぁまぁ長い一日が終わり、久々にレッジで夜を明かした。
9/25(金)
夜明けより結構前に起きるも、寒くて動く気が全く起きない。
日が昇って気温が上がるのを待ってスタート。
7:30 18p目5.9+5.12a Tさん×、河合フォロー×
今日は難しいピッチが続く。
寒くて体が動かないので、寒さに強いTさんに行ってもらった。
Tさんは悪戦苦闘して、テンション混じりでトップアウト、コーナークラック最後のセクションのムーブができず意味不明という。
ボルダーツヨツヨのTさんですら厳しいとなると、相当気合を入れねばということで、荷上げしてもらい空身でトライ。
フォローだけど何としてでもフリーで抜けてやるという意気込みだ。
出だしの5.9もプロテクションセットできる位置が限られ、嫌らしい。
その後、コーナーのフィンガークラックになった。
テンションを挟んで右側のテラスに一旦逃げ込む。
ここまでで既にかなり悪く、5.11dか5.12a位はありそうだ。
その後、クラックはさらに狭まり、フィンガーチップになった。
残置ナッツがあるのでプロテクションは問題ないが、ムーブが非常に悪い。
微妙な足にスメアしながら、一手一手渾身のパワーで上げていくが、速攻テンション。
間違いなくローリングストーン5.12dの核心部より強度のある、強烈なレイバックだ。
かなり断片的ながら、なんとかムーブはバラすことができた。
しかし、Tさんに聞いていた通り、寒いのになぜか手がヌメる。
その後、怖いマントルを挟んで、最後はトラバースをフェイスムーブでこなし、終了点へ。
かなり時間はかかってしまったが、フリーで行けることはわかった。
しかし、断じて5.12aではなく、5.12d位が妥当だろう。

9:20 19p目前半5.10b 河合×、Tさんユマール
事前情報で、明るいうちにトップアウトしないと危ないと聞いていた。
前のピッチで大分時間を使ってしまったので、この後は落ちても取付からのやり直しなし、抜けることに焦点を置いた。
このピッチはジグザグのハイライト、ブロックハング超えのピッチだが、レイバックがやはりヌメってかなり怖く、日和って抜け口でテンションしてしまった。
今回ハーフドームでは唯一10台で落ちてしまい、大変不甲斐ない。
ハングを抜けた後は問題なく登れたが、被っている。
途中の巨大な穴がある凹角は残置がなく、カムでピッチを切った、

10:30 19p目後半+20p 5.12a+5.10b 河合×、Tさんユマール
ハンドクラックから始まる左がオリジナルラインで5.12d、右が5.12aのラインということで、当然右へ。
出だしから手はガバフィンガーだけど足が微妙なスメアの、被ったコーナーレイバック。
プロテクションセットがブラインド気味となり厳しく、すぐにテンションしてしまった。
でも、18p目よりはずっと易しい。
ハングを抜けてからはプロテクションのセットし辛いコーナーフィンガー。
気休めでセットした黒エイリアンはユマール時すぐ抜けたらしい。
テンション混じりながらもフリーで突破。
その後は20p目の短い5.10bハング越えを慎重にこなして、サンクゴッドレッジ下へ。
ビレイ点は、ダウンを着てもめちゃくちゃ寒い。


12:00 21p目 5.9+ TさんOS、河合フォロー×
この辺りから、頂上にいる登山者に声をかけられるようになる。
上から覗き込むとクライマーは丸見えである。
バイザーにまたがっている人までいたので、こちらからも「Will you FLY?」と返すも、返事はなかった。
冗談通じなかったか。
ハイライトのサンクゴッドレッジ、Alone on the WallごっこしたいというTさんに行ってもらう。
15m位の綺麗なレッジだが、幅が狭くて寝られなさそうだった。
後半は狭くて斜めなので一旦下りて、這いつくばりながら進む。
スクイズチムニーへの入りは微妙なムーブがあって難しかった。
スクイズチムニーは荷物を背負っていて降ろす余裕もなく無理だったので、テンションして外側をステミングして突破。

13:10 22p目 5.12c Tさん×、河合ユマール
このタイミングでフリーの核心ピッチとは、厳しい。
1ピン目のボルトの遠いこと!
Tさんは気合で突破し、前半のボルトラダー5.12aセクションを吠えながら渾身のオンサイトするも、5.12cスラブセクションの入りで敢えなく撃沈、振り子からのエイドに切り替えていた。
12cセクションはトポと異なりボルトが1本しかなく、グラウンドアップトライはメンタルが相当ぶっ飛んでないと難しそう。
振り子後はカムエイドからの、2つ目のボルトラダーではチョンボ棒が初めて活躍、最後はスカイフックを穴に差し込んだそう。
私もフォローでフリーのトライをしてみたかったけど、時間がないのと、エイドのライン取りとなっていて12cラインに入れないので、ユマール。
ユマールは快適だった。

14:40 23p目 5.8+5.7 河合OS、Tさんユマール
Tさんに「最後、行く?」と聞いたら、「行っていいっすよ」と返ってきたので、ビレイ地点で凍えていたこともあり、遠慮なく行かせてもらった。
と思ったらバックロープ引いていくのを忘れた、ごめん。
傾斜のないスラブのアンダークリング。
手も足も結構微妙で、何より突っ張るため、これまでのハンギングビレイで疲れていた腰がめちゃくちゃ痛かったが、歯を食いしばって耐えた。
その後はクラックを登ってからマントル、思わず「終わった」と思って声が出たが、頂上はもう一段上のようだった。
ロープが流れなくなりそうだったので、ピッチを切った。
このピッチはTさんユマールだったがロアーアウト多用、フォローでも良かったのかもしれず、バックロープ引くのを忘れた河合は罪深い…


15:50 24p目 ? 4th? 河合OS、Tさんフォロー〇
頂上台地の端にボルトを1本発見したので、そこまで念のためロープを出して進んだ。

フォローのTさんを迎えがっちり握手、グータッチ!
ビッグウォーラーTが誕生した瞬間であった。
16:10登攀終了。
デカい壁でフリークライミングするという、8年前にノーズ登った時に願った夢が叶った。

荷物を落とさなかった分、当時よりは成長したかな。
全身疲労の中見る絶景は、ほんと最高だ。
と思ったら、グレイシャーポイント方面から、煙が上がっている、山火事じゃん。
(下りたら、グレイシャーポイントは閉鎖されていた)

水は山頂で飲んだ後で、1リットル位余った。
ロストラムの経験で日和って700ml増量したけれども、当初見立て通り、2人で5リットルで十分だった。
北面で寒くて、あまり喉は乾かなかった。
16:50 下降開始。
キャンプ4でAさんにもらったアドバイス通り、ケーブルの位置は、初見真っ暗な状況で辿りつくのはかなり難しいだろう。
ケーブルはかなり急で、足周りが軽量化のためビーチ用の柔靴だったので、ケーブルにセルフ確保しながら慎重に下りた。
その後の北面へのアプローチもところどころ分かり辛く、1箇所迷った。
これも暗いと厳しそう。
18:30 取付到着
ビーチ用の柔靴は見事に親指の先に穴が開いた。
使い捨て前提だな。
足裏も痛いけど、重いアプローチシューズ担いで登るよりは大分軽量化に貢献してくれたので良かったと思う。
取付には2パーティ来ていて、明日アタックとのこと。
19:10 下降開始。
既に到着していたパーティから、「暗闇の中Death Slab行くの?頑張ってね。」と声をかけられたが、その意味をスタート30分で理解する。
強烈なヤブの中、道とルンゼを途中で間違えてしまい、足が地面に着かない、地獄の木登り登り返しをするはめに。
ハイマツの地獄の藪漕ぎを思い出す。
これは暗い中下降するのは無理だとすぐ気づき、ビバークを決定。
20:10
何とか壁の基部まで戻った。
一番平らな場所はアリに占拠されていたが、今度は色々工夫して、一昨日よりは快適に寝た。
予期せぬビバークとなったが、水と食料が少しだけ残っていたのもあり、余裕はあった。
結果論だけど、最初から取付でもう1泊する予定にしておけば、2日目はもう少しフリークライミングを楽しめたかなぁ。

9/26(土)
気が付いたらもう4日目だ。
前日の反省も踏まえ、しっかり明るくなってから行動開始。

7:30 下山開始
水は残り300ml、食料は尽きた。
明るくても何箇所か道に悩んだ。
途中下り専用ルート(長いFix懸垂下降がある)も使ったけど、大部分は登りでも使っているはずなんだが…

11:20
水も消費し尽くして、車に帰着。
漸く本当の意味でハーフドーム登攀が終わった。
すぐにカリービレッジへ駆け込み、スプライトをガブ飲み、Half Domeピザをかきこむ。
ほほが蕩けるとはこういうことか。
Tさん曰く、「今まで食ったものの中で最も旨かった」。
いや、GWも食べたでしょ、このピザ。

この日、河合は2l以上、Tさんは3l近くのサイダーを胃に流し込んだ。
今回、寒かったし、そこそこ水は潤沢にあったと思うのだが、やはり体は水不足だったようだ。
そして河合は突然の暴飲暴食で腹を下した。
さらに荷物の整理中、車のトランクにロープを挟んでしまい、ハーフドームを耐えきった60mロープがあっという間にど真ん中でお釈迦になり、30mロープへと変化した。
やっちまった。
夕方、キャンプ4ではGWにご一緒した、ミッドナイトライトニング狙いのIさんと再会、悲しい事件にビレッジストアの在庫不足も重なりトーテム難民となっていた信大Hさんにトーテムカム2つ融通したり、まったりと過ごした。
9/27(日)
朝、ミッドナイトにトライする前のIさんと立ち話していて、さて帰るかと思ったが、ふと気づいてしまった。
「昼食を店で食べる時間を削れば、ミッドナイト1時間くらいトライできるんじゃない?」
1日レストしていて、指先は痛いが、思いのほか体も軽い。
これはやるしかないということで、呆れ気味のTさんとともに、最後の悪あがき。
結局1時間どころか、つい1時間半も鬼撃ちトライしてしまった。
結局GWの時から到達点は伸びなかったが、ライトニングホールドへの飛び出しまでのムーブは体に染みついた。
次こそはきっちり落としたいところ。
当然、昼食はドリトスを車内で貪ることとなり、サンフランシスコへ急いで戻ったが、思いのほか道が空いていて、4時間ちょっとで着いた。
これなら後1時間はミッドナイトトライできたのだが、これもまた結果論。

9/28(日)
帰国。
帰宅は日付が変わる直前となった。
翌日の仕事が辛いのなんの。
そんなこんなで、クレカと60mロープ、ロストラムでヌンチャク1つを失ったけど、それすら忘れる充実した遠征となった。
いや、これ書いている時点で忘れてはいないか。
今回、久々にビッグウォールに復帰して感じたのは、
「ビッグウォールの充実感は何物にも代えがたい」ということだ。
全身を迸る充実感、敢えて誤解を恐れず表現するなら「命を燃やした」感じだ。
一流のアルパインクライマーなら過酷な環境の中でも限界を攻められるのだろうが、私のような凡人にそれはできない。
けれど、ビッグウォールなら、それができる。
だからこそ、終わった後に、物凄い充実感をもたらしてくれているのかもしれない。
いつまでビッグウォールにトライできる体力とモチベーションを維持できるかわからないけれど、またトライしたいと強く思った。
【ハーフドーム北西壁レギュラールートまとめ】
新虹トポに記載されているピッチで整理すると
5.12c 1ピッチ
5.12a 2ピッチ
5.11c 1ピッチ
5.11b/c 1ピッチ
5.10c 1ピッチ
5.10b 1ピッチ
5.10a 1ピッチ
5.9+ 1ピッチ
5.9 7ピッチ
5.8 3ピッチ
5.7 2ピッチ
4th 1ピッチ
A1 1ピッチ
計23ピッチ。
今回、チームフリーのスタイルで臨んだが、フリーで行けなかったセクションはスラブの5.12cセクションの10m程度と、フリーはどうしようもないボルトラダー4箇所のみ、後はフリーで行くことができた。
私自身も、フリーで行けなかったピッチ(ユマール含む)は、A1の1ピッチを除いた22ピッチ中6ピッチ、残りの16ピッチは、テンション入ったりフォローだったりしたけど、フリーで登ることができた。
ロストラムでも感じたが、11台までは疲れていてもなんとかなり、たとえ落ちても2度目で登れそう。
しかし12台のピッチは時間がかかってしまい、完登もできなかった。
このレベルのピッチをいかに素早く確実に完登できるかが、このクラスのビッグウォールをフリーで完登する際には問われると感じた。
このルート、最近は何でもあり、同時登攀を活用しつつワンデイで抜けるパーティも多い。
今回、フリーを放棄すればワンプッシュでワンデイできたであろう感触はあったけれども、登攀スピードは当初想定していたよりも遅く、スピードアップする体力と技術が必要と感じた。
パートナーのTさんとの分業については、馬力とボルダー力のあるTさんに荷物の重い前半のユマールや後半のフェイスの核心を頼み、リーチがTさんよりあってトラッドの得意な河合がボルトラダーのエイドピッチや、グレード高めのクラックピッチを受け持ち、(Tさんがどう感じたかは聞いていないけど)概ねうまくワークしたように思う。チームフリーは、互いの長所を生かせる形で進められると有効と感じた。
【参考ギア】
カム4番~0.2番×2(0.4のみ3つ)
黒エイリアン×1
赤リンクカム×1
紫リンクカム×1
ナッツ♯3~9×1(使わず)
カムフック幅広×1(使わず)
スカイフック×1
チョンボフック×1(30cm程度、フィフィと針金で自作)
クイックドロー×7
60cmアルパインドロー×7
シングルロープ60m×1
ハーフロープ60m×1
あぶみ×4
ユマール×4
マイクロトラクション×2
3mm捨て縄×3
ナッツキー×1
その他カラビナ、スリング類等
【ルートの注意点】
・終了点はノーズと比べて貧弱、カムによる補強が必須な場合が多いので、それを見越してカムをセットしていく必要がある。
・標高が高く、日は夕方以外はほとんど当たらず、今年の9月はかなり気温低いことを差っ引いてもかなり寒いので、防寒対策が必要。
・ボルトエイドは外人サイズで部分的にかなり遠いので、小柄な人はチョンボ棒等がないと物理的に次のボルトに届かない。
・壁は幸い貸し切りだったが、特に週末は混む可能性があり、Go upに向けて戦略はよく検討した方がいい。
・ルートは明瞭だが、前半の側壁部分は強い人にはどこでも登れてしまうし、浮石があったりしてジャルパインテイストなので、よくトポと見比べること。
・アプローチは、特に下りが分かり辛い。経験者と行くのでなければ、暗くなってからの行動はお勧めできない。
・秋は取付の水が湧いておらず、担ぎ上げる必要があるので荷物が重くなる。ケーブルが設置された後の6月頃が、日も長いし、一番快適かもしれない。
・トラバースが多くて岩も脆く、人気ルートで渋滞の元にもなるので、やはりホールバックで荷上げするルートではないと思う。
・初日の行程が長くなるので登攀スピードはそれなりのものが要求され、軽量速攻のトレーニングが必要。
・アプローチの危険度や岩の脆さ、軽量速攻が求められるなど、エルキャピタンよりは大分アルパイン要素が強いと思った方が良い。
・グレード感は、ハーフドームに限ったことではないけれども、10台までは少し辛めに感じる。特に5.9や5.8がうっかりすると牙を剥いてくることもあるので油断なきよう。
素晴らしいルートでしたので、是非登ってみてください!
何か質問あれば、岩場か、HPのお問合せフォームから遠慮なく聞いてください。





















































































































































































































