足尾ウメコバ沢中央岩稜「チコちゃんルート」

2020年2月2日
薄田(記)、野澤

リベンジ(に成ってない)に行って来ました。
昨年、川上君と行って途中敗退しているのでリベンジ&トレーニングで行ってきました。
埼玉を前夜発して某所を4:00に出発。銅親水公園よりスタート。1.5時間で出合着。途中昨年の台風の影響か道が寸断されており少し迷う。
又、何人かの出発前のグループとテント場で情報交換。(後でルート上にて、4P終了点で会話してG登攀クラブさんと判明。お名前を伺ったが忘れてしまい失礼。)
雪が無いのは想像していたがアプローチはカラカラ、ロングスパッツまで付けていたので出合に着く頃には大汗をかいていた。
取り付き迄約40分。取り付きにも雪は皆無アイゼン装着を迷ったがトレーニングの意味も含めて装着した。
7:00野澤リードでスタート。
1P(Ⅳ、35m)スラブ右手のコーナークラックからのスタート。昨年は雪がフットフォールドを隠していたノで怖かったが今回は足置きが遙かに楽で助かった。
コーナークラックに手ジャムとスラブにアイゼンをきしませ立ち木を回り込み大きめなピナクル状を左から回り込み右上。程なく稜上の終了点到着。
ここは岩にカムでセルフビレー。2P(Ⅲ)薄田、多少雪の着いた岩稜を30m。

2P目終了点より

3P(Ⅳ、35m)野澤。昨年の肝心なクラック4m程度(キャメロット4番残置)は回り込んで回避。4P(Ⅲ)薄田、昨年の4P目より更に上に上がり終了。ここのビレーポイントはハーケン2本の残置有り。

5P(Ⅴ、30m)野澤、本日の核心ピッチ。見てのとおり雪が皆無なのでアイゼン外せば楽勝だがトレーニングなので外さない。
10m位登ると垂壁(3m程度)となり残置ハーケンが2本見える。
野澤君最初のハーケンにヌンチャクかけカムで補強後テムレスグローブ着けっぱなしでフリーにて果敢に突破。[気合いの]声が響いた。
フォロー、薄田はおんぼろアックス2本でドライ登り。残置ハーケンA0含め3手程度でクリア。

5P目核心

後は終了点までスタカットで3P程度。写真の枯れた大木を登り切ったところが終了点となる。

最終ピッチ

最後、野澤君がピッチ切った後、稜上を薄田1P延ばすが完全に行き過ぎ。誰かの敗退φ7mmシュリンゲがピナクルに掛かっていた。
下降は終了点から1Pフィックス頼りにクライムダウン。

フィックス支点

その後フィックスダブルロープ30mの懸垂でガレ場を歩いて本流まで。この段階で15:00位。
雪の有無がルートを変えてしまう。今回はリベンジに成りませんでした(気温が高く素手でも行けた位)。
次回は違うルートを雪のある時に挑戦したいものです。

海金剛スーパーレイン

2020年1月4日(土)
薄田、山崎(記)

今回の主な登攀装備:
50mダブルロープ×2、ドラゴンカム№00~5×2セット(=キャメ#01~4)(5も持って行ったが無くてもよかった)、ナッツ(使わなかった)。Aヌンチャク8本。スリング180cm、確保器 他

1月4日(土)
晴れ、弱風
雲見オートキャンプ場駐車場発 7時45分頃。
岩場までのアプローチは、車で登って来た坂道を少し戻った電柱のある個所(写真1)を入っていきます。一段上がると平坦地に出るので、さらに向かって左側を一段登り、奥へと続く踏み跡に従って進んでいきます。所々赤や青のテープがあり、踏み跡も明瞭。途中笹やらガレ場などがあり歩き難いところもあります。木の表面にトゲトゲのついた謎の南国の樹木?を、知らずにガバっと握ってとても痛い思いをしました。要注意です。

(写真1)岩場へのアプローチ取りつき付近

踏み跡は少しずつ海の方に高度を落としていき、40分くらい歩くと断崖の上に出ます。そこには懸垂支点とフィックスロープがあり、それを使っても降りられますが、脆い崖のためロープを出して懸垂で降りました。海辺なので支点は要チェックです。

懸垂した崖

懸垂で海辺に降りたら、左を見るとスーパートリトンなどがある左岸壁、正面には尾根状(中央稜)が見え、それに上がり、壁に向かって右の方へと続く踏み跡に従い歩いていくとスーパーレインの取り付きに到着する。スリングが巻き付けてある木が目印となる。ここまでゆっくり歩いて大体1時間くらいか。取り付きには、1パーティーおり、今にもスタートするところでした。取り付きで、しばし休憩。

尾根状に上がったところ。海金剛全景。スーパーレイン取り付きは右奥の方
スーパーレイン取り付き

3P目 薄田 10a 30mくらいか
ここからがスーパーレインの核心部。10aピッチが続く。ここで先行パーティーに先を譲っていただくことに。ありがとうございました。さて、出だしは5.7のフィンガークラックから。ジャミングの効きは悪くない。登って行くと左に小木が現れ、その上あたりからこんどは右上していく狭いクラック沿いに小さいカムをきめ、バランスに注意しながら進み、最後に直上するクラックをのぼれば、ハンガーボルト2個の終了点へ。このあたりから視界が開け、大変気持ちがいい。前を見ればこれから登る正面壁、後ろを見れば駿河湾がドーンと眼下に。

3P目取り付き

4P目 山崎 10a 30mくらいか
スーパーレインルートの核心ピッチ。出だしはゆるやかなフェース。そのうち右上していくクラック沿いに進む。最初は足もあり、クラックに緑だか紫だかのカムをきめ、ジャミングをおくりながら進むが、そのうち右側フェース面のフットホールドがなくなるので、右足スメアー気味に、左足はクラックに足を突っ込みながら、手を送り丁寧に高度を上げれば、そのうちいいホールドが出てくる。次に直上する5.8OWで、下はハンドがよく効くが、上に行くにつれだんだんクラック幅が広くなる。最後に青をセットしたら、あとはレイバック気味に一気に突破し、ハンガーボルト2個の終了点へ。左を見ると遠くに富士山、手前に下降用のハンガーボルト2個に残置ビナが見える。

4P目
4P目終了点から

5P目 薄田 10a 40mくらいか
「先人クラック」と言われているところ。最初は階段状のフェースをクラック沿いにハング下まで進み、ハング部でしっかりカムをセットしたらハングを乗り越す。ここはジャミングがよく効き、ハングの上にもホールドがあり、被っているとはいえ足も棚状にあるので、それほど困難ではない。体が硬いとハングを乗り越すときの足上げがきついかな。ほどなくしてハンガーボルト2個の終了点に到着。そこは大岩がガレガレしている広いテラス。ここで少し休憩。遠くに富士山も見え、最高に眺めがよく気持ちがいい。

5P目、先人クラック
大テラスにて

6P目 山崎 5.8 40mくらいか
トポでは5.8になっているが、それ以上に感じたピッチ。出だしからよろしくなく、赤だったかカムをセットして体を上げるが、右側に手足がなく、右の上の方のちょっとしたホールドを手掛かりに足を上げる。一段上がると頭をハングに押さえつけられる。ハング下にカムをセットして、ハングを左から出ていくようにバランスに気を付けながら上がっていく。ちなみにハング右側に出ていくルートもある。ハング部を左回りで突破し、フェースを上がると、ボルト2個の終了点があったが、ロープがまだ半分あったので、次のピッチ直前までロープを伸ばし、ピナクルに長いスリングを巻き付けてビレイ点とした。
7P目 薄田 5.8 20mくらいか
最終ピッチの出だしは、短い幅広のクラックから。左面は手足なし。右手ハンド、右足足ジャムで、青、黄で固めて右、左、右の3手で上のガバホールドを取れば終わり。体を引き上げるのにパワーが必要。あとはフェースを登るだけだが、そんなに簡単ではない。途中に錆びたハーケンが1つあった。海辺の金属物なのでサビサビで信頼性は疑問。ほどなくして到着した終了点は、スリングの巻き付いたハンガーボルト2個。到着時間は大体13時頃だったろうか。2人ともノーテンで無事終了した。眺めは最高。

最終ピッチの出だし

終了点からの眺めはとても素晴らしくポカポカ暖かいので、お茶でも飲みながらいつまでも居たいところだが、風が出てきたのでサッサと同ルート下降の懸垂に移る。
懸垂は全部で5回でした。岩や枝への結び目引っ掛かりに注意しながら慎重に降りる。50mロープなら4回でも降りられそうだが、風が出てきたので、引っ掛かりを警戒して5回で降りた。
取り付きには、大体13時40分頃。片付けをして14時には取り付きを後にした。行きに懸垂した断崖は、フィックスロープを頼りに慎重に登り返す。無事駐車場に着き、キャンプ場の管理人さんに下山報告して今年最初のクライミングを終了しました。

剱岳 小窓尾根

2019年12月28日~2020年1月2日
赤井、野澤、中和(記)

年末年始は休みを全部ぶつける山行をやりたい。一人なら日高か会越での縦走と考えていたが、赤井さん達が剣岳の小窓尾根を狙っていると聞き、ご一緒させていただくことにした。

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山行概要:
2019/12/28~2020/01/02(5泊6日)
剣岳・小窓尾根/早月尾根

行動記録:
※時間は記録していなかったのでザックリ。

12/27(金)
前日夜行。練馬IC近くの駅に集合。伊折集落に着いたのは午前3時過ぎ。車中で各々仮眠。

12/28(土) 快晴 伊折(07:30)-馬場島(09:00-09:30)-池ノ谷出合(11:00)-H1500(16:00)
伊折集落からの道に雪は殆どなく舗装路を歩くだけ。馬場島でヤマタンを受け取った際、県警の方が「15年間で最も雪が少ない」と仰っていたのが印象的だった。
小窓尾根の取付までは、高巻き無しで沢筋をラッセルで進む。渡渉は4回くらいで、全てワカンでの飛び石。沢に落ちても危険は無いが、靴の中を濡らすと敗退になるので、お気楽ではない。
池ノ谷出合にて、2012年の遭難事故の犠牲者に黙祷した後、取り付きポイントを探る。赤井さん達は、過去(GW)にはルンゼから取り付いたとのことだが、よくわからない。結局、本流を少し進んだ小尾根から強引に取り付いた。標高1500m辺りの小コルにてテント泊。

尾根取付

12/29(日) 快晴 H1500(05:30)-ドーム(16:00)
天気予報は明日以降の悪天を告げているが、今日は冬剣とは思えない快晴。テン場から少し登ると、本峰や三ノ窓も近くに見え、頑張れば日没までに三ノ窓に行けとさえ思えた。この時は。
実際には、サラサラ雪、重い荷物での苦しいラッセル。全然進まない。固有名詞の付いた岩は同定できなかったが、ニードルと思われる岩峰は、右側から登って左側に回り込むと容易に通過できた。ドーム(標高2400m)への最後の登りは、池ノ谷側に切れた急雪壁となっているので、念の為ロープを出してもらった。ドーム頂上で時間切れとなりテント泊。
この日、暑がりの私は900mlあったテルモスでも足りず、テント場の整地などで肉労をしていたら脱水症状になってしまった。本気で救助要請するか2人に心配されたが、1リットル以上がぶ飲みして、一晩寝たら回復した。

ドームへの登り

12/30(月) 雪のち吹雪 ドーム(06:30)-主稜線(12:00)-小窓ノ頭コル(15:00)
ドームからは先もラッセルがきついので、面倒だがワカンを脱着しながらの進行。ペースは上がらない。マッチ箱手前で3mほどの露岩に行き詰りロープを出す。野澤さんが率先してリードするが、見かけより難しいようだ。隠れたホールドを丁寧に掘り出してから、小さく吠えて難なく突破。さすがである。後は北方稜線に合流するまで、問題となる場所はなかった。
無雪期ならば、三ノ窓まで2時間足らずだが、吹雪とラッセルのため、小窓ノ王は果てしなく遠い。小窓ノ頭のあたりで1回懸垂したが、ロープが引けなくなり、流れを変えたり試行錯誤した結果、1時間近くロス。おまけに下から見るとクライムダウンできる傾斜だった・・・視界が悪いとトラブルが絶えない。
この懸垂地点を過ぎると、富山側からの吹き上げが激しい。叩きつけてくる雪に耐えている時間の方が長くなったので、赤井さんの判断で行動中止。コルの吹き溜まりでテント泊。

露岩

12/31(火) 吹雪 小窓ノ頭コル(06:30)-三ノ窓(11:30)-長次郎ノ頭あたり(15:00)
朝から吹雪いている。停滞したい天気だが、まとまった降雪があると池ノ谷ガリーの通過は絶望的となる。行くしか無い。
小窓ノ王は、すぐ近くのはずだが全く視認できない。まだか、まだか、と思いながら交代でラッセルしていくと、ぼんやりと黒々とした壁が見えた。小窓ノ王だ。右側をトラバースして三の窓に辿り着くが、ここも強風で視界も悪い。池ノ谷ガリーに突っ込む事に不安を感じるが、降雪量が少ない今を逃す訳にはいかない。
チンネの基部で一休みし、覚悟を決めて突っ込む。雪崩の恐怖から、ガリーの端っこを交代で全力ラッセル。普段は息が軽く弾む程度でラッセルするのだが、こんな場所はとっとと脱出したい。息切れもお構いなしで突破した。
この先はトラバースでワンポイントだけロープを出したが、それ以外は普通の岩雪稜。頑張れば本峰まで行ける時間だったが、あえて山頂に泊まる理由はないので、適当な吹き溜まりにテントを張った。ラジオからは、明日からの冬型に加え、早月尾根で別パーティ滑落のニュースを告げている・・・。気の抜けない下山になりそうだ。

1/1(水) 明け方晴れのち吹雪 長次郎ノ頭あたり(08:30)-剣岳本峰(10:30)-早月小屋(17:00)
4時起きの予定であったが、揃って寝過ごす痛恨のミス。テントを出た際には、低気圧通過後の疑似好天だったが、すぐに冬型による悪天候となった。
長治郎の頭から1回懸垂してコルに降りると、本峰への最後の登りだ。視界が無いので、終わりが見えないラッセルにメンタルを削られるが、唐突に黒いものが見えた。それが山頂にある祠の屋根だった。
下山路の早月尾根は、正月だし他パーティのトレースでの高速下山を期待していた。が、トレースは殆ど消えていた。視界が非常に悪いので、頻繁にコンパスを見ては、吹雪のわずかな間隙を狙って、じわじわ標高を下げる。何度もルートミスと補正を繰り返したが、日没直前に早月小屋のテント場に到着することができた。小屋に詰めていた県警の方も心配していたようで、色々と良くしていただいた。

剣本峰 (祠はほぼ埋没)

1/2(木) 雪 早月小屋(09:30)-馬場島(13:00-14:00)-伊折(15:30)
下山するだけなので、9時過ぎに出発。標高2000mくらいまでトレースがほぼ消えていたが、下に行くほど明瞭なトレースが残っていた。14時前には全員が馬場島に下山し、県警に下山報告となった。

馬場島で赤井さんを待っていると、(たぶん)早月小屋の主人と思われる方がやってきた。「冬の剣は担げない人間には登れない」といった趣旨の事を言っておられたが、その通りだと思った。小窓尾根は冬の剣ではアプローチが良い方ではあるが、それでも重荷に耐えての行動が続く重厚なルートだった。今年は雪が少ないのもあるが、ほぼ予定通りに抜けられたのは、この山域での経験が豊富な赤井さん、クライミング能力もさることながら、ラッセルなど共同作業も率先してくれる野澤さんという、強力メンバーあってのことだったに違いない。

反省点:
細かい反省点は沢山あるが、大きな問題点としては以下2点。

・ライターの不良
3人ともライターを持参していたが、いずれも着火が極端に悪かった。私は北海道で愛用していた防水ライターを持参したのだが、湿度の関係なのか殆ど使えず閉口させられた。1個くらいは防水マッチがあった方が良かったと思う。

・ロープの凍結
自分のロープを枕にしていたのだが、染み込んだ雪が凍結して冷凍パスタみたいになってしまった。2年以上使っているダブルロープを持参したので、コーティングが終わっていたようだ。新品寄りのロープを使うか、(ドカ落ちしない前提で)フローティングロープを使うのが良さそうだ。

ビッグウォール講習@阿寺の岩場

2019年12月1日(日)
講師:河合
参加者:赤井、薄田、野澤、山崎、中和、若杉、小池(記)

講師は、昨年ノーズ完登を果たした河合さんにビックウォール登攀の技術を伝授していただいた。
岩場に8時30分頃集合。まだ他グループは誰も来ていなかった。中央部分にフィックスを複数張り、暗くなるまで練習。17時すぎに現地でヘッデン解散となった。

講習内容
1、ユマーリング
・ビッグウォール登攀に向いたあぶみ
・中間支点の通過等
2、セルフロアーダウン
・捨て縄を使用した支点の通過
3、フォローのトラバースユマール(リエイディング)
・支点回収しながらのトラバース
4、振り子トラバース実演
5、荷上げ
・ボディホーリング
・スペースホーリング

技術各種を河合さんの軽やかな体捌きで見せて頂き、なるほどな、と腑に落ちる。
実際にやってみる。しかし、見るのとやるのでは大違いである。
使用するロープも手順も多いので、考えつつ、順番にじっくり確認しながら、重い体をのっそりと動かしてみて、どうにか納得するまでがやっとだった。

これでは、練習をうんと繰り返さなくては、到底身につかないだろう。大きな壁のなかで何日もぶら下がりながら数多くの複雑な手順を繰り返しこなさなくてはならないなら 安全確保はとくに入念に。数mおきにつくるバックアップノット、トラバース時、ユマール脱落防止に上部や下部の穴とロープにクリップするカラビナ、そんなひとつひとつが重要で、体に動作を染み込ませておく必要があると感じた。

ビッグウォール経験者からアメリカンエイドの技術を岩場で教えて頂ける貴重な機会に恵まれ、河合さんの解説はそのうえたいへん的確で分かりやすかった さらに、貴重な資料一式(装備リストや技術メモ、備忘録まで!)共有していただいた。勉強になりました。
ただならぬ貫禄のホールバッグを、電車で人目を浴びながらかついで来ていただき、何度も荷上げ実演解説していただきました。本当にお疲れ様でした。ありがとうございます。

阿寺の岩場
10月の台風19号の影響で、岩場下部の広場半分近くが崩落しており水も出ていた。ここは地元の大野文雄さんが開拓、管理している岩場で、台風後の整備も大変だったことと思う。講習の件は事前に河合さんが大野さんに連絡してくれていた。岩を登るのに支障はないものの、当日はさほどには混まないだろうと考えていたが、大所帯の団体が次々に来て、予想外の大混雑に。崩落によりビレイポイントも狭くなっていた事もあり、いちはやくFIXを張って練習していた我々も、もっと気を利かせて譲り合うべきだったと反省しました。すみません。

ユマーリング時の中間支点通過
初ユマールの人も
セルフロアーダウン(捨て縄からロープを引き出したところ)
セルフロアーダウン(次の支点の真下に来たところ)
リエイディング(真横で練習できる良い場所なかったので斜上)
荷上げ
ボディホーリング(スリングを咥えると楽)
ホールバッグ(向畑会長からの借り物で、ノーズでも活躍し過ぎてボロボロ…)

明星山 マニフェストルート

2019年11月2日~3日
薄田、山崎(記)

11月1日(金)
21時50分、某集合場所を出発。

11月2日(土)
ヒスイ峡奥の駐車場に2日の午前2時00分頃到着。来る途中、路面が濡れており嫌な予感が。

到着が遅かったので、のんびり8時頃に起床すると、天気は快晴。壁の様子を見に行くと、濡れておらず、すでに左岩稜ルート、フリースピリッツ付近、マニュフェスト付近にそれぞれ数パーティが取り付いている。特に左岩稜は大変な賑わい。
時間も遅いので、初日に予定していた西壁の竜ルートは取りやめ、明日予定しているマニュフェストの下部城壁付近まで様子を見に行くことにする。
先行パーティはすでに2パーティいる模様で、落石が弾丸のようにビュンビュン飛んでくる。渡河前の早い段階からヘルメット被ったほうが良い。その渡河だが、水量は少なく、心配された台風19号の影響もなく石伝いに余裕で渡れた。

1P目 40m 10a リード山崎 スタート午前10時頃。
取りつきは狭くて傾斜がある。出だしにリングボルトが2つ。そこから左上部に見えるハングを目指して優しい草付き斜面を左上していくが、所々脆いし、時々上から落石があるので、ホールドをよく確かめながら上に注意して進む。残置が全く無いので、草付にスリングでランナーを取っていく。カムは効かせられるところはほとんどない。難しくはないが落ちられない。クラックが走る被ったハングに突き当たったところにハーケンが一つ。クラックにカムでランナーを取りながら乗り越す。ここのあたりに10aがついているのか。一足一手を決めて思いっきり体を上げていく。その後、ハング下のスラブを右上していく。スラブは乾いていたため突破出来たが、濡れていると困難だろう。まっすぐハングを登っていくのが「クィーンズウェイ」のようだ。
20mほどトラバースしていくとハンガーボルトが2つの終了点。トポ通りに1P分、くの字にロープを伸ばしたが、流れはそれほど悪くなかった。

取り付きから上方をみたところ

2P目 40m 10b リード薄田
マニュフェスト最初の核心部。出だしから被ったハング越え。ルートが途中までJADEと共通なので、ハンガーボルトが打ってあり安心だが、それにつられて行くとJADEライン(11a)に入って行ってしまう。マニュフェストは3つ目のハングを越えず、左に大きく巻いていくらしいが、薄田さんはそのままJADEライン(11a)に突入。3つ目のハング越えのところで少し躊躇した後、意を決して見事に突破。その上のスラブもすらすら直上。さすがお見事。さらに
10mくらいフェースを登ったところにあった2つのハンガーボルトでビレイとした。
なお、トポ本などではここは10bとなっているが、夜、明星山に来ていた滝口氏に薄田さんがお話を聞くと、ここ10dはあるとのこと。
フォローで登ってみると、最初の2つのハングは、大きくはないがある程度かかりの良いホールドと足があったが、3つ目のハングを越えるところは、ホールドは甘く小さくて悪く、足も良いのがない。フォローなので何とかノーテンで越えるも、そのあとのスラブもあまりよろしくない。リードだと緊張する(楽しめる)ことだろう。

2P目ビレイ点から下を見る

3P目 40m 5.7 リード山崎
真上にJADEラインのハンガーボルトがあるが、それには乗らず、左にトラバース後、左上方の凹角を目指していく。出だしのトラバースはゼロピンのみなので怖い。10mくらいトラバースしたところにカムを決め一安心して左上。少し被ったフェースを乗り越し、凹角内に入っていく。凹角内は立っているが、クラックが走っておりカムを決められるので安心。そのまま上昇していき、ハンガーボルト2つの終了点(JADEラインの3P目終了点?)でビレイした。
ちなみに翌日分かったのだが、この時はすぐ隣のクイーンズウェイの5P目に入り込んでいたようだ。マニュフェストのラインは凹角に入らず、すぐ右のやや前傾したところを登るようだ。
ついついクラックの方に行ってしまった。

3P目ビレイ点から下。マニュフェストは、右に見える凹角に入らず、中央の草のあるところの辺りを登って行く。

4P目 45m 4級 リード薄田
傾斜がなく優しいが、浮き石・浮き砂の乗った残置物一切なしの斜面を慎重に登って行く。優しい4級斜面だが、この日もそうだったが、フリースピリッツやクィーンズウェイを登る先行パーティがいると結構落石が飛んでくるので、草付きなどにスリングでランナーをとっていったほうが良い。カムを決められるところはない。30mくらい登っていくと、フリースピリッツラインと合流する辺り(トポ本で切っているところ)から、さらにハング下のスラブをコーナー沿いにカムでランナー取りながら登って行く。途中ボルトなどもあった。やがて前を壁に阻まれたところにハンガーボルトが2つ(JADEラインの4P目終了点か)あり、そこでビレイ。ロープの流れはそんなに悪くなかった。

4P目

ここで時間も14時を回ってきたので様子見はおしまいとし、同ルートを下降することとする。見ると、先行パーティが、本来のマニュフェストライン(10a)で上部城塞の突破を試みていたが、脆くて悪いのかこちらに戻ってきていた。
懸垂は取りつきまで4回。懸垂支点は、これまで使ってきたビレイ点を使用して降りた。

11月3日(日)2019
6時テント出発。7時取り付き。
天気…晴れ
前日、様子見で登ったが、壁がとても脆く、先行パーティがいると落石が頻繁に飛んでくるので、一番に取り付けるよう早く行くことにする。先行パーティが1パーティ居たが、1ピッチ目の途中までルートが被るクィーンズウェイのパーティだった。前のパーティのフォロー離陸を待ってこちらもスタート。午前7時40分頃。

1P目 リード薄田。
前日とは順序変わって今度は薄田さんのリードからスタートする。ピッチの様子やムーブは、前日の様子見で分かっていたが、1ピッチ目のルートが同じクィーンズウェイを行く先行パーティがハング乗り越しで苦戦していたため少し時間がかかった。2人ともクライミング自体は、特に問題なく終了。

2P目 リード山崎
問題の下部核心の3つのハング越え。前日の薄田さんと同じく、ハンガーボルトにつられ直上ラインに突入する。1つ目2つ目のハング越えは無難にこなすが、やはり3つ目のハング越えが難しい。前日のフォローの時はノーテンで越えられたが、リードとなると様子が違う。色々粘った挙句、テンションは掛けなかったが、恥ずかしながらハンガーボルトにセルフ取ってムーブやホールドを探るというフリーの岩場みたいなことやってしまいますが、この先まだまだ長いし、後続パーティもおり時間かけるのもヒンシュクなので、しかたなく本来のラインである3つ目のハングを越えず、ハング下を左トラバースして迂回することにする。が、これがまたあまり良くない。トラバースした先にプアなハーケン1つだけ。ハング上に上がるとリングボルトが打たれたスラブが上に続いている。右にはJADEライン11aのハンガーボルトが見える。JADEラインの方に徐々に合流してフェース直上し、昨日のビレイ点へなんとか到着。昨日は、リードでJADEライン11aをあっさりОSした薄田さんは、フォローだと気合が入らないみたいだ。

3P目 5.7 リード薄田
昨日、クラックがあったため、ついつい入り込んでしまったクィーンズウェイラインの凹角には入らず、そのすぐ右の草付き薄被りフェースを左上していく。カムと少々のハーケン残置物でランナー取っていく。岩が脆いのでカムの効きも心配。凹角内の方が面白かったな。ひとまずこれで下部城塞を無事に通過。

4P目 4級 リード山崎
前日と同じく。特に問題ない斜面だが、浮き石・浮き砂の乗った斜面なので慎重に行く。左上方面のハング帯あたりのフリースピリッツルートに先行パーティがいるのか、昨日ほどではないが時々落石が飛んでくる。昨日と同じビレイ点でビレイしたが、フリースピリッツ、中央バンド方面からの落石が、時折弾丸のように飛んできて怖い。先行パーティがいる状況で、ビレイするならハング下をトラバースして登って行かずに、トポ通りにハング下の終了点(フリースピリッツ6P目終了点?と共用)でビレイした方が良いのかもしれない。

4P目終了点

5P目 20mくらい 10c? リード薄田
さて、ここから未知の区間に入る。現在、上部城塞の基部。マニュフェストは右トラバースしてやや被ったクラックを直上して行くようだが、トポなどでは崩壊中危険と書いてある。見ても脆そうで、昨日も先行パーティが戻ってきていたし、ヤバそうだということで迂回路を探す。トポを見るとクワトロの3級ラインとJADEの10cラインだが、3級ラインでは物足りないし、脆そうで落石の通り道でもあるので、今や一般的となっているらしいJADEラインの10cに入る。上部城塞越えの中間部核心となる。すぐ上にペツルが見えるが、登りやすそうなところから登っていくとクリップが遠くなった。その上にも悪いところが1手あったが、2P目ほどではなく、特に問題なく上部城塞を突破。上部城塞上のテラスに出て、少し右に行くとハンガーボルトが2つ(JADEラインの5P目終了点か)。
時間はよく覚えていないが、確か12時前後だったような。残り4ピッチ。ここで少し休憩を取る。

4P目終了点から上部城塞(前日の写真)

6P目 15m、3級くらい リード山崎
ピナクルまでの20mくらいの簡単なピッチ。ピナクルてっぺんにロープが巻いてあり、残置ビナが一つ。上の方を見ると、鷹ノ巣ハングがぽっかり口を開けている。下を見ると、小滝川、ヒスイ峡の展望台ははるか下。マニュフェストの後発パーティの姿は見えなかった。隣のクィーンズウェイの先行パーティは9P目を登り始めている。

7P目 ほぼ50m 5級 リード薄田
鷹ノ巣ハング下方の小ハング辺りまでルートファインディングしながら登っていくが、脆い部分もあり、カムやハーケンなどの残置物でランナーを取りながら薄田さん慎重にロープを伸ばす。JADEラインと合流するところのハンガーボルト2つでビレイ。特に問題なし。

7P目、ピナクルてっぺんから上をみたところ

8P目 30m 10b リード山崎
いよいよ鷹ノ巣ハングに入っていくこのルート3か所目の核心ピッチ。鷹ノ巣ハングは近くで見ると迫力がある。トポ通り小ハングを左から越えるべく左へ少しトラバース。ハーケンが1つ。それで小ハングを乗り越して鷹ノ巣ハングに入っていくフェースを、ハンガーボルト沿いに直上していく。右の方にはリングボルトが打ってある。おそらくこれが初登ラインか。ハンガーボルト沿いに上るが、ボルトの間隔が遠く、ホールドもカチホールドで、最後の最後のこんな高所で緊張するピッチが待っていたとは。足を地道に少しずつ上げて遠いカチホールドを経由し、体を上げていく。リーチがないと厳しいかな。ビレイ点前の立木を右から巻き、ハンガーボルト2つにスリングが巻きついた終了点でビレイ。鷹ノ巣ハング内は、広くてなんか落ち着く場所だった。雨も凌げ、ビバークもできそう。フォローの薄田さん問題なく終了点に到着。

9P目 25m 5.8 リード薄田
ハング内を出ていくのだが、最初出方が分からず悩む。屋根に走るクラックに1つ古いハーケンが見える。出だしに念のためのハーケンを打ち、クラックにジャムを効かせ、頭、背中を天井に押さえつけながらハングから出ていくのだが、高度感もあり、なんだか怖い。ハングを出ると右上するクラック沿いにカムを決めながら登っていくが、ここも意外とバランスが悪い。右のほうを見るとキャプチュードの何ピッチ目かの終了点なのだろうか古い支点が見えた。右上しきったところに古いハーケンの支点があり、薄田さんはロープの流れを考えここで一旦ピッチを切る。最終終了点はここから左の方にあるはずだが。

鷹ノ巣ハングから出ていくところ

10P目 10m 3級くらい リード山崎
さて、最終終了点を探しに鷹ノ巣ハングの真上辺りを目指して、残置物のない斜面をゆるやかに左上していくが、終了点がなかなか見つからない。カムで取りながらしばらくあたりをウロウロ探しても見つからない。残り時間を考えると、仕方なくこのままコンテで左岩稜方面に逃げようということになり、歩き出したら9P目終了点から15m?くらい左、そんなに上の方でないところにハンガーボルト2つを発見。9P目終了点から左にトラバースしていくと、岩陰となり分かりづらいところにあった。位置的には確かに鷹ノ巣ハングの真上。ここで全
10ピッチ終了。時間は14時頃だった。

下降は、最終終了点も見つかったし、後続1パーティも撤収したようなので、一番早いJADEラインのビレイ点を使いながらの同ルート下降としました。全部で8回。最初の鷹ノ巣ハング下の小ハングまでの下降(7P目終了点のところ)は、空中懸垂で高度感もありとても気持ちよく迫力ありましたが、ロープ引きがとても重く、スタックするんじゃないかと少し焦りました。ここは2番目に下降する人は、ロープをスタックするような位置にこさせないよう注意が必要です。
鷹ノ巣ハング下まで降りてくると、フリースピリッツ?の3人パーティが、先ほどのビレイ点でフォローを迎え入れているところでした。
その後の懸垂は順調で、取り付きに16時少し前に到着した。

今回、登ってみて、想像以上に脆い壁でしたが、これほど長くて取り付き至近なルートはないと思います。素晴らしいルートでした。今回は、常に落石を警戒して上ばかり見ていてあまり景色を楽しめず、写真も大して取れなかったので、今度は完全フリーでまた行ってみたいと思った。

装備
ロープ 50mダブル、Aヌンチャク×4、ヌンチャク×5、カラビナ・スリング×3、
カム ドラゴンカム№00(キャメ#0.3)~№05(キャメ#3)1セット、ハーケン
その他

大井川水系 関の沢本谷

2019年10月5日~7日
中和(単独、記)

年休カードを何枚か切って日高の沢に行く予定だったが、台風のためあっけなく中止となった。航空会社へお布施(キャンセル料)もしたので、財布も元気がない。仕切り直して遠隔地に行く気力も沸かないので、日程を短縮して大井川水系に転進することにした。

————–

概要:
2019/10/5~2019/10/7
大井川水系/関の沢本谷 (遡行)

コースタイム:
10/5(土) 閑蔵駅(07:43) – 関の沢出合(08:50) – 宇洞河内出合(11:07) – 田代沢出合(15:12)
10/6(日) 田代沢出合(06:28) – 三俣(10:06) – 大無間山(15:42)
10/7(月) 大無間山(06:05) – 小無間小屋(09:02) – 関の沢林道(12:23) – 閑蔵駅(14:03)

行動記録:

10/4(金)
前日夜行。仕事が長引いたので家を出たのが日付変わって1時過ぎ。途中のオクシズの駅で力尽きて仮眠。

10/5(土) 晴れ
関の沢へ出合から入渓する場合、大井川本流を遡行するか鉄道のレールの上を歩く事になる。分別ある社会人としては、どちらを選択するかは言うまでもないだろう。
とまぁ色々苦労して入渓したのだが、ゴルジュもあるものの通過容易で田代沢出合まで見せ場に乏しい。田代沢出合は快適砂地だったので、時間は早かったがここに沈殿。ツェルト無しでごろ寝。

ゴルジュもあるが簡単

10/6(日) 曇り夕方から雨
田代沢から先は渓相が渋くなる。登山大系によると「滝は全て直登できて楽しい」との事だが、楽しい直登には見えないものもある。水線突破でなければ簡単。

フレーム外の左壁は簡単

三俣まで大したものは無かったが、稜線に抜ける扇子薙沢は結構悪い。出合から始まるゴルジュは2つ目の滝が登れない系。巻きは右岸だろうが支点取れない草付斜面。雪国のように根性のある草ではないので、メンタルが耐えられずギブアップ。左岸から大高巻きして懸垂一回で戻る。
しばし安定したゴーロを挟んで再度ゴルジュ。登れる滝が連続するが出口の流木ハング滝で行き詰まる。くそ冷たいシャワーに加えて足が決まらず、またギブアップ。右岸のルンゼから巻いたが、上に行くほど岩が脆く見た目ほど簡単ではなかった。

流木ハング滝

ゴルジュを抜けると沢が明るく開ける。沢の奥の方は崩落壁とたルンゼになっており、登れない滝があると面倒な雰囲気だが、問題なく水線突破できる。稜線に出て5分ほどの大無間山頂でツェルト泊。

10/7(月) 曇り
小無間小屋のあたりから南に派生する尾根を使って下山。P1712まではアップダウンが面倒だがヤブは皆無。そこから先は杣人が入っているようで、赤札だらけの整備された歩きやすい尾根だった。

遡行図:
大無間は登路に恵まれた山だ。小根沢、栗代川、関の沢、明神谷のいずれも悪くない。関の沢は、遡行の楽しさという点では小根沢や栗代川に劣るかもしれない。流程が14km以上あるにも関わらず楽しい区間は意外と短いからだ。でも山頂にダイレクトに詰める唯一の沢として、大無間への価値ある登路だと思う。

遡行図

谷川岳一ノ倉沢 衝立岩雲稜第一ルート

2019年9月29日
柳川、川上(記)

ベースプラザ2:50発-一ノ倉沢出合3:30着-中央稜基部5:20着-アンザイレンテラス6:15着-ボサテラス11:30着-衝立の頭13:45着-中央稜基部15:30着-ベースプラザ17:45着

28日夜、雨。谷川岳に向かう国道291号を車でひた走る。ワイパーの音が一定のリズムを刻む。

谷川岳周辺の景色がいつにも増して陰鬱に感じられるのは、自分の気持ちを反映しているからだろうか。だが、適度な恐怖心はクライミングにもっとも必要な要素の一つであり、精神面のセルフコントロールはとてもよくできていると感じる。

衝立岩雲稜第一ルート。以前はよく登られていたそうだが、最近はピンがだいぶ古くなっていてロシアンルーレット状態だ、とか、そんな噂は、かねがね聞いていた。たしかにネットを見る限り、近年の記録はかなり少ないようだ。
だが、登攀史に残るクラシックである本ルートは是非登ってみたいと思っていたし、ピンがそんな状態なら、なおさら早く登った方がいい。柳川さんも同じ思いであったようで、心強いパートナーを得て、うれしかった。
今年6月頃から狙っていたものの、計画を立てると降水予報となり、転進が続く。本来であれば、日が長く、かつ、テールリッジまで雪渓がつながっていてアプローチ容易な5~6月初旬に取り付くのが最良のタクティクスなのだろうが…。日が短いと、何かトラブルがあってビバークになるのもイヤなので、今回の計画が今季最後のチャンスかなー、と話し合っていた。

この日の谷川岳は、前日夜までがっつり雨。今回もダメかと落胆するが、午前2時に起床し、とりあえず取り付きまで向かうこととした。雨は止んでいる。

テールリッジを登り、中央稜の基部に立つ。意外と岩は乾いていた。夜明けの時刻にくっきりと姿を現した衝立岩は、近くで見ると流石の迫力がある。柳川さんが「ホントに登れますかね」とぽつり。私は、自分が思っていたことを言われたようで、ドキッとした。詰まる所、ただただ、ピン抜けが怖いのだ。その気持ちはよくわかった。

中央稜基部から見る衝立岩

衝立スラブをフィックスに導かれてトラバースし、草付帯を少し上るとアンザイレンテラスだ。「順番どうします?」と聞くと、「どっちでも」との返事だったので、ありがたく私が奇数ピッチをやらせていただくこととした。

アンザイレンテラスにて

1p目(Ⅴ-)川上リード
左上気味に登り、最後は右に出る。ピンは新しいリングボルト主体でしっかりしており、問題なし。終了点はハンガータイプ。聞いた話では、映画(クライマーズ・ハイ?)の撮影で2ピッチ目くらいまではボルトが打ち替えられたらしく、その辺りまでは、確かにピンはしっかりしていた。

1ピッチ目をフォローする柳川さん

2p目(Ⅳ、A2)柳川リード
ビレイ点から左に出て直上。フリーで10数メートル登ってから右にトラバースし、人工で第一ハングを乗り越す。ハング部はやはりパワーを使い、疲れる。柳川さんは慎重にアプローチし、豪快にハングを越える。

第一ハングを越える

3p目(Ⅳ、A2)川上リード
人工やフリーを交えて、右上気味に登る。古いハーケンが主体なので、ピン抜けを警戒して積極的にカムも使用した。とはいえ、きめれるところは限られる。
第二ハングを横目に、側壁を乗り越すところが少し悪い。残置にアブミをかけるが、次のハーケンはかなり上。少し上にフィンガーサイズのクラックがあったので、カムをきめてみたら、電子レンジ大の岩がグラグラ動く。ダメだ。ほかに、ボールナッツがあれば効きそうなリスもあったが、肝心のボールナッツは、「多分使わないから大丈夫っす」とか適当なことを言ってフォローの柳川さんに預けたままで、激しく後悔した。仕方ないので、右足でアブミの最上段に乗り込んで背伸び。両手は岩を持って、左足は壁にスメア。微妙なバランスで次のアブミを掛ける。エイドに慣れてる人には普通のムーブなのかもしれないが、人工2回目の私には、きつかった。今さらながら、単なるアブミの掛け替えルートではないことを痛感する。
すぐ上のリングボルト乱打の場所でビレイ。
キャメは、0.1、0.3、0.5番を使用した。

第二ハングを越えたあたりにて

4p目(Ⅳ、A1)柳川リード
左上気味に岩を登る。柳川さんはどうか分からないが、私は「よっしゃー、Ⅳ級A1だー」となめてたら、フォローでも疲れた。支点がだんだん貧弱になってきて、精神的にもきついところだと思う。フリーのパートも岩に草が生えていてホールドが見えづらいところがあり、いやらしい。

4ピッチ目を見上げる

5p目(Ⅳ、A1)川上リード
このピッチはカムが比較的よくきまり、安心。上部で、傾斜の落ちたルンゼ状にフリーで乗り込む。マイクロカムを固め取って数手出す。乗り込んだらハーケンがあった。ほどなくして、ボサテラスに抜ける。
キャメ0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、2番あたりを使用。

ボサテラスにて

6p目(Ⅴ)柳川リード
ビレイ点から上を見る限り、草や木が生えていて、簡単そう。でも、「このピッチ、ちゃんとⅤ級で、嘘ついてないですよね」と柳川さんが念押ししてスタート。つまり、グレードに現れないいやらしさがあるという「谷川あるある」を警戒していたわけだが、やはりここもそうだった。草付きでフットホールドが見えないし、滑るし、地を這うようなクライミング、ってやつ。でも、柳川さん、サクサク。Ⅴ級はⅤ級なんですね。

7p目(A2)川上リード
洞窟ハングの乗り越し。
リングボルト×2、青ボールナッツ、キャメ0.1、ハーケン×4を人工でつなぎ、ハング越え。洞窟ハング周辺は、いつも湿っているからか、残置の腐食が特に激しい。とあるハーケンはもげかかっていて、使う気にならなかった。昨年登ったGクラブのKさんの時は使えたそうなので、この1年で腐食が進行した模様。

洞窟ハングの取り付きにて

8p目(Ⅲ)柳川リード
10メートル位の凹角を登り、あとは草付きを適当に。リングボルト2つで終了点。

9p目(Ⅲ)川上リード
草付き、ときどき岩。適当に登って衝立の頭へ。

衝立の頭にて

柳川さんとがっちり握手を交わす。とにかくノートラブルで抜けることができて、本当に良かった。クライミングを始める前から知っていた、名高い衝立岩を登ることが出来て、感無量だ。
ルート自体は巧みに弱点を縫っていて、素晴らしい。登ってみて、初登者のセンスと時代を超えた記録に、改めて尊敬の念を抱いた。そして、これがフリー化されているとは驚きだ。帰りのテールリッジから衝立岩を振り返り、伝説のクライマーたちに思いを馳せた。

まとめ

支点はおおむね赤黒く変色しているが、ピン抜けしそうだと感じる程のひどさはまだなかった。しかし、たとえどこかの支点が朽ちたとしても、最初からネイリング覚悟で行くならば登れそうだ。いずれにしても、ナチュラルプロテクションは必携だと思う。細かいリスが多いので、最小サイズのボールナッツや極小カムがとても有効だ。フィンガーサイズ以上のカムが極められる場所はかなり限られる印象。
KさんやS田さんの記録は大変参考にさせていただいた。感謝です。

追記
9月28日
瑞牆山十一面岩末端壁
帰ってきた田吾作

実は、この週末は谷川岳は雨でダメだと思っていて、前日の28日土曜は瑞牆マルチに転進していた。昼頃に柳川さんが予報を見て、「あれっ、日曜は谷川いけそうですよ」の一言で再転進が決まったというわけで。せっかくなので、土曜の分も簡単な記録を記したい。

植樹祭駐車場6:20発-十一面岩末端壁7:00着-帰ってきた田吾作登攀7:30~11:30-トラベルチャンス&ガールズで遊ぶ-末端壁取り付き15:30着-植樹祭駐車場16:00

当初は瑞牆も午後からひと降り来るかも、という予報だったので、短めのマルチに取りつくこととした。

帰ってきた田吾作(4p、5.11c)

1p目(10c)柳川リード、OSならず
取り付きは末端壁の調和の幻想の右5メートルくらい。パッとしないコーナーを登る。見た目は簡単そうだが、意外とムズい。レイバックになるので、パワーを使う。柳川さんはテンション交じりで抜ける。

2p目(11c)川上リード、OSならず
下部は、フィンガー~甘いハンドのコーナー。甘いハンドとブリッジングで耐えるところが悪く、プロテクションは核心越えねばとれなくて、テンション。ここが11cだと思う。15メートルほどで一旦テラスに出る。
上部はスラブ。トポには「ランナウトしつつ登る」なんて簡単に書いてあるけど、、、何とも苦労した。出だしにキャメ0.1と0.3を固め取りして、突っ込むのだが、なかなか踏ん切りがつかず、少し行っては戻りを繰り返す。
えいやとムーブを起こすと、もう戻れない。カムを足下4メートルにしたところで小さなポケットがあったので、ナッツをねじ込む。が、明らかに効いてなくて、足ガクブル。結局、ちゃんとしたプロテクションから7~9メートルのランナウトで抜ける。落ちたら相当ヤバイだろう。かなり時間をかけてしまった。
このスラブ、必死すぎたので、客観的なグレード感がわからないが、せいぜい10bくらいか?この程度でボルトは打たない、という精神性が感じられ、印象深かった。私はもっと精神の鍛錬が必要だ。

2ピッチ目を見上げる

3p目(10a)柳川リードOS
短いオフウィズスを登る。サクサク、問題なし。とてもしっかりした広いテラスに出る。

4p目(トラベルチャンス11b、PD)川上リード、2回でRP
このピッチは、トラベルチャンスを登る。小さいナッツとキャメ0.1をかためてムーブを起こすところがあり、少し緊張。ここがPDの由来か。2回やってレッドポイントした。内容はとてもよく、面白い。柳川さんもトップロープで、楽しんでいた。

トラベルチャンス

ついでに、すぐ隣のガールズ(5.9)も登ってから、同ルート下降。
2回目の懸垂で、木に直掛けしたら、ロープが引けなくなり、プルージックで登り返したため、時間をくった。反省。

越後三山中ノ岳 北ノ又川板倉沢(坂倉沢) – 敗退

2019年9月5日~7日
谷水(単独・記)

泳ぐ系の沢に行きたい。北ノ又川は50mの瀞からなるゴルジュがあり、きっと思う存分泳ぎを楽しめるだろう。板倉沢は中ノ岳にダイレクトに詰められる。越後三山のコンプリートを目指して出発した。
・・・が、記載する理由により途中敗退となった。

コースタイム
9月5日 抱橋(1035)―岩魚沢出合い(1230)―滝ハナ沢出合い(1330)―芝沢出合い(1400)―大ビラヤス沢出合い(1550)―ビバーク地点950m(1730)
9月6日 ビバーク地点(0630)―板倉沢出合い(0640)―涸沢出合い(0740)―幅狭ゴルジュ(0905)―トラバース始(1030)―トラバース終(1230-1330)―左岸尾根上(1700)―ビバーク地点1350m(1800)
9月7日 ビバーク地点(0520)―芝沢合流935m(1005-1035)―北ノ又川出合い(1115)―岩魚沢出合い(1210)―石抱橋(1420)

行動記録

9月5日 薄曇り
岩魚沢から先は泳ぎであるので、日が登り暑くなるのを待ってから監視小屋の登山道から林道を経て、を過ぎた適当なところから河原に入渓。柳沢、坪倉沢を過ぎていくと2hで50mの瀞がまずあるゴルジュ帯が始まる。ネオプレンと雨具、ハーネスを装着して準備する。左側から入りすぐに足がつかなくなる。右の方が流れが弱そうにみえたので、そちらに移動。手がかりは豊富なのでへつりながら左曲がりになるところまで進む。それなりに流れがありスイスイとは進まない。体を冷えるにつれて手に力が入らなくなるが、ここでスタートに戻るわけにはいなかない。最後は左側に移ると足が届いて無事突破できた。

50mの瀞入り口から

体は冷えたが気温が高く、風もないため震えるほどではない。その後は足のつかない釜をもつ滝があるが前半は直登できたり簡単に巻けたり楽しめる。3段10m(?)の滝は落ち口近くまでは左側を慎重にへつって行けるが、2段目3段目の白泡が激しく滝の突破は無理と思い、左岩上に行ける丁度いい場所から登って巻いた。

3段滝の上部

滝ハナ沢出合いから河原になり一度ゴルジュが途切れる。5分ほどで河原は終わり徐々にゴルジュとなっていく。始まりの瀞は穏やか流れだが側壁に手がかりがなく、突破できず、右側の岩伝いにいく。花崗岩にフリクションがよくきき気持ちがいい。芝沢までは瀞や小滝が連続するが、どれも直登できるもので困難なく進んでいける。登山大系では芝沢から板倉沢手前まで巻けるようだが、いけるところまでゴルジュを進もう、と思い芝沢を過ぎてからも本流どうしに進む。大ビラヤス沢が滝となって合流するところを突破できず、巻きに入る。
芝沢から大ビラヤス沢までの方が前半より流れが速く難しく感じた。巻いている間に大きい滝が2つほど見えたので、結局巻くことになったとは思う。時折踏み跡っぽいものがあったが当てにはできない。大高巻きにはならずに、常に下の様子が伺えるのでゴルジュが途切れた適当なところで懸垂して水流に戻った。降りたところから10分ほど歩いたところでビバーク。

9月6日 快晴
今日はいよいよ板倉沢である。雪渓の状況は、中ノ岳までたどり着けるのか、不安はあるが出発した。この後ミスをやらかすことになる。
10分ほどで板倉沢出合い。入って1h位は滝の後河原がありビバーク地に困らない。足のつかない釜があったりするが快適に進める。登山大系の4mCSはよく分からなかった。涸沢を見送ると、くの字5mの滝がかかる。1段目までは簡単だが落ち口がにてがかりが見つからず、少し戻って左側から巻いた。このあと雪渓があったが右側のすきまから進むことができ、幅狭ゴルジュに入っていけた。奥まで進んだが案の定直登不可能な滝が最奥にかかっており右側から巻くことにした。ロープを出して50m上でフィックスし、荷揚げした。

幅狭ゴルジュ

フィックスしたところに小沢があったので小休憩。滝をこえたら下れるだろうと思っていた。水分補給はしたが水は汲まずにトラバース開始。これが間違いだった。時間は11時を過ぎ快晴とあって直射日光を背中にうけながら進む。滝を過ぎても下降ポイントが見つからずひたすらトラバースしていく。そうこうするうちに板倉沢の上部が断続的に雪渓に覆われているのが見えてきた。

板倉沢に残る雪渓、上部も断続的に雪渓が続いていた

またトラバース2hが経過し、脱水のため両腕の痺れ・めまい・ふらつきと無視できない状態になっていた。遠くから見えていた谷地形が支沢ならそこで水補給をと思っていたが水が流れていないのが見えたので潅木でセルフを取る。結局板倉沢への下降に1h位はトラバースが必要であり、降りても雪渓により巻かなければいけないように見えたため、右側の尾根を乗越して隣の芝沢に下降することにした。問題は水がないことだがどうしようもない。300mの標高を登ることになる。時間は1330で一番暑い時間だが、ゆっくりとでも動かないとジリ貧である。体温が上がりすぎないように、痺れてきたら休憩、と亀のペースで尾根上1400mに上がったのはすでに1700になってからだった。しかし日没寸前で涼しくなってきたため、多少動きやすい。芝沢もゴルジュがあり、尾根を乗越して直線的に下降すると沢に降りられなくなるため尾根沿いに進む。1800で行動打ち切りなんとなく平らな場所でビバーク。鍋に一口水がたまっているのを口に含んで、あとは行動食を食べる。まだ唾液が出てくるので明日も動けるだろうと体を休めた。

9月7日 快晴
日の出とともに出発。腕が痺れることはなくなったがふらつきはある。トラバースしなければいけないが、どうしても下っていってしまう。20分ごとに休憩をはさみつつ進んでいくと、下からではなく横から水が流れる音がした気がした。希望をもって進むと水が湧いていた?これで生きていける!と安心し、命の水を飲みまくった。今度は水を汲むのも忘れずに再出発。これまでの疲労が嘘のように体が動く。嫌なトラバースは続いたが水がある、という安心感から焦りはなくなり10時に芝沢を近くに見た。懸垂1回で935mの河原に降りることができた。一昨日遡行したゴルジュを下るためネオプレンを着こみ下降開始。芝沢は板倉沢より花崗岩が目立ち白い印象。登攀より泳ぎ、滝はあるが簡単に巻ける感じであった。入り口だけの話であるが。尾根からは上部は雪渓がついているのが見えていた。流されながらの下降は早い。あっという間に岩魚沢についた。50mの瀞も下るなら流されるだけで楽しい。一昨日よりも日差しがあったため、沢がとても綺麗に見えた。
入渓点よりも早めに林道に入り石抱橋に到着。

※石抱橋を銀山平に向かう最初にかかる赤い橋の手前に駐車した。しかし下山した時にみた、石抱橋隣の監視小屋先右手の四角いスペースの方が適当かと。

水の大切さを痛感した山行となった。巻く時は尾根ビバークも考えて水を調達したい。また、尾根に上がる判断はもっと早くするべきだった。沢に残った雪渓が続いているのを確認した時、暑い中先のみえないトラバースをしている時とポイントはあった。今回は尾根下降中たまたま湧き水と出会えたため楽しい藪漕ぎ山行に終わったが、それがなければ沢下降できず動けなくなっていたかもしれない。繰り返さないよう再チャレンジしたい。

春うらら

2019年9月15日
河合(記)

うちの会は山行っても記録書いてくれない人が多いので、せめてマルチ行ったら記録書くことにしてます。今回も一応マルチなんで書きましたが、実質ショートピッチ的トライ・・・
(記録書くと反省できてそれなりに意味あると思うんで、みんな登ってばかりいないで、たまには書いた方がいいと思いますよ。文字にすると見えてくるものもあるし。>うちの会の人)

2ピッチ目5.12aの核心へ入る
 今更このルートの歴史を語る必要はないでしょう。瑞牆山に通うクラック好きとしては、是非登りたい。諸事情で今シーズン中に絶対登りたいということで、春うららかな日に1p目5.11b、秋に2p目5.12aをやろうと思った年度のはじめ。
4月20日
GWにヨセミテで一緒に登る予定だったI君、さらにTさんOさんと、ゲート開く前から末端壁。さっそくアップもせずにI君が1p目に取り付くも、出だしでフォール、チェンジングコーナーでもテンション。そして私もトライ。出だしのグーチョキパーで不意落ち。すぐ登り直すも、チェンジングコーナーでプロテクション取れず、怖くて後ちょっとで落ちてしまった。後のコーナーはノーテンで抜ける。2便目はチェンジングコーナーで無理やり0.75決めて右壁のガバポッケを掴んでほっと一息。後は慎重に登って2撃。

長くて美しいコーナーをランナウトさせて登る
 1p目は後半の美しいコーナーは長くて持久力多少いるけど休めるし、ほぼ腕フルパワーで下部核心に突入できるので、取り組みやすい印象。I君のムーブ見ていたのに1撃できなかったのは悔しい。
ロープをフィックス、I君がユマールで上がってきた。ヨセミテっぽいぞ。そしてI君は2p目をトライ。こつこつ高度を上げてトップアウト、ムーブも大体ばらせたみたい。時間的に私のリードの時間はなさそうだったので、トップロープで触らせてもらうことに。
出だしのドラキュラ部分は無我夢中で登ったらノーテンで行けた。後もムーブは一応作れたような気がしてトップアウト。プロテクション取るのが課題っぽい気配を感じた。歯が立たないわけではないことがわかり、秋に本気トライすることに決めた。
9月8日
まだ暑くて時期じゃないと思うけど、空いているうちにムーブを固めて、シーズンインしたら確実にRPする作戦。野澤さんが1p目トライついでに2p目をビレイしてくれるというので、1p目をリードしてもらって、ザックを背負ってフォローするも、テンションが入る。出だしのグーチョキパーは、わかればプロテクション取らなくても大丈夫な位安心感があるけど、チェンジングコーナーはやっぱムズい。
2p目はムーブ全く覚えておらず、そもそもカムセットしていないので最初からやり直し。1時間半以上かかって各駅停車でムーブ解体してみたら、フットジャムで足がめちゃくちゃ痛くなった。
野澤さんの2p目のトップロープトライ(巻き添えにしてすんません)を挟んで、トップロープでカム持って2トライ目。日当たり良好過ぎてヌメリが激しい。プロテクションを徹底検討、少し間引いたがまだ多いなぁ。この日のトライはこれで終了、野澤さんの1p目ビレイのため、地上に戻った。
9月14日
今度は1p目RP済の川上さんが付き合ってくれるとのこと。運が良いことに曇り。アップ兼アプローチで1p目を河合がリードするも、指入れるところに0.5入れてチェンジングコーナーで早速テンション。まともに登れないものか。
乾いているように見えた2p目の1便目。上部シンハンド~甘いハンドクラック帯はヌメヌメで、レスト後の上部は水が滴るレベル。でも、ムーブもプロテクションも大分固まった。最後のカムは、4番じゃなくて2番キャメで問題ないことが判明。軽くなるぞ。
川上さんのトップロープトライを挟んで、2便目は本気で狙ってみることにした。ドラキュラを越え、パンプに泣き叫びながらレイバック帯を2回こなしてシンハンド~甘いハンドの核心の直前で死に物狂いでレストするも、ヌメってジャムの効きが悪くて、腕が全く回復してこない。結局体を引きつける力が戻らず、落とされてしまった。核心周辺のムーブを念入りに再確認して、翌日の朝一に賭けることにした。
9月15日
この日は1p目のRPのかかった野澤さんも合流。朝1でアップもせずにきっちりRP。チェンジングコーナー登りながら3つもプロテクションを決めるってすごい。ロープをフィックスしてもらって川上さんはフォロー、私は空中ユマールでお昼寝テラスへ。
トワイライト終了点からフィックスすると最後までほぼ足がつかない完全空中ユマールで良いアップになる。ユマール筋さえあれば、春うらら1p目のフォローより楽だし早いと思う。

ビッグウォールっぽい?

日の当たる前が勝負ということで、10時に出す。下部はパリパリでコンディション良好。ドラキュラ終了後のハンドでプロテクションを間違えかけるも何とか修正。

なぜかプロテクションを間違えかける

やはり吠えつつレイバックして、核心前のレスト。今日はヌメらないぞ!突っ込んでハンドレストポイントまで気合で繋げる。腕が猛烈に張ったので長時間レスト。

ハンドレスト直前の最後の逆手デッドハンドジャム
ハンドジャムで無限レスト中。通りがかりのUさんに撮って頂きました

後半のハンドクラック部分はやはり濡れていてチョークがなくなったので、慎重にチョークアップして再度レイバック帯に突っ込む。

さあ、またレイバックだ!気合だ!!
手が濡れていてプロテクション取る余裕ないので、1個カムを間引いた。ワイドの内面も湿気が酷く、滑らないように慎重にムーブを起こして、ワイドに挟まって一安心。そして何とかRP!4日6便と、便数の割に日数がかかった。
野澤さん1p目RPと合わせて、ワンプッシュ、チームフリーで春うらら完了!
コンディションはいまいちだったけど、メインシーズン入る前に何とかなりました。極端に悪いムーブはないけれど、回復ポイントもあまりなく、ストレニュアスなルートという印象です。中間部~上部のコンディションが悪いことが多いことも、RPを難しくしていると思います。悪いフィンガー→悪いレイバック→易し目レイバック→核心のシンハンド~甘いハンド→(大レスト)→ガバハンド→ガバレイバック→内面登攀→易しいワイド。プロテクションはランナウトするし、ジャムも大体全てのサイズを繰り出すことになり、総合力の必要な素晴らしいルートでした。私は出だしの固め取りと最後の木の根スリングタイオフをそれぞれ1つと数えて、0.2~3番を15個も取ってます。多分取り過ぎで、思い返せば後3~4個は間引けたかな。持久力あればもっとたくさん取れます。
お付き合いいただいた川上さん、野澤さん、I君、ありがとうございました。このルートの真の核心は、やはりお昼寝テラスまで来てくれる心優しいパートナーかもしれない。

北穂高岳滝谷 ドーム西壁ニューウェーブ、ドーム北壁右ルート、スベニール・ド・タキダニ、ドーム中央稜

2019年9月7日~8日
柳川、川上(記)

9/6(金)
新宿駅21:30発 – 新穂高温泉1:30(9/7)着

9/7(土)
新穂高温泉1:50発 – 白出沢出合3:00着 – 奥穂高山荘7:10着 – 滝谷ドーム付近9:00着 – ドーム西壁ニューウェーブ登攀10:00~13:30 – ドーム北壁右ルート登攀14:00~15:30 – 北穂テン場16:30着

9/8(日)
5:20起床 – 滝谷ドーム付近6:30着 – スベニール・ド・タキダニ登攀7:00~9:45 – ドーム中央稜登攀10:00~12:00 – 奥穂高山荘13:30着 – 西俣林道出合15:30着 – 新穂高温泉16:30着

かねてから行ってみたいと思っていた滝谷に、柳川さんからお誘いがあり、喜んで乗っからせてもらった。柳川さんは、いつも目一杯登れる素晴らしい計画を提案してくれて、ありがたい。今回も各日2ルート継続、土日2日間で4ルートの計画で行く。

金曜夜に新宿集合で出発。新穂高温泉に着き次第、寝ずにアプローチする。柳川さんは相変わらず歩きが速い。午前9時過ぎに滝谷ドーム付近に着いたら私はバテバテで、泣きの20分仮眠をとらせてもらった。柳川さんも「バテバテですよー」と言ってたが、いや、そうは見えないですけど、、、。

滝谷ドーム付近で休憩をとる

ドーム西壁ニューウェーブ(3ピッチ、10a)
快晴、無風。バテてたけど、クライミングになると元気が復活する不思議。懸垂点があるらしいが、よくわからず、結局ニューウェーブ1ピッチ目終了点まで歩いて降りて、ラペルして取り付きへ。

1P目(10a)川上リードOS
高難度フリーを目指してラペルボルトで拓かれたルート、とトポ(日本の岩場)にあったが、登ってみると、なるほど、と合点する。いわゆる本チャンルートは、ド正対の3点支持ムーブで、浮き石を確認しながら恐る恐る進む系が多いわけだが、このルートは、ダイアゴナルを交えて多彩なムーブでカチをつなぐ。山の壁にしては岩も硬い。支点もハンガータイプで、ピン間隔こそ少し広めだが、近くのゲレンデマルチを登っているような感覚にすらさせられる。
核心は中間部の小ハング越え。

1ピッチ目をフォローする柳川さん

2P目(5.9)柳川リードOS
大バンドを10メートルくらい歩き、背丈大の岩の裏のハンガーで支点を作り、2ピッチ目スタート。
5メートルほど右にトラバースして直上、、、が正規ラインだと思うのだが、柳川さんは、右端の凹角まで10数メートルトラバースし、苔っぽい逆層フェイスを登っていた。私はフォローだったが、この逆層、いやらしい。とても5.9のムーブじゃない。明らかに違うラインだ。よくこれをリードするもんだ。ボルトもないのでカム固め取って突っ込んでたし。
50メートルいっぱいで終了点。

2ピッチ目をリードする柳川さん

3P目(10a)川上リードOS
ボルトに導かれながら、ガバカチをつないで登る。終了点はハンガー二つ。

しばし休憩し、次どこ登るか話し合う。13時を回っていたので、短いのやろうということになり、トポに「時間が余ったら技術的困難を追求するのもいいだろう」みたいに書いてあったドーム北壁へ。トポの書きぶりだと、なんだか難しそうでワクワク。右ルートと左ルートの2本あるが、上部にキレイなハンドクラックが走っている右ルートに食指が動いた。

ドーム北壁右ルート(2ピッチ、体感10b/c)

1P目(体感10b/c)川上リードOS
グレード表記なかったため、どれほどの難しさなのかわからず少しドキドキする。
下部25メートル位はフェースで、支点はボロハーケン。所々に#0.3以下のキャメや、4番位のナッツ(BDストッパー)もきめた。1箇所微妙なムーブがあり、支点が支点だけに緊張。ここが全体通しての核心か。ムーブ強度は10bくらいだが、メンタル要素こみで、体感10b/cといったところ。
25メートル位登るとテラスがあり、残置ハーケンベタ打ち4~5枚。明らかにここがピッチを切る場所だと思うが、目の前にはハング~垂直の、とってもキレイなハンドクラックが、、、。あー登りたい。終了点に気づかなかったフリをして(柳川さん、すみません)ロープを伸ばすと、、、、、やっぱり素晴らしい。
滝谷にこんな快適なクラックがあったなんて。ハンドジャムがバチバチきまる。テーピングなんてしてなかったが、ほとんど触られてなさそうなこのクラックは、とってもザラザラしていて痛かった。でも、これが岩と一体になる感覚。青い空、標高3000メートルの心地よい風、ジャム筋がパンプしてくる得も言われぬ感じ、、、、。やっぱり、クライミングって最高だ。
クラックを抜けた所で、ロープあと5メートルと言われたので、カム3発で支点構築。クラック部分は10aくらいで、チョー快適だった。

2ピッチ目(体感Ⅳ級)柳川リードOS
15メートルくらいの岩稜登りで、ドームの頭へ。

ドーム北壁(右ルートは、中央の顕著なチムニーの右側を登る。矢印で示したのが、快適なハンドクラック部分)

2日目
4時に起きるつもりが、完全に寝坊して5時20分起床。周りはもう完全に明るい。いそいで朝飯を食べてテントを撤収し、ドーム西壁へ。

スベニール・ド・タキダニ(3ピッチ、10a)
取り付きは、ニューウェーブの左10メートルくらい。

1P目(5.9)川上リードOS
途切れ途切れのクラックを登る。ジャミングはほぼせず、フェースムーブ。残置もあるが使わず、オールNP。

2P目(Ⅳ級)柳川リードOS
普通にサクサク。

3P目(10a)川上リードOS
出だしの小ハングを左から越える。左側のホールドが見えず、一歩踏み出すのが怖いが、細かめのフットホールドに立ち込んで左手を伸ばせば「おー、ガバがあるじゃん」
ハングを越えた後、右側の凹角に移るまでのホールドが少し細かい。この辺りが核心か。支点は残置ハーケン&カム。ムーブもあって面白いピッチ。残置無視オールNPも普通に出来そうで、さらに面白くなるだろう。ドームの頭に出て終了。

荷物を持って、少し移動し、中央稜に向かう。

ドーム中央稜バリエーション(5ピッチ、体感5.9)
残置無視。それと、2、4ピッチは、登れそうに見えた別ラインをやってみた。

1P目(Ⅴ-)川上リードOS
適当に登り、上部で少しチムニーする。

2P目var(体感Ⅴ級)柳川リードOS
柳川さんは中央稜は4回目だとのこと。いつもはこのピッチは、右のカンテに出てるそうだが、左のクラック沿いも登れそうに見えたので、試してみる。サクサク。

3P目、歩き

4P目var(体感5.9)柳川リードOS
正規ルートの凹角から、右に5メートルくらい。下部フェース、上部フィストサイズのクラック、というライン。登れそうなので、柳川さんやってみる。ジャミングはほぼしない。クラックを抜けた後に出てくるスラブは簡単に巻けるけど、あえて巻かずに直登すると、デシマル表記の方がしっくりくるピッチに。柳川さんは、黒エイリアン1個ぶち込んで突っ込み(さすがのメンタル)、5.9くらいとコメント。

4ピッチ目下部を登る柳川さん

5P目(Ⅳ級)川上リードOS
本来のルートの右に出てしまったので、10メートルほど歩いて修正。そして、明瞭な凹角を登ると、ドームの頭に出る。柳川さんと握手。これにて今回の登攀は終了だ。

まとめ

今回の自分の課題は、歩きの体力だと思った。初日のアプローチでバテて、柳川さんの歩くスピードについていけない場面があった。
アルパインにおいて、眠らずに行動することはざらだし、この程度の行動時間でバテていては、まだまだだ。どんな厳しい状況下でも、一定のパフォーマンスを維持できるようにならねばならない。夏なら何とでもなるが、冬壁はそんなに甘くない。
アプローチを素早くこなせなければ、不要なビバーク、落氷、落石、雪崩、天候急変など、リスクの増大となってはね返ってくる。撤退を余儀なくされることもあるだろう。岩壁に辿り着けなくては、登攀能力など何の役にも立たない。
この点を改めて肝に銘じ、トレーニングに邁進しようと思った。

以上。今後もさらなる精進をいたします。