2003年4月14日から3日間
森広、大滝(記)
4月14日
大谷原8:10発 晴 9℃
辺り一面雪原。クロカンしたら楽しそう。
大川沢を遡るが、途中、大高巻きを1回余儀なくされた。
9:50吊橋を渡る。
大分傾いて来ている。その先の取水口を渡った所で渡渉箇所が現れた。
うだうだと悩んだが、意を決して一番安全そうな地点を見極めて裸足になって渡った。
大滝で膝上、森広は腿の付け根まで潜った。幅は8m程。
天狗尾根に取付くが、雪が締まっておらず1歩1歩、ずぼっずぼっと潜ってしまい、疲れるし時間は浪費するしで捗らない。4月中旬ならばもっと締まっていて欲しい。
上部では、雪の亀裂が前傾壁になっており正面からは越えられない為、右の急斜面から廻りこんだ所が2ヶ所あった。
これじゃあ、帰りも怖い。ロープ無しではとても降りる気になれないし、懸垂の支点も無い。
当然、天狗の鼻まで行けるものと思っていたら、手前の2120mピークで5:20になっていた。こんな遅々としたスピードでしか進めなければ、天狗の鼻は夜になってしまう。
それは危険だ。でも、ここで泊まれば時間的に北壁はもう登れない。心なしか、北壁の雪が少なく見える。
雪質もこの高さでぐさぐさだから北壁も同じかも知れない。しばし悩んだが、ここで幕営とした。北壁は又の機会だ。
4月15日
5時起床 3℃ 6:40発 高曇り
第二クーロアールもぐずぐず雪で、足を蹴り込んでも5、6回目でやっと決まる有り様。
雪の蟻地獄か。
8:30天狗の鼻。
なんと、2時間もかかった。
こんな亀さん状態では、天狗尾根さえ抜けられるか心配になってきた。
北壁をカメラに収め進む。
大きい雪庇が幾つも出来ている。
前傾している雪壁が現れる。
左はかなり切り立っているが何とか越えられるかも知れないが、下がすっぱり切れている。
右は、きのこ雪の下をくぐらなければならない。
しかも廻りこんだ先の様子は分からない。
暫し逡巡していたら、下の森広さんが、ロープを出そうと言う。
少しクライムダウンして、アンザイレンする。
右のきのこ雪が崩壊する確立は殆ど無いのでくぐることにする。
潜ったあとは安定した斜面だった。
スタンディングアックスビレイで確保。
11:46 岩場に達しアンザイレンする。
1ピッチ目は残置ハーケン2本、木の根1箇所でランニングを採る。
2ピッチ目はハーケン2本。
難しくは無いが、荷が重いのでゆっくり登る。
ガスがかかり視界が無くなって来た。
こんな高い所なのに、まだ潜る。
13:50 やっとジャンクションピークに着いた。
流石にここまで来ると、雪は締まっている。
快適に歩いて北峰。
両側がすっぱり切れていてアルプス的だ。ガスで何も見えない。
地図で方向を確認して、南峰へ向かう。
15:20南峰。
冷池小屋に向かって下るが、ガスの切れ目から、剣の山並みが現れ、喜ぶ。
ガスの綾織が牛首尾根の雪面を幻想的に美しくしている。
丸々太った雷鳥が、十羽ほど姿を見せた。
巨大なクレバスがあり、縁から10mほどの所に亀裂があった。
まるで白いビルディングが山の縁から引き離されそうな様子に見える。
17:13 冷池小屋。
小屋は殆ど埋まっている。
テントを張る位置を考えたが、森広さんが、山の縁から離れてもっと小屋側にしましょうと言う。
やはり巨大クレバスにおののいたようだ。
4月16日
4:00起床 快晴 6:10発 -3℃
一面雪山の美景。
剣岳、爺ヶ岳、鹿島槍、ヤッホー。
赤岩尾根の上部は朝の冷え込みで締まっている。慎重にゆっくり通過し、最近のパターンである、西沢下降を選ぶ。
暫くは、壁側に向かって下り、急なデブリの跡を延々と下る。
下部の安全地帯でゆっくり休み、大谷原10:00着。