2000年1月8~9日
瀧島(記)、小谷、椛島
正月山行では穂高の継続クライミングを計画したが、屏風岩の取り付きまで行っただけで、壁には取り付かずに敗退となってしまった。
おかげで年末年始はコタツで紅白を見て、近くの神社に初詣に行って、まさに幸せなお正月を過ごしたのだった。
もちろん体重、体脂肪率ともに増加してだるま状態となった。
このままではミレニアムは良い年は望めないと思い、心を入れ替えて一ノ倉にリベンジに出掛けることと成りました。
はじめの計画では12月に衝立の北稜に行ったときに見つけたアルファールンゼの横の尾根だったけれど現場で急きょルートの変更をしました。
1月8日
快晴
ロープウェーの駐車場を5時ころ出発、積雪は少なく、しばらく降っていないようだ。
おかげで一ノ倉の出合には1時間くらいで着いた。
テールリッジの上部にヘッドランプの灯りが二つ動いている。
彼らはきっと、一ノ倉の中核をなすメジャーなルートへ向かうのだろう。
雪崩の危険は感じなかったのでコップスラブを直接略奪点目指して登って行った。
アルファー、ベーター中間リッジは登ったと言う話は聞いていないが、出合付近からも割と良く見える。
見栄えも捨てたものではありません。(少し誉め過ぎかも)
取り付きは略奪点のすぐ上、コップスラブの目印になるピナクルの近くまで末端が迫っている。
アルファールンゼ側に回り込んで取り付こうとした。
ところが目指すリッジの上はこのところの好天のおかげでブッシュがうるさそうだ。
それに引き換えアルファールンゼは雪も安定していて魅力的に感じられた。
悪く言えば優柔不断、良く言えば状況に応じた現場での適確なルート変更をして、アルファールンゼをつめることとした。
中間リッジにはもう少し雪がついて良い状態のときにまた来よう。
アルファールンゼの下部は今日の雪質ならば問題ない。
コップの広場と同じ位の高さでルンゼの幅は一気に狭まる。
雪質も不安定になりロープをつける。
1P目椛島トップで傾斜は緩いが不安定な雪質のルンゼをじりじりと進んで行く。
岩の上にうっすらと雪を付けているだけでピックは岩を叩いてしまって決まらない。
マサに嫌らしいピッチをノーピンで登って行った(50m)。
山を始めてまだ1年なんて思えない登りを見せてくれた。
今回はリッジルートなので岩と雪稜を想定したギヤを持ってきていたのでアイスハーケンなんか一本も持ってこなかった。
おまけにアイゼンはカジタの10本爪だ。
2P目小谷トップ。
今度は安定した氷からワンポイントのおっかないトラバース。
3P目瀧島トップ。
正面は発達の悪い氷曝。
おもわず右の急な草付にルートをとった。
途中ピックがきまらず、墜落寸前までいったが、ファイト一発なんとかクリアー。(50m)
このままリッジを登って行くと50mで一ノ倉尾根に飛び出した。(15時)
ここから眺める幽の沢も雪は少なく黒々としていた。
一応そのままロープをつけたままで50m進むとルンゼの入り口に着いた。
ここでロープをはずして後はひたすら上を目指す。
衝立尾根との合流したところでワンポイントロープを使った。
夕闇迫るころ一ノ倉岳に着いた。
頂上直下の雪壁に穴を掘って今夜の宿とした。
几帳面な小谷さんのおかげで超快適なねぐらが完成した.酒も食料も豊富にあり幸せな夜を過ごした。
1月9日
ガスのち快晴
西黒尾根経由で無事に下山。
今回、成り行きでルンゼルートを登ってしまった。
今までのセオリーだと積雪の多い山域のルンゼルートは雪の安定した3月にねらう事が多かったと思う。
しかしここ数年の冬の天候パターンと山の状態を考えると時期にとらわれずに積極的に谷を詰めてから取り付くルートやルンゼルートを計画しても良いのではないかと感じていた。
だから今回アルファールンゼを登れたことは自分の考えがある面では正しいことが判ったので満足している。
とはいえ、下部では雪崩の危険を感じずに登れた適度に締まった快適な状態の雪が、傾斜が変わる核心部の滝の手前では、いつ雪崩てもおかしくない不安定な状態に急変した。
締まった雪の上にチリ雪崩となり落ちてきたふかふか雪が重なったものと思われる。
ハンドテストをすると上層の雪はいとも簡単に動き出した。
雪質の見事なまでの急変を身をもって感じる事ができて良い経験ができたと思っている。
特に年末年始の積雪量はここ数年概して少ないように思える。
従来の常識にとらわれずに頭を柔らかくして柔軟に考えると今までにない面白い計画も考えられるだろう。
ただし突っ込むか戻るか、あるいは転進するかの現場での判断の重要性は今まで以上に大切になる。