北アルプス 錫杖岳前衛壁 左方カンテ、1ルンゼ

1999年8月20~21日
三好(記)、朱宮(千葉大学山岳部OB)

先週の屏風で順番待ちはもうやだという気分になったので、人気の左方カンテを平日に登ろうと休みを取った。

朱宮とは同じ研究室に居たのだが、まだ学生をやっていて土日も休みがないような生活をしている。

今回は気分転換に久しぶりに岩に行こうということになった。

前夜、横浜21:00に出て、中央道を使ったが新穂高には2:00に到着できた。

車の中で中で仮眠する。

8月20日(金)

朝からくもっている。

6:00には歩き出し、7:30には錫杖沢の岩小屋に到着。

半年も運動していない人に遅れをとり、バテている自分に腹が立つ。

岩小屋にテントを張ってから、左方カンテを目指す。

取りつきの北沢はどこかと思ったら、北沢は岩小屋の目の前から派生している沢であった。

うろうろして、結局左方カンテに取り付いたのは、10:00。

さすがに誰もいない。

最初の2ピッチは問題ないが、3ピッチ目でバンドをたどってチムニー状に入って行かずに、尾根状を直上してしまった。

でも、少なめだが残置ハーケンが続いていて、この後2ピッチ分、三好リードで、じりじり進む。

雨が降ったり、晴れたりだったが、フェースなのでちょっと雨宿りをすると岩が乾いてくる。

途中、傾斜もありちょっとA0してしまったのが悲しいが、この日はここが一番楽しめたかもしれない。

一般的なルートを外したとは言っても、錫杖の岩は硬く、指がカチッと決って、とてもいい感じだ。

正規ルートに戻り、板状の岩が倒れ掛かっているⅤ+のピッチの下に着くと、雨が本降りとなってしまった。

ちょうど雨宿りにいいテラスなので、じっと待つ。

小降りになったところで朱宮リードで登り始めたら、また、雨が強くなった。

フリーで行けば楽しいだろうになと思いつつ、仕方なくA1しまくりで登り、あと1ピッチを残して終了とする。

もう16:00だ。

寒い寒いといいつつ、取りつきに戻ったのは18:00。

「また天気がいい日に来るぞ、左方カンテ」と決意しつつ、さっさと寝る。

8月21日(土)

4時に起きようと言っていたのだが、朱宮が呼び掛けてもゆすってもぴくりとも動かない。

本気でどうしようかと思った。

単に、ずっと夜型生活を送っているので、夜中の2時まで寝れなかったらしいのだが。

いつでもどこでも(すごく寒い時は別)眠れる自分って幸せだなぁ。

5時半頃、仕方なく棒ラーメン(なんと、喜多方ラーメンという名前で、太麺なのだ)を作っていたら、朱宮がやっと動き出す。

今日も朝から曇っていて、いつ雨がぱらついてもおかしくないような感じだ。

左方カンテから下降してゆく踏み跡をたどると、1ルンゼのF1への取りつきがある。

7:00登り始め。

交互にリードして順調に進んで行く。

所々濡れたままだけど、ホールドがきちっとあって、簡単すぎることも難しすぎることもなく、とても楽しい。

左方カンテの方向から1パーティの声が始め聞こえただけで、岩場を独占しているような感じがたまらない。

ピッチを切れそうな支点はたくさんあり、適当に切って行ったら、核心といわれるV、A1の手前で私のリード(4ピッチめ)が終わってしまう。

9:30。

ちょうど雲が晴れたので、休憩して周りを眺めつつ、ルートをちらちら恨めしそうにみていたら、「次もリードしていいよ」と言われる。

クラック沿いはまだ濡れ濡れだったので、素直にA1したためか、難しくは感じなかった。

ただ、まだ慣れていないので時間がかかり過ぎる。

あともう1ピッチを登って計6ピッチで終了。

12:00。

ちょうど雨が降ってきたので、さっさと同ルートを下り始める。

しかし、ロープの末端側が岩の窪みに引っかかるなどして、途中2回も登り返しをするはめに。

始めは快適に登れた場所も、雨に濡れていると、あまり楽しくないということがよくわかった。

取りつきまで戻ったらすでに16:00。

F1にもちゃんと水が流れていた。

明日登る予定の3ルンゼを見に行く。

なかなか乾きそうもないルートだ。

ちょっと、温泉に行っちゃおうか気分になるが、明日の朝決めることにしてテン場に戻る。

雨がだんだん強くなってきた。

でも、テン場は岩小屋で、まったく雨がかからない。

「錫杖はいい所だねぇ」とのんびり豪勢な焚き火をして、満足感に浸る。

8月22日(日)

朝も雨。

ついでに朱宮が左目が痛くて開けないというので、おとなしく下山。

こういう時にアプローチが短いというのは大変有り難かった。

結局、月曜日に眼医者に行ったら、角膜が傷ついていたとのこと。

1ルンゼで、コンタクトレンズが外れそうになったのを入れ直した時にやってしまったらしく、連続装用なので、そのままにしておいたのもまずかったらしい。

コンタクトレンズに慣れすぎると、眼の中のゴミや汚れが気にならなくなってしまうようだが、放っておくとこんなこともあるので注意しましょう。