Regular Northwest Face, Half Dome

2000年8月27日から2日間
倉田、中嶋(記)


今回のヨセミテ行きでメインととらえていた課題。

壁で数泊してエイド主体で登るパーティもいると同時に、登攀装備以外ほとんど持たずにワンデイで登るパーティもいるということで、スタイルや装備などをパーティの力に応じて選択しなければならない。

こんな時のためにフリーを頑張ってきたのだから当然選んだのは速攻スタイル。

運良く小柳さんと森上さんからルートに関する詳細な情報を伺うことが出来たので、特にギアに関してはその量を大幅に減らすことができてスピードアップにつながったと思う。

Camp4を5:00起き、6:00出発、車でHappy Islesまで行き6:30出発、ハーフドームの肩に着いたのが10:30、まずまずのペースだ。

途中目をつけておいた泉で水を6L満タンにした。

壁の取り付きでも水が出ているという情報もあったが、時期が遅いと枯れている可能性もあるということで用心のため下から水を確保した。

実際は枯れてはいないものの湧いてもいなくて小さな水たまりがあるだけだったので当てにしなくて本当に良かった。

ケルンが随所につまれた取り付きへのアプローチをたどるとだんだんと北西壁が見えるようになってくる。

正直いって思ったよりも小さく感じた。

ただ傾斜の強さと壁の美しさは想像していた通りで、特に壁の右半分などはラインを引くのが絶望的に見えた。

今回登るRegular NW Faceは壁の弱点を見事に突いているが、それでもフリーでは5.8以上のピッチが連続し、エイドも頻繁に入るのだから、壁全体の弱点の少なさは日本の壁では考えられないレベルだ。

この壁はエルキャプなどと違いぎりぎりまで間近で眺めることが出来ないのでルートファインディングに少し不安があったが、取り付きから眺めただけで13、14、15ピッチ目のチムニーが明瞭に判り、先行パーティもいたためライン取りへの不安はほとんど無くなった。

各自用足しなどをすませて11:30登攀開始。

一日目のうちに11ピッチ目までを登り、トポにpoor bivy と記載してあるテラスでビバーク。

狭くて岩がごつごつしていて快適とは言い難いけど、横になって眠れただけでも良かったかもしれない。

翌日明るくなると同時に登り始め、頂上に着いたのがちょうど18時だった。

頂上に30分程いた後下降を開始するが、途中で倉田さんとはぐれてしまい自分だけCamp4に戻るという事態になってしまった。

正直言って本当に死んでしまっているのではと思って気が気ではなかった。

翌朝倉田さんが戻ってきたときにようやくハーフドームが終わった。

次はロストラムやアストロマン等のより難しいロングルートをやりたくなった。

その次はエルキャプ、いつかはトランゴと夢はひろがります。

その時のためにもっと上手にならなくては。

<以下資料編 各ピッチ毎の概要>

(1P: 5.10c) 中嶋

いきなり50m以上のスケールなので結構疲れる。

この10cは冷静に考えればフリーで行くつもりのピッチの中では最高グレードだったことに登りながら気がついた。

10cのところは1point、せいぜい2手ぐらいだがかなり難しく感じた。

(2P: 5.9) 倉田

トポが良いのでルートが判りやすい。

5.9だけど、荷をしょってのフォローは思った以上に悪い。

(3P: 5.8) 中嶋

快適。

目指すビレーポイントの岩の形に特徴があるので分かりやすい。

(4P: 5.9) 倉田 (中嶋ユマール)

出だしから人工。

ユマールで楽させてもらった。

(5P: 5.9) 中嶋

気持ちの良いクラックが続く。

(6P: 5.9) 中嶋

同じく気持ちの良いクラック。

時間を稼ぐため中嶋リード。

(7P: 5.8) 倉田

みんなから唯一迷いやすいと忠告をもらっていたピッチ。

おかげでスムーズに行った。

(8P: 5.8) 中嶋

いきなりかなり右にトラバースするのだが、ラインを外してしまった。

フォローには悪かった。

(9P: 4th) 倉田

4級ってこんな感じか?なにしろルートファインディングが面白い。

さすが古典。

(10P: A1) 倉田 (中嶋ユマール)

久々のA1、この後のピッチも含め振り子用の残置支点や振れ止めのスリングは充実している。

(11P: 5.9) 中嶋

ロビンストラバースのピッチ。

怖くて難しい。

ロビンスすごい。

トラバースが終われば快適クラック。

倉田さんが着くころには暗くなってきたのでこのピッチの終了点でbivy。

狭くて快適とは言い難い。

それでも憧れの岩でのbivyは良いものだ。

星がきれいだったが運良くそれほど寒くなくてよく眠れた。

(12P: C1) 倉田 (中嶋ユマール)

スクイズチムニーは難しそうなので、左のクラックをエイドで倉田さんに行ってもらう。

時間はかかっても着実に登っていってくれるので助かる。

振り子の後のロープの回収ではまってしまった。

唯一の失敗とはいえ情けない。

(13P/14P: 5.7) 中嶋

チムニーが連続する2ピッチ分をつなげて登る。

後半チムニーのサイズが大きくなり、露出感満点なのは良いけどちょっとこわくてとても疲れた。

ザックを始めからぶら下げておけばもっと楽だったと思う。

ピッチを切るところが少し判りづらい。

(15P: 5.8) 中嶋

さらに続く狭めのチムニーから抜けるまで。

ここは5.8にしては悪い。

(16P: 5.9) 中嶋

凹角を右上していくとだんだん傾斜がましてきて気持ちの良いクラックになる。

(17P: 5.9) 中嶋

ちょっとクライムダウンして右にトラバースしてからクラックを直上。

登り詰めたところがBig sandy Ledge。

このピッチで先行パーティに追いついてしまいあせったが、ここまで結構とばしてきたのでゆっくり休憩する。

(18P: C1) 倉田 (中嶋ユマール)

フリーだと11d、とてもきれいでいずれはフリーで是非とも挑戦したいと思わせるピッチだった。

(19P: 5.10b) 中嶋

わざわざZig Zagsなどという名前がついているだけあって面白い形状のコーナークラックのピッチ。5.10bだからフリーで狙えると思っていたが、疲れのせいか高度感によるびびりからかテンション交じりで情けない結果に終わった。

傾斜がとても強く感じた。

(20P: C1) 倉田 (中嶋ユマール)

長めで苦労しているようだった。

ユマールで楽させてもらった。

(21P: 5.8) 中嶋

このピッチはすごい。

信じられないような高度感の絶妙なレッジが10m以上続いている。

写真を撮っておけばよかった。

なにしろ迫力満点で自分としてはめずらしく足がすくみまくった。

続くオフィズスでもキャメ4は使わなかったので持ってこなくても問題なかっただろう。

このピッチを登りだしたころに雨が降りだした。

ビレー中は向かいの山にバリバリ雷が落ちていてけっこうビビった。

(22P: A1) 倉田 (中嶋ユマール)

人工のピッチ。

いよいよ頂上の庇が迫ってくる。

おかげで雨には濡れにくそうだった。

(23P: 5.7) 中嶋

アンダークリングとちょっとA0した後、庇を左に回り込んでひたすら登ると広大な頂上。

頂上では先行のフランス人パーティがラーメンをご馳走してくれた。

飢えていたから本当にうまかった。

登攀終了18:00

全22ピッチ、中嶋はうちユマーリングが6ピッチで残りはすべてフリーでリードかフォロー。

予定していた通りの素晴らしいスタイルで登れたと思う。

<装備一覧>

ロープ 10.2mm×60m

補助ロープ 6mm×60m (お守り、使用せず)

スリング短 10 長 3

カラビナ 14

環付ビナ 6

下降機 2

確保機 2

ユマール 1 set

デイジー 4(各自2)

アブミ 5(各自2+予備1)

ヌンチャク 8

キャメロット 0.5~4(計7) 4はなくても良い

フレンズ 1.5~3.5(計5)

エイリアン 青~赤 2 set (計8)

ロックス 0~9(計10)

ナッツキー 2

シューズ

チョークバッグ

テーピング

ツェルト 1

水 6L

食料 パワーバー20 リンゴ1 ビーフジャーキー2