1999年8月10~14日
関、水柿、大滝(記)
「八久和の思いで」
大きな沢は二十代中盤の頃に、同じ朝日連峰の竹の沢に行った事がある。
沢中二泊、泳ぎも入る本格的な沢は初めてだった。
真剣に雨が降らない事を祈って遡行した。
結果は新潟に1月雨が降らなかった夏だったので、増水もなく、毎日快適に泳ぎ、歩き、攀じることができた。
この時の為に渓流釣り道具を購入したが、少雨で岩魚が岩陰に隠れていて、三人パーティ全員とも坊主だった。
トホホ。
この頃から八久和の事を知り、何時か行ってみたいと憧れつつ、やっと念願が叶った。
8月9日
PM10:00
大滝車で大滝家を出発。
帰りの渋滞が心配だったので、関君の車を大滝の駐車場に置いておいた。
8月10日
AM5:30
500kmの道を三人交代で運転して、八久和湖に着いた。
夜明けの山並みは美しかった。
途中の八久和ダムへの分岐では、月山ダム建設中で進入出来ず、上田沢経由八久和峠越えで入山した。
月山ダムが完成した後には進入出来るそうだ。
AM6:30、24℃ 出発
踏跡ならぬ、しっかりした登山道を進む。
鬱蒼としたぶな林が延々と続く。
左岸から出合う沢を確認にながら歩くが判らなくなってくる。
フタマツ沢出合いでは、沢を渡ると小高いところに墓場があり、左に踏み跡があるので左折する。
しばらく行くと八久和と平行し、左を気にしていると、急な降りる道がある。
道は直進しているので、ぼうっとしていると行き過ぎてしまう。
沢には増水時用のロープが張ってある。
AM9:00
沢の足拵えをし、ザックも防水仕様にする。
わくわくしてくる。
八久和を渡渉し、再びぶな林の踏跡を進む。
ベンノウ沢手前に沢に降りる道があったので、早めに八久和に降り立つ。
いきなり泳ぐ。
ザックを浮かべて、水中で両手でポーンと先に押し出してやって、その間に泳ぎ、ザックと一緒になったら再びボーンと押して泳ぐ。
これを繰り返す。
エメラルド色の美しく明るい淵の連続を、泳ぎ、へつり、越えていく。
楽しい。
AM11:46
カクネ沢出合い通過。
延々と広い河原が続く。
芝倉沢出合い辺りで釣り師4人が下山してきた。
小国出合いでは、2人の若者が泳いで遊んでいた。
小赤沢出合い手前に3~4人泊まるのに丁度良い砂地があったので、泊まる事にした。
薪がふんだんにあった。
PM3:50
満天の星空の下、平らな砂地にシュラフカバーに入ってごろごろ寝た。
8月11日
AM5:00
起床21℃ 晴れたが雲多目。
朝から焚き火をする。
AM7:00 出発
涼しいので長袖一枚で行動する。
しばらく行くと、浅瀬に尺以上ありそうな岩魚が横たわっていた。
死んでいるのかと思って、尾に触れてみると弱く動く。
死の近いことを悟って自ら浅瀬に来て、死を待つのだろう。
潔い最期に身を正すものを感じ、この大いなる川で生きて来た魚の一生を思う。
茶畑沢出合いは、立派な滝があるので分かった。
大ハグラ石滝は、滝と言う形でなかったので、良く分からなかった。
自然プールと言うのは、下流側が堰堤の様になっている。
その奧に泳げない淵が出て来たので容易な岩場を右から巻く。
下降点が分かり難かったが、最奧の地点を4m程空身でクライムダウンして、ザックをロープで降ろした。
その後、流れが速いので空身でロープを引いて泳ぎ、後続を引いた。
平七沢出合いは広い河原で、釣師のテントが一張あった。
岸にナイロン紐があったので引いてみたら、20cm位の岩魚が縛られていた。
AM9:40
河原を歩き続けると、オツボ峰と天狗ノ角力取山を結ぶ道を見る。
岩屋沢出合いのすぐ先にナイロン紐のある踏跡が確認出来たし、左岸の一段上がった所にテントが張ってあってその奧に踏跡が見えた。
オツボ沢が合流する長瀞では、泳いで行って一旦右岸に這い上がり、高巻きを考えるが、やばそうなので左岸に飛び移り、数メートルトラバースして越えた。
小鱒滝は、左に高巻き道があったので楽に巻けた。
広い河原が出てきたので2泊目とする。
PM2:50
降雨が心配になってきたので、フライ付きでツエルトを張った。
焚き火をしていたら降ってきたので、フライの片側をタープ状に張り直して炊事していたら、止んだので焚き火再開。
夜、大滝だけツエルトで寝ていたら、蚊が沢山入り込んで大変だったので、皆と河原で寝た。
深夜、ぽつりぽつりと降って来た。
起き出すのも面倒なのでゴアのシュラフカバーに入ったまま、気にせず寝ていた。
しばらくしたら水柿君がとうとう我慢出来ず、フライの下に逃げ込んだので、関君と大滝も避難した。
8月12日
朝には雨は止んだ。
何と、前夜の火種が残っていたので、焚き火に容易に火が着いた。
雨にも負けない焚き火は偉い。
AM6:45 出発
小鱒沢出合いでは、一旦、小鱒沢に入り、右に注意していると巻き道がある。
呂滝は、でかい釜を持ち堂々としている。
ただルート図には、右から沢が入っているが、認められなかった。
ここは右岸を容易に巻ける。
弁天岩滝は分からなかった。
この辺りから、上部い来た、と言う感じがしてきた。
これまでは両側は森だったが、これからはブッシュと草付きだ。
岩は赤っぽくなって千畳敷と言う感じの面白い造形が続く。
西俣沢は出合いに滝があって分かりやすい。
それを分けると本当に狭い廊下になっていて、膝から腰ぐらいまで浸かって進む。
いよいよ中俣沢に入る。
しばらく行くと、大きな釜を持った滝が出てきたので、右岸を巻いた。
次にロープが必な滝場になり、左壁のブッシュとのコンタクトラインを登る。
2ヶ所ブッシュでランニングを取る。
3級15m。
スノーブリッジが登場し、素早く潜る。
右岸から合わさる8m、C・Sは明瞭。
くの字滑滝の高巻きは、恐い岩登りでランニングも取れない。
関君リードで12m。
抜けた所にハーケンを打って迎えてくれた。
部分的に4級に感じた。
これから先、登れない滝が連続して望見されるので、右岸の大高巻きに突入する。
高度を稼ぐと、雪渓S字状が見える。
長い長い高巻きを終えると、雪渓S字状の上部に案外すんなりと降りる事が出来た。
あーしんどかった。
PM2:00 連瀑帯手前
いよいよ、ハイライトの連瀑帯に来た。
本当に10ヶ位次から次ぎへと滝を懸けている。
ぐいぐい登って行く。
物凄く楽しい。
半分辺りで右岸のカンテ状を登って行く。
一ノ倉沢中央稜の1P目をもう少し簡単にした感じ。
喜びに胸を攀じて行く。
結局ロープを出さず登ってしまった。
後で聞いたら、水柿君はロープを出して欲しかったそうだ。
すいません。
抜けた所はいきなり草原。
メルヘンの世界に早変わり。
ひたひた、ばしゃばしゃと進んで、PM3:45、登山道にでた。
小雨の中、狐穴小屋に投宿した。
小屋は綺麗な二階建てになっていて、素泊まりのみ1500円。
夏期のみ管理人有り。
夕食の後、疲れが出てきてすぐ寝てしまった。
8月13日
帰ろうと思えば、今日中に帰れるが、折角、東北まで来たのでゆっくりしようと言う事になり、ゆっくり寝てゆっくり出発した。
以東岳経由で大鳥池小屋へ、素泊まり1500円。
朝日連峰は、自然保護の為、大鳥池キャンプ場以外は、幕営禁止になっている。
8月14日
下山。
泡滝ダムから大鳥部落の民宿「朝日屋」まで臨時バス。
ここで路線バスに乗り換えて、上田沢駅下車。
朝日屋で予約しておいたタクシー(落合自動車℡0235-53-2121)で八久和湖の大滝車へ。
料金7090円。
帰路、湯殿山ホテルの(400円)温泉で汗を流し、併設の食堂で飯を食らい、東北道へ。
高速も混んで来たので、郡山で常磐道に変更したら、これが当たって夜11:30に大滝家へ着くことが出来た。
山行経費 各15000円(交通費、山小屋代)
装備: ロープφ9-40m 1本、ツエルト、フライ、コンロ、ボンベ2個、
バイル各自(実際に使ったのは、関君がくの字滝の確保でハーケンを打った。)
1999年 この夏は残雪がほんの少ししかなかった。