谷川岳 一ノ倉沢 二ノ沢右壁

2014年10月19日(日)~10月20日(月)
薄田(記)、野澤

 

30年ぶりに二ノ沢右壁に行ってきました。
当時は25歳のバリバリの現役だった(?)。ヘボクライマーは相変わらずだが何といっても若かった。又、手前みそながらいい体だった(少なくても腹筋は割れていた)。
今回、数年前の幽ノ沢(右フェース)での失敗もあるので、乾いた日を狙ったつもりだったが・・・。

10月19日

パートナーは当クラブの最若手(?)の野澤君であります。
車はロープウェーの平場駐車場にとめ5:00には出発、出合が7:00くらい。
30年前は8月のお盆の時期だったので雪渓通しに行けたが、今回は右岸ヒョングリの滝下降点からのアプローチとなる。
そこからが藪が酷く道が解らない始末。
(近年は殆ど登られていないことが後日判明。)
2回行きつ戻りつ迷って3回目に方向の目鼻をつけて藪こぎ開始。
下降目標地点となる松木手前の木で腐った残置シュリンゲを発見。
シュリンゲはやばいので、その木に直まきして懸垂下降。
二ノ沢着地が8:40くらい。
雪渓が消えたばかりなのか岩は砂混じりで悪い。
薄田リード(全ピッチ)でスタート。
1~2ピッチでロープを外せるかと思いきやずっと悪い。
三つ又下大滝では、ハーケンを微妙なバランスで打ち込んで越えました(かなり怖い)。
その後右壁に入るがツルベで無いのでペースが上がらない。
30年前は全体を通して残置が少ないのでハーケン1本でセルフビレーを取っていたと思う。
今回は慎重を期して各ピッチに1本打ち足して、勿論回収するので時間がかかった。
帯状ハングは新旧のボルトが多めに有るので、楽なA1であります。
帯状ハング上3ピッチくらい登ったところで暗くなってきたので、ビバーク地を探すが傾斜もきつくなってきてるので良いところが無い。
それでも2人がおしりを下ろせる場所までロープを延ばしてハーケンを2本打ちました。
しかし、暗くなり気も焦っていたのか、効きの確認を結果的に怠り(効いたと思いこみ?)ビレー体制に入ろうとして体重がかかった瞬間にそれが起きた。
山側を正面にビレー点に体重をかけたが、体の上下を軸に180度回転して超急な滑り台を降りるがごとく背中を斜面に擦りながら滑落し出した。
20mは落ちたでしょう。
次の瞬間、ハーネスにテンションが掛かった。何で止まったのか?気が動転していて解らない。
生きている事だけは間違いない。
意識ははっきりしている。
30mはランナウトしているのでハーケンではない。止まって良かった。本当に良かった。
ヘッドランプを出して上を見てみると10m位上の岩角に今にも切れんばかりの状態でロープが1本引っかかっていた。神様に感謝である。
ショックと左足の痛みでしばらく動けなかった。
野沢君が心配して声をかけてきたので取り敢えず大丈夫だと返す。
よく体を点検すると右の人差し指から血が出ている。痛みは興奮しているせいか感じない。
残置ハーケンを探して、そこまで怖いけど振り子で移動。
更に、ハーケンを打ち足してセルフを取る。
今度は2本ともハンマーで叩いて確認したのは言うまでも無い。
野沢君に近くでビバークポイントを探してセルフを取るように指示し、それぞれの場所でビバークに入る。
ツエルトは無いので、各自着られる物を全て着て少し腹に入れ寝に入るが、まともに座れる場所が無いので完全にハンギング状態で外傾した岩角に体を預ける程度の態勢なので殆ど眠れない。
夜半からは風が吹き出し10月とはいえ寒い。
薄田はザックから銀マットを取り出し体に巻き付けたが、風もあり体がずり落ちるので何度まき直したことか。

10月20日

殆ど眠れないまま朝日が上州武尊方向から昇ってきたので、行動を開始する。
腹に行動食を入れスタート。
左足が痛むが登れないほどでは無く我慢である。
左手の右手人差し指の痛みは幾らか和らいだが、握力が100%出ない。これも気合いである。
2p程で滝沢リッジの終了点となる。
リッジに出た後も草付が濡れいて悪い。
ここで7:00くらい。
悪いことに雨も降り出す始末。
ドームまでの草付きが雨で更に滑って悪い。
途中やられたロープを外してザックにしまう。
Aルンゼの下降点は立派なアンカーに変貌していてびっくりした。雪崩で遭難した遺族が取り付けてくれたようだ。
ロープが1本なので、8の字でセットして各自懸垂下降に入る。
この頃から更に雨が強まる。
合羽は上着のみなので寒い。
ルンゼ全体が濡れているので、痛んだロープをカットしてロープを結ぶ。
薄田リードで3から4ピッチでドームから上がってくる岩場(残置ボルト多数有り)に到着。
それから100mくらい登り、やっと登山道に出た。17:00くらい。
助かった!良かった!実感である。
後は西黒を下るだけ・・・